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第66話.初恋コンプレックス

「……ほえ?」

「だからウチな、和哉に恋しとるんやと思うんやけど……///」


「詩織さんが、俺に?」

彼女が俺に対して好意的なのは、その挙動,言動からも察しはついていた。


でもそれは、あくまでも”年下の男子”に対するからかい混じりの”かわいがり”の様なものだと、てっきり俺はそう思っていた。

そう、例えるなら、”友達の弟”的な距離感ぐらいに感じでいたのだが……


「か、からかわないでくださいよ///なんで詩織さんが俺なんかを///」

「からかってなんかないもん!///和哉がさっき言うたんやろ!『好きだと感じてたなら、もうそれは恋だ』って!それならウチ、今和哉の事めっちゃ好きやって思っとるから、この気持ちが”恋”なんやろ!///違うの?///」


「でも、俺……顔もこんなですし、頭も悪いし、運動もできないし、アソコのサイズも”えのき”だし、そのくせスケベだし……」


「そんなの、そんなの関係ないやん!///ウチは、和哉に頭の良さとか運動ができるかなんて、そんなん求めとらんよ!///人が人を好きになる気持ちは、そんな理屈じゃないやろ!///ウチはな、和哉が、和哉だから、和哉のことが好きなんよ!///……それじゃあダメなんかな?///」


ダメなんて事は、決してない。

理屈で語るべきではない、その”想い”。

いやむしろ、理屈で説明ができない”好意”こそが”恋”の本質だと、俺自身そう思っている。


きっとそうやって俺も、これまで”恋”をしてきたんだ……






「最初はね、面白いお客さんやなって、そんな感じやったんよ。ワンコみたいに、人懐っこい男の子やなって」


「ワンコですか?」

「そーやよ、ウチが近くに来るとな、目キラキラさせて、尻尾ブンブン振って喜んどったもんw」


「あはは、俺、そんなに分かりやすかったですか///」

「めっちゃ分かりやすかったよwあんな熱い視線向けられたら、鈍感なウチでも流石に分かるってw」


そーいや、円香と春子(アホ2人)にも早々にバレてたしな。


「そんで、和哉の方からよく話しかけてくれるようになって、ウチも段々気になるようになってな///気づいたら、ウチからもついつい和哉に話しかけるようになっとったんよ」


確かに、今にして思い返してみれば、ここ最近は俺から話しかける前に、詩織さんから声を掛けてくれる事の方が多かったように感じる。


「和哉……ウチね、実は和哉がお店に来てくれるのが、密かな楽しみになっとったんよ///」

ニコッと、彼女はあどけない照れ笑いをつくった。


いつもは、自分よりも大人びて見えているその美しい顔が、今は心なしか、同年代よりも幼いようにさえ見えた。


「和哉の姿を見かけたら、なんだか胸がホワホワってなるし、和哉の顔を見てたら、なんでかわからんけどドキッとするんよ///」

恋する乙女の表情(かお)で、俺を見つめながら語りかけてくる彼女。


「そんで、和哉と会う機会が増えるにつれて、なんでか、あの頃をよく思い出すようになったんよね」

「中学生の頃、ですか?」


「うん……なんでかな?もしかしたら、和哉に”彼”との思い出をを重ねてしまったんかもしれんね」

「……そうですか」


「ん〜?なに?和哉、まさか”彼”に嫉妬してんのw?」

「……はい、そうですけど」


「あははwカワイイwウケるw」

これまであんまり自覚する機会がなかったけど、どうやら俺はかなり嫉妬深い男のようだ。


「そんな嫉妬せんでも、今更”彼”に対しての”想い”なんてないよ……」


それは、きっと、嘘だ……

もしくは、無自覚にそう自分に言い聞かせているだけだ。


だって、さっき俺に”彼”との思い出話を語っていた時の詩織さんの表情は、今までで1番キラキラと輝いて見えたから…






「……多分、ウチは知りたいんやと思う。あの時の、あの気持ちの”答え”を」


当時の彼女が”恋”だと気づけなかった、その気持ちの答え。

詩織さんはケリをつけたいのかもしれない、自分の不完全燃焼だった”青春”に……


「……和哉が、教えてよ///」

「え?///」


「和哉のせいで今更思い出したんやよ、あの頃の事……だから、和哉が責任とって教えてよ、その”答え”を……///」


「お、教えてって言われても……///何をすればいいかなんて、そんなの、俺、分かりませんよ!///」

「そんなはぐらかさんといてよ///ほんとは分かっとるんやろ、ウチが何を求めてるか///」


グイグイっと、更にカラダを寄せてくる彼女。

近い、近い、近い!!!


ていうか、もう当たってる!

おっぱい当たってるよ、詩織さん!!!


「な、何って……///」

俺は、万が一の事を想定して念の為ポケットに忍ばせておいたコンドームを、左手で強く握りしめる。

むぎゅう。


遂に、来てしまったのか、コイツの出番が!!!






