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第9話 『生徒会への依頼』

〜前回の仮面ライダーラグナロクは〜

 幻術使いのウォルトゥムヌスとの戦いで、魔術に苦しめられたラグナロクとフレイヤ。しかし其処に試験に見事合格した鳴上雷牙が現れる。仮面ライダーインドラと変身した望月は持ち前のスピードでウォルトゥムヌスを撃破。さあ次は何が待っているんだー!!


「マジで何枚あるんだコレは」

 今現在、黒瀬たち生徒会役員は放課後の生徒会室にて月1の目安箱の開封作業を行っていた。

「我慢しろ黒瀬、コレもまた生徒会役員としての仕事だぞ」

 面倒くさそうに作業をする黒瀬とは異なり、炎堂は誇らしげに作業していた。

「それにしてもアレね、勉強に関するお悩みが多くない?やれ数学のこの分野が分かりませんとか、歴史のワードの暗記が難しいですとか、此処は塾じゃないっつーの!」

「お前たち玉帝四天王が生徒会に入ってからだな。つまりお前らの責任だ」

「涼風、責任転嫁は良くないよ」

「前まではこれ程入ってなかったんだよ。お陰で肝心の悩みが見つけにくくなった」

 余計に仕事が増えたと頭にきている涼風を氷室はなだめていた。5分ほど経つと紙は大分減っており終わりが見えて来た。

「よし、もう少しだな。少し休もうぜ。俺、自販機行って来るけど何か欲しいのあるか?」

「じゃあ私も行くよ。持つ人は多いほうが良いだろうし」

 黒瀬は水と答え氷室と涼風はお茶を頼んだ。

「了解。じゃあ行って来る」

 2人が生徒会室を出て行くのを見届けると残った3人は肩の力を抜いた。

「はあ〜〜、俺もう帰って良いか?」

「もう少しだから頑張って」

 作業を続ける氷室を見て黒瀬は再起動した。

「てか涼風、鳴上先輩は何処に行ったんだ?」

「俺たち2年生が今度行く修学旅行に関する仕事を別室でやっている。終わり次第戻って来る。そしたら俺は作業を抜けるからな」

「え?…ああ、成程」

 それ以上、追求はせず黒瀬は作業を続けた。すると氷室が気になるのモノを見つけた。

「わ、すごいのが入ってた」

「ん?なんだなんだ」

 2人が興味を示すと氷室は入っていた手紙の内容を読み上げた。

「私には仲の良い友人がいるのですが、一ヶ月ほど前から少し距離を置かれているように感じます。詳しい内容を書くとなると長くなってしまうので、どうにか生徒会役員の皆さんと直接お話をする機会を得ることは出来ないでしょうか?2年A組 長澤美咲」

