面会の流儀:ガラス越しでも大根は届く(後半)
「……二回目、三回目ッ!!」
エリカの連撃。空振りのたびに、面会室を仕切る「魔導強化ガラス」がブゥゥゥンと重低音を鳴らし、水面のように波打ち始めた。 それは破壊ではない。エリカの空振りが引き起こす「超高周波の共振」が、ガラスの分子構造を一時的にバラバラにし、物質が通り抜ける隙間を作っていた。
「な、なんだこれは……ガラスが……溶けているのか!?」 ザイルが叫ぶが、もう遅い。
「……最後。……大根さん、おかえりなさい!!」
五度目の一撃。 エリカは、リノが抱えている大根の「座標」に向かって、空振りの真空吸引を放った。
――バシュゥゥゥン!!!
瞬間、リノの手から放たれた最高級『帝都大根』が、波打つガラスをスッと透過。次の瞬間には、エリカの腕の中にすっぽりと収まっていた。 ガラスには傷一つない。だが、その空間の歪みが限界を超え、監獄島全域に張り巡らされていた魔力感知網が、一斉に暴走を始めた。
――ビィィィィィィィィ!!(非常警報)
「……あ。……大根さんは受け取ったけど、……なんか、うるさくなっちゃった」 「エリカさん、透過させるなんて無茶苦茶です! でも、もうやるしかありません! ミラさんが換気扇のダクトからリヤカーを降ろしてきます!!」
ドガァァァァァン!! 天井が崩落し、そこからワイヤーに吊るされた「いつものリヤカー」が、ミラと共に降臨した。
「エリカ、間に合ったわよ! 監獄の『自爆スイッチ』、……あ、間違えて押しちゃったみたいだけど、細かいことは気にしないで!」
「……えええええっ!? ミラさん、何してるんですか!!」 リノの絶叫が響く中、監獄島の地面が大きく揺れ始めた。
「……リヤカーだ。……リノ、ミラ。……行こう。みんなで、お外で大根食べよう!」
エリカはリヤカーの取っ手を掴むと、脱出路を阻む数千人の看守と執行官たちに向かって、満面の笑みで『大根丸(と、さっき透過した大根)』を構えた。
「……どいて。……お腹が空いてて、力が出ないから、……空振っちゃうよ?」
伝説のマンモスパワー全開。 監獄島を「空振りの反動」で丸ごと一蹴し、空飛ぶリヤカーの脱出劇が幕を開ける。




