第63話.おねがい☆ブラザー
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「ありがとう御座いました〜、お兄さん、またね♪」
「ご馳走様でした、また近いうちに顔出しますね」
個人経営のファミリーレストランとは思えない程の高額な支払いを終え退店した俺たち。
紫藤和菓子本舗に寄って食後のデザートを買って帰る春子と店の前で別れ、俺たち兄妹はそのまま帰宅した。
春子のヤツ、1980円のクソデカパフェを食った後でよく和菓子屋に寄る気になれるな……
いや、今はあの腹ペコ虫の胃袋の強靭さに呆れている場合ではない。
一度は帰宅した俺と円香であったが、閉店時間の21時30分にめがけて、再び【アカサト】を訪れていた。
当然、仕事終わりの朱里さんを待ち伏せる為である。
彼女のシフトの時間を把握しているわけではないので、もしかしたら早上がりしている可能性もあるがどうだろうか……
店の裏側の物陰から従業員用の勝手口を観察すること十数分。
「じゃあ、お疲れ様で〜す」
来たっ!朱里さんだ。
うほっ♡私服姿も可愛いな〜♡
こりゃ至福の私服ですぞ〜♡なんつってw
「お兄ちゃん、鼻の下を伸ばしてる場合じゃないでしょ……」
確かにそうだ、俺はなにも彼女の私服姿を拝みにきたわけではない。
さぁ、唾液混入バイトテロ美人JDの攻略戦開始だ!!!
「お兄ちゃん、今回はいつになく乗り気なように見えるけどさ、もしかして実は年上好きだったりする?」
……
「さぁ、行くぞ円香!」
「図星なんだね……」
「朱里さん、お仕事お疲れ様です」
「ありゃ?お兄さんと妹ちゃん?どしたん?何か忘れもんでもあったん?」
「いえ、朱里さんに話があってきました」
「何、仕事終わりにわざわざ……あっ!もしかして!お兄さん、ウチに告る気なんやろ!」
……え?
「いや〜、そんな改まって言われたら照れるやん、やめてよ〜///ウチそういうの慣れてないしな〜///てか、そもそもウチは男女の恋愛的なもんがあんまよくわからんくて……あ、でも、お兄さんの気持ちは凄い嬉しいよ///ウチも、お兄さんのこと嫌いじゃないし……むしろ好きな方なんやけど///って、そーやけど、付き合うとか、そーいうんはナシで……ごめんね///」
まだ何も言ってないうちに速攻で振られてしまった。
こうして、俺の恋心はまた1つ終わりを迎えたのであった……
「じゃあ、せめて、俺と友達になって欲しいです」
「友達?もちろんいいよ!お兄さん面白いし。てか、もう既にウチら友達みたいなもんやんかw」
よし、開幕の初手で振られはしたが、とりあえず友達からスタートする事ができたぞ!
