第16話.あなたと私
放課後、青山家、俺の部屋。
「〜という作戦で行きたい、もといイかせたいと思う」
「なるほど。だから先に私をパーティーに組み込む必要があったのね」
「パンティーが食い込む?何言ってんだお前?頭ワいてんのか?」
「あなたの耳が腐ってるのよ」
俺の部屋には、俺と緑川だけ。
円香は不在。
つまり、2人きりだ。
円香のやつ、作戦会議の主催者のクセに、ドタキャンかましてどっかに行きやがった。
そんな円香のお膳立て?もあって、こうして緑川と自室で2人きりという状況ができあがってしまったわけだ。
円香以外の女を、初めて部屋に入れたな。
しかも、それがHカップデカ乳輪美少女の緑川だとは我ながら驚きだ。
円香との一件が無ければ、”青山家以外全部沈没”クラスの天災でもない限り、あり得ないシチュエーションだ。
彼女は、俺の学習机に備え付けられた椅子に腰掛け、スカートで惜しみなく脚を組んでいるので、目のやり場には困らない。
あの緑川楓と自室で2人きり。
学園の男子の誰もが羨む夢のような状況。
しかし、これは紛れもなく現実だ。
頬を自ら摘む必要もない。
俺の股間で苦しそうにテントを張るその支柱から伝わる痛覚が、夢ではないぞと俺に訴えかけてくる。
これは、もう、あれだ。
実質的に、性行為と同義だろ。
将来、同窓会の場で、いつ童貞を卒業したかと問われたら、17歳の今日、緑川楓相手だったと高らかに宣言しようと思う。
他のヤツに真偽を確かめる術は無い。
俺がヤッたといえば、俺の中ではそれが真実となって昇華されるのだ。
今日が、俺の、緑川楓記念日だ。
「それにしても」
キョロキョロと辺りをを見回す緑川。
「あなたにしては、部屋が綺麗ね」
「それはあれだ、円香が毎日のように掃除してくれてるからな。ゴミ箱の中も基本からっぽだ」
使用済みテイッシュが、2日以上この部屋に残っていたことは無い。
その後の行方は、円香のみが知るところだ。
「って、あなた、あれ!あれが何でここにあるの!?」
「そりぁ、青山家の家宝だからな」
額に入れて仰々しく飾られた、緑川楓のサイン入りの”あたシコ許可証”である。
「あれ、円香があの時ビリビリに引き裂いて、破り捨てたはずじゃなかったの!?」
「頑張って修復しました!」
「繋ぎ目や損傷が全く分からない。なんという才能の無駄遣いなの、ってそこじゃなくて、外しなさいよ、あんなもの!」
「断る」
「円香に見つかったら、また怒られるわよ」
「ふ、円香とは今朝の時点で既に和解済みだ。これを見よ!」
ポケットから紙を取り出し、”敗訴”のように掲げる。
「読み上げな、デカ乳女!」
「なになに、楓シコ許可証?」
美しい顔の眉間にシワが寄る。
「私、青山円香は、青山和哉が、楓さんをおかずにシコることをここに許可しますぅ!?何よコレ!」
「円香が折れてくれたんだ。確かに、楓さんをおかずにしないなんて無理があるか、ってな」
「だからって、私のシコ許可を勝手に出すな!そんなもの、私自ら破り去ってやるわ!」
そう言って、ベッドに腰掛ける俺に勢いよく詰め寄る緑川。
俺が意図的に体勢を崩したことで、彼女が俺をベッドに押し倒したような状態になった。
「いやん、優しくしてね」
ポッと頬を赤らめはにかむ、俺。
「キモっ!」
そう言って、鮮度バツグンのエビのようにビュンと後退った緑川のエロい尻が、クローゼットの扉にぶつかった。
ドサドサドサ。
反動で開いた隙間をこじ開けるように、俺の秘蔵のコレクションが溢れ出した。
マズい!
