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第27話 『策略家ノ標的』

~前回の仮面ライダーラグナロクは~

 3人の幹部を使って日本列島そのものを海の底に沈めてしまおうと目論だファフニール、だがその計画は黒瀬たちによりあっけなく阻止させられてしまうのであった。

「……朝か、今日はやけに神力の気配がしないな。昨日予想した通り幹部たちも神力の回復に時間が掛かるんだな」

 ベッドから起き上がった黒瀬は欠伸あくびをしながらスマホを開きエックスを見る。

「邪神の目撃情報も無しか、まじで向こうはお休み中みたいだな」

 久しぶりに体を休められそうだなと思った黒瀬はもう一度寝ようとすると永倉が部屋に入って来る。

「廻、何処かに遊びに行こうよ!」

「……え?」

   ☆ ☆ ☆

「ここは、」

「水族館だよ、廻と行きたいなって思ってたんだ~」

「それは別にいいが、随分と急だな」

「嫌だったかな…?」

 永倉は上目遣いで黒瀬を見上げる、すると黒瀬は顔を逸らしながら「嫌ではない」と答える。

「たまにはこう言う休暇も必要だろ、行くか」

「うん!」

 水族館の中は飼育されている魚たちのために可能な限り暗くなっていていた。永倉は幼子のように水槽に張り付いて泳ぐ魚たちをみる。しばらくは写真を撮りつつ水槽を眺めた。途中黒瀬がトイレに行ってくると言い永倉は1人になる、永倉は近くにある柱状の水槽が目に入る。

「何が泳いでるんだろ…」

 近づいて観るとそこに展示されていたのはクラゲだった。永倉は思わず見惚れる。

「きれい…」

(でも…)

「どうしたんだ?」

「あ、廻、なにが?」

「なんだかさっきとは打って変わって悲しそうな目をしてたから気になってな」

「あーー、なんか今さらだけど、可哀想だなって思ったんだ」

 黒瀬は「可哀想?」と言葉を繰り返す。

「ここに居る魚たちは本当はもっと広くて大きい海を泳ぎたい筈なのに、こうやって作られた水槽の中で与えられたせいを与えられた通りにしか生きられないんだもの、」

「たしかに…」

「……あ、ごめんね暗くなる話をしちゃって」

「気にすんなよ、ほら他の所も観にいこう…」

 先導して先に行こうとした黒瀬は暗くて見えなかったのか段差につまずき転びそうになる、それが目に入った瞬間、一瞬永倉の眼が闇色に光り、高速で動き黒瀬の腕を掴み自分のもとに強く引っ張る。

