第八話 『鳴り響く雷鳴』
〜前回の仮面ライダーラグナロクは〜
仮面ライダーフレイヤが氷室家の式神、冰狼を使い体を液体状に変えるガルグイユを全身凍らせることで見事に撃破。その報告を聞いたイザナギ側の望月雷牙は…
「そうか!黒瀬くんと氷室の2人は式神まで手に入れたのか」
《ええ、氷室のやつは家に元々あるから当然ですけど、黒瀬に関しては完全に予想外でした。まさかアイツの家の神社にあるとは》
「そうだったんだ。凄いね〜」
《笑いごとじゃありませんよ。これ以上アイツが強くなって、なにかあったら、》
涼風が今だに黒瀬廻の存在の危うさを口に出すと望月はそれを止めて否定した。
「颯。黒瀬くんの力は確かに危ない物だ。でも今現在、彼は味方なんだ。理由は何であれ人々のために戦ってくれているという事実は変わらない。だから颯も、」
《黒瀬廻のことを認めてやれ、ですか?》
「さすが颯、俺の言うことはお見通しだな」
涼風が「あれだけ言われれば嫌でも分かりますよ」と言うと
「ところで颯、授業の時間は大丈夫かい?」
《……ブロードで飛びます。あ、今日の試験頑張ってくださいね。応援してます》
涼風はそう言い残して電話を切った。
「もちろん頑張るよ」
☆ ☆ ☆
「「頼むよ黒瀬、日本史を教えてくれ!」」
「…断る。普通に断る」
「なんでだよー!頼むよー‼︎」
1時間目の日本史、世界史、化学の文系と理系に別れた授業が終わり各教室にいた生徒達が戻ってくると黒瀬の席の周りに何人ものクラスメイトが群がっていた。
「ど、どうしたの黒瀬くん」
「アンタ何かやらかしたの?」
化学の授業を受けて来た氷室と水崎は心配になり黒瀬のもとに駆け寄った。
「助けてくれよ姐さん。コイツらがしつこいんだ」
「一体なんなの?日本史を教えてくれ〜って聞こえたけど」
「いや実はな…」
黒瀬が言うには、先ほどの日本史の授業の最後に担当の先生から来週のこの時間にこれまで習った先土器時代から弥生時代まで一旦復習がてらテストをするというのだ。それを聞いた日本史実は苦手組が日本史トップの黒瀬に助けを求めているらしい。
「なるほどね。教えてあげれば良いじゃない」
「姐さん簡単に言ってるけど日本史は暗記科目だから教える事は何も無いんだよ」
「確かにそうだね。黒瀬は日頃どうやって覚えてんの?」
ストレートに「教科書を読むだけ」と答えると苦手組は絶望に染まった顔をした。
「あー、炎堂アンタは世界史をどうやって覚えてるの?」
水崎が向いた方を見るといつの間にか世界史の授業から戻って来た炎堂が立っていた。
「俺か?俺も基本的に教科書を読むぐらいだからなあ」
「てか姐さんと氷室は化学に出てくるワードとかはどうやって覚えてるんだ?」
2人はゆっくりと顔を見合わせると同時に「教科書を読む、だね」と答えた。
「炎堂、この空気をどうにかしてくれないか?」
「うーんそうだなあ。どうにか助言を与えるなら、気合いと根性でどうにかする。としか俺には言えないなあ。実際俺はそうやって暗記したし」
「炎堂くんらしいと言えばらしいね」
4人の意見を聞いた苦手組は「精神論でやってみます」と帰って行った。
「大丈夫かな?やっぱり何か教えてあげたほうが、」
「俺らは教えるのに向いてないよ」
「だな。大学に行った際に教員免許を取ろうと思っていたが、まさかこんな形で向いていないと分かるとは」
「私としてはスポーツのことは教えられるんだけど勉強は向いてないね」
俺は置いといて、まさかこの3人までもとは。以外だったな。
「おーいお前ら席に着けー。授業を始めるぞー」
「やべ、黒瀬次は何だっけ?」
「数ⅱだな」
「まじか。希愛、寝たらシャーペンとかで背中でも突いて起こして」
