第53話.いっき当選 ドウテイ・ディスティニー
もうじき抽選会が開始される頃合いだったので、会場である1階中央広場へとやって来た俺と黄金井。
以前円香とミミ子のイベントで訪れたときも大勢の人がいたが、今回の群衆の数はそれ以上に感じられた。
『さあ、ご来場の皆様!豪華賞品が当たる大抽選会、まもなくスタートです!抽選券をお受け取りになりましたら、当選番号の発表まで大切にお持ち頂くようお願い致します!』
イベントの司会は、若くて元気な美人のお姉さんが担当のようだ。
俺達もスタッフから抽選券を受け取り会場へ入る。
俺が1918番、黄金井が1919番だった。
外から見ていても凄かったが、会場内の熱気はかなりヒートアップしている状態だった。
「みんな、俺と同じで妹のアホさに苦労してるんだなぁ···」
「いや、”妹のアタマがまともになる薬”を所望しているのは、おそらく先輩だけだと思いますけど···」
『それでは、抽選会を開始させて頂きます!』
ワーワー!パチパチパチパチ!
「うぉーーー!!!当たってくれーーー!!!」
「せ、先輩、凄い気合い入ってますね···」
『では、番号が呼ばれた方はステージに登壇して頂き、一言コメントを頂きたいと思うので宜しくお願いします!』
そして、抽選会が開始され、10等から4等までの発表が滞りなく終わった。
俺達2人の番号は、まだ呼ばれていない。
まぁ、そもそもこれだけの参加者がいるわけだし、当選しない方が当たり前ではあるのだが。
『さぁ、ここからはお待ちかねの上位賞の発表となります!ではまず、3等、コンドーム1年分です!え〜と、つまり1095個というわけですね!これは凄いですよ〜!』
ざわ···ざわざわ···
会場の男達がざわついている。
そりゃあそうだ。
日当たり3回を365連チャンの計算だ。
その過酷なハードスケジュールを前に、皆慄いている。
「先輩は絶倫みたいですし、普通にこなせそうじゃないですか?」
「使う相手がいないけどな、ははは···」
ボソッ
「···わ、私なら···ごにょごにょ···///」
「なんか言ったか?」
「い、いえ、何でもないです///お気になさらず///」
司会のお姉さんが、ステージわきのスタッフに呼び出しを受けている。
何か手違いでもあったのだろうか?
『あ〜、すみません!”1年分”とは、”365個”だったようです!私ったら、つい自分のパターンに当てはめてしまって···///いや~これは恥ずかしいな〜///』
どうやら、司会のお姉さんはかなりの”好きモノ”で、彼氏もしくは旦那さんと相当お盛んなようである。
『では、気を取り直して発表に移りましょう!3等の当選者は···810番の方です!おめでとうございます!どうぞステージまでお越しください!』
ステージに上がったのは、驚くことに春子だった。
「あれ、桃瀬先輩じゃないですか!緑川先輩に負けず劣らずと称されるだけあって、お美しいですよね!いや~今日は眼福な1日だな〜」
よりによってコイツが当選者とは···
『いや~、それにしても、とんでもない美少女が当選しましたね!会場の男性陣の皆様の顔つきがいやらしくなってますよ〜!ではコチラが、賞品のコンドーム1年分になります!』
「ありがとうございます」
司会のお姉さんからコンドームを受け取る春子。
『では、当選にあたって、何か一言をお願いします!』
普通に考えてとんでもない公開セクハラなわけだが、まぁ、相手が春子だから別にいいか。
「今後の物語の展開次第では、”彼”と使う機会があるかと思うので、365個全てを使い切ることを目標に日々精進していきたいと思います」
『おーっと!こんな美少女からまさかの”コンドーム365個使い切りたい宣言”を頂けました!大和撫子な容姿とは裏腹に、とんだドスケベ女です!いや~、女の私でもムラムラしちゃいますよ!くぅ~、”彼”さんが羨ましですね〜!』
「桃瀬先輩の言う”彼”って、誰のことですかね?」
「さ、さぁ、誰のことだろうなぁ···」
「ただ、”彼”は童貞のくせに絶倫なので、正直なところ365個ではなく1095個でも私は構わなかったのですが···」
『そ、それって、あなたとしては毎日3セットヤってもOKってことですか!?』
「···はい///私は何回でも受けとめます///」
『な、なんとこの美少女、毎日何回でもOKな、好きモノ超絶ドスケベ女でした!!!私と気が合いそうです!それでは皆様、このドスケベ女さんに盛大な拍手をお願いします!』
パチパチパチパチ。
「童貞のくせに絶倫···まさか」
チラッ。
「ははは、俺みたいに変なヤツが他にもいるんだなぁ···」
『では引き続き、2等の発表を行います!2等の賞品は、”妹のアタマがまともになる薬”です!』
「いよっ!待ってましたーー!!!」
「せ、先輩、大きい声出さないでくださいよ、恥ずかしいじゃないですか!」
『おやおや、どうやら妹にかなり苦労させられてるお兄さんが会場にいらっしゃるようですね〜!』
ドッと、会場に笑いが起きるが、コチラとしては冗談ではないのだ。
コイツら、他人事だからってバカにしやがって。
俺は今、この抽選会に生殺与奪権を握られていると言っても過言ではない状況だというのに···
『では、当選者を発表します!』
た、頼む!当たってくれ!!!
