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第4話 『父と娘』

〜前回の仮面ライダーラグナロクは〜

 空を飛ぶ邪神イカロスを倒すために非道とも言える方法をとったラグナロクこと黒瀬廻。心身ともに疲れ切っていた黒瀬は自分の部屋に着くや否やベッドに倒れ込んでしまった。呆れたヴァルハラはなんと自身の身体を人型に変えた⁉︎なにが起きるんだ気になる第4話!!

 午前6時30分。いつも通りアラームが部屋に鳴り響いた。

「ん、ん〜〜もう朝か。早く着替えなきゃ…な」

 制服が掛かっているハンガーラックに手を伸ばそうとベッドから足を下ろすと目の前にあり得ないモノが写った。

「はっ?誰だ?」

 目の前には見知らぬ女性が椅子に座った状態で寝ていた。

「とりあえず、起こすか。すいませーん誰ですかー?」

 女性の左肩を掴み軽く揺すると女性は眼を覚ました。

「んー?おー黒瀬もう起きたのか?」

 見知らぬ女性なのに何故か親しげに返事をして来たので黒瀬は全てを察した。

「お前、まさかヴァルハラか?」

(よくよく見ればこの神力はヴァルハラのだ)

「な、なんで女性の姿になってんだお前」

「昨日、黒瀬が部屋に着いた途端にベッドに倒れ込んだから、ちゃんと寝かせるために姿を変えたのだよ」

 まだ眠いのかヴァルハラは目元を擦りながら答えた。

「ところで黒瀬、お前なんで制服を持っているのだ?今日は土曜日だぞ」

「……疲れてるかもな。年か?」

「今日は休め。未成年が何を言っとるんじゃ」

 休日なので私服に着替えてから黒瀬は一階に降りた。ヴァルハラの謎は放棄した。

「あら廻くん。土曜なのに早いわね」

「金曜のアラームが鳴ってさ。どうせならと思って」

「そうなのね。廻くんは今日予定はあるの?」

 何も無いだろうなと思いつつスマホを開くと昨夜の22時ごろに炎堂からLiNEが来ていた。内容は『明日4人で何処かに遊びに行かないか?』というものだった。

「・・・」

「4人って炎堂くんとシズクちゃんと、あと誰かいるの?」

 後ろから母が顔を覗かせた。

「氷室希愛っていう転校生がいて、最近はずっと一緒なんだよ」

「廻くんも仲良いの?」

「仲はいいよ。転入初日から一緒に帰ったりもするし」

 母は笑顔を見せた。息子に一緒に帰る友達が出来たことが相当嬉しかったのだろう。

「遊びに行くんでしょ?」

「え?ああ、行こうかな、」

「じゃあ早く準備しないとね。何時に集合なの?」

「8時半に駅前だってさ。何処に行くかは決めてないらしい」

   ☆ ☆ ☆

「ごめん皆んな待った⁉︎」

 時刻は8時半ちょうど。氷室は走りながら謝った。

「全員いま来たとこだから謝罪なんかいらないよ。」

「そうなの?ならよかった、。って、絶対皆んな待ったよね?」

 息を整えようと背中を伸ばし3人を見た氷室は唖然とした。目の前にあった光景は例えるならば女王と従者とも言える光景だったからだ。

「本当に待ってないぞ。水崎の言う事を聞いていたら一瞬だからな」

 駅内にあるコンビニでお茶を買って来た炎堂。

「姐さんの髪を結っていれば時は直ぐに過ぎる。待ったという感覚は一切無いから安心しろ」

 ゴム紐を受け取り三つ編みを作る黒瀬。

「黒瀬くんの女子力が高すぎる…。料理も出来るんだっけ?」

 お菓子ぐらいしか作れないけどな、黒瀬は答えた。

「すごいなあ。ところで今日は何処に行くの?」

「私もそれ知りたい。炎堂、場所は決めてるの?」

「まあ今回は無難に遊園地にでも行こうかと思っていたんだが、どうだ?」

 反対意見があるかどうかを確認しようと炎堂は3人の顔を見た。首を振ったりなどと分かりやすい身振り手振りなどは無かったが水崎が黒瀬のほうを見て言った。

「黒瀬はどうなの?人が多い所とか苦手じゃなかった?」

「別にお前らが居るから平気だよ。てか今日の主役は氷室だろ?」

 人が多い所は平気かという視線を送ると、

「私も平気だよ」

「じゃあ遊園地に決定だな。因みに動物園もセットだから楽しいぞー」

 やったー、と言いながら氷室は炎堂の後をついて行った。

「マジで希愛って天使…」

「はいはい、歩いて姐さん」

 氷室の可愛さに想いを馳せる水崎の手を掴みながら駅まで引っ張る黒瀬。電車の中では至って普通の会話をした。

「氷室はもう学校に慣れたか?」

「うん。クラスの皆んなが優しいから直ぐに慣れたよ」

「令和のマザーテレサ?」

「聖母って言いたいのか?」

 電車に乗って10分ほどで4人は目的の場所に着いた。

“○○駅、○○駅”

「お、着いたな」

「わ〜楽しみ〜」

「歩くマイナスイオン…」

「マイナスイオンは身体に良いからな。ほら早く降りるぞ」

 先に行く氷室に両手を合わせて拝む水崎の背中を押しながら黒瀬は降りた。駅を出て少し歩くと遊園地が見えてきた。

「此処が天空遊園地だ。アトラクションは当然、奥には動物園もあって、ふれあいコーナーもあるぞー」

「すごいすごい!2人も早く行こ!」

「私いま天使に誘われてる?」

「もう救いようがねえな」

(…天使っていうより神になるやつだけどな)

 4人は入場ゲートにある券売機の列に並んだ。数分後には順番が回ってきた。

「いってらっしゃーい。次のお客さま…。びっ!?」

(美男美女!今日は私の命日か!?)

