表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空振り美食道〜大根一本で魔王と勇者を飼い慣らすまで〜  作者: 向陽葵
【第2部:帝都追放? 借金まみれの美食旅】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/90

氷の塔の晩餐:マンモス解凍大作戦(前半)

島の中央にそびえる『絶零ぜつれいの塔』。  そこは、看守ですら年に一度の点検でしか立ち入らない、監獄島最大の禁域だった。


「……寒い。……リノがいたら、温めてくれるのに」  エリカは囚人服の袖を捲り、目の前の巨大な氷塊を見上げた。高さ五メートル。その中には、まるで昨日まで生きていたかのように鮮やかな赤身を持つ、巨大なマンモスの肉塊が封じられていた。


「いいか、エリカ・フェルナンド。その氷は普通の氷ではない。魔力を糧に成長する『魔導氷まどうひょう』だ。下手に触れれば、貴公の体温ごと魂を吸い尽くされるぞ」  ザイルが回廊の端から、防護服越しに警告する。


「……触らなければ、いいんだよね? ……あと、温めれば、溶けるよね?」


 エリカは、凍りついた大理石の床に裸足で踏ん張った。  彼女が狙うのは、氷塊そのものではない。氷塊を包む「空気」だ。


「……はぁぁぁぁぁっ!!」


 ――一回目、空振り。  エリカは、氷塊の数センチ手前の空気を、手刀で真横に切り裂いた。  ドォォォォォン!!  空振りの摩擦によって発生した熱が、一瞬だけ青白い氷の表面を濡らした。だが、魔導氷は即座に周囲の熱を吸収し、さらに分厚く凍りつこうとする。


「無駄だ。その程度の熱では、氷の成長速度には勝てん」


「……ううん。……今のは、準備運動。……二回目、三回目、連続ッ!!」


 エリカの両腕が、目にも止まらぬ速さで左右交互に空振りを繰り出す。  命中率「2」。彼女の拳は、決して氷に触れない。  しかし、左右から交互に放たれる「熱を帯びた真空」が、氷塊の周囲に超高速の『空気の竜巻』を作り出した。    摩擦、摩擦、摩擦!!  エリカの超人的な腕力が生み出す空気摩擦は、もはや調理場の火力を超え、塔内の温度を一気に夏日のように引き上げた。


「なっ……魔力を封じられた状態で、純粋な空気摩擦だけで塔の温度を上げているのか!? 貴公の筋肉はどうなっている!」


「……最後! ……お肉を、起こしてあげて!!」


 五度目の一撃。  エリカは氷塊の「ど真ん中」へ向けて、渾身の突き(空振り)を放った。    ズォォォォォォン!!!


 氷塊の内側に、エリカの放った「振動の塊」が侵入する。氷の殻には傷をつけず、その中にあるマンモス肉の細胞だけを、一秒間に数万回振動させる究極の『空振り電子レンジ』。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