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第七話 『美しき白獣』

〜前回の仮面ライダーラグナロクは〜

 式神、八咫烏の力で巨人グレンデルを見事に撃破したラグナロク。その帰りに氷室を家まで送り届けると未だに氷室家の式神が見つからないのを察し、黒瀬は一目周りを見て居場所を特定した。その行動に先代フレイヤの千鶴は何かを察する。


「黒瀬くん、黒瀬くーん」

「ん?どうした?」

「いや、先生が起こせって言うから、ね?」

 黒瀬は眠い目を擦りながら前を見ると今にもキレそうな先生が立っていた。

「私の授業中にお眠りとは、いい度胸だな黒瀬廻」

「・・・すいません」

 一時間目から先生に怒られて、黒瀬達は移動教室をしていた。

   ☆ ☆ ☆

「しかし珍しいよな。黒瀬は眠そうにはしてても授業中は寝ないのに、今日は特別か?」

「疲れてるんじゃないの?ほら昨日は家の手伝いしなきゃで帰ってたでしょ」

 炎堂も姐さんも寝ていた黒瀬を怒ったりなどはせず、むしろ心配をしていた。

「・・・まだ眠いし顔を洗ってから行くよ」

「なら私が教材持っとくから二人は先に行ってて」

 水崎が荷物を持つと言うので炎堂と氷室は先に歩いて行った。

「別に姐さんも行ってて良いんだが?」

「義弟の世話を焼かない姐は居ないよ。なんだか最近は希愛に立場取られてる気がしてたから、今ぐらいは世話を焼きたいの」

「・・・そっか、ありがとう姐さん」

 黒瀬は少し水で濡らした顔を上げながら礼を言った。

「ほら、化学の先生は遅れると面倒だから早く行くよ」

「俺と姐さんの速さなら急がなくて良いだろ」

 久しぶりにちゃんと水崎と話を出来た黒瀬は少し笑みを浮かべていた。

   ☆ ☆ ☆

「なんだか四人で昼を過ごすのは久しぶりな気がするな」

「最近は黒瀬と希愛が生徒会のほうに行ってたからね。言ってくれれば良かったのに」

「言ってなかったのか?」

「なんか色々と聞かれそうだから、ちょっと誤魔化してた」

 氷室がテヘッ、みたいな顔をして笑うので水崎は悶えていた。

「可愛い、可愛すぎるんだけど、」

「娘とか孫の可愛いさって、こうゆうものなんだろうな」

「いやお前ら落ち着け。氷室はお前らの娘でも孫でもないからな」

 珍しく黒瀬がツッコミに回るので四人の場は謎のホワホワに包まれた。

「細かいなあ黒瀬は、アンタには分からないの?この希愛の可愛さが」

「まあ、分かるには分かるが、」

 一周回って氷室に可愛いと言っていることに気づかない黒瀬に気づいている氷室本人。

「まあまあとりあえず席を探そう」

 3人の間の空気を察した炎堂は断ち切るかのように言った。水崎が空いている場所を見つけたのでそこに歩いていると炎堂が一番後ろの黒瀬のもとに下がり耳元に近づいた。

「なあ黒瀬、その、ワザとなのか?」

「ん?何がだ?」

「無自覚なのか、。まあお前が自覚する日は程遠いと俺は思う。うん、そう思う」

「なんの話をしてるんだ?」

 炎堂からの探りに一切気付けない頭の良いはずの黒瀬。そんな中前に居る二人の会話も同じモノだった。

「ねえ希愛。その、いやちょっと待ってて」

 水崎は氷室をその場に置いて後ろに行くと、

「ごめん2人とも。今回は少し女子会したいから違うところで食べてくれる?」

「「ああ分かった」」

「ありがとう。じゃ、楽しんできます」

 突然の提案にも気にせず承諾した男子2人は外のほうに移動した。

「ねえシズク、なんで今日は2人でなの?」

「ちょっと希愛に聞きたいことができてさあ」

「聞きたいこと?」

 氷室は思い当たる節がないように首を傾げた。

「あのさ、希愛は黒瀬のことをどう思ってるの?」

「黒瀬くんを?うーんと、友達だと思ってるけど」

「ああ、えーとね希愛、そうゆう意味じゃなくてね。その、男としてどう見てるかっていう意味なんだけど、」

「男として?あ、」