「てなわけで、ウチの唾液料理、和哉にもっと味わって欲しいんよね♡」


「……はい?」


「いや、ほら、中学生の時って、料理のスキルや発想もまだまだ足りてなかったし、自分で食材を調達するなんてこともなかったからさ、今にして思い返したら、もっともっと色んなモンを”彼”に食べさせる事ができたかもしれんなって。改めて考えたらね、ウチはソレだけがあの頃の心残りなんよ」

「は、はぁ……」


「あの時のあの気持ちの答え……きっと、和哉がウチの唾液料理を食べてくれたら見つかると思うんよ///多分やけど、大好きな和哉に、ウチの渾身の唾液料理を食べてもらって、あの頃の心残りを発散するんが、きっとウチの”絶頂条件”やと思うんやけど、どうかな?合っとるかな?」

「詩織さんがそう思うなら、多分ソレが正解ですよ、あはは……」


……少しでも、脱童貞を期待した俺がバカだった。

そうだよな、彼女だって一見まともに見えるけど、春子や咲夜と同じように性力の達人(スペル・マスター)なんだ。


非生産的な性衝動こそが、彼女たち変態女の本懐(ほんかい)

アブノーマルである事が必然なんだ。


彼女たちにとって、普通の男女の”恋愛”感情なんて、本来はありえないはず……

が、どうやら円香曰く、俺だけはそのルールから外れた例外的存在らしい。


春子や咲夜や絵美がそうであるように、詩織さんもまた同様に、俺に対して特別な感情を抱いてくれているのだろうか……


なぜ、俺なんかが”例外”として、彼女たちに選ばれるのかは、正直まだ理解(わか)っていない。

が、とりあえず今は……


「ウチが和哉に、最高の唾液料理を食べさせてあげるからね♡」


彼女の笑顔が見られるなら、その”特権”を甘んじて受け入れようと思う。






『”最高の唾液料理”とな……聞き捨てならーん!!!』

何やら聞き馴染みしかない声と共に、店の出入口のドアがバンッと開かれた。


『最高の唾液料理を作るのは、私たちだよ!!!』


ぞろぞろと店内に不法侵入してきたのは、4人の不審者だった。


おそらく、ドン◯で仕入れてきたであろう、戦隊モノ衣装風のチープな全身タイツを身に纏い、女性モノのショーツを、某仮面のように顔面の正面に装着した変態集団。


パンツである程度顔面が覆われているとはいえ姿はモロバレだったが、その格好からして自ら名乗りをあげる口上があると思われたので、とりあえずツッコんだりせずに泳がせてみようと思う。






『じゃあ、練習通り行くよみんな!』

『……ほんとにやるの?』

『任せてください』

『OKだよ!』


『近親相姦ドンと来い!誰よりも兄をオカズにし、誰よりも兄からオカズされた女!お兄ちゃんの”えのき”も”練乳”も童貞も、全部私のものなんだからね!兄をオカズに致す妹、ブラコンブルー!』


青い戦隊モノ衣装風タイツを着用し、青いパンツを被った女。

ていうか、青山円香だった……


『私にかかれば、この街全てがストリップステージ!///全裸で夜に咲き誇る一輪の華!///Hカップはエッチな(あかし)!///デカ乳輪だけど恥ずかしくないもん!///野外露出風紀委員、ヌーディストグリーン!///』


緑の戦隊モノ衣装風タイツを着用し、緑のパンツを被った女。

ていうか、緑川楓だった……


『累計自慰行為回数余裕の5桁!アナがあるからいれてみたい!棒状のモノは何でも咥える、異物挿入界の超新星!あなたの”えのき”も、私の性玩具(オモチャ)にしてあ・げ・る♡バイブレーション茶道部、インサートピンク!』


ピンクの戦隊モノ衣装風タイツを着用し、ピンクのパンツを被った女。

ていうか、桃瀬春子だった……


『女体こそ、神が人類に与えた美の結晶!この顔、この胸、このお尻、私のカラダはエッチなキャンバス!外もナカも、君の”練乳”で白濁色に染めていいよ♡ボディペイント美術部、アーティストイエロー』


黄色の戦隊モノ衣装風タイツを着用し、黄色のパンツを被った女。

ていうか、黄金井絵美だった……


……で、何やってんだコイツら?アタマ沸いてんのか?


本当なら全力で他人のフリをしたいところではあったが、一応は身内だと認めざるおえない関係性なので、とりあえず詩織さんに謝罪しておこう。


「詩織さん、ウチのアホ共が騒がしくてすみません……」

おそらくドン引きしているであろう、隣の詩織さんへ目を向ける。

チラッ。


「……か、カッコいい!!!」


あぁ、この人も、”あっち側”の人間なんだ……

詩織さん、すぐ隣にいるはずのあなたが、なんだかとっても遠くにいるように感じられます……

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