第51話.デートマン・ワンダーランド
次の日の金曜日、テスト期間前ということで午前の半日で学校が終わったので、計画通りエオンモールへやって来た俺。
黄金井は別途準備が必要な為、少し遅れて現地で合流する段取りとなっている。
時刻は13時05分。
3分程前に彼女から『もう少しで着きます』とメッセージが送られてきたので、そろそろ到着する頃合いだろうか。
「せんぱ〜い、おまたせしました〜!」
少し離れた場所からこちらに向け駆け寄ってくる彼女。
ぶるんぶるんぶるんぶるん。
夏希と同程度の推定Dカップが、弾むように揺れる。
むふっ、ナイス乳揺れですぞ、黄金井殿、でゅふふ。
その見事な乳揺れは非常に眼福ではあったが、しかし、その絶景は余りにも必然的な事象により引き起こされたものだった。
女の子が全裸で走れば、そりゃあ乳が揺れるのは当然だ。
彼女、黄金井絵美は、全裸でエオンモールへとやって来た。
そして、今日俺は、その全裸女とここでデートをするのだ。
「えへへ、今日は改めて宜しくお願いします、先輩///」
「お、おう···」
目の前の黄金井は確かに全裸ではあったが、当然ただのハダカというわけではない。
そもそも、タネを知っている俺でなけりゃあ、彼女が全裸であることには一目では気づくことはできないだろう。
現に、数人の客が今も俺たちの横を通り過ぎてはいるが、騒ぎになっていないことがそれを証明している。
それ程までに、彼女のハダカに描かれている”ボディペイント”の出来栄えは”完璧”と言えるものだった。
彼女のカラダに描かれているのは、ローウエストの紺色のデニム地のショーパンと、パステルカラーの明るい水色のタンクトップ。
デニムのショーパンは、ストレッチ仕様のものであれば、尻に張り付くような見てくれにも違和感は無いし、タンクトップも、この暑い時期には特に珍しくもないうえに、Tシャツみたいに裾がない分、カラダに密着しているように見えても違和感は少ないだろうということで、今回のボディペイントとして採用された。
胸は”陥没”しているおかげで突起が常時隠れているため、ニップレス無しでも問題はない。
下の方は、昨晩、黄金井が自力で頑張って剃ってきたので、余計な毛が排除された事により、前バリ無しのフルオープンスタイルで臨むことになっている。
”スジ”に関してはデニムの縫い目のデザインの一部として完全に溶け込んでいるので、よほどの際どいアングルから覗かれでもしないかぎり問題はないだろう。
そもそも、こんなところにボディペイントの全裸JKが居るとは誰も想定していないシチュエーションだ。
堂々としていれば、そうそうバレることはなかろう。
というのは、余りにも楽観的過ぎるだろうか。
「どうですか、先輩、その、私の”服”は?似合ってますか?///」
「あ、ああ、可愛いぞ、黄金井」
「えへへ、嬉しいです///」
「じゃあ、行こうか」
「あ、先輩···ん///」
俺に向け右手を差し出してきた彼女。
流石の鈍感野郎でも、コレの意図は直ぐに理解できたが···
「いや···エオンで手をつないでデートは恥ずいだろ···」
「なに言ってるんですか先輩、コレこそ若者の特権ですよ!はい、観念してください」
「しかしだな···」
「往生際が悪い分からず屋には〜、こうだ!」
俺の左腕に飛びつくように抱きついた黄金井。
むにゅ〜。
絵が描かれているだけの”生”の彼女の弾力が、俺の腕全体を包み込む。
ぬは〜、気持ちええんじゃ〜///
···じゃなくて!!