 氷室はなんの意味なのかは分かっている様子だが恥ずかしいのか言葉には出さなかった。それを察したのか水崎は氷室が敢えて言わなかったことをツッコんだ。

「もしかして、黒瀬のこと好きだったりするの?」

「いやそれは違う」

「意外にも秒で答えるね。もう少しテンパったりしないものなの?」

「私が黒瀬くんに抱いている気持ちは尊敬と憧れだけだからね」

 氷室が自信ありげに答えると水崎は不思議そうな顔をした。

「黒瀬に尊敬を抱くってどういうこと?」

 その頃男2人組は…。

「黒瀬、俺ようやく分かったわ」

「…何がだ?」

「俺たち4人から女子2人が抜けると華が無くなるんだなって」

(お前は顔も良いから華は十二分にあるだろ。と言いたいが調子に乗ると困るしな)

「そうだな。男2人の食事は味気ないな」

「だよなあ。そう思うと水崎ってめちゃくちゃ華があるよなあ」

「・・・」

 リンゴジュースをストローで飲み続ける黒瀬は考えた。

(こいつわざとなのか?遠回しに姐さんは美人って言ってるようなものだぞ)

「まあ美人なのは事実か、」

「なんか言ったか?」

「なにも、」

(こいつ、やっぱり無自覚か)

「あ、そういや黒瀬、この後もし暇なら生徒会室に行って…」

 炎堂が何やら思いついたかのように黒瀬に提案をしようとすると、突然学校の南、つまり正門の方から謎の爆発音が聞こえてその方面からは煙が上がっていた。

「な、なんだいったい。爆発か⁉︎火事か⁉︎」

「どっちだって良いだろそんな事は。とりあえず周りの避難が先だろ。炎堂は全生徒の避難誘導を姐さんとしてくれ。俺は残ってる生徒が居ないかを氷室と確認する」

「分かった。生徒会としての初仕事だな」

 そこから4人は直ぐに集合しテキパキと仕事を始めた。黒瀬と氷室は2人から少し距離を置いて隙を見つけて爆発が起きた方に走って行った。

「氷室、涼風のやつは何処に居るんだ?」

「まさか学園に攻めて来るとは思ってなかったから上層部の方に行ってると思う」

「そうか、あとで記憶阻害が出来るし問題はないよな?」

「人数は多いけど今の私ならどうにでもなるよ」

 フレイヤの力を継いでから氷室はより頼もしくなっていた。

「お、いたぞ。…あのガーゴイルのような成り立ち、ガルグイユか、」

 2人が目を向けた先にいたのは竜をそのまま人型にしたような姿で翼も生えており、身体は灰色がメインで一部一部黒も混じっていてゴツゴツしていた。

「ガルグイユってことは、私とは相性のほうは最悪じゃない?」

「まあ、確かに、」

(伝説上ではガルグイユは口から火を吹き、水を吐き出して洪水を起こすことで恐れられた。となれば氷の力を使う氷室からすれば相性は最悪とも言えるだろうな)

「貴様らが、仮面ライダーか?」

 ガルグイユは近づいてきた二人の存在に気がつき話し掛けてきた。

「そうだけど、お前はガルグイユか?あと何しに来たんだ?」

「見ての通り貴様らを消しに来たのだよ。建物を壊したのは誘き出すためだ」

「成る程な。学校のことは涼風に任せとけば良いだろうし、行くぞ氷室」

「うん」

 “ラグナロク、ローディング・フレイヤ、ローディング”

「「変身」」

 “仮面ライダーラグナロク・フレイヤ”

「さて、学校にこれ以上被害を出さないためにも壁が欲しいな」

「オッケー、氷でよければ」

 フレイヤは校舎の高さぐらいの壁を校舎を守る為に自分たちの後ろに築いた。

「俺が攻める。氷室は援護を」

「了解。背中は任せて」

 ラグナロクはダーインスレイヴを出して突撃した。ガルグイユはそれを見て焦る様子は一切感じさせず口から火の弾丸を吐いた。

「やっぱり火を出すのか」

 ラグナロクは火の弾丸を避けながら近づいて行った。そして間合いに入り斬り掛かった。だがやはりガルグイユは焦る雰囲気は無く全て交わした。ラグナロクの攻撃が当たらないのを見たフレイヤはダメもとで両足を氷で拘束した。

「当たらないならスピードを上げるまでだ」

 “ヘルメース、ローディング。仮面ライダーラグナロクWITH Hermes”