 内容を聞き終えると黒瀬はいち早く手を挙げた。

「俺はこの一件には関わらないからな」

「どうして?」

「氷室、俺が人間関係について相談に乗れるタイプに見えるか?」

「心菜ちゃんと耕助さんの時は実質黒瀬くんが解決したよね?」

「……いや、あれは本人たちが自分で解決したようなものだろ」

「でも、其処まで持っていくのが一番大変なんだよ?黒瀬くんはそれが得意なんだよ、多分だけど」

「あー、話の内容はよく分からんが、得意ならこの一件はお前が中心になって行ってくれ。頼むぞ。俺はもう行くからな」

「いってらっしゃーい。……涼風は何処に行ったんだろ?」

 氷室は何も分からず涼風を見送っていた。

「修行だろうな。鳴上先輩が戻って来るわけだから、今度は自分の番だってことだろ」

「そっか、そう言うことか。それでコレどうする?」

「見つけてしまったんだから、とりあえず会うしかないだろうな。姐さんたちが戻って来たら4人で話し合って決めよう」

 氷室が同意したので2人は帰ってくるまで休むことにした。涼風が部屋を出てから数分ほど経つと2人が戻って来た。

「なんかさっき涼風が何処かに走って行ったんだけど何かあったのか?」

「家の用事とだけ言ってたな。詳しくは俺らも知らないぞ」

 炎堂は「そうか」とだけ言い席に座った。水崎は買ってきたお茶を氷室に渡してから自分の席に座った。

「それで何があったの?さっき涼風と会った時にあとは頼んだって言われたんだけど」

「箱の中に相談事が入ってたんだ。女性同士の問題だから氷室と姐さんが行ってくれたほうが良いと思うんだが、」

 黒瀬は先ほどの紙を水崎に手渡す。

「ーー、なるほどねー。こりゃあ難しい問題だねえ」

 後ろから炎堂も内容を読み、水崎に質問した。

「本人たちの直接の話し合いの場を設ければいいんじゃないかな?」

「はあ、炎堂アンタねえ、それが出来たらこうやってお悩み相談なんかしないわよ」

 紙で炎堂の顔をバシバシ叩く。

「痛い痛い、悪かったよ。で黒瀬、お前はこの件に関わらずに何をするんだ?」

「別に何もしないが?」

「サボりか?」

「人には適材適所ってのがあるんだよ。俺はこういった相談事に乗ったりするのは向いてないんだよ」

 黒瀬の言い分に納得したのか、炎堂は「なるほど」と言った。それは水崎も同じようだった。

「じゃあこの件は私と希愛で訊きに行くって事で良いのかな」

 水崎は依頼の紙を右手でペラペラと揺らしながら言う。

「私は構わないけど、黒瀬くんは本当に行かないの?」

「行かない。俺は本当に知らない人と話をするのは無理だからな」

「あんまり自信を持って言うことじゃあないけどな。俺たちは他のことをしてるよ」

 黒瀬の頭に右腕を置き炎堂は言う。

「そっか、分かった。シズクはいつ行けそう?」

 黒瀬が来ないことに多少のショックを受けながらも氷室は水崎に予定を確認する。

「特に今は無いから明日の昼休みにでも行こうかな。てかこれ相談相手への返答ってどうやるの?」

 水崎の質問には氷室が対応した。

「基本的にはクラスの担任に生徒会から呼び出しをしてくれるようにお願いしてるみたいだよ。その方があまり怪しまれたりしないんだって」

「なるほどね。えーと長澤美咲さんは2Aだから、谷川先生だっけ?」

 合っているか確認するように黒瀬に目を合わせる。

「谷川先生は2Bだ。A組の担任は鴨志田先生」

 水崎の間違いを黒瀬は訂正した。

「ああそうだっけ?黒瀬よく担任の名前覚えてるわね」

 黒瀬は「暗記は得意だからな」と少し得意げに言う。

「流石は日本史一位の名は伊達じゃないわね。よし、鴨志田先生って何処の部活顧問?」

 またもや黒瀬の方を見る。

「確か吹奏楽部だったような気がするが」

「じゃあ今から音楽室に行って来る。希愛、行こ!」

「うん」

 生徒会室を出ようとする二人を黒瀬が後ろから声をかけて止めた。

「待て二人とも。箱の開封作業が終わったんだから荷物も持って行ってくれるか?俺と炎堂で掃除をして終わったら施錠とかして帰るから」

「黒瀬アンタ、帰りたいからってそこまで言う?普通私たちのこと待ったりしない?」

「悪いが俺に紳士的対応を期待しても無駄だからな」

 水崎は「それもそうね」とため息と共に納得してから炎堂の方を見る。

「・・・!(閃く)」

 炎堂は何かを察したかのように頷いた。

「じゃあ鴨志田先生の所に行ってくるわね。掃除よろしく」

   ☆ ☆ ☆

「シズク、さっき炎堂くんに何の視線を送ってたの?」

「んー、分かりやすく言うなら黒瀬を帰さないでねって意味かな?」

(大丈夫かなあ…)

