0節 不平等社会 (プロローグ)
7月6日、ある父親は仕事に行く準備をしていた。息子は、父が珍しく朝から笑顔であることに驚いた。
無理もない。なにせ、この日は、彼と息子にとって特別な日だった。ついに自由になれる日だったのだ。いつものように、父親は息子に言った。
「すぐ帰ってくる。外に出るときは、絶対にマントをはずすなよ。」と、頭をちょっと強く撫でた。
息子はただうなずき、父親は家を出た。
この父と息子は、デド(指部)地区のパレクという小さな村に住んでいた。父は優しい女性と出会い、結婚して息子を授かった。なかなか貧しかったが、それでも幸せに暮らしていた。
ある日、母親が病で倒れた。病院に連れて行くお金がなかったため、数ヶ月のうちに亡くなってしまった。誰も彼女を助けてあげなかった。いや、あげられなかったのだ。
母の死後、父親は当局に抗議しようとしたが、知人たちに止められた。
ーやめておけ。
と、いつもなら励ましを言ってくれる人たちから冷たく言われた。
打ちひしがれた父は、息子とともに惨めな生活を送った。しかし、惨めであっても、家から愛が消えることはなかった。
ある日、畑で働いていた父は、ロメロ・オンブリゴという男に出会った。そう。伝説のあのロメロに。
彼は父と息子に新しい人生のチャンスを与えると申し出た。そして、亡き妻の復讐の手段も与えると言った。父はその申し出を受け入れ、1週間後に村を脱出した。
彼らはオンブリゴ(臍部)地区の中部にある遠い都市、アファロスに到着した。ロメロはその父に仕事を紹介し、身分を変える手続きを約束した。その約束は2ヶ月後に果たされる予定だった。
そして今日、ついにその2ヶ月が経過した。息子は喜びに満ちていた。父とともにやっと自由になれると信じていた。
※※※
もうすぐ12歳の彼は、いつものように家の掃除と買い物をしていた。
家は小さかった。台所、廊下、居間、浴室、そして小さな寝室。掃除は簡単だった。窓から外を見ながら、学校へ向かう他の子どもたちを見て少し寂しさを感じたが、明日から自分も行けるかもしれないと考えて元気を取り戻した。
11時前、彼は買い物に出かけた。体をすっぽり覆うマントを着ており、手首にあるノタムも隠れていた。
市場への道はよく知っていた。公園の近くにある小さな市場だ。彼は目立たないように静かに歩いた。
市場に着くと、買い物リストを確認し、欲を押さえながらも、必要なものだけを買った。
「本当にこれだけでいいの?」と、いつも彼を見かける女性が尋ねた。
「はい...これだけで大丈夫です。パパにこれだけって言われたから...」と、一応答えたが、彼は人との会話を比較的避けていた。
女性は彼の素直さに感動し、キャンディーをくれた。少年は感謝して家へと向かった。
ー優しい人もいるんだね。
と、内心で彼は嬉しく思った。運命の歯車が回り始めていることも知らずに。
すべて順調だったが、道中、石畳の隙間に足を取られて転んでしまった。幸い、キャンディーは汚れなかった。
そこら辺を通っていた男が彼を見て助けに来た。
「大丈夫かい?」とほほ笑みながら手を差し伸べた。
少年は手を取り、立ち上がった。しかし、気づかぬうちに手首が数秒間露出してしまった。
男はそれを見た瞬間、震えだし、無言で慌てて立ち去った。
少年は何が起きたのか分からなかったが、あまり気にせず家へと戻った。
※※※
家に着くと、父の帰りを心待ちにした。もうすぐ昼。いつも帰ってくる時間だった。
誰かがドアを叩いた。少年は目に期待を乗せ、ドアを開けに行った。予想通り父だった。少年は笑顔で迎えたが、父の顔には恐怖が浮かんでいた。何かがおかしい。
「ミゲル、ここを出るぞ。」と父は言い、強く息子の手を握った。
ー痛い。
という感情より何かが起きているという恐怖がミゲルを襲う。
二人は何も持たずに家を出た。父は説明もせずに少年を連れ出した。
「ごめん...」と走りながら父は小声で言った。言いたくなかったのに、その言葉が溢れてしまったのだ。
遠くから、警官たちが近づいて来るのが見えた。父はポケットから金を取り出し、少年に渡した。震える手で銀貨をいくつか落としてしまった。
「橋までまっすぐ行って、誰かにテントを借りるんだ。パパは警官と話してくる。何があっても、後ろを振り返るな。」
父は慌てて、手から溢れる銀貨を拾いながら言った。心ではもう遅いと分かっていたが。
少年は走ろうとしたが、恐怖に足を取られていた。警官たちは彼らを囲み、手錠をかけた。そして、人通りの少ない道へ連れて行き、父を殴った。
何人かの人達がそれを目撃したが、誰も何もしなかった。彼らには正義が働いているようにしか見えなかったのだろう。
ふん、とんでもない正義だ。
※※※
「どうしてバレたんだ?」と、目にあざを作り、傷だらけの父が尋ねた。
警官達のほとんどが彼を軽蔑の目で眺めた。あくまでも"ほとんど"だ。
「通報があったんだ。低層地区のノタムを持った子どもを見たってな。周辺を捜索して、あなた達が怪しいと見ましたよ。」と、耳を指で掃除しながら、警官が嘲笑気味に答えた。
少年はこれが自分のせいだと気づいた。手を取ってくれた男のことを思い出した。
少年のみっともない顔を見て、ある警官が近づいてきた。
「聞いたか、坊主?お前のせいだ。もっと賢ければ、父親は苦しまなかったんだぞ」と、憎しみを
込めて言った。
ミゲルは警官達を見た。
ー見下すような目。
それらが全て自分に向かっているように感じた。
奥に一人だけ、笑顔を見せない人がいたが、彼にとってはどうでもよかった。
彼らの顔が、自分の過去の記憶を少し思い出させた。
警官たちは笑い出した。
少年は自分を責め、涙を流した。
「聞くな!」と突然、父が叫んだ。
「お前のせいじゃない!悪いのは俺だ!もっと慎重であるべきだった。もっと従順であるべきだった。もっと良い父親であるべきだった...」
ーは?
少年はその言葉を聞いて、心の中で思った。
《違う、パパ。あなたのせいじゃない。悪いのはあいつらだ!悪いのはこの世界だ!この人たちのせいでママは死んだ。この人たちのせいで幸せに暮らせない。全部あいつらのせいだ...》
少年は激しい憎しみを感じ始めた。警官たちへの憎しみ。この街の人々への憎しみ。世界への憎しみ。
彼はこの世界がどれほど不平等で不公平かを理解したのだった。
警官たちは笑い続けていた。その間、少年は彼らを憎しみの目で見つめていた。その憎しみは少しずつ大きくなっていった。
※諸注意
おそらく、もうすでにお気づきであるように、現段階での僕の語彙力、説明力はとても低いです。
他の人の作品を読んだり、自分の欠点を振り返ったりしながら、改善していこうと思います。
また、第一章が終わる頃には大型編集を予定しています。一気に色々かわりますので、そこはご了承ください。
大型編集がなかった場合も、時間が経てば、色々な部分が少しずつ変わっていくかもしれません。そこもご了承ください。
それでは、続きも読んでくださると幸いです✨️