「切り刻んでやるよ」

 ラグナロクはとてつもないスピードで剣を振りまくった。十秒ほどにも満たないほどの間に何万回も斬ったラグナロクは手を止めるとガルグイユは自身の形を保持できず爆散した。

「はぁはぁはぁ、」

(なにかおかしい…。呆気なさすぎる。おそらくコイツはまだ生きて、)

「黒瀬くん!」

「⁉︎ひむ、いや、フレイヤ!」

 ラグナロクはココは学校だという意味を込めて右人差し指を自身の口の前に立てた。

「あっ⁉︎ごごご、ごめん‼︎えっと、とりあえず学校全体に記憶阻害をするから、」

「頼む、俺は崩れたやつどうにかしとくから、そこらに退けるだけだがな」

 2人は変身を解かないまま行動した。記憶阻害をしたのちブロードボルテックスで理事長室に行き変身を解除した。そしてイザナギのメインホールに移動した。

「…よし、なんとかなったな」

「黒瀬くん凄かったね。まさかガルグイユを秒で倒すなんて、」

 氷室は先ほどの戦いを称賛しようと声を掛けると黒瀬は少し悩みげな顔をしていた。

「黒瀬くん、どうかした?」

「…いや、あまりにも呆気なさ過ぎて違和感が大きくてな」

(あの散り方。まるで水が飛び散るかのような)

「確かに言われてみればそうだね。これまでの流れで考えると送られてきた邪神は全員、上からの命令で来てた。となれば弱い者は送って来るとは思えないよね」

「ああ、それに今回の相手はガルグイユ。竜種となれば弱いわけがない」

「う〜ん望月先輩がいればな〜」

 氷室が頭を抱えながら悶絶していると涼風が入って来た。

「…何をしているんだお前は。上に報告して来たついでに見てきたがおそらく誰もさっきの騒動について覚えている者は居ないはずだ」

「そっかあ〜、良かった〜。実は結構心配だったんだよね」

 氷室はちゃんと全員の記憶を阻害できたかどうかが怪しかったようだ。

「まあ、ウチの生徒と教師の全員を相手にしたんだ。やっぱり氷室はすごいよ」

「そこに関しては、コイツと同じ意見だ。仮面ライダーとなってから更に実力が増したな。俺は未だに試験を受ける資格もない人間だがな」

 涼風は黒瀬の言葉に共感しながら氷室の実力を認めると共に己のことを卑下した。

「私はまだまだだよ。相性が悪いとはいえ黒瀬くんに頼り切っちゃったし、」

「それはお互い様だ。今回の記憶阻害の件では俺は氷室のなんの力にもなれない。まあだからWIN-WIN?ってことで良いだろ」

「ありがとう黒瀬くん」

 2人の会話が終わり沈黙が続いたのに嫌気が刺した涼風は咳払いをして報告を始めた。

「あー、先ほどのことを上に伝えて来たが、やはり学園内への侵入は予想外のことだったようだ」

「やっぱりそうなんだ。日頃っていうかいつもは理事長の結界で守られてるはずだものね」

「理事長?うちの理事長ってそんな事をしてたのか?」

 氷室の発言に黒瀬は初耳だな、という反応をすると涼風はため息をついた。

「お前、まさか知らないのか?」

「初耳だからな」

「まったく。一度しか教えんからちゃんと覚えろよ」

 涼風は黒瀬に玉帝学園の存在について教えてくれた。

「まずウチの学園は国が設立した公式邪神討伐団体、というのが一番分かりやすい例えだろうな。だからまあ優秀な人材の育成とかで才能の塊を集めてるとかは建前だ」

「マジかよ、マジで?」

「実は私も最近知ったんだ。でもね優秀な人材を集めるのらはちゃんとした理由もあるの」

 黒瀬は何故だという視線を涼風に向けた。

「俺たちはいつ死ぬか分からないからな。跡継ぎが不在のなか当主が死んだ場合、この学園の中から才能のある者、力を引き継ぐ器を次の当主にするんだ。事実、今現在アドラヌスとナーイアスの家は当主が不在の状況だ。もう十年以上な」