「び?まあいいや、子ども4枚くださーい」

 スタッフから入場券を貰うと炎堂、氷室、水崎、黒瀬の順で入って行った。

「い、いってらっしゃーい」

 3人は元気よく行ってきます、と返し黒瀬は帽子の鍔を持って深く被りながらいってきます、と答えた。スタッフは悶えた。

「頑張ったな黒瀬、前は行ってきますを言えなかったもんな」

「えらいえらい。ヨシヨシしてあげる〜」

「黒瀬くんって本当に人見知りなんだ。私とは初日でも普通に話してくれたから分からなかった」

「黒瀬は人見知りと言うか警戒心が強いって言うか、何だろうな?兎に角まともに話せるようになるには最低でも一年は必要だな」

 苦労したよね〜と水崎は懐かしそうにしていた。

「そんな俺の話はいいからどれに乗るか決めるぞ」

「お、珍しく黒瀬が乗り気だな」

「俺の話をされたくないだけだ。氷室はどれか乗りたいものでもあるか?」

 入場ゲートで貰った地図を氷室に渡すとジッと見つめ出した。

「んん〜やっぱり最初はジェットコースターかな!」

「よし行こう!こっちだぞ氷室!」

「炎堂、真逆だぞ。そっちはお化け屋敷だ」

「そっか!氷室こっちだそうだ!」

 テトテトと炎堂の後ろを氷室はついて行った。

「ぴょこぴょこ歩いて行く希愛くぅわいい…」

「せめてニヤけはやめてくれ姐さん…」

 最初はジェットコースターに乗り、その後はコーヒーカップやお化け屋敷などと定番を乗りまくった。

「どうだ氷室、満喫できたか?」

「うん!スっごく楽しかった!」

 まだ学校では見れていない100%の笑顔を氷室は見せてくれた。

「いと…尊き笑顔…」

「サングラス必須案件だな…」

 ツッコむのを諦めて黒瀬自身もサングラスを着けてボケに転身した。

「もう12時になるし一旦お昼にするか。何処で食べたいとかあるか?」

 3人とも特になしと言うので炎堂は近くのフードコートを選んだ。

「此処は席も沢山あるから良いと思ったけど、思いのほか混んでるな」

 場所を変えるかどうか、とでも言っているかのような視線を後ろ3人に送ると、

「私は構わないけど、希愛は?」

「大丈夫だよ。黒瀬くんは…何処に?」

 店に入るまで氷室の右に居たはずの黒瀬がおらず3人は辺りを見渡した。すると黒瀬は外におり、何やら小学生ぐらいの女の子と一緒にいた。

   ☆ ☆ ☆

「そうか、お父さんが何処に居るのか分からないのか」

 女の子は今にも泣きそうな声とともに小さく頷いた。どうしたものかと黒瀬が悩んでいると、

「黒瀬!」

「炎堂」

「その子は迷子か?」

「ああ。店に入ろうとした手前でこの少女に袖口を掴まれてな。話を聞いてたんだ」

 炎堂の後ろから水崎が誰を探してるの?と訊いたので、黒瀬は父親、と答えた。

「じゃあ迷子センターに連れてったほうが良いわね。お父さんも探してるでしょうし」

「だな。黒瀬、迷子センターって何処にあるっけ?」

「…お前は此処に幾つから通ってるんだ?」

「3歳だが?」

 ため息をつきながら黒瀬はアッチだろ、と指差し少女の手を掴み歩こうとすると、

「やだ…」

 少女の口から小さくそう聞こえ炎堂、水崎は同時に、え?と言った。それに対して氷室は理由を問おうとすると黒瀬がそれを遮り優しい声で答えた。