「黄金井、お前、恥ずかしくないのか!!」
「は、恥ずかしいですよ///恥ずかしいけど、でも、私、人生初のデートだし、その、あの、嬉しくて、テンション上がっちゃって///とにかく、JKは好きな人とのデート中は”無敵”なんです!」
確かに、俺だって浮き足立ってはいる。
よくよく考えなくても、妹を除けば俺も初めてのデートなわけで。
しかもお相手が、自分を慕うとびきりの美少女である。
こんなの、男子高校生だって、”無敵”になってもなんらおかしくはないだろう。
「···じゃあ、行こうか黄金井」
「はい!···あの、先輩、1つお願いが···」
「なんだ?」
「今日だけ、今日1日だけでいいので、”絵美”って呼んでもらってもいいですか///」
なんだ、そんなことか。
と思ったが、彼女にとっては”そんなこと”がそんなことではないのだろう。
「···行くぞ、絵美」
「はい、先輩!///」
「···その前に、俺からも1ついいか」
「はい、なんですか?」
「その···左腕に密着するのは勘弁してくれないか···”えのき”が暴発しかねない···」
「あっ、すみません///」
「じゃあ、改めて」
今度は、俺から左手を差し出した。
「はい」
彼女が差し出した右手を、俺の方から掴む。
もし”コレ”が神様の気まぐれだとしても、俺は、この選択を決して後悔はしない···
ざわ…ざわざわ…
「先輩、なんか、見られてますね···」
確かに、明らかな視線を感じる。
ただ男女が2人、手をつないでエオンの中を歩いているだけなのだが。
「もしかして、私の”服”、バレてますかね?」
「いや、もしそうだったら、もっと騒ぎになっているだろう」
確かに、黄金井のエチエチボディにやらしい視線を向けている男どもも何人もいるが、どちらかというとコレは···
ヒソヒソ
「なんであんなブサイクが、あんな可愛い娘と···」
「あの娘、あの男にいったいどんな弱みを握られているんだ···」
”美女と野獣”に対しての好奇の視線だった。
ボディペイントJKのカラダより注目を集める俺の顔っていったい···
「絵美、昼飯時だし、何か食べようか。好きな店選んでいいぞ。デートだし、今日1日は俺に奢らせてくれ」
「先輩、男前ですね〜。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいますね。そうだなあ···じゃあ、サイザリヤにしませんか?私、ミラノ風ドリアが食べたいです!」
「ん?せっかくだし、もう少し高い店でもいいぞ、ロイホとか」
「高校生のデートは、サイザの方がお似合いですよ。それに、昼食代が浮いたら、その分他のお店で2人で楽しめるじゃないですか」
健気だな〜。
円香だったら、このシチュエーションでは間違いなく、ロイホで1番高いメニューを選ぶだろうなぁ···
「···先輩、今、他の女の事考えてませんでしたか?」
「い、いや···」
黄金井、健気だが、恐ろしい女だ···
「やっぱり、”小エビのサラダ”は外せないですよね〜」
「だな」
サイザに入店し、メニュー表ではなく黄金井の胸に視線を向けながらメニューを選んでいたら、隣の席の男2人組からヒソヒソと小声が聞こえてきた。
ヒソヒソ。
「なぁ、隣の人見てみ」
「うおっ、マジか···」
マズい、ボディペイントがバレたか!?
「凄い変な顔してるwキモw」
「なんでこんなキモいヤツがあんなカワイイ娘連れてんだ?意味わかんね〜w」
俺の容姿に対しての話題だった。
···まぁ、慣れてるから別に気にしないけど。
ピンポーン。
黄金井が店員呼び出しボタンを押した。
「お決まりでしょうか?」
「すみません、この席、周りに煩い”ハエ”が飛び回ってるので、別の席に代えてもらってもいいですか?」
気不味そうな男2人を睨みつけながら、優しい口調でそう伝える黄金井。
「は、はい、ではコチラへ」
「先輩、あっちの空気のキレイな席でイチャイチャしましょうね♡」
男2人に見せつけるように、露骨に腕にしがみついてくる彼女。
むにゅう。
”幻聴”が聞こえなくてよかった···
「はい、先輩、あーん♡」
「いや、サイザで”あーん”はちょっと···」
「あーん♡」
···
「ほら、あーん♡」
「あ、あーん···」
「ふふ、先輩、美味しいですか?♡」
「うん、おいちい···」
「ふふふ♡」
黄金井を怒らせてはいけない。
この規律、やぶるべからず
「先輩、ネコカフェです!ネコちゃんたちと遊んでいきましょう!」
犬よりも猫派の俺からしても魅力的な提案だったので、快く了承し30分コースで入店する。
猫たちはとても人馴れしており、俺の膝の上にも直ぐに乗ってくれたのだが、黄金井の膝の上には乗ってこなかった。
「手からエサは食べてくれるのに、なんで乗ってくれないの〜」
おそらく、塗料の臭いがダメなんだろうなぁ。
その中でも、特におとなしい猫の一匹を抱きかかえ、黄金井の膝の上に乗せてやる。
「うにゃ~、かわいい〜///もふもふ〜///」
猫は、視覚情報と異なる黄金井の”服”の感触に驚いている様子だった。
不思議がってか、その”服”の”乳袋”めがけてネコパンチを繰り出す。
シュッシュッシュッシュッ。
ぷるんぷるんぷるんぷるん。
「あんっ///も〜、くすぐったいよ〜///」