「なるほど。それで今回の理事長の結界が破られたってのは?」

「この学園、そしてこのホールには歴代の神々が残してきた貴重な資料などが保管されているんだ。だからそれを守るために理事長が常に結界を張っているんだ」

「それが破られたと。とはいえガルグイユ如きが破れるとは到底思えないな」

 黒瀬は先ほどの戦いを振り返りながら言うと涼風は当たり前だ、と言った。

「あんな邪神に出来るわけがない。だが一体誰が?」

 1つの疑問に頭を悩ます3人。答えが出ないため氷室は話題を変えた。

「黒瀬くん、こんな時に聞くのはどうかと思うんだけどガルグイユを倒す方法って思いついてたりはするの?」

「…一応は。でももう少し考えてみる」

「分かった。何か私たちでも力になれる事があったら言って」

「ああ」

「もうあと少しで予鈴が鳴るな。早く戻るぞ」

 涼風は風のブロードボルテックスを吹き起こして3人は理事長室に戻った。

「なにか分かったり思いついたりでもしたら必ず知らせろよな」

 涼風はそう言い残して自身の教室に歩いて行った。

「…俺たちも早く戻るか」

「うん。図書室にでも行ってたことにしよっか」

 2人は記憶阻害をしたので炎堂と水崎への言い訳を共有してから向かった。

   ☆ ☆ ☆

「…炎堂に姐さんが珍しく静かだな。雨でも降るのか?」

「ウェザーニュースだと今日一日は快晴だって」

 ボケに一切の反応を示さない2人を見て氷室は不安の表情を浮かべた。

「どうしよう黒瀬くん、この世の危機だよ⁉︎」

「氷室にとっての、この世の危機のレベル低すぎないか?」

 一向に何も喋らない炎堂に嫌気が刺した黒瀬は、

「おい、いい加減なにか言ったらどうだ?」

「……大変な事が起きているんだよ、黒瀬」

「大変な事?何がだ?」

 黒瀬がそう言うと水崎が憐れんだ顔でこちらを見てきた。

「黒瀬、その様子だと希愛もなの?アアあー‼︎」

「シズクまで、一体どうしたの?」

「……皆んなの記憶が無くなってるんだ」

 その炎堂の発言に黒瀬と氷室の2人は一瞬、目を大きく開いた。

「どういう、ことだ?」

 黒瀬が質問をすると水崎が代わりに答えた。

「なんかさっきの昼休みの時間に学校の正門の方で爆発があったのよ。それで正門側から生徒が走って来ると思えば、化け物ォー、怪物ー、って叫んでるし。なのに数分経ったと思ったらあら不思議。誰もそれを覚えてないし話題にもしていない。何か変じゃない?」

「なるほど。確かに変だな」

(お前ら2人が先ほどの騒ぎを覚えているのがな)

 ふと、そんな事を考えている黒瀬を横目に氷室は水崎の頭を撫でていた。

「シズク、怖い夢を見たんだねえ。よしよし」

(メッチャ子供扱いしてるし)

「ううぅぅうー、希愛ァァ‼︎」

(姐さんも姐さんだな、って、アレ?)

 黒瀬は水崎に当てられた氷室の手を目を細めてよく見た。そこには氷の粒が微かに飛び散っていた。

(慰めながら入念に記憶阻害を行ってるのか)

「でもさーこれが仮に怖い夢だとするじゃん?いくらなんでも鮮明過ぎない?それに炎堂も同じ夢を見てるってどういうことなの?」

「え、」

 氷室は小さい声で驚きの声を出した。

「確かになあ」

(…これは完全に氷室の記憶阻害が通じないと見ていいな。予鈴はもう直ぐ鳴るな)