「そうか。なら何処か行きたい所はあるか?君が決めていいぞ」

 少女は少し驚いた顔をしたが、しばらくするとまた小さな声で「動物園」と答えた。

「じゃあ動物園に行くか。3人も良いかな?」

「どうせ午後は行く予定だったし良いぞ」

 なあ?と炎堂は2人に言うと2人もオーケーしてくれた。

「じゃあこれから一緒に動物園を回る仲になる訳だし、君の名前を教えて貰っても良いかな?」

「……たかやまここな」

 スマホをポッケから出してメモを開き黒瀬は予想で漢字を打った。

「この字で合ってるかな?」

 スマホには高山心菜とあった。迷子の少女こと心菜はまた小さく頷いた。それを見て一安心した黒瀬は膝を曲げた状態から立ち上がり炎堂の右肩に右手を添えて耳元に近づき、

「あとは任せたぞ炎堂。俺もう、げんかい…」

 と震えた声で言った。

「やっぱり無理してたんだな。よく頑張ったぞ」

 どうやら黒瀬は子どもの扱いに慣れていた訳ではなかったようだ。

「あんたこんな小さい女の子相手でも警戒してるの?」

 黒瀬は「俺は基本的に性悪説推しだ」と答える。

「いいか炎堂、あの子の意見を尊重してやれよ。さっきみたいに何処に行きたい?みたいな感じでな」

「おう?」

「私が代わりに理解したから任せな」

 頼りない炎堂に変わり水崎が理解してくれたようなので黒瀬は心菜を2人に任せて近くのベンチに腰を下ろした。すると左側に氷室も座った。

「黒瀬くんお疲れ様」

「おお、もう今日は誰とも会話したくない。一日のメンタル使い果たした」

「はは、もう少し休んだら動物園のほうに行こうか」

「ん…わかった…。今日の主役は氷室なんだから先に行っても良いからな」

「お気遣いありがとうございます」

 こちらの2人は10分ほど休んでから動物園のほうに向かうことに決めた。

「財布渡すから水買ってきてくれるか氷室」

「いいよー」

 そのころ炎堂と水崎、そして心菜の3人は動物園の中央ら辺に来ていた。

「見ろよ水崎、虎がいるぞ!」

「なんで心菜ちゃんよりアンタのが楽しそうなのよ」

 半ば呆れながらも嬉しそうな表情を水崎はしていた。

「それにしてもお父さんらしき人はいないなあ。迷子の放送も流れねえし」

「確かにそうね。まだ自分で探してるのかしら」

「だとしたら心菜ちゃんが頼りだな。お父さんが居たら教えてくれるかい?」

 心菜はまた小さく頷いた。そのことを確認できた2人は他の動物のコーナーに移動した。

   ☆ ☆ ☆

「無理に話さず私か2人のどっちかに任せてくれても良かったのに」

「あの子に適した対応とるのはあの2人には難しいと思ってな」

   〜〜〜

「そろそろ行くか」

「まだ5分しか経ってないけど良いの?」

「ああ、俺が最初に助けを求められたのに炎堂たちに任せるんじゃ情けないしな」

 あまりにも似合わないことを言うので氷室は一瞬ポカンとした。

「黒瀬くんって結構律儀なタイプ?」

「なんだ?似合わないか、こう言うこと言うのは…」

 動物園のほうに歩き始めたばかりなのに、2人の足は直ぐに止まった。

「氷室、周りへの対処は任せて良いか?」

「うん、少し強い衝撃を脳に与えて気絶と同時に記憶もなくせば問題無いと思う」

「安置への避難は俺がしよう」

宿命之帯(フェイトドライバー)