「だ、大丈夫!?廻、」

「わるい、俺も思いのほかはしゃいでるのかもな」

「それなら僕も嬉しいけど気を付けてよね。心配だから手、繋ごうか」

「いや恥ずかしいな、せめて腕に抱きつく方が良いんだが?」

「じゃあそうするよ」

 黒瀬に手を繋ぐのを断られたので、永倉は黒瀬の左腕に抱きついて支えることにした。

   ☆ ☆ ☆

「結構楽しめたな」

「だね、イルカショーも面白かったー!」

水飛沫(みずしぶき)が舞ったときに月夜が急に前に出てきたのは驚いたけどな」

「ごめん、守らなきゃって思って!?」

「はは、守るからって昨日俺に言ってたもんな。有言実行ってことか」

 礼を言いながら黒瀬は頭を撫でる。

「これぐらい当たり前だよ、僕は廻のためなら命ぐらい懸けれるからね」

 上目遣いと笑顔を浮かべる、黒瀬はその自分に対する忠誠心に少し驚きを見せる。

「そうか。なぁ月夜、喉乾いたし自販機で何か買わないか?」

「それなら僕が買ってくるから廻はここで座って待っててよ。珈琲でいい?」

「ああ、ありがとな」

 永倉から自販機で買った珈琲を受け取り黒瀬は一口飲んだ後、月夜の右肩に寄りかかる。

「ふふ、どうしたの急に」

「いや、なんか眠くなって来て」

「起こすから少し寝てたら?」

「じゃあ30分ぐらい寝る」

   ☆ ☆ ☆

 黒瀬たちが水族館を出たちょうどその頃、2年ズもお出かけをしており、今は街中のカフェで休憩していた。

「なんかあれだな、これまでがせわしすぎて急に休暇を与えられると何したら良いか分からないな」

「本トそれな、とりあえずカフェに寄ってみたけど何がしたいか思い浮かばないよ」

 炎堂と水崎はカフェラテをストローを使って飲みながら机の上で伸びていた。

希愛のあ、さっきから何見てんの?」

「シズクたちと同じだよ、どこか行こうかなぁって色々と調べてたんだけど何にもないや」

 3人はため息を吐く。それを見て涼風は「無理して遊ぶ必要もないだろ」と言うと女子2人から批判の声を浴びせられる。

「涼風、高校3年間は短いんだよ。実際私は2年の途中からの編入だから余計に短いし」

「それに高校生、そして私たちは今月の春休みが終われば3年生、つまり受験生…今を楽しまずしていつ青春を謳歌しろって言うの!」

「氷室お前…なんか色々と吹っ切れたのか?水崎はとりあえず落ち着け」

「え…まあそうかも、」

 氷室はカフェラテを机の上に置く。

「実は前の、疑狼ノ遊戯(サスピションゲーム)の時に黒瀬くんから言われたんだ、私たちのもとに戻れない理由は他にある、でもそれは言えないって」

「もともと全部をさらけ出してくれるやつじゃないけど、希愛にはそれがより一層に強い感じね」

「信用してないわけじゃないと思うぞ、黒瀬は無意味に他人を傷つけることはしないからな」

「…ありがと、2人とも」

 3人の話が終えたのを確認した涼風はスマホの画面を見せながらある提案をする。

「お前ら、この近くに水族館があるらしいんだが…」

「「「行く」」」

「随分と食い気味だが理由は?」

「「「暇だから」」」

「ここからどれぐらいなの?」

 氷室は涼風のスマホに写るグーグルマップを見る。

「歩いて20分ぐらいだな」

   ☆ ☆ ☆

「ここだな」

「春休みだからか人も多いわね」

「どうするよ、今日の所は辞めておくか?」

「いや、せっかく来たんだ、観ていかなきゃ損だろ。俺が4人分の入場券を買ってくるからお前らはそこらで休んでいろ」

 涼風はチケット売り場まで歩いて行く。

「どこで座って待つ?」

「そこら辺の椅子で良いんじゃない?」

 水崎は近くにある木製の長椅子を指差して言うと3人ともその奥の方に目がいった。

「あれって…黒瀬だよな?」

「寝てるわね、永倉君の肩の上で」

「あいつあんなに距離感バグってたっけ?」

「永倉くんには心を許してるのかな?」

 3人は2人のもとに歩きながら話していた。そのことに永倉は気が付くと直ぐに操力之指輪(レガリアリング)を左手薬指から右手中指に移し変える。それを見て炎堂は「そう警戒すんなよ」と砕けた口調で話しかける。

「何しに来たの?」

「珍しく今日は邪神が動いてねえから何処かに遊びに行こうぜってなってな」

「それで水族館に?随分と暇なんだね、イザナギは。廻が起きないうちに早く何処かに行ってくれる?」

「容赦ないな、永倉は」

 3人はもと居た場所に戻って行った。

「まさかイザナギもここに来るだなんて、場所を変えたほうがいいかな…?」

「その必要はないだろ」

「廻、起きてたの!?」

 黒瀬は永倉の肩から顔を上げる。

「場所変えなくていいの?イザナギが近くに居るのに?」

「変えたいか?」

「いつイザナギの奴らが廻を襲って来るか分からないし、こんなにも近くに居るんだったら僕は変えたほうが良いと思うけど」

「じゃあどこか違う所に移動するか、月夜は何処に行きたい?」

「うーん、公園の草原くさはらの上で日向ぼっことか?」

「それいいな、行くか」

 2人は水族館から近くの公園に移動する。

   ☆ ☆ ☆

「買ってきたぞ…何かあったのか?」

 人数分の入場券を購入してきた涼風は3人のもとに戻ってきた。

「さっき黒瀬くんと永倉くんに会ったの」

「そうか、まだ近くにいるのか?」

「たぶん私たちが居るって知ったからもう何処かに行ったと思うわ」

 3人が少しばかり気分が低くなったのを察した炎堂は「早く行こうぜ!」と先陣を切って水族館内に入っていく。

「そうね、せっかく来たんだから楽しまなきゃね」

   ☆ ☆ ☆

「さて、そろそろ行くか。覚悟はいいな?美土里」

「ええ、行きましょうか」

 イザナギのメインホールにいた朝日奈と草壁は何やら覚悟を決めた目をしたまま席から立ちあがり部屋から出て行く。廊下を歩きながら朝日奈は天井に定期的に設置されている監視カメラに目を向ける。

