第46話.コピー IN 2
「ふぅ···」
「どうですか、先輩、”スッキリ”しましたか?」
「あぁ、おかげさまでな」
黄金井に”見抜き”させてもらった後、美術部の部室を跡にした俺たち。
廊下の時計を見ると、時刻は20時近くになっていた。
流石にもう下校しないとマズいな。
「あ、先輩、最後にもう少し付き合ってもらってもいいですか?」
「ああ、別に構わんが」
オカズを提供してもらった恩に報いるのは”オナニスト”としては当然のマナーだ。
先立って歩く彼女についていく。
と、【印刷室】に辿り着いた。
校内で使用される大量の印刷物を一手に出力する部屋だが、ここに何の用があるんだ?
「ここって、鍵が掛かってるんじゃないのか?」
「美術部には合鍵があるんですよ。資料作成とか活動に必要であろうということで」
ポケットから鍵を取り出し解錠した彼女と共に、印刷室へ立ち入る。
2年半この学園で過ごしてきたが、ここに入るのは初めてだった。
コピー機というか、インクの臭いが充満している。
「ここで何をするんだ?」
「資料作成です」
「?」
そう言って彼女は、美術部の部室でそうしたように、スルスルと制服を脱ぎだした。
なっ!?
再び全裸になる彼女。
せっかく”スッキリ”したのに、こんなことされたら台無しだ。
彼女は、複数あるコピー機のうち、1番新しそうなものに近づき、スキャン用のガラス面に自らの胸を押し付けた。
な、なんだ?
黄金井がモニターの【カラー】のアイコンをタッチすると、コピー機が動き出す。
ウィーン。ガガガ。ピー。
次いで、今度は座るようにガラス面にお尻を押しつける彼女。
先程と同様にコピー機が動き出す。
ウィーン。ガガガ。ピー。
出力された紙を手に取り、そして、俺に手渡してきた。
「コレ、参考資料です。”答え”を見つける宿題の”ヒント”として活用してください」
渡された2枚の用紙を見る。
ガラス面に押し付けられた形状の、胸と、お尻+”アワビ”の画像だった。
すまん、黄金井。
こいつはヒントではなく、オカズとして活用することになるだろう···
「ふぅ···」
帰宅して自室で”ヒント”をオカズに致した後、机に向かい改めて”宿題”に取りかかる。
”女体”を題材とした”芸術”、その”答え”とは何であろうか?
う~む、難しいなぁ···
ピロン♪
スマホからREINの通知音が鳴った。
お、爺やさんから早速情報が配信されたな。
それは、俺が昨日の帰りしな爺やさんと契約したサブスク【楓ちゃんおパンツマガジン】の配信だった。
緑川の今日のパンツの色の情報を始め、明日のパンツの色予報,過去に着用したパンツのデータベースの閲覧,新規購入パンツのお知らせ等、緑川のパンツに関するあらゆるコンテンツが揃って月額たったの1000円という、お得で優良なサブスクである。
今度、春子と円香にも加入を勧めてみようかな。
「明日のパンツは、グレー75%,白20%か···」
···ふむ、不本意ではあるが、このスケベジジイに女体について助言を求めるのもアリか···
俺は、REINでメッセージを送信した。
『爺やさん、女体についてお聞きしたいのですが』
『なんで御座いましょうか?』
『爺やさんが、1番女体をエロいと感じる瞬間って、いつですか?』
『ズバリ、”ソープ”にて”マット”の準備をしている時です。自らの手でかき混ぜて準備したローションをカラダとマットに垂らし、それをカラダ全身を使ってマット全体に広げて馴染ませるのです。客の肌に触れても冷たく感じないように、人肌の温度まで近づけるのがミソですな。その時の、マットの上で滑る女体のマヌケかつスケベな姿こそ、まさに”エロ”そのもの!これから好きでもない男と肌を重ね合わせる為に、自ら準備に勤しむその様を、温かい湯船につかりながら眺めるあの瞬間こそ、プレイ中で最も昂る時と言っても過言ではありません』
『は、はぁ···』
『AVでもソープを題材にした作品は多数存在しておりますが、そのマットの準備シーンをカットしているものは私に言わせれば3流です。準備シーンはあるけど、接写だったり変なアングルからの描写ばかりのものは2流です。1流のものは、湯船につかりながら待つ客の視点を意識したアングルで撮影されているものになるのですが、これがなかなか無いのが現状でありまして』
まだまだ長文が続いていたが、面倒なのでここらで読むのを切り上げる。
このエロジジイ、その熱量をもっと別の分野で活かせばいいのに、もったいないばかりだ。
女体を使う、か···
爺やさんから送られてきた参考動画を見る。
マットの上を滑りながら全身でローションを馴染ませる美女。
···うん、確かにエッチじゃん。
その時、俺に再び電流が走った。
二度舞い降りる、”神の一手”。
女体で表現する···
この動きのように···
コレだ!!!
