鉄壁の盾:当たらなければ壊れるまでよ(前半)
「第二試合! ギルド『叡智の冠』代表、鉄壁のセドリック!! 対、エリカ・フェルナンド!!」
演武場に現れたのは、磨き上げられた眼鏡を光らせ、豪華な魔導衣を纏った青年、セドリックだった。彼は第一試合のハンスの惨状を冷静に分析し、不敵な笑みを浮かべていた。
「ハンスは愚かだ。物理的な衝撃波に速度で挑むなど。……だが、私の『魔導多重障壁』は、核攻撃ですら防ぐと言われる理論上の絶対防御。お前のその野蛮な空振りも、私の前ではただの扇風機に過ぎんよ」
セドリックが呪文を唱えると、彼の周囲に幾何学的な光の紋章が何層にも重なり、美しい半透明のドームを形成した。
「……リノ。あのキラキラしたの、壊してもいいのかな? なんだか、飴細工みたいで美味しそう」 「エリカさん、あれは食べられません! それに、今度は『バッジを落とす』んじゃなくて、あの障壁をどうにかしないと近づけませんよ!」
エリカは大根への想いを胸に、『大根丸』を低く構えた。 狙うはセドリックの鼻先……ではなく、彼が展開している「障壁のちょうど三メートル右」の空間だ。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
――一回目、空振り。 凄まじい風圧がセドリックの障壁の横を通り抜けた。障壁はびくともしないが、背後の観客席の垂れ幕が音を立てて引きちぎられる。
「無駄だと言っただろう。狙いが外れすぎている!」 「……ううん。今の、練習だよ。次は、もっと『ふわっと』いくから!」
エリカは、今度は『大根丸』を垂直に振りかぶった。 彼女の脳裏には、大根の皮を剥く時の「スッ」という感覚が蘇っていた。当てる必要はない。ただ、あの「邪魔な飴細工」をどかせばいい。
「――お腹、空いたぁぁぁぁ!!」
ドォォォォォォン!!
二回目、空振り。 剣はセドリックの頭上五メートルを通過した。だが、振り下ろされた質量と魔力が、垂直方向の「空気の杭」となってセドリックの足元を直撃。 ズザザザザァァァッ!!
障壁そのものは破壊されていない。しかし、障壁が守っている「地面」そのものが、エリカの衝撃でセドリックごと十メートル後方へ押し出されたのだ。
「な、何だ!? 障壁は無事なのに、私が……私が土台ごと動いているだと!?」 「あ、逃げた! 逃げちゃダメだよ、大根のために!」
エリカはさらに加速し、デタラメな三撃目、四撃目を放つ。 右、左、上。 エリカが空振りするたびに、セドリックの周囲の地面が削れ、隆起し、波打ち、障壁の中に閉じ込められたセドリックは、まるで激しく揺さぶられるシェイカーの中の氷のように、自分のバリアに何度も叩きつけられ始めた。
「……リノ。あの人、バリアの中で勝手に転んでるよ? 大丈夫かな?」 「エリカさん……それはあなたのせいです。当てる代わりに『地殻変動』を起こすなんて、誰も予想していませんよ!」