   ☆ ☆ ☆

「よし、これで良いかな」

 一通りの掃除を終え、黒瀬は掃除用具を片付けた。

「炎堂、そっちの掃除は終わった、か。何してんだ?」

 振り向くと炎堂は机に突っ伏していた。

「黒瀬、古文を教えてくれェェェェ!」

「……いやだ。普通に嫌だ」

「源氏物語難しすぎるって!桐壺って誰⁉︎藤壺って誰!?」

「源氏物語が難しいとか、お前終わってんな」

   ↑古文、日本史、神話大好き

「本当に頼むよ。教えてください」

 熱苦しい炎堂に折れて黒瀬は荷物を置き源氏物語の授業を始めた。

「お前の頭に分かりやすくとなると…。桐壺の更衣は光源氏の母親で藤壺の宮は義理の母みたいな者だ。ここをまず理解しておかないとどうにもならないからな」

「なるほど、そうなのか。で、『光源氏誕生』ってどんな話なんだ?」

「読んで字の如くなんだがなあ…」

   ☆ ☆ ☆

「ただいまあー、って二人とも残ってたんだあ」

「炎堂に源氏物語を教えろってせがまれたんだよ」

「炎堂くん古文苦手なの?」

「苦手だなぁ。何を言っているのか全然理解出来ない」

「お陰で早く帰るはずが結局二人を待っているような時間に…」

 黒瀬は筆箱を片付けながら文句を言った。

「悪かったよ黒瀬。でも本当に助かったよ」

 炎堂からの謝罪も聞こえぬ程に落ち込んでいると氷室が、

「黒瀬くんは源氏物語得意なの?」

「得意って言うか、シンプルにストーリーが好きだな。泥沼恋愛は見ていて面白い」

 水崎は黒瀬の性癖を心配した。

「アンタ、生涯彼女出来ないタイプね…。執着系彼女とか好きでしょ?」

「……そうかも、しれないな」

 自身の隣で氷室が「黒瀬くんは執着系が好き…」と小さく呟き水崎は物凄く心配した。

「ダメよ希愛、希愛はそのままでいて⁉︎」

「え⁉︎何のこと⁉︎」

 いきなり両肩を掴まれ氷室は驚いた。

   ☆ ☆ ☆

 次の日 昼休み

「おい、何でお前らこの空き教室にいるんだ?」

「何でって、今から長澤美咲さんの相談に乗るからに決まってるでしょ?」

 昼休みの時間になり、黒瀬は読みたい本があるからと空き教室にいた。すると突然ドアが開き水崎たちが入って来た。

「生徒会室でやれよ…」

「あの辺は人目があるから万が一があったら大変でしょ?」

 水崎は長澤美咲の友達に見られることを危惧していた。

「そこで俺が黒瀬の日頃使ってる空き教室はどうだ?って提案したんだよ」

「お前のせいかよ、」

 黒瀬は読んでいた本の続きを不満たらたらで読み始めた。

「黒瀬くんごめんね、貴重な読書の時間をとって」

「いや、別に俺は読書続けるから、」

 謝る必要のない氷室から謝られたので黒瀬は身振りと共に氷室に対して「必要ない」と言った。それを横目に水崎は長澤と話を始めていた。

「長澤さん、早速だけど話してくれる?」

「…はい。紙にも書いた通り私には仲の良い友人が居るんですけど、どうも最近距離を感じるんです。それだけならわざわざ生徒会の皆さんには相談は乗らなかったんですけど、一昨日、あるLiNEの通知を見てしまいまして、」

「どんな内容だったの?」

 水崎は少し前のめりになり、真剣な表情に切り替わった。それは氷室も炎堂も、黒瀬も同じだった。

「その、友達がトイレに行って来ると言って教室を出て、その間に彼女のスマホに通知が来たんです」

 その場に居た長澤美咲以外の四人は察した。

「その内容が、」

 口に出すのも辛いのか、長澤はなかなか口に出さない。

「私たちは絶対に秘密は守る。だから、話してくれる?」

 普通ならこれぐらいの言葉で話すほど人は信用出来ないだろう。だがそこは水崎シズク。元々の評判もあってか長澤は話し始めた。

「彼女のスマホに『この前また美咲が久保田くんと一緒にいたよ』ってLiNEが来たんです」

 水崎と氷室はこの時点で察しが付いていた。炎堂はまだ。

「久保田って、野球部のエースの久保田雄一のこと?」

「はい。私、彼とは小学校からの付き合いで中学生になるときに彼は野球推薦で強豪校に入学したので別々になったんですけど、高校でまた会えたのが嬉しくてよく一緒にいたら、こうなってしまって、」

