第22話.汗が好きだと叫びたい
「円香、分かったか?」
性癖暴露を発動し、瞳が黄色になっているであろう妹に尋ねる。
「うん、ばっちり」
「よし。じゃあ一度撤退して、また緑川を俺の部屋に呼んでおかずを回収、もとい作戦会議をしよう」
「いや、今回は、会議は必要ないかな」
「え〜、作戦会議の口実がないと、緑川を俺の部屋に誘い込めないじゃん」
「性力の達人にも種類があるの。性癖がバレたくない人と、バレてもいい人。そして、彼女は後者のバレてもいい人の中でも、バレてでも自分の目的を果たしたい人だよ。」
目的を果たす為なら、手段を選ばないヤツってことか。
「だから今回は、彼女の望みを叶える為、彼女自身に協力してもらうよ」
そう言って円香は、勢いよく倉庫の扉を開いた。
「!?誰ですか!?」
「私は、あなたの願いを叶える女神よ」
「私の、願い···」
「迷える仔羊よ、この天使の導きに従えば、あなたに天国を見せてあげるわ」
女神なのか天使なのか、設定を練ってから話せ。
そして、今のお前のその笑顔は、彼女を破滅へと突き落とす堕天使のそれの様だと、俺にはそう思えて仕方なかった。
「改めまして、1年の青山円香と申します。宜しくお願いします」
「どうも、2年の紫藤歩夢です。こちらこそ、宜しくお願いします」
「結局、普通に挨拶するんかい」
「だって、体育会系って上下関係厳しそうじゃん。こういうのはしっかりしとかないと」
「うちのバスケ部は、全然そういうの気にしてないから安心して。私、下の名前で呼ばれる方が好きだから、歩夢って呼んで欲しいな」
「じゃあ、歩夢先輩って呼ばせてもらいます」
「私は、円香ちゃんって呼ばせてもらうね」
「ちなみに、隣のブサイク兼お兄ちゃんが、青山和哉です」
「俺って、ブサイクがメインでお兄ちゃんが兼役なの!?」
「はい、存じ上げてます。2年生の間でも有名ですから」
え!?俺って、後輩の女子達の間で有名なの!?
実は隠れファンが多いとか。
「3年生に、凄い個性的な顔の人がいるって有名ですよ。美術の先生が言ってました。『ピカソの抽象画を超えれるのは、彼しかいない』と」
「凄い、お兄ちゃん、ピカソだって!ちなみに、ピカソの抽象画ってどんな顔なの?」
スマホで検索して、円香に見せてやる。
「なるほど。でも、お兄ちゃんの敵じゃないね」
「はい、私も青山先輩の方が”上”だと思います」
「で、歩夢は、その、何をしてたんだ?」
「私は、みんなの汗が染み込んだビブスにしゃぶりついてました」
「···何で?」
「何で?···汗が好きだからですけど」
「なに分かりきったこと聞いてるの、お兄ちゃん」
え?これって、俺がおかしい流れなの?
章タイトルが”汗フェチバスケ部マネージャー”だったから、てっきり”汗を流して頑張っている美少女の匂いが好き”とか、”美少女の脇汗のシミに興奮する”とか、その類の話かと思っていたが、まさか食す方向性だとは思わなかった。
そもそも、それって”フェチ”にカテゴライズされるのだろうか?
「へんはいはひほほ、らんれわはひにほへをはへはんへふは?」
「しゃべる時ぐらい、しゃぶるのを止めてもらっていいか」
「あ、すみません、つい。先輩達こそ、何で私に声を掛けたんですか?」
「それは」
「あ、わかりました。先輩も私と同じで、可愛い女の子の汗をしゃぶりたかったんですね」
「へー、お兄ちゃん、シャブラーだったんだ」
シャブラーって、何?