 黒瀬はスマホを手に取りLiNEを開いて『ヴァルハラ、俺と氷室を廊下に呼んでくれ』とメッセージを送った。数秒後、教室のドアが開いた。

「お、いたいた。黒瀬に氷室、少し良いか?」

 ヴァルハラこと木花咲耶先生に呼ばれたので2人は廊下に出た。

「それで、一体何事なのだ?」

「その前に1つ言わせてくれ、本当に教師になったんだな」

「うむ。服などは全部望月のやつが用意してくれたぞ」

 後ろから氷室が「これならいつでも抜け出せるね」と生徒会らしからぬ発言をしていた。

「いつでも頼ってくれ。それで要件は何なのじゃ?」

「氷室の記憶阻害が炎堂と姐さんにだけ効いてないんだ。何故か分かるか?」

「なに⁉︎それは本当なのか⁉︎」

「はい。こんな事は初めてです」

 氷室はかなりショックを受けている様子だった。

「うーむ、望月の奴にでも聞いてみれば良いんじゃないか?」

「そうだな。あの人なら何か知ってそうだ」

 黒瀬は電話を開き望月の電話番号を押した。名前の部分には「変人」とあった。

《もしもーし。黒瀬くん、どうしたんだい?》

「少し聞きたい事があるので電話したんですけど今、大丈夫ですか?」

《平気だよ。それで聞きたい事っていうのは?》

 黒瀬はさっき起きた出来事をありのままに話した。望月は相槌をつきながら聞き、わりとあっさり答えを出した。

《それは多分ね、炎堂くんと水崎さんの2人が神の力を継げる器だからだと思うよ》

「「「え?」」」

《神の力を継げる者の特徴なんだよね。そうだ!黒瀬くん、2人を、よおく見てみると分かると思うよ。何か見えて来ないかな?》

 黒瀬は言われた通り炎堂と水崎を見つめた。すると2人の中に何かの幻影が見えた。

「火と水?」

《お、じゃあ2人はアドラヌスとナーイアスの器なんだね。ウチにいま丁度不在の神だ》

「…上に勝手に教えないでくださいよ?」

《分かってるよ。俺だって君と同じ気持ちだ。いつ死ぬか分からないこの世界に大事な人は巻き込みたくないよね》

「ええ、だからサッサと試験に受かって来てください」

《黒瀬くんにとって俺は大事な人には入ってないんだn、》

「ということみたいだな」

「途中で切っちゃったけど大丈夫なの?」

 黒瀬は少し考えたあと、まあ大丈夫だろ。と言ったので氷室は詫びのLiNEを送っていた。

「黒瀬くん、さっき望月先輩にはああ言ってたけど2人には何も言わないの?」

「言えばあの2人は絶対に力を受け継ごうとする。出来る事なら巻き込みたくはない」

「…そうだね。じゃあ私たちの秘密ってことで」

(我の存在忘れられてる?なんか仲間に入っている感じがしないのだけど?)

   ☆ ☆ ☆

「さてと、今現在このバド部の中に4人がいるのは久しぶりに見たぞ」

「本当にそれ。希愛が居るだけでいつもの体育館が数倍輝いて見える」

「姐さんは完全に重症だな」

「私って輝いてるんだ。すごい」

(天然なのかボケだと思って拾っているのか謎だな)

