第69話.飲ま飲まイェイ(後編)
適量のカルビスを口に含んだ彼女に、俺は続けて指示を出す。
「詩織さん、そのカルビスを口に含んだまま、口を大きく開けて顔を上に向けてもらっていいですか?」
「うん、こんな感じ?」
「あ、はい、いいです、そんな感じです」
そして俺は立ち上がり、彼女のその顔を上から覗き込む。
「うおっ!♡いい!♡凄くいいですよ、詩織さん!♡」
大きく開かれた美少女の口腔内に溜まる、白濁色の液体。
それは当に、俺の性癖ぶっ刺さりのプレイ、『口の中に溜めた”練乳”ごっくん』の如き絶景であった。
「詩織さん、それ、吐き出さずに全部そのまま飲んでもらってもいいですか?」
「ほのははほふほ?(このまま飲むの?)」
「はい、お願いします」
「ははっはよ(分かったよ)」
そう言った彼女は、顔を上に向けたまま一度口を閉じ、ごくんっと、大きく喉を鳴らした。
「ん、飲んだよ」
「そしたら、もう一度口を大きく開けて、軽く舌をべーって出してもらった後、最後に笑顔で『ごちそうさまでした』って言ってもらっていいですか?」
「うん、了解」
俺の申し出を素直に受け入れてくれた彼女は、俺の指示した通りに口の中を見せてくれた。
そうして、口の中にはもう白濁色の液体が残っていない事をしっかりと俺に見せつけた後……
「ごちそうさまでした♡えへっ♡」
と、彼女はその満面の笑みを俺に向けてくれた。
ん〜、パーフェクト!♡
「こんな感じでよかったん?」
「ええ、良いモノを見せて頂きありがとうございました///」
と、いけない、いけない。
白濁色の乳酸菌飲料で”疑似ごっくんプレイ”に興じている場合ではないよな。
このカルビスに関しては、俺にとっては高ポイントではあったのだが、かといって詩織さん本人に響かない事には意味が無い。
そもそも、唾液プレイの流れからは脱線してしまったので、これも不採用となった。
「となると、残るは……この100%オレンジジュースか」
これまた飲食店には定番の、平々凡々なドリンクメニューである。
「ん〜、ド定番メニューか……だからこそ、あまり期待はできないかな……」
「ふふん、和哉、ウチの店の100%オレンジジュースを舐めたらあかんよ!ウチのはね、業務用の既製品や濃縮還元のモノじゃなくて、ちゃんと生のオレンジを搾って作るホンマもんの100%ジュースなんよ!しかも、1杯につきオレンジを6玉も使用する超贅沢品なんやからね!」
「6玉も!それは凄いですね」
「更に更に、オーダーを受けてから搾り始めるから、出来立ても出来立ての、超フレッシュな状態で提供しております」
「へ〜、その拘りと手間の割には、値段が安くないですか?」
「そうなんよ、実はソレ、ぶっちゃけ赤字メニューでして……お姉ちゃんもウチも、ていうかウチの家族全員そうなんやけど、100%のフルーツジュースが大好きでね。そんで、コレだけは妥協できへんってお姉ちゃんが拘った結果、採算度外視の言わばサービスメニューが誕生したってわけなんよ」
「なるほど……んで、他の100%ジュースのメニューが無いのは何でですか?」
「ん〜とね、オレンジだと”赤字”でまだ済むんやけど、それ以外のフルーツだと”ヤバい赤字”になるから、経営面を考えると流石に難しかったみたい」
「フルーツって、結構いい値段しますもんね」
ふむ、詩織さんが100%のフルーツジュースが大好きであれば、期待薄かと思われたこのオレンジジュースが急に大本命に化けたな。
にしても、6玉も生搾りするとは凄い拘りだ。
今度来店した時は、是非とも注文してみようかな……
……生搾り
……100%
ん!?
その時、俺に電流が走った。
閃き、圧倒的な閃きがカラダを駆け巡る。
こ、コレだ!コレならイケるんじゃないか、おい!
「詩織さん、閃きましたよ!正解は100%オレンジジュースです!俺たちのドリンクメニューはコレでいきましょう!」
「ん?どしたん急に?」
「閃いたんですよ、詩織さんも納得のいくドリンクメニューを!」
「それが、100%オレンジジュースってこと?まぁ、確かにウチもこの店のオレンジジュースはお気に入りやけど、何でそれが”正解”なん?」
「決め手は、”生搾り”です!」
「ん?」
「つまりですね……」
俺は、詩織さんに自らの”閃き”の内容を説明した。
最初は普通に聞いていた彼女も、その内容を聞き終える頃には、目をキラキラと輝かせて喜びの感情が露わとなっていた。
「……ということです。いかがでしょうか?」
「……良い、めっちゃ良いやん、それ!採用!その案でいこ!」
よし、詩織さんとしてもこの上なく好感触なようだ。
俺の閃きに間違いがなくて良かった。
「……でね、和哉、そのドリンクについてなんやけど、ウチからの要望を1つ聞いてもらってもええかな?///」
「もちろん、何でも言ってみてくださいよ」
「実は、前々から構想してた事があるんやけど……///」
そう切り出した彼女は、俺にその”構想”の内容を説明してくれた。
「……って事をやってみたくて……どうかな?///感想を聞かせてよ。なんせ和哉は、変態女マイスターだから……その経験からして、この話、どう思う?」
「バカげてる……!」
「和哉……」
「バカな話だ……しかし、天才的だ……!いけるかもしれない……確かに……!」
「そ、そう?やってくれるの、和哉?」
「ええ、やりましょう、ここまで来たら、もうトコトンいけるところまでいきましょう!」
詩織さんの要望を聞いた上で、俺の中で”期待”が”確信”に変わる。
勝てる、勝てるぞ!……このドリンク勝負は、間違いなく俺たちの勝ちだ!
「いや〜、無事にドリンクメニューが決まりましたね!良かった〜、初日から躓かなくて。最初はどうなるかなって思ってましたけど、最終的に良い案も出たし、上出来じゃないですか!」
「うん、ありがとね、和哉!」
ふと店内の時計を見ると、時刻はもう23時を回っていた。
「じゃあ、とりあえず今日のメニュー決めのノルマは達成したので、これでお開きにしますか……」
「ちょっと待ってよ和哉……次は、和哉の番やろ」
「ん?何の話です?」
「和哉にウチの唾液プレイに付き合ってもらってるのに、ウチばっかりお願いを聞いてもらうんはフェアじゃないやん?」
「ん?」
「だから、今度は和哉のお願いをウチが聞いてあげる///」
「ほえ?」
「和哉がウチにヤりたい事、ウチにヤッて欲しい事、何でも好きに言ってみてよ……和哉の好きな”プレイ”に、今度はウチが付き合ってあげるよ♡」