「女の嫉妬ってやつね」

「シズク、その久保田って人はそんなに人気なの?」

「あーそこは炎堂のが詳しいかな」

「雄一か?そりゃあ凄い人気だぞ。二年生ながら三年生を抑えて今はチームのエース番号を背負ってる。本当に凄い奴だよ」

 頷きながら久保田雄一を褒めちぎる炎堂。水崎は言って欲しかった事とズレていたので質問の意図を説明しようとすると、後ろから目の前にスマホが降りて来た。

「姐さんが欲しかったのはこれだろ」

 水崎がスマホを机に置き氷室は書いてある内容を読み上げる。

「玉帝学園、20○○年バレンタインチョコランキング。総勢ランキング第1位水崎シズク112個、第2位炎堂武尊101個、第3位久保田雄一97個。黒瀬くんは入ってないの?」

 他にもツッコむべき所があるだろうと思いながらも黒瀬は新聞記事を下にスクロールする。

「男子ランキング第1位炎堂武尊101個、第2位97個久保田雄一、第3位88個黒瀬廻。凄いじゃん黒瀬くん」

「黒瀬は人との関わりは少なくても私らと一緒に居るから顔の良さは知れ渡っていたもんねー。チョコ貰えて嬉しかったでしょ?」

「逆だ。俺は和菓子のが好きなのに、目の前に洋菓子を並べられて、ウゥッ…」

 思い出し吐きをしそうになる。

「お、氷室見ろ。まだ下にランキングがあるぞ。女子ランキング、第1位112個水崎シズク、第2位85個桜沢由香、」

 その名が挙げられたとき長澤のが身体が微かに揺れた。それを黒瀬は見逃さなかった。

「桜沢由香が、あんたを虐めている奴なんだな」

「え、そうなの?」

 水崎は喰い入るように長澤に問う。

「虐めているかは分かりませんが、その通知が来たスマホは彼女のなんです」

「黒瀬くん、何で分かったの?」

「その桜沢由香が久保田雄一とどれだけ接点があるかは知らないが、新聞に載るってことは学校全体に知られるということ。その上、自分なら彼と付き合っても文句は無いだろ、と言う大義が立つと思ったんだが、どうだ?」

