第5話 補足液
っ、一体何が……!?
俺はクラクラする頭を持ち上げて、周りを見る。
ここは……エレベーターの中、だ。
扉の外には、さっきまでのモンスターよりも細身で、移動速度も早そうなモンスターが立っていた。
どうやら待ち伏せされていたようだ。
そりゃそうか。こっちは分からなくても、向こうはこっちの位置がわかるんだからな。
息苦しい圧迫感は、精神的なものじゃない。
俺は、正面から捕捉液を浴びたらしい彼女と、二人まとめて捕捉液に包まれていた。
彼女の肩から上だけが包まれずに残っているのは、死ぬと巡力が消えてしまうからか。
こんなの顔にかぶっちゃ息できそうにないもんな。
モンスター達の目的は、あくまで彼女を生きたまま取り込むことらしい。
彼女の巡力は、モンスターが待ち伏せしてまで手にしたいものなのか……。
エレベーターの扉は、内側の所々に捕捉液を巻き込んで、閉じようとしてはまた開くというのを繰り返していた。
どろりとした感触の捕捉液は、信じられないほどの重さで、俺の身体の自由を奪っている。
細身のモンスターがカマキリのような大鎌を振り上げてエレベーターに迫る。
彼女は吹き飛ばされた拍子に意識を失ったのか、俺の膝の上でぐったりしている。
さて、どうしたものか。
ここで彼女を起こしたところで、最後に怖い思いをさせてしまうだけなら、気を失ったまま殺される方がマシだろうか?
しかし、それを決めるのは俺ではなく彼女か。だが起こさないでほしかったと言われたところで後の祭りだからな。
逡巡する俺だけを目掛けて、大鎌が振り下ろされる。
ああ、なるほど。彼女を取り込むのに俺が邪魔なのか。
モンスターは、一度に二人の人間を取り込むことはできない……?
痛みの予感に、思わず全身に力が入る。
しかし、大鎌は俺に届く前に吹き飛ばされた。
細身のモンスターが振り返った先には、さっきのモンスター達が腕を広げていた。
細身のモンスターは捕捉液に包まれた大鎌をあっさり切り捨てると、もう片方の鎌を掲げてモンスター達に飛びかかった。
その後ろから同じような細身のモンスターが二体、加勢に入る。
ん……? 仲間割れか? それとも見た目が違う奴らは仲間じゃないのか?
まさか、どちらが食べるかで争ってるとか……?
確かに、彼女は一人しかいないしな。
俺はもう一度自分の状況を細かく確認する。
左手は捕捉液にべったりと包み込まれて指先すら動かないが、右手は折り畳み傘を握っていたため傘の中に入った手首から先なら少しは動かせそうだ。
とはいえ腕は動かせないので役に立ちそうではないが……。
腰から下はほとんどが捕捉液に直接触れている。
腰から上も、胸あたりまでは捕捉液まみれの彼女の体が乗っているためほぼ動かせない。
「君……」と呼びかけて、彼女の名札が捕捉液越しに少し歪んで見えていることに気づく。
『柊木』……ヒイラギと読めばいいのか。
「柊木さん」
俺は小声で呼びかける。