(流石の姐さんも化学の後の国語では眠気に勝てない様子。氷室に至ってはオッケーと言っているが少し半目になっているな。こりゃ俺が3人を起こさないとな)
〜〜〜
「……起きろ玉帝四天王!」
「「「「ヴェッ⁉︎」」」」
生徒会業務+イザナギで疲れている2人と生徒会業務+部活動で疲れている2人
因みに玉帝四天王とは成績や部活動実績から排出される4人の猛者の通称である。
「炎堂と姐さんと氷室は分かる。でも何で俺までその四人に入るんだ?」
「それを言うなら私が学園に来たの最近だよ?何でもう入ってるの?」
その後寝てた罰として黒板にある問題を解けと言われたが4人は難なく正答を書いた。
「寝てても四天王は四天王か。はい。じゃあ本日はこれまで、ありがとうございました」
☆ ☆ ☆
「黒瀬助かったよ」
「だな。まさかコッソリとカンニングペーパーを渡してくれるとはな」
「いつの間に作ってたの?」
「いやあれはノートから千切っただけだ。解き終わったら急に眠くなったんだ」
3人からは「おー」と感心されたが黒瀬は眠くて頭が回らず起こす事を忘れたのを1人で反省していた。
「まあでも少し寝たお陰で元気も戻って来たな」
「私も同じこと思ってた。なんとか残りの2時間耐えられそう」
「一応フリスクとか食べる?かなり苦いやつだけど、」
「「食べる!」」
(かなり食い気味だな)
「黒瀬くんは?」
「貰っとく」
その後の2時間は4人とも無事に切り抜けた。
「ああ〜ようやくお昼だなあ。食堂行くか、ってあれ?黒瀬もしかして今日は…」
「わるい。読みたい本があるから今日は一人で食べるな」
「今日は何を読むの?」
「桜いいよ先生が書いた『世界は「」で沈んでいく』っていう本だ」
「なんか難しそうね。私でも読めそうなら今度貸してくれる?」
黒瀬は「構わない。じゃまた5時間目に」と言って空き教室に走って行った。
☆ ☆ ☆
「え、望月先輩今日試験なのか?」
「ああ。だから俺は今日なにかあってもお前らの補佐は出来ない」
「そうなのか。いや何でだ?」
昼休み、黒瀬は読みたい本があったので図書室の隣の空き教室にいた。すると突然ドアが開いて涼風が入ってきた。そして急に「お昼一緒にいいか?話がある」と言うので黒瀬は隣の席を薦めた。
「とっくに分かっていると思うが望月さんは俺にとって憧れで一番大事な人なんだ。その人に大事な試験がある日になんもしないのは可笑しいだろ?」
「ああー神頼みでもするのか?」
「それに近いと思うが少し違うな。どちらかというと望月さんの写真に向かってひたすら祈りを捧げるつもりだ」
「なんかアイドルグループがセンター争奪戦の時にオタクがやりそうな事をするんだな」
涼風に「なんだその具体的なツッコミは?」と言われたので黒瀬は「昔読んだ漫画で近いことをしてるヒロインがいたからな」と返した。
「お前も漫画とか読むんだな。小説を読んでるから何か以外だ」
「今はな。昔は結構読んでたぞ」
「そうか」
2人の間に少しの沈黙が流れると黒瀬のスマホに一件の通知が入った。
「ヴァルハラからだな。こっから南西7kmに邪神が出たみたいだな。わるい行ってくる」
「ああ、気をつけてな」
黒瀬が玄関に向かって走っている途中で氷室と合流した。
「氷室なんとか出てこれたか」
「うん。木花先生に呼ばれたことにしといた」
「そうか。急ごう」
南門に出た2人はバイクを出して南西に走り始めた。
☆ ☆ ☆
「キャアアーーー‼︎‼︎」
現場で暴れていたのはウォルトゥムヌスだった。
「さあさあ私の魔法で派手に泣き叫び喚き苦しみなさーい!」
「普通に呼んでくれれば来てやるからこれ以上暴れるな」
声をした方を見ると黒瀬と氷室がバイクを停めて立っていた。