 黒瀬の仮説に長澤は何も言えなかった。相手が合っているに加えて、その可能性も充分に高いのだから。

「私、知りませんでした。まさか雄一がそんなに人気だったなんて、」

「普通なら玉帝新聞を見ておけば自然と分かることだろうがな。気にもしなかったのか?」

「はい。凄いなぁ程度にしか」

 黒瀬の言葉に長澤は何も言えなかった。そこは水崎がフォローをした。

「まあ久保田は野球一筋で彼女とかは作らないからね。だから近くに女子が居ても側からは仲の良い女子が居るんだなぁぐらいにしか思われないよ」

「女子の目には嫉妬のフィルターが掛かっているんだね。怖いなぁ」

 氷室は背中に寒気が走った。

「てか待って黒瀬、あんたいつの間にか話に入ってない?」

「確かに⁉︎黒瀬お前今回はパスするんじゃなかったのか?」

「そりゃあ、碌な依頼じゃなければな。でも、こんな源氏物語に酷似するような展開が目の前にあるのに、見届けない訳がないだろ」

「さすが黒瀬くん。自分優先な発言。まさに自己中心的」

「氷室、それは人聞きが悪すぎる。利己主義者(エゴイスト)と言ってくれ」

 目の前でこんなやり取りをされればそれは心配にもなるだろう。

「あの、私この件を生徒会に頼んでも平気なんでしょうか?」

「「「「・・・」」」」

 四人は一度目を合わせてから、長澤の方を向いた。

「「「「もちろん!」」」」

 食い気味な生徒会役員たちに圧倒される長澤。

「お願いします…」

   ☆ ☆ ☆

「なんて任されたわ良いけど、一体何から始めれば良いのかねえ」

 四人は教室に戻り先ほどの話をしていた。

「まずは長澤美咲が言っていた事が全て真実なのか確かめた方がいいだろうな。もし仮に全て勘違いだったとしたら無駄の極みだからな」

 ブリックパックのミックスジュースを飲みながら黒瀬は提案する。

「確かに、でもそれをどうやって調べれば良いのかな?」

 水崎は頭を抱えた。

「久保田さんに近づいてみるのはどうかな?桜沢さんが敵意剥き出しで何かして来るかも」

 氷室の提案を黒瀬は一刀両断した。

「いや、そもそも久保田雄一と全く接点のない姐さんが急に近づきだしたら何かあやしまれる可能性が高い。仮にもこの学校に居るのは頭の良い連中が大半だからな」

「そっか、確かに」

 三人が頭を抱えるなか炎堂がある提案をした。

「もうどうにかこうにか生徒会の権力を乱用すれば良いんじゃないか?」

「それはもはや最終手段よ、兎に角この件は明日までに解決策を四人で見つけましょう」

「「「了解」」」

   ☆ ☆ ☆

「あれ、二人は今日はもう帰るの?」

「俺は神社の手伝い、氷室も帰るのか?」

「私は今日はお母さんに早く帰って来てって言われたの」

「そうか、二人とも頑張ってなぁ。水崎、行くぞ」

 水崎は分かりやすく落ち込みながら二人を見送った。

「…どうにか抜け出せたな」

「うん、急ごうか」

 黒瀬と氷室はドライバーを装着しながらバイクを出した。

「もうかなり被害が出てるかもだから急ごう!」

「安心しろ氷室。安全運転でも問題ない。ヴァルハラを既に向かわせてある」

「そっか!でも急ごう」

「ああ」

 二人はアクセル全開で現場に向かった。

現場は学校のある玉帝町の隣り町、応竜町だった。

「まさか隣り町とはな。ヴァルハラ!何処だ!」

 空を見上げてヴァルハラの名を叫ぶと後ろ、それも上からヴァルハラの声が聴こえた。

「黒瀬、よ〜け〜ろ〜‼︎‼︎」

「あぶなっ」

 右に少しばかり動きヴァルハラを避ける。ヴァルハラは地面に顔を真っ正面からぶつけて着地する。

「ブヘッ!っーー、黒瀬ェ!そこは我を優しく姫様抱っこで掴む所じゃろうがあ!」

「お前が避けろって言ったんだろうが、」

 ヴァルハラを放置して黒瀬は辺りの気配を探る。

「おいヴァルハラ、邪神は何処にいるんだ?」

「さあな、吹っ飛ばされたから今は何処に居るのやら、」

 黒瀬と氷室は少し辺りを彷徨く。黒瀬が氷室との距離30mほど離れた位置になると、

「黒瀬くん!危ない!」

 氷室の掛け声に反応し、黒瀬は上から来る何かの攻撃を受けた。衝撃が強く黒瀬を中心に地面にはヒビが入り土煙が舞う。

「黒瀬くん!」

 土煙が晴れるとそこにはダーインスレイヴで攻撃を受け止めた黒瀬が立っていた。

「頭上、その上背後で首を真っ直ぐに狙うとは、」

「君もよく受け止めたね、注意を受けたとは言え直ぐに剣を出せるなんて流石ラグナロク」

 邪神は剣を引っ込め地面に降りる。

「お前一人なのか?それとも他に…」

「もう一人居るよ。俺がもう一人」

 邪神がそう言うと横からもう一人瓜二つの邪神が姿を現した。

「双子か、ディオスクーロイ、言語によって色んな呼び方があるが、双子座の名前の由来にもなったやつか」

「兄がカストール、弟がポリュデウケースだったよね」

 氷室も会話に割って入ってくる。

二人はドライバーを装着する。続けて宝珠チャームを起動し、装填する。

「「変身」」

“仮面ライダーラグナロク・フレイヤ”