「いてて···何これ?」
ぶつけたそのデカい尻を擦りながら、緑川があるモノを拾い上げる。
全長15cmぐらいの、筒状で、ピンク色。
片側だけに穴が空いており、非貫通式。
ぷにぷにで、ふわトロ名器なそれは。
紛れもなく、オナホだった。
「何で、このよく分からないぶにぶにした物体に、円香の写真が貼り付けてあるの?」
それは、円香の1/8スケールの全身写真を、ラミネート処理してオナホに貼り付けた、俺の夜のパートナー”ポケット円香ちゃんバージョン2.0”だった。
「緑川、この世にはな、知らない方が良いこともあるんだ」
「?···じゃあ、この円香の顔写真は何?」
そう言って彼女が手に持ったのは、円香の等身大スケールの顔写真である。
目を瞑り、口を開き、舌をべーっと出している、そんな顔写真を、透明なアクリルパネル2枚で挟み込んだ、そんな代物だった。
「なんか、表面が少しベタついたような感じで、ほのかに黄ばみもあるし、なにより、何故かイカ臭いんだけど···」
それが、俺の夜のパートナー”ぶっかけ円香ちゃんバージョン3.2”の状態だった。
ちなみに、その顔写真をどうやって撮影したかというと、「舌の写真を撮影したら運勢が占えるアプリがあるから、ちょっと試してみようぜ」と適当な嘘を言い、スマホで本人の真正面から堂々と撮影したものだ。
このようなシチュエーションでも、広義では盗撮扱いになるのだろうか?
まぁ、今になってしまえば、頼めばノリノリで好きに撮影させてくれるだろうが、騙して入手したというところに付加価値を感じている俺は、目の前にいる露出狂女よりも、どうしようもない人間なのかもしれない。
「···まぁ、なんだっていいわ」
呆れた面持ちの緑川は、さっき飲み干していた、机の上に置いてあるレモンティーの空の紙パックをゴミ箱に投げ入れた。
「要件が終わったなら、私は帰るわ」
と言って、部屋を出ていった。
やっと邪魔なヤツが帰ってくれたか。
俺はこれからお楽しみタイムで忙しいのだ。
まず俺は、今しがた緑川が腰掛けていた椅子に頬擦りをする。
ほのかな温もりが、彼女がここにお尻を乗せていた事実を、俺の肌に伝えてくれる。
でゅふふ、緑川のお尻の温もり。
その間接体温が冷めるまで、暫くの間目を瞑り堪能する。
俺の体温と緑川の体温が交わったところで、次はゴミ箱に目を向ける。
彼女が帰りしな捨てていった、レモンティーの空の紙パックが残されている。
でゅふ、緑川のレモンティー。
なんと甘美な響きだろうか。
そのお宝を手に取り、紙パックの上部をガバっと開く。
中には、ストローで吸いきれなかった、小さじ1/2程度の、”緑川のレモンティー”が残されていた。
俺は、その紙パックの開口部に口を付け、一滴残らず腹の中に収めた。
緑川のレモンティーが、俺自身の体組織を構成するものの一部として取り込まれたことに、得も言えぬ満足感を感じる。
紙パックから引き抜いたストローを見る。
ギザギザの折れ曲った部分に、ガシガシと噛んだ噛み跡が残っている。
緑川のヤツ、ああ見えて、結構お行儀が悪いな。
その”使用済み”感により価値が高騰したそれを、しゃぶるように口に含む。
でゅふでゅふ、緑川と間接キッス。
そして、緑川が付けた噛み跡を、慈しむように舌で入念になぞった。
ありがとう、緑川。
お前が自分のゴミを持ち帰るタイプの女子じゃなくて本当に良かったよ。
俺が作戦を説明している間、 緑川が何度か髪を搔き上げていたことを思い出し、床に這いつくばる。
あるモノを探すためだ。
···あった。
この長さ、間違いない。
円香のは肩にかかる程の長さしかないのに対して、緑川のそれは腰程度まで長く伸ばされている。
間違いなく、これは、緑川の髪の毛だ。
丹念に探した結果、合計3本の遺留品を入手することができたので、そのうちの2本を机の上に置き、1本を手に持ったままベッドの上に寝っ転がった。
つい先程まで緑川の身体の一部だったその長い黒髪を、指に巻きつけたり、口に含んでみたりと弄びながら、あの臭いを思い出す。
俺が作戦説明を開始する直前、トイレに行くフリをして玄関に向かい嗅いだ、緑川のローファーの匂いだ。
臭くはないが、決して良い匂いとは言い難い。
”JKが1年ほど履き潰したローファーの匂い”としか形容できない、そんな匂い。
その芳しい匂いを想い返していると、勢いよくドアが開かれた。
緑川のヤツ、戻ってきたのか?
ちっ、俺は今からお前をおかずに楽しもうってところなんだ。
さっさと帰って独りで露出でもしてろ。
と思ったが、現れたのは円香だった。
「お兄ちゃん、とりあえず、パンツ脱いでもらっていいかな?」
俺の妹は本当に変態だな。
少しはお兄ちゃんを見習ったらどうだ。
俺は、咥えていたストローをゴミ箱に投げ入れ、いつものようにため息をついた。