『当選者は···1918番の方です!おめでとうございます!』
「せ、先輩、凄い!当たりましたよ!良かったですね!って、先輩?」
「うぅぅ···うぅ···グスッ」
「先輩が嬉しさのあまり感極まってガチ泣きしてる!?」
『では、当選者の方はステージにお上がりください!』
「うぅ···ありがとうございます、グスッ」
『う、嬉し泣きしてる!?···もしかして、先ほどの気合い入ってたお兄さんですか?』
「はい。ほんと、ほんとありがとうございます!これで妹のアホさから解放されるかと思うと、嬉しくて···うぅ···」
『余程常日頃から、妹さんに手を焼いておられるみたいですね···』
「はい。ウチの妹は、面とカラダの見てくれだけは良いんですけど、それに胡座をかくように、とてつもなくアホで、底なしにバカで、そのうえアタマが完全に”アレ”なのでほんと困っていて〜」
と、そこまで口に出したところで、群衆の中の1人の美少女と目が合った。
ひどく見慣れた、なんなら毎日お目にかかる御尊顔。
愛しのマイシスター、青山円香さんその人であった。
円香ちゃんも、エオンに来てたんだ···
「というのは冗談で、ウチの妹は、賢くて、知的で、聡明で、博識で、アタマも当然まともオブまともなので、こんな薬必要無いわけなんですけど、ええ」
『じゃあ、当選を辞退されますか?』
「···いえ、ください。欲しいです、凄く···」
チラッと、恐る恐る妹へ目を向ける。
···
あぁ、できればもう1種類薬を処方して欲しいなぁ。
妹の瞳のハイライトを取り戻す薬を···
『それでは1等、”温泉旅館ペア宿泊券”の当選発表です!』
「当たって欲しいなぁ」
隣で手を合わせ祈る黄金井。
「どうせ当たるなら1千万円の方が良くないか?」
「だっ、だって、この流れで当たったら先輩と···///」
···?
「せ、先輩!もし私が当選したら、あの、その···一緒に行ってくれませんか、温泉旅行に!///」
「えっ!?」
「だ、だめ···ですか?///」
「あ、いや、その〜」
な、なんと返事すべきだろうか···
『当選番号は···』
ゴクリっ···
『114514番の方です!おめでとうございます!』
「あー、外れちゃった···」
その時俺は、素直に残念だと思った。
ズキッと、胸に突き刺さったこの”鈍い痛み”は、黄金井と過ごす温泉旅行を少しだけ夢見た、俺に与えられた罰なのかもしれない···
『当選者の方は、ステージにどうぞ!』
当選者は、これまた見慣れた顔だった。
ていうか、円香だった。
なんだこの抽選会は。
何かしらによって仕組まれているのではなかろうか?
と、思わずにはいられない。
『ご当選、おめでとうございます!ペア宿泊券ということですが、どなたと行きたいですか?』
「大好きなお兄ちゃんと一緒に行きたいと思います♡」
『兄妹仲良しなんですね〜』
「はい!2人でお互いをオカズに致し合うぐらい仲良しです!他にも、お兄ちゃんの”えのき”のサイズを測ってあげたり、カラダ中の汗を舐め取ってあげたり、この手をティッシュにして”練乳”を受けとめてあげたり、お風呂で私の”タワシ”と”壺”で洗ってあげたり〜」
『ちょっ、ストップ、ストップ!もう仲良し具合は十分伝わったので、この辺でお開きということで···』
「先輩、妹と何をやってるんですか···」
ほんと、何をやってるんだろうな、俺たち兄妹は···
『では皆様、お待たせ致しました!ついに特賞”1千万円”の当選者の発表になります!!!』
わぁーーー!!!