「そっかあフレイヤも居たんだっけ。じゃあ2対2だ」

 ディオスクーロイをラグナロクとフレイヤで挟むような状態。二人が攻撃を仕掛けに突撃すると双子のうち兄のカストールがラグナロクに弟のポリュデウケースがフレイヤに飛び掛かって来た。両者とも短剣を所持している為、四人とも剣同士の対決となった。ラグナロクもフレイヤも同じ考えを抱いた。

(相手が短剣なぶん間合いに入られれば確実に攻撃を喰らう。その為にも!)

 二人は双子と密接する程の距離まで詰めて剣の持ち手ギリギリの所で斬撃を与えた。双子を再び挟み込み二人は必殺技を発動する。

祓魔ノ刻(エクソシスムタイム)導軌ノ刻(ガイダンスタイム)

終焉ノ一閃(ラグナロクスラウター)冰麗ノ聖刃(フレイヤサークレッド)

 二人は斬撃を放つ。双子は完全に喰らい爆発が起きる。煙が晴れるとその場には無傷の双子が立っていた。

「なんで…」

 フレイヤは混乱していた。

「俺もあまりよく知らないが確かディオスクーロイは母レーダーとゼウスの子供。そしてゼウスの子はゼウスの者と呼ばれ『神であり不死』という意味があるとか」

「じゃあ死なないってこと?」

「さあな、死ぬまで斬り刻めば良いだろ」

 ラグナロクも半ば呆れており炎堂のような脳筋プレイを提案した。

「黒瀬くんも、それしか思いつかないなんて」

 これまでは少し戦えば相手の弱点や対抗策を思いついていたラグナロクも今回はお手上げといった雰囲気だった。其処に一人の男がやって来た。

「やーやーごめんごめん、遅れちゃった」

「先輩、雷の神様のくせに来るの遅くないですか?」

「氷室、言ったじゃんか、俺バイクの免許持ってないんだよ。だからと言ってインドラの力を使って走りでもしたら街中への被害を与えかねないからね?」

 それはもっともだとフレイヤは頷く。

 鳴上はドライバーを装着して宝珠チャームを起動、装填した。

「変身」

“仮面ライダーインドラ”

 金剛杵ヴァジュラを出しディオスクーロイに攻撃を仕掛ける。双子はインドラのスピードを目視で確認出来ずおもむろに攻撃を喰らう。その状態のインドラにラグナロクは心通信を使いお願いをする。

(鳴上先輩、先ほど俺と氷室で双子に対して必殺技をぶつけました。ですが双子はどちらも復活、と言うより無傷の状態に戻っていました。なので、)

(俺が爆発の中に飛び込んで何が行われているかを確認しろって言いたいのかな?)

(お願いしたいです)

(可愛い後輩の頼みだ。任せなさい)

 ラグナロクが再び剣に宝珠チャームを装填するとフレイヤも合わせて剣に宝珠チャームを装填した。

終焉ノ一閃(ラグナロクスラウター)冰麗ノ聖刃(フレイヤサークレッド)

 再び剣技が双子に直撃すると爆発が起こる。本来なら邪神は粉々になるか、身体に傷の一つ着くはず。そんな中をインドラは神速で飛び込んだ。インドラはそこでまさかの光景を目にする。