千里の道も一歩からと言うし、ここから徐々に親交を深めゆくゆくは……でゅふふ♡
「じゃあ、目的も果たしたし、帰るぞ円香」
「お兄様、余りにもおふざけが過ぎるとぶち殺しますよ……」
ヤバい……
コレは、マジで人を殺める事ができる人間の目をしている……
「ごめんなさい……」
「私が説明するから、お兄ちゃんはちょっと黙ってて!」
「朱里さん、ごめんなさい、私たちがあなたを待ち伏せていた理由は他にあるんです」
「ん?なんかあったん?」
「単刀直入に言います。朱里さん、あなた、お兄ちゃんの水や料理に、唾液を入れてますね」
「ええっ!?何の話!?急に何を言ってんの!?」
「とぼけても無駄です。私には分かってるんですよ」
……
「もしかして、名探偵?」
「いえ、超能力者です」
……
「お兄さん、妹ちゃんのアタマ大丈夫?」
「客に提供する料理に唾液を混入している人に、アタマの心配をされるのは流石の私でも少しショックだな……」
「実は、カクカクシカジカというわけで〜」
「なるほどね〜、そういう事やったんや〜」
ほんと、便利な8文字だよなぁ。
「とりあえず、ごめん、お兄さん!ウチの唾液入り料理食べさしてしまって!」
「あ、いえ、俺の事は全然大丈夫ですよ」
むしろ、朱里さんの唾液なら、最高の隠し味ですよ、でゅふふ♡
「2人とも、ほんま申し訳ないんやけど、この件は他の人には内緒にしといてほしいんよ」
胸の前で手を合わせて”ゴメン”というジェスチャーをとる彼女。
両腕によって中央へ寄せられた乳により、Tシャツの中央部にエッチな谷間のシワができる。
「このお店、お姉ちゃんのお店なんやけど、バイトの店員が料理に唾液を混入させてたなんて世間に知れ渡ったら、大変な騒ぎになってしまうと思うんよ」
確かに、朱里さん程の三ツ星美人が唾液を混入してくれる店だと知れ渡ったら、それはもうお祭り騒ぎになるだろう。
全国津々浦々の唾液フェチの紳士たちが、血眼になってこの街に押し寄せてくることは想像に難くない。
特に、爺やさんにいたっては、残りの人生において、1日の3食全てをこの店に依存するに違いない。
「いや、お兄ちゃん、”大変な騒ぎ”のベクトルがあらぬ方向へ逸れていると思うんだけど……」
「お姉ちゃんがイチから頑張って、地元で愛される人気店に育てたこの【アカサト】を潰したくはないんよ……だからお願い、この件はどうにか揉み消してください。その代わり、黙っててくれたら、ウチが何でもしてあげるから、ね……」
ゴクリッ。
今、”何でもしてあげる”って言ったよなぁ……ニチャア。
そうだなぁ、まずは手始めに、”揉み消す”だけに、そのたわわなお乳でもモミモミさせて頂きましょうかね、デュフフ♡
と、言いたい気持ちもゼロではないのだが……
「朱里さん、心配しないでください。俺と円香は別にあなたを脅すつもりもないですし、ましてやこの店を貶めるなんて事も考えてません」
「黙っててくれるの?」
「はい、もちろんです。この店の事は俺も好きですし……それに、なにより、朱里さんの事はもっと好きなので///」
「お、お兄さん///」
「うわっ、何コイツ、めっちゃガチ恋のテンションじゃん……ちょっとお兄ちゃん、なに妹の目の前でサラッとポイント稼ぎしてくれてんの!それも浮気だかんね!」
ちっ、一ツ星美少女がキャンキャンと煩いな……
「朱里さん、その代わりと言ってはなんですが、俺たちに1つ協力して欲しい事があるんですけど」
「そ、それって、やっぱりエッチな話かな?///」
”やっぱり”ってなんですか?
朱里さんも俺にそんなイメージがあるんですか?
まぁ、否定はできませんが……
「いや、そうではなく……妹の命を救う為に、協力をお願いしたいんです」
「妹ちゃんの命を救う……その為に、ウチは何をすればいいん?」
「単刀直入に言います。朱里さん、俺たちの為に”絶頂”してください」
……
「やっぱりエッチな話やん!///」
「あ〜、いや、そうだけど、そうじゃないといいますか……」
「お兄さん、ウチな、その……///そういう経験がないから、その、下手やと思うけど、できるだけ頑張るから、その……///優しくしてね///」
「……はい、わかりました。全力であなたを愛します!///」
「お兄ちゃんが、年上のお姉さん相手にバカみたいにメロメロになってる……ねぇ、お兄ちゃん、最近さ、他のヒロインに比べて妹の扱いが段々”おざなり”になってない?」
「そりゃあオメェ、7章まできたら仕方ねーだろ」
「開き直らないでよ!私は否定の言葉が欲しかったんだけど!」
……
「案ずるな、妹よ。この作品のメインヒロインはお前だよ」
「なんか凄く失礼なルビが振られてるような気がするんだけど……」
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