「おやおや貴方がラグナロク、そして隣にいるのがフレイヤですか」
ウォルトゥムヌスは手を地面に翳した。其処からは大量のアスラが湧き出てきた。
「相手はウォルトゥムヌスか。幻術使いだな」
「間合いには飛び込まず少し距離を取って戦うのが良いかもね」
“ラグナロク、フレイヤ、ローディング”
「「変身」」
“仮面ライダーラグナロク・フレイヤ”
2人ははアスラの相手をしつつウォルトゥムヌスに近づいて行った。先に辿り着いたのはラグナロクだった。そこからは剣と杖の攻防が続くいた。ウォルトゥムヌスは杖を構え直した。すると杖の先から烏の幻影を複数羽召喚された。
「マジかよ。烏とはな」
数瞬ほど戸惑ったラグナロクにウォルトゥムヌスは杖を一直線にぶつけた。
「くっ、」
(おかしい、なにか変だ。いくら俺が八咫烏を大事にしているとはいえ戸惑うわけ…)
「まさか、既に術中にハマってんのか?」
「!ほお気づいたのですか。流石ですね」
ウォルトゥムヌスは攻撃をしながら解説を始めた。ラグナロクは術中にハマっているため、どうにか剣で受け止めながら応戦していた。
「私の術中にハマっているのに、なかなかやりますねラグナロク。正直舐めていたから驚きましたよ」
「そうか。まだ本気じゃないんだがな」
(ウォルトゥムヌス…。分かりやすく言うなら幻術使い。姿形を自由に変化させる事も可能で魔法のようなモノも使用出来るはずだったな)
両者は何度もぶつかり合い杖と剣の間に大きな火花が散った。
☆ ☆ ☆
「あー、もう、数が多すぎて処理しきれないよ」
“ガイダンスタイム、フレイヤサークレッド”
「はあ、ようやく片付いた」
フレイヤはラグナロクのほうに目を向けると衝撃を受けた。なんとラグナロクが苦戦を強いられていたのだ。
「ぐあっ!」
「ハハハハハ、さすがのラグナロクも仲間を斬るのは難しいようですね」
「仲間?どういうこと⁉︎」
「チッ、氷室!お前を斬る許可をくれ」
「え?ああ、良いよ?」
「よし、これで遠慮せずにいける」
「いやいやそれで攻略出来たら最初から、」
「はいはい。じゃあさっきと同じように」
ウォルトゥムヌスはラグナロクが斬りかかる瞬間にフレイヤに化けた。
(何度やっても君は私を斬れない。結局また情に負けr…)
「舐めるな。許可が降りれば情など無い」
「え?グハッ⁉︎⁉︎」
ウォルトゥムヌスはその場に倒れ込んだ。
「嘘だろ⁉︎本気で情が無くなってんじゃん‼︎」
「今回は本人の許可を得たが、いざとなれば許可さえ得ずに斬れるぞ」
「なんかそれ複雑なんだけど」
ラグナロクは「悪い」と謝りフレイヤは「良いですよ」と返した。
「よし、一気に片付けるぞ」
“エクソシスムタイム・ガイダンスタイム”
「マズイマズイこれはマズイですねー。逃げろーー‼︎」
ウォルトゥムヌスはゲートを開いた。
「⁉︎ 逃すか!」
“ラグナロクスラウター、フレイヤサークレッド”
ゲートまでは辿り着いたが2人の持つ剣の刃はあと少しの所で届かなかった。
「チッ、逃げられたか」
少しキレながら黒瀬は変身解除した。
「とりあえず学校に戻って対策を練ろうか」
「そうだな」
☆ ☆ ☆
「どうしたんだ炎堂、調子悪くないか?」
「ああー、なんかこの前の怪物の件が忘れられなくてな。ほらお前と氷室含めて皆んなが忘れてるやつ。なんで俺と水崎しか覚えてないのかなあ…」
☆ ☆ ☆
「…てな感じで、まじで炎堂と姐さんは神の力を受け継げる器みたいだな」
「うーん、忘れさせるのは無理だから放っておくしか手はないね」
「だな…。どうしようもないのを考えても意味はないな」
水道の前で話をしている2人の下に水崎がドアから顔を覗かせた。
「希愛ー、黒瀬ー、高岩先生がミックスダブルスの事で訊きたい事があるから早く来てだってさー」