「ところで2人は久しぶりにシャトルを打つと思うが大丈夫か?」

「5分ほど打ってからお前らのほうに参加するので良いか?」

 黒瀬は氷室のほうを向いて言った。

「バドって3日打たないだけで感覚失うって言うし、そっちのが良いな」

   ☆ ☆ ☆

「ねえ黒瀬くん、今回の対抗策の結論はもう出たの?」

「今回、俺の出した答えは氷室の式神に頼りたいな」

「私の?どうして?」

「氷室家の式神のことだから氷の力を使えるっていう偏見なんだが、そこのところは大丈夫か?」

「あってるから問題ないよ」

 黒瀬は「そうか」と言うと話し始めた。

「邪神ガルグイユ、アイツは火と水が使える。本来なら氷とは相性が悪すぎるが、俺がまた戦えば爆散して逃げるとしか思えない。だから今回は、」

「私の式神で力尽くで凍らせようと、ってことかな?」

 黒瀬が言い終える前に氷室は考えを読んで先に答えた。

「まあ、そう言うことだな」

「火と水じゃあ八咫烏とも相性は悪いものね」

「だから今回は氷室頼りだ」

「うん。じゃあ感覚も戻ってきたしシズク達の所に行こっか」

 その後4人でミックスダブルスの練習を一時間半ほどし、各ショットを打って部活を終

えた。

「いやーやっぱり希愛がいる方がバドはやる気が出るわー」

「日頃から本気でやってくれよなあ」

 炎堂は水崎がやる気が低いなか練習していた事を知り軽くショックを受けた。

「炎堂、そんな時はレモンパイを差し出せば良い」

「やはりご褒美が無ければダメなのか?」

「当たり前だろ?姐さんだぞ」

「黒瀬くんと炎堂くんのシズクへの偏見が凄すぎない?」

 そう言われた黒瀬と炎堂は目を合わせると「いつも通りだよな」と言った。

「平常運転なんだ。まだ私、3人の知らないことが沢山あるな〜」

「少しづつ知っていけば良いだろ。俺らだって氷室のことを全部知ってるわけじゃないしな」

「そうだね」

「…黒瀬がまともなことを言ってるぞ」

「びっくりだねー」

 4人は校門の外まで歩き各々の家まで帰った。

「じゃ、また明日」

「じゃあね。黒瀬、ちゃんと送っていくのよ」

「分かってるよ。何回目だ、このやり取りは」

「はは、もはやデイリークエストだな」

 炎堂と水崎の背中が見えなくなるのを確認した2人は涼風に電話を掛けた。

「涼風、ガルグイユは見つかった?」

《いや、街中を散策しているが今のところは出現した様子は見られないな》

「そっか、どうする?」

「俺たちも街中を回ろう。バイクのがもっと広い範囲を見れるだろうし」

 黒瀬は言いながら不落ノ八咫烏を出した。

「確かに。涼風、聞こえたと思うけど私たちも探してみるね」

《ああ、分かった》

 2人はバイクに乗って氷室は東に、黒瀬は西に向かった。そして学校から南西7km辺りまで走った黒瀬は何かを察知し、バイクを停めた。

「…いるな。どこだ」

 黒瀬は小さいブロードボルテックスを開いてダーインスレイヴを出した。そして感覚を研ぎ澄ませて、場所の特定を試みた。

「…。…。…。……そこか、」

 黒瀬は左のほうに体を回すのと同時に建物に向かって剣を投げつけた。

「グオオォォ⁉︎」

「お、当たった」

 ガルグイユは液体状のまま地に落ちたので、体を元に戻した。

「な、なぜダメージが、」

「剣が当たる瞬間にお前の体を俺の神力で軽く覆い固めたんだ」

「なんと無理矢理な方法を」

「せっかく習ったんだから使わないのは勿体無いだろ?」

 “フェイトドライバー、ラグナロク、ローディング”

「変身」

“The fate of death and destruction of the gods. 仮面ライダーラグナロク”

「さてと、氷室が来るまでコイツをこの場に留めねえとな」

 ラグナロクは一歩一歩ゆっくりと近づき、残り2mほどの所でスピードを上げた。

「…やっぱり体を水みたいに出来るのか、そりゃダメージは入らないよな。その上、」

 ガルグイユが口を開けたのでラグナロクは右に動いた。

「火の攻撃を出すことも出来る。厄介にも程がある」

(やはり今回は氷室じゃないとな)

 そう考えていると後ろから氷の矢が飛んで来た。

「お、来たか」

「ごめん、少し遅れちゃったかな?」

「いや、今戦い始めたところだ。まったく問題ない」

「よかった〜」

 氷室はバイクから降りながらチャームを起動した。

“フレイヤ、ローディング”

「変身」

“An icy shrine maiden wearing a pure white robe. 仮面ライダーフレイヤ”

「えっと、今回は私の式神で良いんだっけ?」

「ああ、今回はもう式神の強大な物量押しだ」

「了解」

“冰狼、ガーディアン(守護者)召喚、冰狼”

「これが、氷室家の式神」

「冰の狼、綺麗、」

 目の前に現れたのは白く美しい毛並みを兼ね備えていて額には透き通る一本の冰のツノが生えている巨大な白獣だった。

「なんだコレは、」

「氷室、ガルグイユは体を液体状にして攻撃が通じない。とはいえ火も使うから冰狼の力で完全に凍らせられるか?」

「なるほど。了解」

 フレイヤは冰狼に、そう指示した。

「ワオオオォォォ!」

 冰狼は天に向かって咆哮した。そして口を大きく開いて激しい吹雪を撒いた。ガルグイユは負けじと口から火を放ったが結果は見ての通りガルグイユは完全に凍りついた。

「あの火力を上回る吹雪、まさかペットが飼い主の力より上なんてフレイヤの面子が丸潰れだよ…」

「式神をペット呼ばわりするな。ほらサッサと決めるぞ」

 ラグナロクはドライバーにあるチャームを、フレイヤはドライバーと剣にあるチャームを押した。

“フューネラルタイム、ディヴァインタイム、ガイダンスタイム”

 2人はチャームを回した。

“ラグナロククライシス、フレイヤハピネス、ヒョウロウサークレッド”

 2人は空に高く飛び冰狼から放たれる吹雪に乗ってガルグイユにライダーキックを力強くぶつけた。

「「ハアアアァァァァ‼︎」」

 2人がガルグイユの体を貫くと綺麗に砕け散った。

「倒されるという恐怖の声が聞こえないのは、なんか違和感があるし残念だな」

「凍らしたからね」

(黒瀬くん、恐怖の声を聞きたいんだ、)