「黒瀬くんを消しに来たのかな?」

「それが一番あり得るな」

(モルペウスの時みたいに敢えて人が多く居る場所を狙ったか。)

「コッチを見てるだけで動きはないな。敢えて仕掛けるか?」

「遊園地内で戦うよりかは良いかも」

「よし」

 左手の薬指にめている操力之指輪(レガリアリング)を右手の中指に差し替えて黒瀬は転移之渦(ブロードボルテックス)を展開して邪神がいる建物の屋上に移った。

「お前は誰だ?何しに来たんだ?」

「私はエリス。貴方を消しに来ましたの」

(エリス。争い、不和の女神か)

「確か殺戮の女神とも言ったな」

“ラグナロク、ローディング”

「変身」

“仮面ライダーラグナロク”

 ラグナロクは魔剣ダーインスレイヴを右手に持ちエリスは格闘技の構えをした。ラグナロクは一瞬で間合いに入り込み左下から右上へと斜めに剣を振るったがエリスは身体を反らせて、それをかわした。

(反応が速い!全部躱されてる。このままいけば持久戦で俺のほうが不利になる)

「スピード勝負だな」

“ヘルメース、ローディング。仮面ライダーラグナロク WITH Hermes”

「テュールを葬った力ですか」

「まあ、一応な」

 ラグナロクは走る態勢を作り、次の瞬間にはエリスに突撃した。流石の速さと言うべきかエリスは目視でラグナロクの居場所を特定出来ず攻撃を喰らい続けた。

   ☆ ☆ ☆

「娘を探してるような大人誰も居なくね?」

「本当ね。むしろ一人を満喫してる大人が多い」

「もしかしたら遊園地のほうに居るかもな。黒瀬と氷室はまだ休んでるかもだし、頼んでおくか」

「それが良いかも、私から希愛にLiNEしとくわ」

   ☆ ☆ ☆

「このままでは防戦一方に」

 エリスは両腕を一気に開き覇気を放った。ラグナロクは数メートルほど飛ばされた。

「イカロスの風以上だな…」

「私の眼でも追えぬようにスピードで挑むのは良い選択でした。でも一つ一つの斬撃に重みが足りませんね」

「なんだよ。誰かに俺の評価をして来いとか頼まれたのか?」

「いえ、ただの嫌味ですよ。では」

 エリスは右手を腹部に添えて一礼をし、後ろを向いて何処かへ行った。

「ストレートに嫌味って言われんのイラつくな」

(一体奴は何をしに来たんだ。俺を消しに来たと言うのに、トドメを刺さずに立ち去った)