「「了解ー」」
☆ ☆ ☆
「あー、ミックスダブルスの調子はどうだ?お前たち生徒会に入ったようだけど」
「なんの支障もなく動けてます。この流れなら優勝も狙えるかと」
狙えるじゃなくて掴むんでしょ!と姐さんに背中を叩かれた炎堂。
「イテっ、ええ勝ち取ります」
「そうか。黒瀬たちのほうはどうだ?」
「それなりに良い具合だよな?」
「うん。連携は取れてると思うから大丈夫なはず」
顧問は「そうか。ならエントリーしても大丈夫だな、わるいな練習中に」と言った。
「支障は無いとか言ってたけど本当に大丈夫なのか、炎堂と姐さんは」
「この変な引っ掛かりが取れれば良いんだけどな」
「ホントそれ。なんかスッキリしなくて気持ち悪い」
黒瀬は心の中でどうしたものかと悩んでいた。それは氷室も同じだった。
「シズク、スッキリしないなら尚更運動しようよ。ほらシングルスの練習もしよ?」
「……する。炎堂、今日は残りの時間全部シングルスよ」
「おう。じゃあ黒瀬、俺らもシングルスやるか」
「まあ、久しぶりに炎堂と本気でやるのもありか、」
結局残りの時間はシングルスに費やして部活を終えた。
☆ ☆ ☆
「じゃ、また明日なあーー」
「黒瀬え、希愛をちゃんと家まで送って行きなさいよー」
「はいはい。…姐さんって、疲れてても必ずコレは言うよな」
「生活習慣になってるんだろうね。じゃ、帰ろうか」
氷室はチャームを見せながら行ってきた。これは邪神探しに行こうか。という意味だ。
「ああ。じゃあ俺は西に、氷室は東で頼む」
2人は二方向に別れて散策を始めた。今回の敵はウォルトゥムヌス、何者にでも化けることが可能な邪神なので2人は眼ではなく感覚を研ぎ澄ませて神力の察知を重視した。
「どこだ、どこにいる、」
〜〜〜〜〜
「いったい何処に居るの」
氷室は学園から北北東に2・5km程の所でバイクを停めた。
「気配も全く感じないし、コッチには居ないのかな?」
周囲を一度見渡してながら神力も探ってみたがウォルトゥムヌスは見つからなかった。
「もう少し捜索範囲を広げてみるかな」
氷室はバイクに跨りヘルメットを被った。
(ククククク、此処に居るとも知らずに。よし背中はガラ空きだ)
「ヘアッ!」
何者かが杖を氷室の背中に向かって振り落とした。しかし氷室は焦る様子を見せずレーヴァテインで防いだ。
「なに⁉︎」
「残念でした。居ることは気づいてたよ」
氷室は杖を弾き剣で突きを与えてウォルトゥムヌスを後ろに押した。
「出てこなければ私から仕掛けてたけど、わざわざありがとうね」
「これはやられたね。でも君一人で俺に勝てるかな?」
“ディスティニードライバー、フレイヤ、ローディング”
「あまり舐めないでくれるかな。…変身」
“An icy shrine maiden wearing a pure white robe.仮面ライダーフレイヤ”
「さあ、行くよ」
「掛かって来な。ラグナロクが来る前にボコボコにしてやるから」
☆ ☆ ☆
「! フレイヤの気配。見つかったのか‼︎」
黒瀬は直ぐにブロードを開き出来る限り近い所にへと学園まで戻った。
「この時間帯は生徒が少ないから助かる」
☆ ☆ ☆
「くっ、」
「なかなかやるな!正直甘く見ていたよ」
「それはどうも」
(リーチの差が地味に厄介。黒瀬くんと二人でも倒せるかどうか、)
「いや、弱気になってたら勝てるものも勝てない」
“アポロン、ローディング、仮面ライダーフレイヤWITHアポロン”
(なるほど。弓ならリーチの差は関係なくなるな)
「だが甘い!」
「うわっ⁉︎」
ウォルトゥムヌスは杖を横にし回転させて強い風を巻き起こした。それによりフレイヤの氷の矢は全て戻されてフレイヤは自らの矢でダメージを負いその場に左膝を付いた。