 変身解除をしながら話していると後ろから涼風が来た。

「倒した後か。まあ別に構わんが、とりあえずお疲れ様」

「お疲れ様。見て見て私の式神メッチャ可愛くない?」

「ああ、そうだな。…黒瀬少し良いか?」

「ん?俺でよければ、」

 氷室から5mほど離れたところに黒瀬と涼風は移動した。

「あの様子を見ると今回の邪神の件を聞くのに時間が掛かりそうだからな」

「まあ事実、冰狼のやつ可愛いもんな。俺の八咫烏もだけど。で、聞きたいことは?」

「報告書だ。これまでもやっていただろ?」

「まあ一回だけな」

「そうか。なら、サッサと打ち込んでくれ」

 涼風からアイパッドを受け取った黒瀬はその場で立ちながらデータを打ち込んだ。

「パワー、スピード、能力、エトセトラ、。これでオッケー」

「早いな、ご苦労。じゃあ今日はもう帰って休め。俺は上に報告してから帰るからな」

「たまには俺が報告に行ってやろうか?」

「お前のような存在を上に送るなど、俺の心が落ち着かないから結構だ」

 涼風は恐らく氷室にも帰るように伝えてからブロードボルテックスで学園に向かった。氷室は式神を消してから黒瀬のほうに来た。

(涼風のブロードは風を見に纏う感じなのか、なんか良いな)

「帰ろっか」

「ん?ああ、。そうだ氷室、帰りにスイーツ屋寄らないか?」

「シズク達と行ったって場所?なんてお店?」

「シャルモン。癖の強い人が営んでるんだよ」

 氷室は「どんな癖があるの?」と聞くので黒瀬は「たしか水瓶座の人は好きじゃないらしい」と答えた。

「なんか気になるから行ってみたい!」

「じゃあ決定だな。奢るから好きなだけ選んで良いぞ」

「オペラとかあるかなあ?」

「シャルモンで食べるならオレンジとかのフルーツ系のがお薦めだな。ドリアンとかも」

 氷室が「メニューが豊富なんだね」と言うと黒瀬は「ああ」と答えた。食べて帰ると遅くなってしまうので2人はテイクアウトでケーキを買った。

「お母さんの分までありがとね」

「気にしなくていい、氷室の式神のお陰で勝てたからな。そのお礼だ」

「黒瀬くんって、結構ギブアンドテイクを大事にする人?」

「どうだろうな。昔から母さんに施されたら施し返せ、って言われてるからかな」

 氷室が「いい教育だね?」と疑問系で言うので黒瀬は「そうか?」と笑いながら答えた。

「あ、黒瀬くんの笑顔って何気に初めて見たかも」

「え、そうだっけ?」

「うん。笑ってるのは見たことあるけど100%の笑顔は初めてかも」

 そんなことを氷室が急に言うので黒瀬は氷室がいる逆の方向に顔を向けた。

「黒瀬くん、もしかして照れてる?」

「照れてない。夕日を見てるだけだ」

「そっか。そういう事にしとくよ」

「本当に照れてないからな?勘違いするなよ?」

 黒瀬があまりにも訂正しに来るので今度は氷室が思いっきり笑った。

「てかその言い方俺が日頃は本気で笑っていないみたいじゃないか?」

「じゃあ日頃の感じで笑ってみてよ」

 黒瀬は言われた通り笑うと

「やっぱ100%じゃないなあ」

「全然分からねえな」

ーーーーーーーーーー

次回予告

 2体の式神を使用可能になった組織イザナギ。そんな中ゾロアスターは新たな邪神を派遣する。送られて来たのはまさかの幻術使い?その幻術に苦戦を強いられるラグナロクとフレイヤ。其処に新たな神が舞い降りる。

 次回:鳴り響く雷鳴

 仮面ライダーラグナロク第七話『美しき白獣』を読んで頂きありがとうございます。柊叶です。今回は2号ライダーであるフレイヤの式神が登場しましたが、やはりイヌ科の生物は文字だけでも可愛いく感じますね。そして次回予告では、また新しい仮面ライダーが登場する予定なので、是非楽しみにしていてください。今後とも仮面ライダーラグナロクをよろしくお願いします。

柊叶

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