 ラグナロクは変身を解除して氷室のもとに戻った。

「わるい氷室、逃げられた」

 お疲れ様と氷室は黒瀬に労いの言葉を送りつつ水を渡した。

「俺のことを消しに来たとか言っていたけど、それは嘘として考えたほうがいいかもな」

 水を飲みながら黒瀬は何があったかを氷室に報告した。

「そっか。確かに、黒瀬くんを消しに来たなら逃げる必要はないし、なにより一対一で戦わずに人が多いコッチで戦うほうが有利だものね」

「ああ。とりあえず詳しいことは炎堂たちの所に向かいながら話すか」

 氷室からショルダーバッグを受け取り動物園の方に歩き始めると、氷室がそれを止めた。

「あ、黒瀬くん。ちょっと待って!」

「? どうした?」

「シズクからLiNEが来てた」

 どんな内容が来ているのかと黒瀬はスマホの画面を見せてもらった。

『コッチには娘さんを探しているような親がまだ見つからないから希愛たちは逆の方を探してくれる?』

「まだ見つかってないみたいだね」

「不思議だな。親はまだ迷子センターに頼みに行っていないのか?」

 どうする?と氷室は言った。黒瀬は少し考えるように腕を組んだ。

「…探すしかないな。氷室はそれで良いのか?」

「うん。困っている人は放って置けないもの」

「じゃあ姐さんにはそう伝えといてくれ」

「了解」

   ☆ ☆ ☆

「お、返事きた。探してくれるみたい」

「そうか。一周したら黒瀬たちの所に戻るか」

 心菜は何も言わずに2人に着いて行った。

   ☆ ☆ ☆

「なんでお父さんは自分の子供なのに探さないのかな?」

 ふと思いついたかのように氷室は言った。

「氷室もそう思うか?」

「うん。だってこれだけ時間が経ってるのに迷子のアナウンスが一つも無いんだよ。これはもしかしたらワザと探してないかもしれないよ?」

「やっぱりそうだよなあ。となると探すのは相当難しくなるな」

 氷室も同意見らしく、そうだね、と言った。

(どうやって探すか…。彼女が居れば一目で分かるんだがなあ)

 俺が探し方に悩んでいると、それは氷室も同じだった。

「いっそのこと心菜ちゃんの名前を叫んで反応が怪しかった人に声を掛けてみる?」

「やってみるか。氷室頼む」

「いや、黒瀬くんもやるんだよ」

 極力声を張るなどという作業をしない黒瀬だが、今回ばかりは自分が元凶で親探しをする事になったので大人しく折れた。

「じゃあいくよ、せーのっ!」

「「心菜ちゃーーん!!」」

 当然、急に大声で誰かの名前を叫びだしたので周りの人たちは不思議そうな目で2人を見た。それから何回か名を呼びながら進むと1人怪しい男性が居た。

「黒瀬くん、ゴー!」

「はいはい」←100m走9・9秒

 その男性のもとに黒瀬は走りだした。男性は一瞬驚く様子を見せたが逃げる前に黒瀬に捕まった。

「貴方もしかして、高山心菜さんの父親ですか?」

 男性は少し俯きながら震える声で、はい、と言った。

「黒瀬くん、その様子だとその人なの?」

「ああ、。氷室…」

「なに?」

「あとはお願いします」

 氷室は全てを察してあとを引き継いだ。氷室は男性を連れて少し離れた広場に移動を促した。

「高山さん。とりあえず此処に座りましょう」

「はい」

「お名前を伺っても良いですか?」

「高山耕助と言います。貴方たちは、いったい、」

 耕助は震える声で氷室と側に立っている黒瀬に質問をした。

「私たちは心菜ちゃんに頼まれた耕助さんを探しに来ました」

 心菜に?と耕助は驚きながらコチラに顔を向けた。

「黒瀬くんが連絡をしてくれたのでもう直ぐ此処に来ると思いますよ」

 本来なら喜ぶはずなのだろうが耕助は真逆の反応をした。

「やっぱり、ワザと探さなかったんですか?」

 氷室の冷たい声に、耕助は顔を背け地面を見つめた。少し間をおいてから、耕助は全てを話した。

「探さなかったんじゃない。ワザと置いていったんだ」

 これまでワザと探さなかったのでは、と考えていた2人は言葉を失っていた。耕助は話を続けた。

「私は2年前からシングルファザーなんですが、娘の学童への迎えがあるため定時には退勤しなければならないのです。しかし定時に帰るのは自分1人で、ここ最近職場では嫌味を言われ上司からは見放されてしまい完全に出世コースからも外れてしまったのですが、私はその原因を全て娘の所為だと考えるようになり《この子さえ居なければ》という感情に支配されてしまい気付いた頃には、心菜をその場に置いていっていました」

 私は最低な父親です、と耕助は両手で顔を覆った。

「耕助さん…」

 どうしたら良いのか分からず氷室は黒瀬に視線を送った。その視線を受け取った黒瀬は、はーっと溜息をつきながら背中を掛けていた木から離れて耕助の前に気合いを入れてから左膝を付いた。