会場が大歓声に包まれる。
『当選番号は〜』
ゴクリっ···
『1919番の方です!おめでとうございます!!!』
「やっ、やったー!先輩、私、当選しましたよ!」
「ま、マジか···」
まさか本当に狙い通り黄金井が当選するとは。
ご都合展開ここに極まれりって感じだな···
『それでは、当選者の方はステージにどうぞ!』
「ど、どうも///」
ワーワー!!!パチパチパチパチ!
コングラッチュレーション…
1千万円の当選者ということもあり、ステージに上がった黄金井に、群衆の注目,視線の全てが集中する。
さながら、人気バンドのライブステージが如き様相だ。
これだけ大々的にその”服”を晒す事になるわけだから当然···
「なぁ、あの娘、服めっちゃピチピチじゃね?エロ過ぎだろ」
「乳袋ヤバっ!こんなの、オカズにしない方が失礼だろ!」
「あんなのもう、セ◯クスの擬人化じゃん···」
よし、狙い通り黄金井のボディペイントに対してエロい視線が多数向けられてるぞ!
そしてソレは、彼女自身も感じとっている様子だ。
「い、1千万円が頂けるなんて、夢のようです///」
彼女の愛くるしい顔が、興奮で真っ赤に染め上がってる。
このまま行けば、性力10000オーバーも時間の問題だろう、と思うが。
よし、俺もエロい目を向けて加勢するか!
うひょひょ、おわん型のおっぱいのカタチが丸見えでエロいですぞ黄金井殿、でゅふふ♡
「なにみっともなく鼻の下伸ばしてるのよお兄ちゃん···」
「ま、円香!?」
いつの間にやら隣にはマイシスターが。
「お前も来るなら最初から言ってくれれば良かったのに」
「せっかくの黄金井さんのデートを邪魔するのも悪いかと思ってね···」
いつもは平気で横槍を入れてくるくせに、なんかやけに気を回してくるな。
正直、かなり不気味だ···
「にしても、サイザ,ネコカフェ,ゲーセン,映画館であんなにはしゃいじゃって、とんだバカップルだったよ、お二人さんw」
最初から全部見られてたのか。
そう思うと、かなり恥ずかしいな、これ。
「映画館で盛りだした時は、流石の私もドン引きだったよ···」
「アレに関しては、俺もヤバいと思った」
「でもソレ以上に、サイザでの『あーん♡』が見ていて1番キツかったな〜」
「俺も、ソレを見られたのが1番キツいな···」
別に、ミラノ風ドリアに罪はないけども。
「お兄ちゃんたち、全然私に気づかなかったね」
「あぁ、まったくだ。いつの間にそんな隠密性に長けたストーキング術を習得したんだ?」
「お兄ちゃんが美術部に通ってる間に、爺やさんに教えてもらったんだよ」
あのクソジジイ、ほんとロクでもないヤツだな···
···今度俺も教えてもらおっと。
「んで、どうなんだ、黄金井はこのままいけばイけそうなのか?」
「うん、性力の上がり具合からして大丈夫そうだよ。9700···9800···9900···10000!OK、イったよ!」
多くの視線に晒されたことで”絶頂”を迎えた彼女は、その余韻の影響か惚けた顔でボーっとしている。
司会のお姉さんのとの話も、心ここにあらずといった感じで応じているようだ。
後は、彼女から体液を採取すれば今回のミッションは達成なわけだが···
って!?おい、アレ、マズいんじゃねーか!?
よく見ると、彼女の”水色のタンクトップ”の乳袋の頂点には、見慣れぬピンク色の”突起”が···
今まで”陥没”して隠れていたため、塗料が塗られていないその”突起”は、それはそれは鮮やかなピンク色で、水色の中ではひどく悪目立ちしていた。
黄金井のヤツ、イったら乳首が隆起して露出するシステムだったのかよっ!?
うひょひょ、とんだドスケベセンサーが搭載されてますねぇ、でゅふふ♡
···って、言ってる場合じゃねー!!!
本人は未だ惚けていて、その事実に気が回っていない様子だ。
行くしかねぇ、俺が!!!
黄金井のピンクの突起は、俺が守るっ!!!