「これぐらいで倒れるほど、やわじゃないか」
「まあそうだろうな」
余裕そうにウォルトゥムヌスは左手を掲げ手のひらを自分に向けるように180度左に回転させた。するとフレイヤは弓を離し両手で頭を抱え急に苦しみ出した。
「なに…これ…?」
(頭が、頭が痛い)
「私の魔術だという事ぐらいは分かるだろう?先の戦いでラグナロクにも使っていたモノだ。しかし何故だろうか、彼は多少思考速度が落ちるほどにしかダメージを負わなかった」
余裕綽々にウォルトゥムヌスはフレイヤの前を右往左往と歩いていた。
「くっ…負けない…こんな魔術ごときに」
「ふむ、あまり魔術を馬鹿にしない方が身のためだぞ」
ウォルトゥムヌスの言葉など相手にせずフレイヤは弓、アルテミスで斬り掛かった。
「だから…魔術をあまり馬鹿にしない方が良い」
アルテミスを左手で掴み右手の杖で強大な衝撃波を放った。
「きゃっ…!」
思いっきり飛ばされると、そのタイミングで黒瀬が現場に到着しバイクから直ぐに降りてフレイヤを受け止めた。
「わるい遅れた」
「黒瀬くん、」
「術を掛けられたのか」
黒瀬はレガリアリングを右手に移しラグナロクの神力を手に集中させフレイヤの頭の上に触れた。すると不思議なことに徐々に痛みが引いていった。
「とりあえず休んでろ。動けると思ったら手伝ってくれ」
“ラグナロク、ローディング”
「変身」
“仮面ライダーラグナロク。ダーインスレイヴ”
「なぜ、何故だ!何故私の魔術が消えたのだ⁉︎」
「簡単さ、ラグナロクの力は終焉。如何なる魔術も消す、最低でも緩和させる事が出来る、と思ったからやってみたんだが、成功したな」
「なるほど…。流石はラグナロク」
杖を一回転させウォルトゥムヌスは体勢を整えた。
「さあ、第2ラウンドだ」
ラグナロクはリーチの差は関係なしに突っ込んだ。だがそれは無謀などではなく、自身のスピードと反射神経に自信があったからである。
(昼間の戦いで分かったこと、それは俺のが圧倒的に速いということだ。だからお前の杖さえ躱せば俺に勝機はある)
「ハアッ!」
ラグナロクは杖を躱したり受け止めながら隙を見つけては剣で攻撃して行った。
「や、やるねーラグナロク。でも俺には秘策があるんだ」
次の瞬間、ウォルトゥムヌスは姿を消した。
「魔法でそこらの景色に溶け込んだか」
(だがこんなの神力を探れば直ぐに…)
「…感じない、だと」
(何故だ!ウォルトゥムヌスの神力を感じ取れない。まさか逃げた⁉︎いやそれはない)
ラグナロクが思考回路をフル回転していると背中に痛みが走った。
「な、いつの間に後ろに回っていたのか」
直ぐに斬り掛かると、また姿を消した。
「チッ、どこだ」
そこからラグナロクは四方八方から攻撃を喰らった。
「黒瀬、くん、」
(第三者側から見ても分からない。アイツ、どうやって、。兎に角、動かなきゃ、)
「あとは任せなさい。氷室」
剣を杖代わりに立とうとする氷室を誰かが左肩を抑えて止めた。
「…望月先輩?」
「…望月先輩、何故此処に?」
「何故って、2人を助けに来たからに決まってるでしょ」
望月は左手にあるディスティニードライバーを見せた。
「認められたんですね。おめでとう御座います」
「ありがとう氷室。つい1時間ほど前だけどね」
「ならもっと早く来れたんじゃないですか?」
ラグナロクに「専用バイクぐらいあるんでしょ?」と訊かれると。
「いやそれがさ、俺バイクの免許持ってないんだよね」
「「・・・」」
「それを颯に言ったらさ…」
〜〜〜〜〜
「免許持ってないんですか⁉︎なら乗っちゃダメですよ!技術無しで乗って万が一事故ったらどうするんですか!」