「もう心菜さんと一緒に居たいとは思わないんですか?」

「え…!?」

 耕助はビクッと顔を上げた。

「それは…」

 耕助は黒瀬と氷室から顔を逸らすように左下を見た。

「心菜さんとは、別れる前に動物園に行こうとしてたんですよね?」

「何故、それを?」

 別れる前に次は動物園に行こうと話していたんです、と耕助は言った。

「心菜さんに何処に行きたいかと訊いたら動物園と答えていました。あの子は貴方と一緒に行きたかったんですよ」

「そんなっ、」

 耕助はまた両手に顔を埋め、心菜、心菜と嘆いた。

「後悔しているなら、早く会いに行ってあげてください。あの子は貴方をずっと待っています」

 そう言いたい事を全て言い切った黒瀬は立ち上がり最初に居た木に戻った。そして氷室のほうに向かって小声で、「あとは頼んだ…」と呟いた。

「お疲れ様」

 あとを託された氷室は再び耕助に向かい合った。すると耕助は無理です。と言った。氷室は直ぐに質問した。

「何故ですか?」

「一度でも娘を捨てた身です。もう娘に合わせる顔が無い…」

 氷室はもう何も言えない様子だった。それを黒瀬は雰囲気で感じとっていた。するとそんなタイミングで、ある声が聞こえた。

「黒瀬ー、氷室ー」

「あ、結構来るの早い」

「あいつ声デカいな。周りに迷惑だろ」

 この機を逃せば2度と耕助が心菜に振り向かなくなると感じ取った黒瀬は耕助の左肩に自身の右手を置いて諭した。

「本当に必要なのは娘さんに向ける顔じゃなくて、娘さんに対する貴方の、父親としての誠意なのではないかと俺は思います」

「誠意、ですか?」

 黒瀬は一度頷いた。耕助はそれでもまだ立ち直れない様子だった。もう自分たちでは耕助を立ち直させる術は無いと思っているなか炎堂と水崎、心菜が到着しようとしていた。そんな中、黒瀬と氷室の脳内に一つの衝撃が走り二人は目を合わせた。

((この気配は))

 突如、先ほど戦ったエリスが炎堂たちと黒瀬たちの間に飛来した。その衝撃で土煙が舞った。

「な、なんだーー!?!?」

 向こうにいる炎堂は困惑した叫びをあげており、水崎は「心菜ちゃん!」と守るかのように態勢を低くして腕で包み込んでいた。

「チッ!」

(この状況じゃ変身は出来ないな、エリスの奴もそれを考慮した上で狙って来たんだろうしな)

 どうしたものかと黒瀬は立ち悩んでいると、

「黒瀬くん、今すぐ変身して」

「は?いやこの状況じゃ人目が、あいつらも居るし」

 そう言うと思ったよ、とでも言うかのような顔を氷室は見せた。

「問題無いよ。私には記憶阻害が出来るから」

「…成る程。イカロスの時に使ってたやつか」

 黒瀬は迷いをなくしドライバーを装着した。

“ラグナロク、ローディング”

「変身」

“仮面ライダーラグナロク”

 エリスの奥にまた人間ではない者が現れると炎堂と水崎は更に困惑した。

「えええーーー!?!?くくく、黒瀬が!!」

「仮面の戦士なの!?」

 魔剣を取り出しながら、

「本当に記憶阻害出来るんだよな?」

「大丈夫だから思う存分戦って来て。耕助さんは私が着いてるから」

「頼む」

 ダーインスレイヴを右手に持ち左手で支えながらエリスに近付いて行く。

「俺が変身出来ない状況になるまで待っていたようだけど、残念だったな」

「ええ、本当に。ですがこうなれば仕方ありません、いま此処で消させてもらいます」

 ラグナロクとエリスは再びぶつかり合った。ラグナロクはこれまでと同様に最初は剣で戦いを始めた。先ほどの戦いでは全ての攻撃が躱されたので剣を振るう速さをラグナロクは上げていた。その為かエリスは攻撃を数発喰らっていた。

(先ほどより速度が上がっていますね)

 エリスは何かを確認するようにラグナロクの足元に一瞬、視線を移した。

(やはり、神力で足の筋力を増強する事で速さを上げていましたか)

