11節 その頃、あの三人は
ジュリオ・プルモンの部屋の外では、3人の男がトランプをしながら彼を待っていた。
口数の少ないロベルト・シントゥーラと、
一番まともで洞察力の高いウンベルト・アブドメン、
社交的で、強気なジュニオール。
彼らは長年の友人であり、経験を語り合ってきた仲でもあった。
※※※
出会いは数年前、彼らがアファロスの鉄鋼工場で働いていた頃だった。
あまりにも大きい体や、常に威厳がある顔のせいで、彼らに近寄る人は極めて少なかった。
起きて、働いて、寝て、そのお金を家族に送るだけの日常。実に退屈な物だった。
ただ、ある日、三人とも食事をともにしてから、その関係は少しずつ変わっていった。
気づけば、いつの間にか仲良くなっており、同僚から"三頭の大ライオン"というあだ名もつけられた。
友情が成長するとともに、彼らの生活は一段良くなった。――つまらない生活から救われたのだ。
しかし、
一年近く前、
ある出来事を機に、
彼らの人生はまた大きく変化した。
ある知り合いが経営するレストランで食事をしていたら、ある二人の男と喧嘩になってしまった。
体格では負けるはずはなかったが、その二人の戦略に気づけず、打つ手なしに三人は負けてしまった。
敗れた彼らに、その内の一人――78の伝説「ロメロ」は、ある提案をした。
『この国を変えないか?』
もちろん、彼らは余裕で拒否する事はできた。
できたはずなのに、彼らは何かに引っ張られ、協力することにした。
《ロメロと言う男には人を引き寄せる何かがあった。》
それが何なのかは、説明しようがなかった。
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「俺たち、ちょっと乱暴だったかな?」
ロベルトは腕をかきながら、ジュリオがいた部屋の扉を見つめていた。
彼は昔から、罪悪感を覚えると体が痒くなる癖があった。
「来るかどうか聞いてやっただけでも優しい方だろ。ナタリアの場合とかもっと、強引だったぜ。」と、ジュニオールが傲慢な口調で答えた。
ロベルトと違い、彼には罪悪感の欠片もなかった。
“その程度で傷つくヤツは死ね”をスローガンにする強いメンタルの持ち主だったからだ。
「そもそもジュリオの命令だったし。彼が逃げ出したんだから、仕方なかっただろう」
ウンベルトははっきり言って、アレハンドロに対しては特に何とも思ってなかった。
――まだ何かを判断するには早い。
これが彼の考えだった。
「――それでも、次からやり方を変えてみるのもありかもな」
ウンベルトはそう言い、ジュニオールは頷いた。
ロベルトも「そうだな」と言い、ジュニオールからカードを引いた。
考え方が全く違ったとしても、彼らは互いを否定せず、尊重し合っていた。
彼らの関係はまさに――理想的な友情関係と言えるものだった。
ロベルトに続き、ジュニオールはウンベルトからカードを引いた。
「上がりー!!」
彼は笑いながら、揃った手札を捨てた。
「クソ」
ウンベルトは微笑み、負けを認めた。
※※※
そんな会話をしている途中、ジュリオとアレハンドロが部屋から出てきた。
「では、彼らを紹介しよう――」
ジュリオはスムーズに会話を始めた。
《縛ったばかりの相手によくそんな話し方ができるな…》
流石のジュニオールも少し引いたが、ジュリオの事だからと思い、あまり気にしなかった。
結局、三人とアレハンドロは和解(?)して、事は難なく済んだ。
「君らはもう休んでいいぞ。あとは俺に任せろ」とジュリオは言い、家を出ていった。
勝手すぎる彼に文句も言えず、彼らはいつものように、「bar de bares(バーの中のバー)」に向かうことにした。
※※※
彼らは歩くだけで人の注目を浴びていた。
子供は言うまでもなく、いい年をした大人ですら、つい見てしまう。群れの中でひときわ目立つ存在だったのだ。
「これはこれで困るな。犯罪組織の噂が広まったら、真っ先に私達が疑われるだろう」
ウンベルトは人の目が嫌いではないが、それがいつもプラスに働くものではないことは知っている。
彼らが人に近寄られないのはそうだが、だからって人に無視されるわけではない。無視したくてもつい目に入ってしまう――その人一倍の威厳は、ある種の美貌と言ってよいだろう。
「しょうがない。これはそういう物だ」
ロベルトはとっくの昔に、自分の身長を受け入れていた。それによる影響も含めて。
神に授けられたとしか言いようがない、190センチを超える身長は誰もが欲しがるのに、与えられるのはごく一部。そして、欲しがっていない者に限って与えられる。
行き過ぎた美貌と同じく、これはある種の呪いだ。
少し長い距離を歩いた末、彼らはやっとバーに着いた。
「チリーンッ」と、扉を開けると同時に錆びかけた鈴が微妙な音を立てた。
「ラウル、これ鳴らねぇぞ」と、ジュニオールが言いながら入った。
いつものようにカウンターにいたラウルは、入り口の方を振り向いた。
またお前らか――とでも言うような、少し呆れた顔をした。
「後で直すから、そのままにしてくれ」
心底、彼はその鈴を直す気はなかった。
「いつものを3杯頼む」
ウンベルトがそう言うと、三人は手前にあったテーブルに座った。
カウンターにはいつもの老人が座っていた。酒を飲みながらも、彼らの話を注意深く聞いていた。
彼らが話している途中、グラスを準備しているラウルは、
「…昨日来た若者は、誰だったんだ?」
と、背を向けながら聞いた。
「あのベレー帽のヤツなら、ジュリオの知り合いだってさ。心配いらない」とジュニオールが答えた。
ラウルは小さく舌打ちをした。怒り――というよりも、悔しさに近い感情を込めたものだった。
何かを隠されていると分かりながら、険しい顔をして壁を見つめた。
「そうか… じゃあ、彼もジュリオの手伝いをするんだな。」と、彼は再び手を動かしながら聞いた。
「その通り。――彼はジュリオの手伝いをする。」
ウンベルトの言葉に、再び険しい顔をした。今度こそ、少し怒りが籠もっていたものだった。
しかし、その気持ちを抑え、彼らの注文をきちんと渡した。
「ほれ、"いつものやつ"だ。」
少し皮肉げに言って、彼はなるべく早く離れた。
彼らに近づくごとに、手が少し震えることに気づいた。その原因は彼自身も知らず、無視した。
カウンターのおじさんと一瞬だけ目を合わせてから、再び仕事に戻った。
そして三人の話をじっくり聞いた。




