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ペステ:革命は内側から始まる  作者: fm344
第一章 アファロス:古びた経済の都
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13節 ただの自己満足

「誰もいないみたいですね…」


 ラウルがそう言い、鍵がかかってないかを確かめてから扉を開けた。

 靴を脱がずに二人は入り、二手に分かれて家中を探しまわった。


 目的はなるべく早く調査をすること。詳しく言えば、あの三人が帰る前に何かしら見つけることだ。



※※※

 


 実は、ラウルはいきなり人の家に行こうとなど言うほど無鉄砲な人ではない。彼はここ数カ月、あらゆる場所から情報を集めていた。もちろん、彼一人ではなく、探偵にも手伝ってもらっていた。


『ジュリオは来た後、いつも家の裏口を開いたままにする。』


 それは、よくバーに来る近所の客や、あの三人の何気ない会話から聞いたことだ。

 しかし、それはあくまでも"もしもの"手段として頭の片隅に置いていた。でも、その手段を使う気はなかった。


 だが昨日、アレハンドロの発言により、彼の心情は変わった。状況も状況なので、彼はそれを実行することにした。


 ――でも、時間がない。


 それを常に考えながら、

 台所、便所、私室は探偵、

 その他はラウルが担当した。


---


「…本?」


 ラウルは一番大きな部屋である居間から調査を始めたが、そこにあったのはソファと本棚だけだった。


 ラウルは本を適当に数冊取り、そのページを一つひとつ確かめた。


「メモすらない…」


 どの本にも書き込み一つなく、ページ同士の間でさえ、しおり一つなかった。


 彼は本を取り、ページを確かめ、また同じ場所に仕舞う作業を数十回続け、ようやく諦めた。


「ジュリオのやつ…」


 彼はそう言って、その部屋を出ていった。



 そして別の部屋でも、状況は似ていた。



「この家…まるでなにもないな…」と、探偵は台所を調べながら言った。


 彼ですら不気味だと思ってしまうほど、この家には何もない。テーブル、イス、ヤカン、食器など、最低限の物以外は何もなかった。

 ここで寝泊まりしなかったとしても、趣味、生活、人間関係の跡は何かしらあってもおかしくない。


「ほんと、――元プロミネンテが、よくこんな所に住めたもんだ。」


 彼にとっても中々珍しい事態ではあったものの、決して予想外ではなかった。

 実際、ラウルの話からして、ジュリオがあまり派手な人ではないだろうと、探偵は察していた。

 

 一応、他の部屋も調べたが、

 怪しい証拠は何一つなかった。



「何か見つけました?」


 別の部屋を調べ終わったラウルは、便所から出たばかりの探偵に聞いた。


「いや、何もなかったよ…怖いほどに。」


 その渋い声は、何もない廊下をさらに暗くし、ただでさえ居心地の悪い空気をより重いものにした。


 ――残る部屋は一つ。


 二人は微かな希望と共に廊下の奥へと歩き出した。


 歩くにつれ、一歩が少しずつ重くなり、その扉の前では最大限に達した。

 それは、そこには、少し前まで人がいた痕跡――三つの椅子があったからだ。

 

「さっさと済まさなきゃ…」


 ラウルは時間が無限でないことを思い出し、少し緊張し始めた。


 それを見て、探偵は目を細め、ドアノブに手を置いた。


《時間の無駄にならないと良いが…》


 そう思い、いや、願い、奇妙な音を立てながら扉が開いた。



※※※



 彼らが入ったのは特殊な部屋だった。


 カーテンが全て閉まっており、そこには椅子と机だけがあった。そしてそれを照らす唯一の明かりは、弱いランプだけだった。


 ラウルは唇を噛み、部屋中を探し回った。その慌てた様子を、探偵は残念そうに見た。


《おかしい…何もないはずがない!!》


 彼は謎のクローゼットを開けたが、中は空っぽ。

 カーテンを開けてみたが、外には何もない。

 壁を調べてみたが、秘密の穴や入り口がない。


《何もないはずが……》


 実際、ジュリオの家に証拠がなければ、ラウルはほぼ詰みと言っても良い。証拠無しでは、誰も彼の言うことを信じはしないからだ。


 それをどうしても認めるまいと、ラウルはひたすら何かを探し続けた。

 文字、

 血、

 爪や髪の毛、

 何でも良いから、彼は探した。


《絶対あるんだ…何かしら…》


 小さい頃から、諦めの悪い性格と言われ続けたが、それがまさに証明されていた。


 ため息をついて、探偵はその様子を見た。


 実際、証拠がなければ彼も相当困るはずではある。だって、本来の目的に使うべきだった時間が無駄になってしまうからだ。


 それでも彼は、

 時間がどうこうということより、ラウルに対する――可哀想という気持ちを感じ始めた。


「友のためとか言いながら、このザマは実に見苦しいな」と、見下しながら言った。


 しかし、ラウルは調査に熱中していたため、その言葉を聞かなかった。

 それを見て、探偵はなおさら落胆した。


 勝手に友の家に入って、

 勝手に友を疑って、

 勝手に"友のため"と言い訳をする。


 それは友のためではなく、ただの自己満足に過ぎないことを、ラウルは気づかなかったのだ。

 そして、気づかないだけでなく、それに熱中する様子は子供のようであって、子供以下でもあった。


 友情をよく理解していない者でさえ、それは明らかだった。



 あまりの失望に、帰ろうと、そう決めた時、


「…ん?」


 天井の穴から差し込む光が、テーブルの上の何かを際立たせていた。


《…紙切れか?》


 ラウルばかり見ていたせいで今まで気づかなかったが、部屋に唯一あるテーブルの上には、小さな、少し焦げたような紙切れが置いてあった。


《これは、今朝のものだろうか…》


 中身を確かめるために近づいた瞬間、彼は――


「誰かの気配…」

 

 ――を感じ取った。


 ラウルもそれに気づき、素早く振り向いた。

 そして、絶望しながら、彼は目を開いた。


「おいおい、冗談と言ってくれ…」


 その声、そのシルエットは彼にとって見慣れた人物のものだった。


 ――その輝く禿頭は、

 間違いなくジュニオールだった。

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