表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空振り美食道〜大根一本で魔王と勇者を飼い慣らすまで〜  作者: 向陽葵
【第2部:帝都追放? 借金まみれの美食旅】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/90

天空の漁場:空飛ぶ魚は刺身に限る(前半)

「……わぁ、リノ見て! 雲がお菓子みたいにふわふわだよ!」


 天貫山脈を越えた先に広がっていたのは、深い谷を埋め尽くす幻想的な雲海だった。  海抜三千メートル。切り立った崖の細い道を、リヤカーを引いて進む一行。普通なら足がすくむ絶景だが、エリカの目は雲の切れ間を跳ねる「銀色の閃光」に釘付けになっていた。


「エリカさん、あれが噂の『スカイ・サーモン』です。高度な魔力を持ち、雲を水のように泳ぐ魚……。その身は空気をたっぷりと含んでいて、口の中で雲のように溶けると言われています」


「……雲のように、溶ける鮭……」  エリカの口から、止まらないよだれが地面に滴り、崖下の雲へと消えていく。


「借金相殺のリストにも入ってるわ。一匹につき金貨一枚。……でも、あんなのどうやって捕まえるのよ。ここは足場も悪いし、あいつら鳥より速いのよ?」  ミラが崖に背中を預けながら呆れたように言う。


「……大丈夫。……ちょっと、釣ってくるね」


 エリカは『大根丸』を背中から引き抜いた。  彼女が選んだ「釣り竿」は、百二十キロの重魔鋼。  そして「糸」は、彼女が振るった後に生じる「真空の道」だ。


「はぁぁぁぁぁっ!!」


 エリカは、雲海に向かって全力で縦に剣を振り下ろした。    ――一回目、空振り。  当然、魚には当たらない。だが、垂直に放たれた衝撃波が雲海を真っ二つに割り、底にある谷底を露わにする。その余波で発生した「上昇気流」が、泳いでいたサーモン数匹を空中へ高く跳ね上げた。


「ウワッ!? 魚が降ってきた!?」  マーカスが慌てて網を構えるが、魚は空中で見事な旋回を見せ、再び雲の中へ戻ろうとする。


「……逃がさない。……二回目ッ!!」


 エリカは今度は、斜め上方に向かって剣を薙いだ。  命中率「2」。剣先は魚の群れの遥か左を空切った。  しかし、その「空振り」が生み出した真空の渦が、逃げようとしたスカイ・サーモンたちを、掃除機のように一点へと吸い寄せ始めた。


「……あ、あいつ、空振りの渦で魚を『保冷バッグ』みたいに閉じ込めやがった!」  ミラの叫び通り、数匹の巨大なサーモンが、エリカの剣圧で作られた気圧のおりの中でバタバタと暴れている。


「リノ、ミラ、マーカスさん! ……最後、みんなでキャッチしてね!」


 エリカがトドメの三撃目、究極の「引き寄せ空振り」を放とうとした、その時。  雲海の奥から、サーモンよりも遥かに巨大な「影」が、巨大な口を開けて迫ってきた。


「……ブォォォォォォン!!」


 それはスカイ・サーモンを主食とする天空の捕食者、『雲海クジラ』。  エリカがせっかく集めたサーモンも、そしてエリカたち一行も、リヤカーごと一飲みにしようとする巨大な影が、崖を飲み込まんばかりに迫り出した。


「エリカさん!! 食べられるのは、私たちの方です!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