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空振り美食道〜大根一本で魔王と勇者を飼い慣らすまで〜  作者: 向陽葵
【第1部:契約の始まり】

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12/90

炸裂! 必殺・空振り千裂拳(後半)

「……これで、最後ぉぉぉ!」


 エリカの叫びが下水道の奥底まで反響した。  右拳に収束した青白い魔力は、もはや制御不能なプラズマのような光を放っている。エリカは全力の踏み込みと共に、その一撃をキングスライムの「核」に向けて放った。


 ——スカッ。


 やはり、拳は核を僅かに逸れた。命中率「2」の呪縛は、どれほど気合を入れようとも彼女を裏切らない。  だが、その拳がスライムの体内に「突き抜けた」瞬間、圧縮された空気が臨界点を超えた。


 ドッガァァァァァァァン!!!


 命中しなかったはずの拳が、その「風圧」と「魔力の爆ぜ」だけで、スライムの巨躯を内部から破裂させた。  青緑色の粘液が、高圧の飛沫となって通路全体に降り注ぐ。スライムの中心にあった魔力石(石机の破片)は、エリカの拳が引き起こした熱量に耐えきれず、粉々に砕け散った。


「……あ、ああ……」


 エリカは、砕けた石畳の上に膝をついた。  目の前には、霧散したキングスライム。もはやそれは魔物としての形を成しておらず、周囲の壁や床には、奇跡的に「ほどよく熱が通った」半透明の粘液が、水たまりのように残されているだけだった。


「……やった。……倒したよ、リノ。……あ、熱い。これ、いい匂いがする」  フラフラと立ち上がったエリカは、あろうことか壁に付着したスライムの残骸に手を伸ばした。


「エリカさんっ! やめてください! それ、まだピクピク動いてます! 食べちゃダメです、絶対お腹壊します!」  リノが最後の魔力を振り絞ってエリカの腰にしがみつき、必死に食い止める。


「……でも、リノ……あ、甘い香りがするんだよ……青リンゴ、みたいな……」 「ダメなものはダメです! マーカスさん、助けてください!」 「……いや、リノちゃん。俺、今それどころじゃねえわ」


 マーカスが震える指で天井を指差した。  エリカの「空振り」が引き起こした震動と爆発により、下水道の支柱には無数の亀裂が入っていた。そして、一際大きな「みしみし」という音が響き渡る。


「……なぁ、エリカ。お前、さっきの依頼書……『スライム討伐』の他に、なんか書いてあったか?」 「え? えーっと……『下水道の保全』……?」 「そうか。……なら、もう一万アウルくらい、借金が増えたな。これ、今にも崩落するぞ」


 ズザザ……と砂利が落ちる。  勝利の余韻に浸る暇もなく、三人は「戦果(スライムの核の破片)」を必死に拾い集め、崩れ落ちる下水道から逃げ出す羽目になった。


 ギルドへ帰還した際、ドロドロの粘液まみれで「お腹空きました……」と泣きつくエリカの姿に、オズワルドが深いため息を吐いたのは言うまでもない。

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