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空振り美食道〜大根一本で魔王と勇者を飼い慣らすまで〜  作者: 向陽葵
【第2部:帝都追放? 借金まみれの美食旅】

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黄金の調理場:冷え冷えメロンと鋼鉄のシェフ(前半)

「……侵入者。否、新たな厨房従事者と認定。……本日の献立を提示せよ」


 突如、金属が擦れるような無機質な声が響いた。  回廊の奥から現れたのは、四本の腕を持ち、それぞれに包丁、フライパン、お玉、そして巨大な肉叩きを持った鋼鉄の魔導人形ガーディアン――『鋼鉄の総料理長アイアン・マスターシェフ』。


「わわっ、動いた!? エリカさん、気をつけて! あれはこの遺跡を守る警備用じゃなくて、……調理用の魔導人形です!」 「調理用……? じゃあ、このメロン、もっと美味しくしてくれるの?」


 エリカは、大事に抱えていた『オアシス・メロン』をシェフの前に差し出した。  シェフの瞳に宿る魔力の光がメロンをスキャンし、一瞬、激しく点滅した。


「……素材照合完了。伝説の『砂海の翠玉』。……最適調理法を選択:極低温切断、および大根の搾りかすによる甘味強化。……作業を開始する。……邪魔者は、排除」


 排除、という言葉と共に、シェフが持つ巨大な「肉叩き」がエリカに向かって振り下ろされた。  調理という名目の、容赦ない物理攻撃。


「ちょ、ちょっと待って! そのメロン、勝手に切らないで! ……それに、大根は搾りかすなんかじゃないよ!」  エリカは『大根丸』を横に構え、攻撃を受け止める……のではなく、当然のように「空振る」準備に入った。


「……私のメロンを、変な名前にしないで。……あと、大根の良さを教えてあげる!」


 ――一回目、空振り。  シェフが放った四本の腕による連続攻撃を、エリカは紙一重のところで回避……もとい、隣の空間を叩くことで生じた風圧で、自らの体を押し返して避けた。


「二回目、三回目、ッ!!」


 エリカはシェフの四本の腕の「隙間」を縫うように、空振りの連撃を放つ。  命中率「2」。鋼鉄の体に剣が触れることはない。  しかし、空振りの衝撃波が厨房の冷気を一点に集め、シェフの関節部分を急速に冷却していく。


「……警告。……駆動部の温度が低下。……調理に支障あり。……出力、上昇」


 シェフの体が赤く熱し始め、今度は周囲のメロンを焼き溶かさんばかりの熱気を放ち始めた。


「ダメだよ、メロンは冷えてなきゃ! ……リノ、氷の魔法、手伝って!」 「エリカさん、無茶を言わないでください! この熱量、普通に相殺したら遺跡が爆発しますよ!」

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