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ペステ:革命は内側から始まる  作者: fm344
第一章 アファロス:古びた経済の都
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3節 バーの中のバー

 店内はそれほど広くなかった。

 

 カウンターには椅子が4脚並び、天井にはオイルランプが吊るされていた。

 また、テーブルは3つで、それぞれに椅子が3脚ずつ置かれていた。


 店内にはホコリひとつ落ちておらず、むしろ、壁もテーブルも椅子も…すべてが完璧に清掃されていた。


 間違いなく、これまで僕が見てきた中で一番上品なバーだ。「Bar de Bares(バーの中のバー)」という名前がぴったりだ。


 奥のテーブルには、少し威圧感のある3人の男が座っていた。

 1人はハゲ――いや、禿頭と言ったほうがいいだろうか。見るからに明るい性格の持ち主だった。

 その隣は右頬に傷跡を持ち、静かな笑みを浮かべていた不気味な男。そしてそのまた隣に、右目に包帯を巻いている、あまり浮かない顔をしていた男がいた。


 彼らの背丈は少なくとも3.5コド(およそ180センチ)

 ――いや、それ以上はありそうだった。


 細かいところまでは見えなかったが、賭け事でもしていたのだろう。


 また、カウンターには年配の男性が座っていた。顔はよく見えなかったが、60歳前後だろう。まあ、体だけを見るに、もっと若そうに見える。

 彼はカウンターの左端に座っていて、かなり酒を飲んでいるようだった。


「立っていても仕方ないか…」

と、つぶやき、自分は右端の椅子に座った。


 店員はグラスを拭きながら、僕の来店というよりは、むしろ存在自体にやっと気づいた。


 彼の髪の毛は、染めたのかと思うくらい見たことのない真っ黒だった。


「ご注文は?」と彼は丁寧に尋ねた。


《何も注文しないのは行儀悪いな…》


 そう思い、何かしら頼むことにした。


「一番うまいやつ、一杯お願いします。」


 いつもより低く、無駄に渋い声で頼んだ。


 しかし、自分の財布にあまりお金がないことに気づき、


「――なるべく安いやつで」と、小声で加えた。


「はいよ。」と、店員は答えてくれた。



 奥の男たちは時々、僕をちらりと見たが、すぐに会話を続けた。何処か怪しい気がした。



「こちらがご注文です」


 店員はグラスたっぷりに入った酒をくれた。


 美味そうな見た目にいい香り。これは美味いに違いない…


《――いや、まっず!!?》

 声に出しそうな勢いで僕の心は叫んだ。

 

 少し咳をして、僕は口を拭いた。

 酒ってこんなに不味いとは知らなかった。


 店員はちらっとこっちを見て、再び作業に戻った。なぜかため息のような音が聞こえた。


 それに、左に座ってる年寄りからも、強い威圧感のようなものを感じた。


《なんだこの人たちは…》


 このバーにい続けることがちょっと怖くなったので、早く本題に入ることにした。


「ゴホン…」

 僕は軽く咳をした。


「――店員さんよ。この店の店主に、会わせてくれませんか?」


 酒を一口飲んだ後、僕は少しドヤ顔で言った。

 店員は振り返り、僕を数秒眺めた。


 そして少し間を空けてから、


「申し訳ないが…店長は今、不在です。」ときっぱり答えた。


「むしろ、結構前からこのバーに来ていません。自分もいつ来るかが気になるくらいです。」


 彼は畳み掛けるように言ってきた。


《マジかよ…》


 いないという可能性を考慮しなかった僕の完全なるミスだ。


「――そうですかぁ…」


《これではロメロと会えなくなってしまうじゃねえか…》


 別に急いでいる訳ではないが、時間がかかればかかるほど、ここへの道中のような事件が増える。


 それは本当に避けたい…


《だったら、非常手段に――》


「――じゃあ、ロメロって人は…」


 …………。



《あれ?》

 

 突然、バーの中の音が全てなくなった――と言えるくらい、静かになったのだ。

 

《なんだこの不穏な空気…?》


 暗い霧のような、険しい空気が場を満たした。


《やはり、ロメロの名を出すのは危険だったか…》


「…なんか、いけないこと言いました?」


 僕は警戒しながら、でも普通のトーンで、すまなそうに言った。


 店員はやっと固まっていた瞳と口を動かし、


「い、いいえ、ぼーっとしてただけです…」


 と、作り笑顔で言った。


 同時に、奥の男達も話を続けたようだ。


 店員は目を他の方向に向けながら、


「そのぉ…ロメロって方は知らないです。」


 と、あまりにも怪しい口調で言った。


 ――嘘。

 考えるより前に、本能的に分かった。

 彼は僕に嘘をついたのだ。


 でも、彼にも事情があるようだし、あまり干渉しないことにした。


 なので、


「そうですか…」とだけ言い、僕は立ち上がった。


 そして払うものだけ払って、僕は店を出ることにした。


「またのご来店を」の一言もなく、僕は損した気分で店を出た。



※※※



「結局、手ぶらかよぉ…」


 バーからある程度離れた所で、僕は弱音を吐いた。

 ――いや、吐くしかなかったのだ。


 だって、どこから探せばいいのか分からない。

 ロメロや店主の位置情報も何も知らない。


「ヒントのかけらでも欲しいところだ…」


 途方に暮れながら、僕は太陽の下を歩き続けた。


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