「いやでも黒瀬くんと氷室はナチュラルに乗ってるよ?」
「氷室と黒瀬の2人は免許持ってますから!」
「え、ウソでしょ⁉︎俺を騙そうとしてるでしょ⁉︎2人ともまだ高2だよ⁉︎」
涼風は黒瀬と氷室の2人が免許持っている経緯を説明した。
「黒瀬くんは神社の仕事等がある為、氷室は家の人に言われていたから。って本当?」
「「まあ、はい」」
「…俺も免許取ろうかなあ、」
ラグナロクは「良ければ俺のバイクの後ろに乗ります?免許取る暇無いですよね?」と言った。
「事実そうなんだよねー」
望月はここまで走って来たためその場にヤンキー座りをした。
「……おい、私を無視するな」
「あ、ごめんごめん。久しぶりに後輩たちと話せたから嬉しくてさ」
「先輩気を付けてくださいよ。コイツ魔法で姿を消して来ますから。その上感知出来ないし」
「なるほどね。じゃあ黒瀬と氷室は後ろにいるアスラたちを頼むよ」
後ろを見るとアスラが数十体いて挟み撃ちにされていた。
「…了解。氷室動けるか!」
「大丈夫、望月先輩をフォローしようか」
「ああ。先輩、ウォルトゥムヌスの相手は頼みますよ」
「ふふ、後輩にここまで頼られちゃえばやる気全開になるよね」
“ディスティニードライバー、インドラ、ローディング”
望月は胸の前でチャームを押して目の前で雷のようなマークを描き装填した。
「変身」
“A speedster with incredible speed running around in all directions.
(縦横無尽に駆け回る神速のスピードスター)仮面ライダーインドラ”
「初陣で少し緊張気味だけど、迅速に祓うよ」
「やれるものならな」
ウォルトゥムヌスは早速姿を消した。だがインドラは焦る様子は無く、武器を出した。
「あれは金剛杵のヴァジュラか?確かダディーチャの骨で造られたんだよな」
「黒瀬くんアスラに集中して」
インドラはヴァジュラを構えて雷雲を呼び寄せた。そして自身の周りに雷を無作為に振り落とした。すると見事にウォルトゥムヌスに当たった。
「ギャァアアアアア⁉︎⁉︎⁉︎」
「アイツ、普通に居たのかよ」
ウォルトゥムヌスはインドラの背後に迫っている所で落雷を喰らった。
「ある程度の範囲に自分の神力をばら撒くことで感知し難いようにしたんだね」
「バレては仕方がない…」
「こっからは実力勝負だ。本気で戦わなきゃ君は負けるよ」
インドラはヴァジュラを右手に電気を纏った拳で殴りまくった。
「望月先輩って近接格闘出来たんだ、すごい」
「てか金剛杵で防御出来んのが凄えよ。普通の神力の盾より密度が濃いんだな」
“エクソシスムタイム・ガイダンスタイム”
「一気に片付けるか」
「うん!」
“ラグナロクスラウター・フレイヤサークレッド”
ラグナロクの斬撃はアスラたちを爆散させフレイヤの斬撃はアスラたちを凍らせたのちに弾けた。
「ウォルトゥムヌスはもう望月先輩に任せれば良いよな」
「うん。初陣だし邪魔しないでおこうか」
2人は変身を解除した。
〜〜〜〜〜
「ハァハァハァ…。なんてスピードだ…」
「インドラは雷の神様だ。そりゃあ速いに決まってるでしょ」
望月はヘルメースもあるからもっと速くもなれるけど。と自慢げに言った。
「なるほど、フレイヤよりも遅くライダーになったのはそういう訳か、」
「察しがいいね。じゃあある程度の性能も分かったし、決めさせてもらうよ」
“ディヴァインタイム、インドラハピネス”
インドラは縦横無尽に駆け回り10発ほどのキックを与えた後にウォルトゥムヌスの真正面に戻り地面と平行にライダーキックをぶつけた。
「今の10発ほどの前降りは黒瀬くんを傷つけた分だ」
「随分とまあ、後輩思いだな、」