 インドラが爆発の中を通り過ぎると同時に煙が晴れた。其処には先ほども見た無傷の双子が立っていた。インドラはフレイヤを担ぎ神速でラグナロクのもとに移動する。

「っわ、え、一体何をしたんですか?」

「黒瀬くんに爆発の間に何が起きたのかを俺に確認して欲しいって頼まれたんだよ」

「それで先輩、中では何が?」

「おそらく、治癒だ。二人の放った斬撃が身体を斬り裂くと同時に治癒を施していた」

「それで煙が晴れた頃には無傷に戻っているって事ですか」

 フレイヤは剣を構え直す。

「なら神力の消費による持久戦だな」

「確かに、それしかなさそうだな」

 インドラも金剛杵を構え直す。

「鳴上先輩は双子に牽制を、氷室は俺のカバー、それと同時に双子が逃げそうになったら氷でこの場をドーム状にして囲んでくれ」

 ラグナロクの指示に二人は「おう!」と力強く返事をする。

 三人は双子に飛び掛かる。3対2となりラグナロク達が優勢となった。ラグナロクの叩き上げの戦闘力、フレイヤの魔法も加えた戦闘スタイル、インドラのスピードによる撹乱戦法により双子はどんどん劣勢に追い込まれた。誰もが勝てると思っていた。しかし双子は一枚上手だった。

