第11話「嵐の到来」
「……………ッ!?」
轟音。そして落雷。
「……っ!!」
カーテンの隙間が激しく明滅している。そして再度の落雷。電気ショックのような衝撃に胸が射貫かれた。
薄暗い部屋の中を見回して窓辺に立つ。カーテンを開け広げ、暗雲立ちこめる空から大粒の雨が窓を叩き付ける光景に言葉を失った。
ゾッとした。あの日もこうして目が醒めたんだ。
テレビを付けようとベッドサイドにあるリモコンを手探りで掴んでスイッチを何度も押したが反応が無い。もしかしなくても、停電だ。
あの日と同じように、停電を伴う落雷で俺は目覚めたってことだ。
「……っ!」
一瞬にしてあの日のニュース速報が頭をよぎる。大災害レベルの土砂崩れで通行止めに高速道路の上空を何台ものヘリコプターが飛んでいた。
「……ふたり、は……?」
フラッシュバックする光景から不安に呑み込まれる。姉さんは? 母さんは? おぞましい記憶が食堂を這い上る感覚に部屋を飛び出した。
「……っ!!」
薄暗い廊下を抜けて、階段からリビングに駆け下りる。人気のないその場所から玄関へと移動するも誰もいない、こんな停電のときに部屋にいる人たちじゃないからリビングに集まってくるはずなのに……母さんも……姉さんも、ここにはいない。
先ほどまで団らんしていたリビングに人の気配がない。
「……あ……」
空っぽのリビングに冷水をぶっ掛けられたような汗が止まらない。
「ね……か……っ」
名前を呼ぼうとするも、耳に届くのは奥歯がぶつかる音だけ。
「……っ……!」
落雷。先ほどよりも激しい稲光が明滅する。遠くでゴロゴロと轟く雷鳴を聞きながら、俺は生活感の残ったテーブルを見下ろして震え上がった。
それは過去のフラッシュバック。テーブルに置かれた白いふたつの箱。母さんだった物と、姉さんだった物を主張するように解像度の低い遺影が飾られていた。
「……やめろ、やめろよ……こんなの……っ!」
ふたりは生きている。俺が運命を変えたから生きている筈なんだ! それなら、ふたりはどこにいる? なぁ、俺が助けた家族はどこにいるんだよ!! トイレ? 風呂か? 庭、カーポート、物置……それとも……!?
頼む、家の中にいてくれ。お願いだ……もうひとりは嫌なんだ!
「っ……さ、ん……!」
恐怖と緊張で引き絞られた喉から二人の名前は出ない。声を出そうとするだけで鋭い痛みが走る。
顔が熱いのに、全身はブルブル震えてしまって泣き出しそうだ……! 名前を呼ぶこともできず、暮れゆく部屋の中でふたりは見つからず、寒くて怖くて寂しくて恐くて俺は膝から崩れ落ちてしまった。
「っ……う、っ……ぁぁぁ……!」
……結局は夢。過去のふたりに一目会えるだけで満足すべきだった。あの惨劇から家族を救い出せるなんて、運命を変えられるなんて慢心してしまった。
それだけじゃない。本当はもっと望んでいた。失った時間をやり直したい、家族で過ごしたい……ふたりが生きられなかった時間をともにしたいなんて、過ぎた願い。
「ぁ……あぁぁ……っ!」
頬が熱い。心が冷え切っている。絶望と悲しみ、形容しがたい剥き出しの感情にパニックを起こして泣き崩れた俺の思考は真っ白だった。……また、失ってしまうのか、と。
「ねえさん……かあさん……っ……う、うああ……ぁぁぁ……!」




