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第9話.深緑のチェイサー

活動する時間帯の性質上、制服姿のままでは宜しくないと判断し、お互い極力地味めな私服に着替えることにした。


こんな時、服選びのセンス皆無な俺の味方になってくれるのが、天下の大手アパレルショップのウニクロだ。


俺みたいなヤツでも、それっぽいそれなりの雰囲気に仕上げてくれる。


黒寄りのグレーのジャケット(4980円)に袖を通し、自室を出た。






その同じタイミングで、同じく着替えを終えた円香と廊下で鉢合わせた。


「へー、まともな格好してると、お兄ちゃんも男の人みたいだね」


どんな格好をしていようと、俺は常に男の人だ。


こいつ、もしかして俺のことを、デフォルトでオス猿かなんかだと認識しているのか?






「そう言うお前は、なんて格好をしているんだ」


「え?目立たない、地味めな服装だけど」


円香のチョイスは、薄手の黒の縦縞ニットと、ブラウンのロングスカート。


その着こなしたるや、彼女を前にしては、読者モデル達も皆、足並み揃えて裸足で逃げ出すことであろう。


縦縞ニットのその特性も重なり、これでもかという程強調された巨乳に目を奪われる。


目を凝らすまでもなく、Fカップを包み込むブラジャーのそのシルエットが、ニット越しに浮き上がっている。


念の為2回抜いてスッキリしたはずだった下腹部が、再び熱を帯びるのを感じた。






3回目を抜きたいと円香に交渉してみたが、手配していたタクシーが到着したので、渋々出発せざるおえなくなった。


「お願いしまーす」


「あいよ。お、えらいべっぴんさんだね〜」


「えへへ、よく言われます」


話し好きそうな、気さくなおじさんの運転手だった。


「美女と野獣だ」


「それもよく言われます」


客商売には、残念ながら向いてなさそうだ。






目的地の廃ビル周辺の適当なショップの住所を伝えると、タクシーが走り出した。


「お二人はカップルかい?」


「そんなわけないじゃないですか。兄妹ですよ、兄妹。こんな男が私みたいな美少女と付き合える世界だったら、運転手さんの奥さんはハリウッド女優ですよ」


「ははっ、そりゃ凄い世界だ」


なんかよく分からん意味もオチも無い会話を聞き流しながら、隣に座る円香の乳に視線を送る。


既に薄暗い車内ではあったが、シートベルトによって左右にくっきりと分断されたその塊は、個々の存在をより際立たせていた。


それはまさに、パイスラッシュそのものだった。


良かった。車内がまだ明るい時間帯だったら、このいかにもスケベそうな運転手が後部座席の絶景に気を取られ、事故を起こしていたかもしれない。






「おじさんにも君たちと同じぐらいの歳の息子がいるんだけど、君らも高校生かい?」


「はい、江口杉(えぐちすぎ)学園の生徒です」


「あ〜、数年前まで元女子校だった所か。未だに女子生徒の比率が高いからって、息子も最初は行きたがってたなぁ」


当然、俺はその動機で入学を決めている。

円香は俺についてくる形で同じ学校を選択したが、性力の達人(スペル・マスター)の条件が女子限定であることを思えば、この点に関しては素直にラッキーだったと思う。






「今日は兄妹でデートかい?仲良しだね〜。お父さんとお母さんは?」


何でもずけずけと聞いてくるなぁ。


「両親は宇宙飛行士なので、ずっと不在なんですよ。今頃は400km上空にいますね」


父さんと母さん、数年前に転職したとは聞いてたけど、そんな遠くへ行ってしまったのか。

通りで、しばらく見かけてないわけだ。


高校生の兄妹2人が戸建て一軒家に2人暮らしは、何か理由があるとは思っていたが。






車窓から夜空を見上げ、あの星々の光のどれかにいるかもしれない父と母の姿を懐かしんでいたら、タクシーが目的地に到着した。


「ありがとうございまーす」

と、円香は素早くタクシーから降りた。


「あ、おい、支払い全部俺持ちかよ!」


「後でおかず提供してあげるから、それでチャラってことで、ヨロ!」


「おかず···?」


「あ、いや、妹は惣菜屋さんでバイトしているので、僕が大好きな肉じゃがをよく貰ってきてくれるんですよ〜ははは」


適当な嘘で誤魔化しつつ支払いを済ませ、タクシーを後にしようとしたところで。


「お兄さん、これ、よかったら、要らないかもだけど」


タクシー会社の広告が封入された、ポケットティッシュを手渡された。


「ありがとうございます。頂きます」


年頃の童貞にとって、ティッシュが要らないなんてことは、あるはずもなかった。






走り出したタクシーを見送り、目的の廃ビルの前で円香と合流した。


両手で手を合わせ、ゴメンとジェスチャーする彼女の乳の谷間の寄り具合が眼福だったので、この件に関してはとりあえず不問にすることとした。






廃ビル、あえて名付けるなら、西横インホテル横ビルがよく見える物陰で、2人でしばらく待機していたら、お目当ての美少女が姿を現した。


ターゲット、緑川楓のお出ましだ。


「お兄ちゃん、来た来た、来たよ!」


円香はやる気満々のようだ


「あ〜行く、行くっ、行っちゃうよー。私、もう行きたい。早く行きたい。お兄ちゃんと一緒に行きたい。早く来てお兄ちゃん。来て、ねぇ来てよ。行こ、行こうよ、一緒に行っちゃお」


円香さん、俺のヤる気を呼び起こすの、やめてもらっていいですか。

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