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空振り美食道〜大根一本で魔王と勇者を飼い慣らすまで〜  作者: 向陽葵
【第2部:帝都追放? 借金まみれの美食旅】

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57/90

法と胃袋:借金王は逃げ切れるか(前半)

「……おかえり、破壊の娘。そして、帝都のがんめ」


 ソルト・ポートの桟橋。黄金の塩を積んだ『満腹丸』が接岸した瞬間、一行を待っていたのは歓声ではなく、冷たい鉄の響きだった。  数百人の盾持ち兵が港を封鎖し、その中心には黒い外套を纏った男が立っていた。彼の両腕には、魔力を封じる重厚な鎖――『戒律の鉄鎖』が巻かれている。


「……誰? 大根、食べる?」  エリカが能天気に尋ねるが、男は動じない。


「私は帝都借金管理ギルド、特殊執行官ザイル。……エリカ・フェルナンド。貴公の負債額は、各地の公共施設損壊により現在、暫定十万アウルにまで膨れ上がっている」


「……えっ!? 減ってたはずなのに!」  リノが悲鳴を上げる。ザイルは冷酷に告げた。 「砂漠の遺跡の『歴史的価値の毀損』。天空の里の『神殿倒壊の恐れ』。……さらに、この黄金の塩はギルドの許可なき『違法採取物』として全量没収とする」


「……全量、没収?」  エリカの顔から表情が消えた。  大根のために。リノと、ミラと、マーカスのために。  嵐の海で、雷を空振ってまで手に入れた「みんなのご飯」が、紙切れ一枚の理由で奪われようとしている。


「……ダメだよ。それは、みんなで食べるの。……おじさん、どいて」  エリカの手が『大根丸』にかかる。


「抵抗すれば、同行している者たちも同罪として『忘却の監獄島』へ送る。……どうする? ここで暴れて、仲間の人生を完全に終わらせるか?」


 ザイルの言葉に、ミラが唇を噛み、マーカスが震えながら首を振った。  エリカは、自分を囲む兵士たちではなく、後ろにいるリノを見た。


「……リノ。監獄島って、美味しいものある?」 「エリカさん……今はそんなことを言ってる場合じゃ……! でも、噂では、そこは一度入ったら出られない代わりに、看守たちが隠れて『極上の闇鍋』を楽しんでいるとか……」


「……決めた。私、そこに行く。……みんなは、塩を半分だけ隠して、逃げて」


「……交渉決裂だ。捕らえろ!」


 ザイルが鎖を放った。エリカは抵抗しなかった。  ただ、彼女が連行される際、桟橋のすぐ横の海面に向かって、あえて「最後の一振り(空振り)」を放った。


「――はぁぁぁぁぁっ!!」


 ドォォォォォン!!


 空振りの衝撃波。しかしそれは攻撃ではなく、ジャックの船を沖合へと力強く押し出す「別れの風」だった。


「……ジャックさん、みんなをよろしくね。……私、監獄島を全部食べてから、帰るから!」


 帝都最大の債務者エリカ、ついに捕縛。  行き先は、絶海に浮かぶ難攻不落の要塞。そこには、どんな凶悪犯よりも恐ろしい「空腹」が待ち受けていた。

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