おい猫よ、ちょっとそこ代わってくれよ。
「ほ〜ら、ネコちゃん、ネコジャラシですよ〜、ほれほれ〜」
猫の低い視線に合わせるように、俗に言う”女豹のポーズ”のような体勢で猫と遊ぶ黄金井。
それを後ろから眺める、俺。
絵美ちゃん、そのポーズだとね、後ろから”丸見え”なんだわ···
猫に夢中で忘れているのか、完全ノーガードの無防備状態である。
背後に壁があるとはいえ、俺も後方のガードに集中せねば···
「ほれ、ほれ、にゃは〜、かわいい〜///」
ネコジャラシの動きに併せて、おそらくは無意識にお尻を左右にフリフリと動かす彼女。
正直、たまりません···
しばらくの間、猫を堪能する黄金井を堪能し、そして退店後、俺は足早にトイレの個室へと駆け込んだのであった。
「先輩、次はゲーセンで勝負しましょう。負けた方が勝った方の言うことを1つ聞くということで」
「臨むところだ」
3本勝負ということになり、1戦目は”太鼓の名人”をやることになった。
「当然、スコアが高い方が勝ちということで」
「了解」
曲が始まり、画面に流れてくるマークに合わせて太鼓を叩くゲーム、のはずなのだが···
「先輩、どうしたんですか?てんでダメじゃないですか」
「いや〜そうは言われましても···」
隣でそんなに乳を揺らされたら、目を奪われて太鼓どころではないんだが···
彼女が軽快にバチを振るうたび、乳もリズムに併せて揺れること弾むこと。
ぷるんぷるんぷるんぷるん。
こんなの、”乳揺れの達人”じゃん···
”不可”を連発する俺と、”乳揺れの達人”の申し子たる彼女のスコアはどんどん離れていき···
『フルコンボでごわす!』
「やった!先輩、私の勝ちですね!」
必然、俺は敗北した。
「次はエアーホッケーで勝負です!」
明らか、いや~な予感はするが、了承しゲームを開始する。
「じゃあいきますよ〜、スタート!」
パックが天板の上を滑るように動き出し、バトルが始まった。
「えい!」 ぷるん
「えい!」 ぷるん
「せい!」 ぷるん
スコーン。
「やった!先制点!」
···コレはマズい。
「えい!」 ゆさ
「えい!」 ゆさ
「せい!」 ゆさゆさ
スコーン。
「やった!先輩弱いですね〜w」
コレ、お乳に目が奪われて、勝負にならねぇ···
「そいや!」 ぷるん スコーン。
「とぅ!」 ぷるん スコーン。
「せい!」 ぷるん スコーン。
「えい!」 ぷるん スコーン。
「よーし、あと1ポイントで私の勝利です!」
余りにも一方的な展開。
このままでは俺に勝ち目は無い。
かくなる上は···
「いきますよ先輩、コレで私の勝ちです!」
「絵美の好きなところ、その1!」
「え?」
「顔がカワイイ!」
「ほえ?///」
スコーン。
「よっしゃー!初得点!」
「せ、先輩、卑怯ですよ、そんな盤外戦術!」
「ふっふっふっ、勝負とは非情なものなのだよ!」
それに、お前の乳揺れの方がよっぽど卑怯だ。
あんなの見せられたら、”えのき”が何本あってもたらんわ。
「じゃあここからは俺のターンだ!いくぜ、絵美の好きなところ、その2!ゆるふわボブが似合っててカワイイ!」
「ふ、ふえ///」
スコーン。
「シャー!」
「その3!声が可愛くて、話しててドキドキする!」
「はにゃ///」
スコーン。
「その4!いつもめっちゃいい匂いするから、近くにいるとドキドキする!」
「ふひっ///」
スコーン。
「その5!いつも笑顔で明るいから、一緒にいて楽しい!」
「ふにゅ〜///」
スコーン。
「その6!そうやってすぐに照れるところもカワイイ!」
「っっ///」
スコーン。
「これで最後だ!絵美、さっきサイザで俺の為に怒ってくれて、正直嬉しかった···スカッとしたよ、ありがとう」
スコーン。
この勝負、俺の勝ちだ···
「も〜、先輩の卑怯者〜」
「ふっ、勝てばよかろうなのだ」
ざわ…ざわざわ…
「なぁ、あの娘の乳揺れ、ヤバくね」
「お尻もぷりぷりでエッチだ···」
マズい、いつの間にかギャラリーが増えてる!
”エロ”に群がる汚らわしいゴミ虫どもにボディペイントが気づかれる前に移動せねば。
「先輩、最後はあのレースゲームにしましょう!」
黄金井が指差した先には、マルオカートの筐体が。
アレなら俺もやったことがあるし、何よりアイテム運次第で勝ち目は十分ある。
「よし、それでいこう」
いざ筐体に座ろうとしたところを、黄金井に呼び止められる。
「先輩、ソッチじゃなくてコッチですよ」
彼女の隣には別のレースゲームの筐体が。
···頭文字G…だと。
「やったー!私の勝ちー!」
いろは坂で、俺のランエボは青のインプにぶっちぎられた。
「くっそ〜、赤甲羅さえあれば···こんな実力差がでるゲームはズルいだろ!」
「ふっ、勝てばよかろうなのだ、です!」
「はぁ〜、まぁ、負けは負けだ。ほら、何でも1つ聞いてやるから言ってみろ」
「そうですね〜、むむむ···」
しばらく考え込んだ黄金井だったが。
「せっかくなんで、もうちょっと考えて、後から改めてお願いしますね♡」
一時保留にされた。
そんな真剣に考えられたら、後が怖いんだけどなぁ···
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