第7話 5センチ
モンスターは、俺達を見上げて数歩あとずさった。
が、次の瞬間にはグッとしゃがみ込む。
跳ぶ気か!
俺は右手の指先に配置したボタンを操作した。
今動かせるのは胸から上と右手首から先だけだ。
ロボットの右腕が上がる。
ガンッと音を立てて、ロボの腕にモンスターが激突する。
衝撃でロボが後ろに傾く。
普段は体を傾ければ済む重心操作も、こんなに全身固められていては難しい。
俺はロボの両腕を前に突き出して、なんとか姿勢を立て直す。
「っ、くそ、足じゃなくて車輪にしときゃよかったか」
モンスターとぶつかったロボの右腕はちょっと凹んだくらいで、まだまだ使えそうだ。これは柊木さんの能力がすごいのか……?
「す……、すごいです薙乃さん! 天才なんですか!?」
「それは今俺も、君に対して思ったよ」
最初に追っかけ回されてたパワー系モンスターだとこうはいかなかったかもしれないが、それも含めて彼女の運が良かったんだろう。
まあ、ランダムゲートに出くわした時点で不運ではあるが……。
モンスターは体勢を立て直すと瓦礫の山を跳ねるようにして登る。
俺はモンスターを見失わないよう、モンスターの位置に合わせて機体をあやつる。
上から来られるとまずいな。
材料の量的に、コックピット部分から上はほとんど剥き出しだ。
モンスターは崩れかけた6階から7階……最上階のてっぺんに飛び乗る。
これで俺達よりもあいつの方が高い位置を取ってしまった。
身軽で素早い動き。
数で上回っていたパワー系モンスター達も、結局はこいつのスピードについていけずやられたんだったな。
目を離すな。一瞬でも隙を見せたらやられる。
ヒュッと風を切る音がした。
居ない。
見失った!!
俺はロボの両腕を上げて屈ませる。
上からか下からかわからない以上、両方防ぐしかない。
ガゴンッッとすぐそばに強烈な衝撃。
下からだったか。
次の攻撃がいつ来るかわからない以上、コックピットを守る両腕を動かすことはできない。
が、これではこちらも外の様子がわからないままだ。
俺はエレベーター内部に付いていたモニター……今は俺の肘あたりにあるそれを見つめる。
エレベーターについていた監視カメラは今ロボの左腕につけている。
画角は90度以上はありそうだが、180度まではない。
腕と足を動かせない今、見回すためには腰部がわりの接続部を回すしかない。
俺は慎重に接続部を回して……。
ドンッ!!
と腹に響く衝撃は真上から来た。
見上げればロボの腕の間からモンスターの鎌が差し込まれている。
鋭い鎌の先が、俺のすぐ真上で腕の隙間からの西陽を反射してギラリと光った。
俺の頭まではあと5センチほど届かない。
「っ……」
柊木さんは怖すぎたのか、悲鳴を上げきれず息を呑んだようだ。
ロボの上に乗っていたモンスターが跳び離れる。
反動で体勢を崩すロボを右手のみで制御して、姿勢を戻す。
くそっなんとか敵の姿を……っっ。
俺は必死でカメラを動かす。
「捉えた!」