 剣を左手で受け止め、右拳を腹部に入れた。ラグナロクは数歩後退した。エリスは剣を左に投げ捨て戦闘態勢に入った。

「本気で来るってことか」

 ラグナロクは氷室のほうに視線を送った。これは一箇所に集まっていたほうが良い、という意味が含まれていた。当然、氷室はその意味をしっかり受け取っていた。

「炎堂くん、2人を連れてコッチに!」

「え?あ、ああ分かった!」

 炎堂も一箇所に集まっていたほうが黒瀬も戦いやすいのだろうと察した。3人が移動するなか、ラグナロクは少し押され気味だった。

「神力による強化でもこれか、」

「そろそろ限界でしょうし、トドメに、」

 全てを言い終える前にエリスは言葉を止めた。

「そう言えば貴方が斃れた後は其処にいる彼女が戦うのでしょうかね?」

「? 何が言いたい」

 神力の操作に頭を使っていた為かラグナロクは息を荒げながら言った。そして同時に前の戦いでの自分の発言を思い出した。

『確か殺戮の女神とも言われてたよな』

「まさかお前、」

「ええ、貴方の言う通り私は殺戮の神でもある。戦うからにはその場に居る者全てを消し去るのが礼儀というもの」

 エリスは氷室たちのいるほうに身体ごと視線を移し、ゆっくりと歩み始めた。

「待て、」

(ヘルメースで一気に、いやこの状態で高速移動すればその後動けるか分からない)

 ラグナロクが直ぐには動けないことを見て分かった氷室は前に出た。

「まずは貴女が相手ということですか?」

「ええ、そうよ」

 氷室は操力之指輪(レガリアリング)を右手の中指に移し替え氷の弾丸を放った。しかしそんな攻撃はエリスにとっては蝿が止まるのと同じだった。

「仮面ライダーでもない貴女は相手としても見れませんね」

 急に飽きが来たのかエリスは10体ほどのアスラを召喚し氷室たちを襲わせた。ラグナロクは左膝をついている状態でその場に留まっていた。

「…もう考えている暇はない」

“WITH ヘルメース”

 ヘルメースの高速移動で全てのアスラを倒すと直ぐにラグナロクに戻った。

「お前の相手は俺だ。他の奴には手ェ出すな」

「己の身の状態を考えずに動くとは、実に愚か、」

「関係ないな、そんなことは」

 ラグナロクはエリスの言葉を遮り真っ向から否定した。

「自分のとった行動が愚かなのかどうかは、やってみてからでないと分からない。やった結果、最高になるかもしれないし、最悪になるかもしれない。悔いのない選択を必ず出来る完璧な人間なんて存在しない」

 ラグナロクはエリスに対して訴えているつもりだった。でもこの言葉は確かに耕助の心に響いていた。

「……」

(私は父として、心菜に、まだ何か出来るのだろうか?)

 未だ思い悩む耕助にラグナロクは言葉を送った。

「人間誰しも一度は必ず選択を誤る。それで誰かしらに迷惑をかけたりもする。耕助さん、貴方みたいにな。さっき言ってましたね?娘に合わせる顔がないと。必要なのは合わせる顔ではなく、これから貴方が示す態度だと俺は思います。子どもっていうのは常に親の背中を見て育つんですから」

 持論ですがね、と言い残しラグナロクはエリスとの戦いに戻った。

「……心菜、少しパパの話を聞いてくれるか?」

 心菜は大きく頷いた。安心したのか、耕助の強張った顔は少しばかり崩れた。

「ごめん!パパは最低なことをした。今日心菜は迷子になった訳じゃない。パパがワザと迷子にしたんだ。難しい話だから簡単に言うと、パパの身の回りで起きた嫌なことを全部心菜に八つ当たりしたんだ」

 何一つ誤魔化さず打ち明ける耕助の姿勢を3人は見守り1人は聞いていた。

「自分の行動に責任を持たず途中で投げ捨てるとは、人間は愚かな生き物ですね」

「何言ってるんだお前は?そこが神様のような完璧な生命体とは違う、未完成な人間の、尊ぶべきところだろ?」

祓魔ノ刻(エクソシスムタイム)終焉ノ一閃(ラグナロクスラウター)

   ☆ ☆ ☆

「謝って済むことじゃないと思う。でも、もし許してくれるなら、」

「いいよ」

 耕助が言い終える前に心菜は自ら歩み寄り耕助の首元を小さな腕を回した。

「私はパパのこと嫌いじゃないよ?」

 いくら耕助が簡単に説明をしたとしても、心菜はまだ小学生。今日何が起きたのかも全く理解はしていないのだろう。でも耕助にとっては一生悔やんでも悔やみきれない事だった。だからこの心菜の嫌いじゃないという言葉は何よりもの救いになった。

