熱砂の洗礼:メロンのためなら砂漠も掘る(後半)
「……そこ。……そこにあるの、わかってるんだから……っ!」
エリカの瞳は、逃げ水に揺れる地平線ではなく、サンド・シャークが潜んでいた足元の砂地一点を射抜いていた。 サメが跳ね、砂が舞う中、彼女は『大根丸』を逆手に持ち、天高く振りかぶった。
「どいて……メロンが、息苦しいって言ってる!」
――一回目、空振り。 剣はサメの横腹を掠めることすらなく、砂丘の頂点を叩いた。 ズドォォォォォォン!!!
衝撃波が砂を同心円状に弾き飛ばし、一瞬にして直径十メートルの巨大な擂り鉢状の穴が出現した。
「二回目、三回目ッ!!」 エリカは狂ったように空振りを重ねる。 右を振れば砂が舞い、左を振れば砂が凝縮される。 命中率「2」ゆえに、狙った一点は決して壊れない。だが、その「周囲」が徹底的に排除されることで、砂の下に隠されていた「真実」が姿を現した。
「……あ、光ってる」
砂の底、十数メートル。 そこには、地上の熱狂を嘲笑うかのように、ひっそりと、しかし力強く茂る緑の蔓があった。 そしてその蔓の先には、エメラルドのように輝く巨大な『オアシス・メロン』が、三玉、完璧な形で鎮座していた。
「……あった! 本当にあったんだ!」 リノが歓喜の声を上げるが、ミラの視線はそのさらに下、メロンが根を張っている「石の床」に向けられていた。
「……エリカ、待って。それ、ただの地下水脈じゃない。……見て、あの模様。あれは古代帝国の、……王家の紋章だよ」
メロンを収穫しようとエリカが最後の一撃(空振り)を放ち、砂を完全に払い除けた瞬間。 石の床が、何千年も耐えてきた均衡を崩して崩落した。
「――わあぁぁぁぁっ!?」
一行は、リヤカーと共に真っ逆さまに暗闇へと落下した。 ……数分後。 エリカが頭に乗った砂を払いながら起き上がると、そこには砂漠の熱気が嘘のような、ひんやりとした静寂が広がっていた。 目の前には、巨大な水晶のシャンデリアが灯る、黄金と大理石の回廊。
「……ここ、どこ? ……あ、メロンは無事だ。よかったぁ」 エリカは、抱きかかえていたメロンを愛おしそうに撫でた。
「エリカさん……借金返済の旅のはずが、これ、歴史的発見どころか……『不法侵入』になりませんか?」 「大丈夫だよ、リノ。……あ、見て。あっちに、すごく大きなお皿があるよ」
回廊の奥。そこには、古代の王が愛したとされる『黄金の調理場』と、それを守る魔導人形たちが、何千年も「次の食材」が運び込まれるのを待っていた。




