第20話.6月が終わるまでは
梅雨入りしたのか、まだしていないのか、定かではないが湿度が高く、とにかくジメッとした蒸し暑い日の放課後。
俺は、この季節の毎年のお楽しみイベントである、”女子のブラ透け珍道中”に興じていた。
端的に言ってしまえば、ブラ紐が透けている女子の跡をつけてそれを眺める、というだけなのだが。
今回のターゲットは、目の前を歩く仲良しガールズ2人組。
左の娘は、水色。
右の娘は、桃色。
共に、パステルカラー。
まるで、この6月を彩る紫陽花のようだね。
ニチャア、と思わず笑みがこぼれる。
その紫陽花にへばりつくカタツムリのようにネッチョリとした視線を送っていたら。
「ねー、なんかさっきから、後ろのキモいヤツずっとついてきてない?」
「あたしも気になってた、マジキモいよね。早く行こうよ」
と言って走り去ってしまった。
じゃあな、名も知らぬ少女たち。
次見かける時は、何色の紫陽花が咲いているかな。
ニチャア。
ふと、自分が体育館の横まで透けブラを追いかけていたことに気がつく。
体育館の中を覗くと、うら若きティーンエイジャー達が、その若さを燃やして汗を流していた。
運動部特有の空気感が苦手な俺だったが、たまには”玉つき乳揺らし部”でも見学していくかと思い、体育館に足を踏み入れた。
「ナイスシュー」
「イン警戒し過ぎて、アウトが疎かになってるよー!」
「次、ディフェンス,オフェンス交代して」
かしましい声が、体育館内に響き渡る。
その空気の振動と熱に気圧されそうになっていると、”ハシゴで登る体育館を見下ろすナゾのエリア”に円香がいるのが見えた。
珍しく、体操服の上下ジャージ姿だ。
美少女の上下ジャージ姿ってなんかエロいよな、と思いながら、ハシゴを登りナゾのエリアへ向かった。
「よう円香、どうしたんだ」
「お兄ちゃんこそ、こんな陽キャ空間によく立ち入れたね」
確かに、陰キャを近づけない結界めいたオーラがあるのは確かだ。
「俺は、たまには”玉つき乳揺らし部”の見学でもしようかと思ってさ」
「何それ?···あっ、もしかしてお兄ちゃん、女子バスケ部のこと”玉つき乳揺らし部”ってヤバ過ぎる呼び方してる?いろんなところから怒られるよ」
「女子バスケの日本語表記ってそうじゃなかったか?」
「そんなわけないでしょ。”バスケ”は籠球だよ。仮にそうだったとして、男子バスケ部はどんな呼称になるの」
「男子バスケ部は男子籠球部だろ、何言ってんだお前?頭ワいてんのか?」
「···もういいよ」
「で、次のターゲットはどの女だ?4番か?7番か?11番でもいいなぁ」
「お兄ちゃん、おっぱいの大きい順に指名してるだけでしょ」
「流石円香、よくわかったな。それも超能力か?」
「そんなバカみたいな超能力、あるわけないでしょ」
いや、お前の実際の超能力だって、結構バカみたいな設定だと思うけど。
なんだよ、”相手の性癖を誤解なく理解できる”って。
「次のターゲットは、あの娘よ」
さてさて、どの乳揺らし娘かな、と円香が指差した先に目を向ける。
そこは、コート内ではなく、その少し隣のエリア。
ショートヘアーの小柄な少女だった。
「女子バスケ部マネージャー、2年、紫藤歩夢。彼女が私たちの次のターゲットだよ」