   ☆ ☆ ☆

「仲直りは出来たか、ならあとはお前を斃すだけだ」

「必殺斬りも通じない私をどう斃すつもり、で、」

 とことん嫌味をぶつけるエリス。しかしその煽りはラグナロクの耳には届いていなかった。

(なんだ?神力の上昇?いや違う。まるで、嘗てのラグナロクを眼にしているような)

 ラグナロクの全身を突如と黒の陰のオーラが包み出した。ラグナロクの神力の色は無属性を意味する白銀色。つまりコレは神力による肉体強化ではないということを示している。

「行くぞ」

 捕食者が獲物を捕らえたかのような鋭い眼光を向けるとエリスは直ぐさま戦闘態勢に移った。しかし気がつけばエリスの身体は宙に浮いていた。

「はっ?」

 ラグナロクの攻撃と速度が速すぎるが故に全てのダメージが遅れてエリスを襲った。

「ギャアアアァァァァ!!!」

(一体何が!?何が起きている!?)

「華々しく、散れ」

 何もない虚空を見つめるような雰囲気でチャームを起動した。

葬送ノ刻(フューネラルタイム)終焉ノ滅波(ラグナロククライシス)

 宙で慌てふためくエリスをラグナロクのライダーキックが貫いた。

「あっ、」

 己の身に何が起きたのかを瞬時に察したエリスは静かに爆散した。それを見て確認した後にラグナロクは変身解除をした。

「…疲れた」

   ☆ ☆ ☆

「終わっ、たのか?」

「そうみたいね」

 戦いが終わると炎堂と水崎が黒瀬ェーと叫びながら走り出した。直ぐさま氷室は記憶阻害を行った。

「黒瀬えぇぇ…」

「どうした、炎堂」

「あれ?何しに走ったんだ?」

 炎堂に続き水崎も思い出そうと必死になるので黒瀬は誤魔化そうと、

「そんな事より2人は仲直り出来たのか?」

「ん?おお、無事に仲直り出来たぞ」

「そっか良かったな」

 突然の出来事に耕助は困惑していた。

「あの、一体なにが?」

「我々の存在は極秘なんです。なので見られた場合はこの様に後処理を行うんです」

「そうなんですか、でも私たちは?」

「耕助さんたちにも行ってしまうと、せっかく仲直り出来た記憶の所も消してしまう恐れがあるので例外枠ですね」

 氷室の心遣いに耕助は感謝を述べた。

「心菜ちゃんも今日のことは誰にも喋っちゃいけないからね?」

「うん!分かった!」

「良い子だねえ〜」

   ☆ ☆ ☆

〜黒瀬家〜

「あやつ、我のことに感心なさすぎないか?普通もっと訊くじゃろ?」 

 ヴァルハラは一日中、黒瀬の愚痴を言って一日を終えた。

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【仮面ライダーラグナロクに関する現在公開可能な情報】

仮面ライダーラグナロクは感情のたかぶりや変化により神力とは違う力の増強を行う…

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次回予告

 ラグナロクとしての力を更に強めたかもしれない黒瀬廻。そんな中、なんと氷室が学校をお休み⁉︎悲しみに打ちひしがれる水崎、そんな様子を見て困惑する炎堂、まーた邪神と戦う羽目になる黒瀬。相性が悪く苦戦するラグナロクのもとに新たな助け舟が!

第5話:冰麗の巫女 フレイヤ

 仮面ライダーラグナロクの第四話を読んで頂きありがとうございます。柊叶です。さて、今回は初の日常回でしたが如何でしたか?日頃学校では優秀な四人ですが、遊園地に来ると羽目を外して思いっきり遊ぶ姿、まさに高校生って感じがしたのなら嬉しいです。そんな中、偶然出会った少女との交流を経た人間嫌い?な主人公の黒瀬が我慢しながらも父と娘の仲を取り持つ辺り成長が見られたのではないかと思います。今後もこう言ったどこか成長する為の試練を描けたらなと思います。また第5話でお会いしましょう

柊叶

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