あのスケベジジイも、たまには役に立つもんだな。
バンッ!
黄金井に報告する為のメモを書き終えたタイミングで、俺の部屋のドアが勢いよく開け放たれる。
現れたのは当然、愛しの妹だ。
「お兄ちゃん、今から使いたいから、着用中のイカ臭いパンツを脱いでもらってもいいかな」
はぁ、まったくコイツときたら。
人が真剣に考え事をしているというのに、お気楽で羨ましいヤツだ。
「妹よ、俺をオカズに致すなよ」
「え!?お兄ちゃん、こんなしょうもないタイミングでタイトル回収すんの!?何のカタルシスも無いじゃん!?」
いや、そもそも、そのセリフではどう足掻いてもカタルシスを得るのは無理があるだろ···
「って、お兄ちゃん、その机の上の紙は何!?」
「ん?これは緑川が前ウチに来た時に回収したブツだけど···」
「その16話で回収してた”髪”の話じゃなくて、その女体のパーツが印刷された”紙”の方の話だよ」
「あぁ、コッチか。コレは黄金井から提供された資料だが」
「いや、どう見てもただのオカズじゃん」
まぁ、確かにオカズとして既に活用させてもらったけども。
「また他の女をオカズにしてる···この浮気者がー!!!くそー!尿道から指突っ込んで、奥歯ガタガタ言わせてやるからなー!!!」
とんでもなく物騒な捨てゼリフを吐き叫び、俺の部屋から飛び出して行った彼女。
アイツ、段々と負けヒロインムーブが板についてきたなぁ。
本当に円香が今作のメインヒロインなのか?
今のところ”カマセ臭”が半端ないんだけど···
「···ふぅ」
カエデちゃんの動画をオカズに改めてスッキリしたところで、バンッ!と再び俺の部屋のドアが開け放たれた。
当然、現れたのは円香だ。
この家、住心地は申し分ないのだが、いかんせんバカとのエンカウント率の高さだけはマイナスポイントだ。
しかも、自室が一番の危険地帯というのが救いようがない。
「ほらよ」
そう言って、ドヤ顔の円香が2枚の紙を手渡してきた。
なっ!?
黄金井が渡してきたブツと同様に、ガラス面に押し付けられた胸と尻+”アワビ”の画像が印刷されていた。
「お前、コレ···」
「別に、お兄ちゃんの為じゃないんだからね!///」
なぜに突然のツンデレ?
また”負けヒロイン要素”が増えたぞ、大丈夫か?
「私がオカズにされたいだけなんだからね!///勘違いしないでよね!///」
勘違いもなにも、実際お前がオカズにされたいだけだろ。
「···あれ?ウチのプリンター、確か故障してなかったか?どうやってコピーしたんだ、コレ?」
「近所のコンビニでコピーして来たよ!」
···妹よ、近隣で肌を曝け出すのは控えろ。
それはお前ではなく緑川の担当だ。
「さぁ、お兄ちゃん、見ててあげるから、さっさとコレをオカズにシコシコしなさい!」
はぁ、仕方ない、可愛い妹の頼みだ、兄として応えてやろう。
少なくとも、尿道から指を突っ込まれて奥歯をガタガタ言わされるよりは、妹の目の前でアソコをシコシコする方が幾分もマシだからな。




