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無限の巡力で人類最強!? ハイパワーロボットでステルスダンジョン攻略!!  作者: 弓屋 晶都


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第8話 コンカー

モニターの中央に映った細身のモンスター。

そのシルエットがぐらりと傾いで、静かに倒れた。


モニターを見つめたまま、俺と柊木さんが息を呑む。


今、誰に倒された? まるで確認できなかった。

あのモンスターよりも、さらに強いモンスターが現れるのだとしたら……。


「やあやあ、遅くなってすまなかったね」

すぐ近くから、明るい女性の声がした。

「今日は北区域の確率が高かったからねぇ。南側は手薄だったんだよ」

なんだ?

「コンカーさんですね!」

ああ……そうか、やっときてくれたのか……。

待ち望んでいたはずの救助を一瞬忘れるほどに、俺は集中していたらしい。

ほっとした途端、体のあちこちが軋んだ。

「いてて……」

「あっ、ごめんなさいっ、私ずっと薙乃さんに乗っかりっぱなしで……」

柊木さんはそう謝るが、捕捉液は徐々に固まり続けていて、重さこそ少し軽くなってきているが二人とも身動きが取れないのは変わらない。

ロボのモニターに、長い黒髪を一つに纏めたスラリと背の高い女性が映る。

女性はロボのカメラを見上げて言った。


「さて、それはどういう状況なのかな? 中には生存者が二人で間違いないね? 負傷はない? どんな手助けが必要かな?」


腰に手を当ててゆったり尋ねる女性の姿。緊張感を感じないその様子に、周囲にモンスターがいるとは考えにくいが、俺は尋ねる。

「モンスターはもう全て退治されたんですか?」


彼女は足元へ視線を落とすとキョロキョロと見回した。

「全部……ではないね。まだ下の階にもいくらか残ってる。けどまあ、それもあと十分もあれば片付くかな」

まるで下の階の様子を目視しているような仕草。この人にはモンスターの位置がわかるんだろうか。

「ああ、あれもまだ生きてるね。怖いかな? 潰しておこうか」

彼女は呟きのようなものを残して画面から消える。

そっとロボの腕を避ければ、日差しはいくぶんか夕焼け色に近付いていた。


パシャっと聞こえた小さな水音の方を見ると、さっきの女性が細長い剣を振って、鞘に納めるところだった。

あそこは、モンスター達が争っていた場所か。確かに、まだ息のありそうなのもいたな……。

俺は、ロボの両腕を下ろすと、両腕を支えにコックピットをなるべく地面に近づける。

女性は俺達のそばまで戻ると「ほわぁ」と息を漏らしてロボを見上げた。

「すごいなぁ。これって、ロボットだよな? これでモンスターと戦ってたのかい? いやぁ、戦えるもんなんだねぇ。ここはロボットを作る学校なのかい?」

話しながら俺達の方を振り返った女性が、ギョッとした顔になる。

「あーっ! くっついてるのか!! なんか二人ともやたらくっついてるなとは思ったんだが、そうだったか!!」

女性は「勘違いしてすまない」と俺達に謝って、ワイヤレスヘッドホンのような通信機で慌てて仲間を呼んでいる。


いや待て、勘違いってどんな……。


「ひぇぇ……」と俺の膝の上で柊木さんが小さく悲鳴をあげた。

動けないなりに、彼女は顔を俺から精一杯背けている。

そうだよな、こんな緊急時に男とベタベタしてたなんて思われるのは不本意だよな。

いたたまれないその気持ちは、俺も同じだ。


俺は空を見上げる。

日差しはやはり、少しだけオレンジ色がかっていた。

モンスターが現れたのは、下校時刻の少し前だった。

せめてもう少し後なら、校内に残ってた人数も違っただろうにな。


脳裏に一階のエレベーターホール前の惨状が蘇る。


「コンカーさん」と呼びかけた俺に、女性は「斎賀さいがと呼んでくれたまえ」と名乗った。

「斎賀さん、今回の被害状況は……、死傷者はどのくらいだったんですか?」

斎賀さんは視線をスッと足元に落とした。

「8人……、亡くなったと聞いている。まだ増える可能性はある」


「8人、ですか……」

あの一瞬で見た、床に倒れていた生徒の数。

それを思えば、8人以外が生きているというのは、むしろ奇跡のようにも思えた。


「来るのが遅くなって、すまない……」

斎賀さんは、俺達にもう一度謝る。

俺が答えるよりも早く、柊木さんが慌てて返事をした。

「いっ、いいえっ。きてくださって、ありがとうございますっ」

斎賀さんは、少し影を残した笑みを返した。

「あのっ、斎賀さんって、斎賀弥生さんですよね? 私、あの、ご存知ないとは思うんですが、同じ森江支局の……」

「柊木さんだよね? 今回僕は君の救出のために呼ばれたんだ」

斎賀さんは、俺のロボをまじまじと見つめながら、周りを一周する。


「私の……?」

柊木さんは不思議そうに呟いた。


「ああ、詳しくは聞かされてないけど、協会は君が大事なようだよ」

「……私が……?」

「このロボは君が作ったのかい?」

「ぁ……えっと……その……」

柊木さんが返答に詰まる。

このロボはある意味俺が作ったとも言えるし、咄嗟に自分だと答えていいのか迷っただけだろう。

しかし斎賀さんはそうは思わなかったのか、一瞬表情を険しくすると、ロボにポンと手を触れた。

途端、電源が切れたかのように、ロボはコントロールを失った。

次いで、柊木さんまでもが意識を失う。


これはマズイ。


こんなことなら、もう少し後ろに重心を持ってきていればよかった。

斎賀さんと会話しやすいようにとコックピットを前に出しすぎていた。


ギ、ギ、ギギギギギィ……。

金属の軋む音を立てながら、ロボはゆっくりと傾いてゆく。


「前に倒れます! 避けてください!」

「なんだって!?」

なんだってじゃない、お前がやったんだろう。

このままじゃ最初に潰れるのは柊木さんだ。

俺は、彼女の頭だけでも守れないかと精一杯彼女に覆い被さる。


くそっ、どうすることもできないのか!!





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