俺はその界隈を知らない。
「仕方ないですねー、先輩にも分けてあげますよ。とりあえず、三沢先輩の、キメちゃいます?」
そう言って、5番のビブスを俺に手渡そうとしてくる。
「あ、いや、そういうのではなく」
「え〜!三沢先輩じゃダメって、めちゃくちゃ贅沢者ですね〜。それなら、袴田先輩なんてどうです?マイルドながらコクがあって、老若男女問わず魅了されること間違いなしの逸品です」
そう言って、今度は8番のビブスを俺に手渡そうとする。
「だから、その···」
「袴田先輩もダメ!?どれだけワガママなんですか!···分かりました。今日だけ、今日だけ特別ですよ···キャプテンの、湊先輩の超一級品、キメちゃってください。キレのある辛口!華香るスパイシー!とくと堪能しやがれです!」
そう言って、4番のビブスを半ば強制的に俺に掴ませた。
4番。
さっき見ていた中で、1番巨乳だった娘だ。
顔も、バスケ部の中では1番好みに思えた。
このままじゃ埒があかないし、覚悟を決めて一発キメてみるか。
案外、新しい扉が開かれるかもしれないし。
「さぁ、遠慮せず、どうぞ」
俺は今、新たなる性癖の扉に手を掛けている。
バスケ部キャプテン、4番、湊ちゃん。
あなたの汗、頂きます。
はむっ。ジュルルルル。
「どうですか、先輩?キレのある辛口、最後でしょ!」
俺は、手を掛けていた扉を閉ざし、開け放つことはなかった。
「実は、かくかくしかじかで〜」
「そうなんだ〜、円香ちゃん、大変なんだね」
「そういうわけで、歩夢先輩の願いを叶えて、絶頂してもらった後に、体液を頂きたいというわけなのです」
「私の夢が叶うなら、体液なんてお安い御用だよ!」
JKの体液がお安いとは、いったいどれ程の対価が必要になることやら。
「で、歩夢の望みって何だ?」
「ふっふっふっ、それはですね〜」
「マジか···結構大仕事になりそうだな、今回は」
「夏希ちゃんの協力はもちろんだけど、顧問の岡部先生にも協力してもらう必要があるね」
「かといって、事情を説明する訳にもいかないし、何か弱みにつけ込んで、脅しをかけるしかなさそうだな。脅しのネタは、俺が仕入れてくるとして、今日が月曜日だから、金曜日までに岡部を討ち取り、本番は今週の土曜日だ、いいな」
「土曜日に、私の夢が叶うって事ですね」
「ああ、絶頂させてやるから楽しみにしてな」
我ながら、凄いセリフだ。
「じゃあ、俺たちは今日はこれで帰るよ。お楽しみのところ、邪魔して悪かったな。続きを楽しんでくれ」
「ふぁい、よろひふおへはいひはふ」
スズズズズと、8番のビブスにしゃぶりつく歩夢。
口を窄めて勢いまかせに吸引しているため、鼻の下が伸び、頬が大きくコケているその様相は、さながら”ひょっとこ”を彷彿とさせた。
せっかくの可愛い顔が台無しである。
と、残念に思うのと同等に、女の子が性的欲求を満たす為に無様な面を晒しているということに興奮が抑えられない自分がいるのも事実だった。
学校からの帰り道。
茜色に染まる坂を、円香と2人、並んで歩く。
「お兄ちゃんさ、さっきビブスに染み込んだ汗は口に合わなかったみたいだけど、いつも私の汗が染み込んだブラとかパンツとかは、嗅いだり口に含んだりしてるよね。その差って、なんなの?」
それはもちろん、テイストとかスメルの問題ではなく。
「やっぱり、”愛”···かな」
「うえ〜、お兄ちゃんがデレたー!キモーい!」
俺たちを優しく包み込む夕陽があまりにも美しくて、つい柄にもないことを言ってしまった。
「お兄ちゃんの顔で愛を語るとか、全校集会だったら10キルは堅いよ」
言葉の暴力が過ぎる。
「お兄ちゃんからの愛に喜ぶのなんて、私しかいないから気をつけてよね」
わかったよ、そうやすやすとは使わないさ。
「それじゃあ、デレてくれたご褒美でもあげちゃおっかな」
そう言って、ジャージのファスナーを半分ほど下ろす。
ピンクのブラに包まれた、Fカップの谷間が顕となった。
谷間の形状はY字ではなく、巨乳である確固たる証明ともいえるI字の谷間。
2つの乳房がミチッと密着しており、今の季節だとムレムレになっていることは想像に難くない。
「人差し指、突っ込んで」
「え?」
「いいから、谷間にズブって挿れて」
そのI字の谷間をえぐるように、右手の人差し指を突っ込む。
ヌチャ。
人差し指全体が円香に包まれる。
指の全神経で、円香を感じる。
「抜いていいよ」
そう言われ、我に返り、指を引き抜く。
ヌチャ。
俺の人差し指には、円香の汗がねっとりと纏わりついていた。
俺は、円香からの次の指示を待つことなく、辛抱たまらずその指を口に咥え込んだ。
「どう、お兄ちゃん。私の味、おいしい?」
この汗の味をなんとか言葉にしたかったが、俺の語彙力では表現しきれない。
青春の味?初夏の味?恋の味?
どれもピンとこない。
ただ、これだけは分からされた。
俺は、妹のことを、心の底から愛している。