ウォルトゥムヌスの頭上から雷が堕ちて爆散した。そしてインドラは変身解除をした。
「先輩、改めておめでとう御座います」
「ありがとう氷室。黒瀬くんからは無いのかい?」
「…おめでとう御座います。ヘルメースはお返しします」
黒瀬からヘルメースチャームを受け取ると望月は少し悩みげな表情になった。
「どうしたんですか?」
「いや、これじゃあ黒瀬くんがラグナロク以外何も無いと思ってね」
「あー、別に良いですよ。むしろラグナロクの性能を限界まで引き出す練習が出来ますし」
「そうかい?まあ何か考えてはおくから安心してくれよ」
望月は報告書を提出しなきゃいけないから、と言ってブロードで帰った。
「じゃあ俺らも帰るか。…氷室?」
後ろを見ると氷室が頭を抱えて震えていた。
「どうしたんだ、そんなに震えて」
「黒瀬くん、一つ聞いて良い?」
「な、なんだ?」
「バイクの免許って18歳じゃなきゃダメだったの?」
黒瀬は先ほどの望月との会話を思い出した。
「いや、別に心配はないぞ。16歳から取れる免許だってあるからな」
「大丈夫なの?本当に?」
「ああ、大丈夫だからもう家に帰ろう」
黒瀬はこの状態じゃ今日はバイクで帰れないだろうと判断しブロードで家に送った。
☆ ☆ ☆
「ごめんね、わざわざ送ってもらって」
「ブロードの一つぐらい気にしないでいいよ。ゆっくり休めよ」
氷室は「ありがとう」と言って家の中に入った。黒瀬はそれを見届けてバイクに跨るとおそらく自分のことを呼ぶ声が聞こえた。
「ラグナロクの少年…で間違いありませんか?」
「貴女は、式神の時の、」
「またお会いできて光栄です。実は一つ用がありましてね。少し良いかしら?」
「大丈夫ですよ」
黒瀬はヘルメットを外してバイクから降りて千鶴のもとに歩いた。
「あの時は名前を言ってませんでしたね。黒瀬廻と申します」
「氷室千鶴です。あの時は我が家の式神を見つけて頂き感謝致します」
「いえいえ大したことではありませんよ。それで用とは何でしょうか?」
「ええ、実はその時のお礼をと思いましてね。これを差し上げます」
千鶴が目の前に出したのは中身が見えない一つのチャームだった。
「なんだ、これは、」
黒瀬は詳しく聞こうと千鶴のほうを見ると彼女は既に家の中に入ろうとしていた。
「千鶴さん!これは一体何ですか⁉︎」
「私にも詳しいことは分かりません。先代も何故だか我が家に古くから伝わっているモノとしか知っておりませんでした。ですが、私は貴方と会って本能で感じ取りました。貴方なら、このチャームを使えるはずだと」
千鶴は「これからの戦いに役立ててください」と言って扉を閉めた。
「…そうですか。ならヴァルハラに詳しく聞いてみるかな」
黒瀬はバイクに乗り家に向かった。
(千鶴さんは冗談を言う人には思えない。根拠のない本能で感じたと言ってはいたが、それは本当に感じたのだろうな)
黒瀬は自分にそう言い聞かせ貰ったチャームを右手にバイクを家に向かって走らせた。
ーーーーーーーーーー
次回予告
氷室千鶴から謎のチャームを貰った黒瀬廻。どうにか使ってみようと試行錯誤するが反応は一切なし。一体どうすれば良いのか?悩みを抱えながら生徒会室に入ると何やら氷室たち4人が作業を?どうやら生徒会としての仕事らしい
次回:生徒会への依頼
仮面ライダーラグナロク第八話『鳴り響く雷鳴』を読んで頂きありがとうございます。柊叶です。今回は本作において3人目の仮面ライダーが登場しましたが、一応予定上というか、作者的には3号ライダーの枠ではないので、その辺はご了承ください。
次回はサブタイトルを見ていただければお分かりだと思いますが、生徒会としての初仕事となります。是非楽しみにしていてください
柊叶