「ここは一時退散させてもらうよ」

 兄、カストールが地面に大穴を開けてその場から退散した。弟もそれに続いた。インドラは直ぐさま追いかけたが穴を封じられたため追跡は諦めた。

「やられたね、まさか地下から逃げるとは、」

 3人は変身を解いた。

「まあこれで持久戦による神力ジリ貧博打で挑めば確実に勝てるって事が分かりました。あとは逃亡を阻止出来れば」

「そこが問題だよね。地面まで凍らせたら望月先輩が加速する際に滑るかもだし」

 3人は思わぬところで氷室の力の利点が弊害となった。

「立ち話もアレだから、とりあえずイザナギに戻ろう」

 暗い空気を察して鳴上は断ち切る為に提案をした。

望月は転移之渦(ブロードボルテックス)を展開して二人はそれに着いて行く。イザナギに着くと涼風が真ん中の机で待っていた。

「鳴上さん、どうでしたか?」

「んー?逃げられちゃったよ。負け惜しみに聞こえるけど、あと少しだったんだけどねえ」

「そうですか、相手は何だったんですか?」

「えっと、何だっけ?」

 名前が出てこず黒瀬に目をやる鳴上。

「ディオスクーロイ、双子の神様だ」

「双子か、能力は?」

 この質問には氷室が答える。黒瀬は茶を淹れにその場を離れていた。

「兄も弟もお互いに治癒の力があって、いくら攻撃をしても直ぐには倒せなかった。だから持久戦で神力ジリ貧勝負のあ博打に挑んだら逃げられた」

「なる、ほど?鳴上さん、勝てる見込みは?」

「あるよ。多分だけどあの双子は1日に何回も治癒出来る訳では無いと思うんだ。事実、さっきの戦いも途中で逃げたしね」

「確かに、でもまた途中で逃げられる可能性が高いですよ」

 氷室は先ほどの地面を割り地下から逃げられた事が相当ショックだった様子。その悪い空気を断ち切るかのように黒瀬が茶を淹れて戻って来た。

「茶、淹れて来ましたよ」

 鳴上はいち早く反応して「わーい」と言いながら席に座る。カップを手に持ち口に運び一口飲むと、

「ありがとね黒瀬くん。ん、美味しい。黒瀬くんはお茶淹れるの上手いんだね」

「本当だ、美味しい。なんか飲むと安心する。御袋の味ってやつ?」

「それはなんか違くないか?涼風、お前も飲むか?」

 自分の目の前の席、鳴上の隣に座る涼風にお茶を手渡す。

「貰おう。……美味いな」

 3人の間にあった重苦しい空気を黒瀬が断ち切ってくれたことに氷室は改めて黒瀬のことを凄いなと感じた。

「黒瀬くんの意見も聞きたいんだけど、良いかな?」

「…いや、先に先輩の意見から訊いてもいいですか?」

 氷室からの問いに対して黒瀬は先に鳴上達に何か作戦があるのかを聞いた。

「俺はさっきの戦いでの黒瀬くんの作戦で良いと思うけど、他にも作戦があるのなら、訊きたいかな」

「私も鳴上先輩と同じかな」

 二人からの期待に黒瀬は答える。

「さっきの作戦では、双子にまた逃げられるのがオチだ。だから今度は持久戦ではなく、短期決戦で仕留める」

「そんな方法があるのかい?」

 鳴上はニヤリと笑みを作りながら聞く。

「それは…」

「それは?」

 氷室は続けて聞く。

「…明日までに考えておく」

「「「ズコーっ!」」」

 氷室、鳴上、涼風は三人とも椅子から転げ落ちる。

「なんだ黒瀬、お前、一番重要な所を考えていないのか?⁉︎」

「まぁまぁ颯。いいじゃないか、確かに俺も短期決戦で仕留めると言う意見には賛成だよ。俺的にも有難いしね」

「先輩、それってどう言う意味ですか?」

 氷室は鳴上的に何が有難いのか分からなかった。それを黒瀬は代わりに説明する。

「鳴上先輩が初めてインドラに変身してウォルトゥムヌスと戦ったときにアイツが氷室よりも遅くライダーになったのは、って言葉が引っかかってな。おそらく鳴上先輩はインドラから生み出される速さに身体が追いつかないんじゃないかって思ったんだけど、どうですか?」

「さすがだね。その通りだよ。俺はまだインドラの力を制御、と言うよりかは、扱いきれていない。先輩としては随分と情けないよね」

 少し申し訳なさそうに鳴上はうつむいて言う。

「そんな、顔を上げて下さい。鳴上先輩は何も悪くないです。むしろ、私は昔からずっと修行して来たのに二人の役に立ててない、私のが責任は大きいです…」

 自身を卑下する氷室に黒瀬は言葉を送る。

「氷室。あまり自分を卑下するな。今回の戦いで責任がある者は誰もいない。例えあったとしても、三人とも同じぐらいだ。逃げる双子を捕まえられなかった先輩に、氷で拘束出来なかった氷室、まともな対策を思いつかなかった俺、誰も悪くないさ」

「慰められてるのか分からないけど…ありがとう黒瀬くん」

 氷室が元気を取り戻したことを確認すると鳴上が席から立ち上がる。

「よし!じゃあ今日はもう帰ろう。黒瀬くん、次こそ頼んだよ」

「先輩にも少しは考えて欲しいんですけどね」

「おい、鳴上さんに余計な負担を掛けるな」

 鳴上の右に立ち左手を黒瀬と鳴上の前に出す涼風。

「なら涼風が代わりに考えて来いよ」

「黒瀬くん、あまり涼風を煽らないで…。私も作戦考えるから、」

 その代わり長澤さんの件手伝ってね。と言われる。

「…分かったよ。じゃあ次こそ、双子のディオスクーロイを仕留めましょう」

 二人は気合いの入った返事を返す。しかし涼風は返事をしなかった。

「ほら、颯も気合い入れなきゃ」

 涼風の左肩に手を置いて揺らす。

「いや、俺はまだライダーでは無いので、」

「………なんかごめんね」

ーーーーーーーーーー

【仮面ライダーラグナロクに関する現在公開可能な情報】

不落ノ八咫烏(フライトクロウ)

全長2.08m 全幅0.68m 全高1.15m シード高0.90m 乾燥重量168kg 最高時速880km

ーーーーーーーーーー

次回予告

 治癒をする事で倒すことが不可能な双子の邪神ディオスクーロイ。その二人を倒すために黒瀬は一夜掛けて作戦を考えることに。しかし二人には生徒からの依頼を解決する任務もあった。この二つの任務に両挟みされた黒瀬は頭を抱える。さあどうやって解決するんだ!?

第10話:強行突破で万事解決

 仮面ライダーラグナロク第9話『生徒会への依頼』を読んで頂きありがとうございます。柊叶です。今回は登場人物たちが生徒会である設定を活かして生徒会活動の一環を描いてみようと思ったのでこの話を書き始めました。そして仮面ライダーといえば前編後編の作り、これに憧れたというのも少しあります。

 そして今回から仮面ライダーたちの必殺技を当て字にしてみましたが、如何でしたか?カッコいいと思って頂けたなら凄く嬉しいです。(あとこれまで書いた8話とも当て字に直しておきます)今後とも仮面ライダーラグナロクをお願い致します。次は第10話『強行突破で万事解決』にてお会いしましょう。

柊叶

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