「打合せ通りカメラは全て停止しているな」

光花みかを味方に付けて正解ね、何も気にせずに入れるわ。こうして手前で変身もできる訳だしね」

運命之帯ディスティニードライバー、アラマズド・ヨルズ、フォシュターク”

「「変身」」

”仮面ライダーヨルズWITHフォシュターク”

”A brilliant flash of light that illuminates the future.(燦爛さんらんと輝く閃光で未来に光を灯す。)仮面ライダーアラマズドWITHフォシュターク”

「行くぞ」

 アラマズドは勢いよく扉を開け、2人は上層部が居る大部屋に入って行く。

   ☆ ☆ ☆

 その頃、黒瀬たちは草原くさはらの上で横になり太陽の光を浴びていた。

「本当に今日はいい日だね」

「だな。何も起きないことを祈りたいが、そうもいかないよな」

 黒瀬は上半身のみ起こして後ろに目を向ける。そこにはファフニールが超強化(フォシュターク)を得たディオスクーロイとシュド=メルが居た。

「一気に数で叩こうってことか、」

 2人は立ち上がりドライバーを装着する。

”ラグナロク・エレボス、ローディング”

「「変身」」

”仮面ライダーラグナロク・エレボス”

 各々の専用武器を持ち邪神に飛び掛かる。ラグナロクはファフニールに斬り掛かろうとしたが、その魔剣をディオスクーロイとシュド=メルが止めに来る。

「なるほど、双子で俺の剣撃を相手してその隙にシュド=メルが水の神法で攻撃ってことか。月夜、ファフニールの相手は頼んだ」

「任せて」

 ラグナロクはエレボスに指示を出し、邪神に集中する。双子が振るう剣をさばきながらシュド=メルの水の攻撃を避ける。

「さて、どう斃すか」

 どうにか隙を作り絶対攻略(フルスキャン)を発動する。

「今の俺には風に関する力は創れないからな、」

(久しぶりにアイツに訊いてみるか)

 ラグナロクはヴァルハラに心通信で連絡を取る。

(ヴァルハラ、お前今暇だよな?)

(ん…?黒瀬か、お前絶対我のこと今の今まで忘れていただろ?)

(そんなのはどうでもいいんだよ、訊きたいことがある)

(なんだ?)

(ラグナロクの力は、消す力はどこまで作用するんだ?)

 ヴァルハラは牛乳プリンを食べながら考える。

(お前は今のところ2nd(セカンド)まで解放しており使いこなしているのだから、今戦っているシュド=メルの神法を消すぐらいならわけないだろ)

「ん?」

 ラグナロクは少し側に目を向けるとプリンを食べ終わったヴァルハラが居た。

「たっく、暇神ひまじんかよ」

然程さほど上手くはないぞ」

「だまれ」

 自身の終焉の力を強化したラグナロクはシュド=メルに向かって放つ。シュド=メルは鉄砲水で迎え撃つがラグナロクの放つ終焉の衝撃波の威力は凄まじく水の神法は打ち消され、そのままシュド=メルに襲い掛かる。

「これで終わりだ、華々しく散れ」

葬送ノ刻(フューネラルタイム)終焉ノ滅波(ラグナロククライシス)

 一瞬でシュド=メルを撃破したラグナロクを見てディオスクーロイは背筋を凍らせる。前に戦ったときのディオスクーロイならこの瞬間に逃げていただろう、だが何故か今回は逃げずにまるで時間を稼ぐかのように戦っていた。

   ☆ ☆ ☆

「ファフニール、今度はまたいったい何を企んでいるんだ!」

「そのうち分かるさ、特にお前はな」

(まだだ、まだこんなものでは足りない)

 ディオスクーロイのようにファフニールも何やら時間を稼ぐように、何かを待っているかのようにエレボスと戦っていた。

 そして2人が戦う気配を感じ取った氷室たちは現場に向かって走っていた。

   ☆ ☆ ☆

「この気配、間違いなくファフニールの奴だな」

「まーた何か企んでいるのかしらね、懲りないやつ」

「相手の狙いは戦いながら探ればいい、急ぐぞ」

 水族館からある程度離れて人の目も無くなった場所まで移動すると急に炎堂が転移之渦(ブロードボルテックス)を展開した。

「炎堂、お前転移場所に行ったことがあるのか!?」

 涼風の問いに炎堂は「超強化(フォシュターク)を得たらな神法にもできることが増えたんだよ。いわゆるレベルアップってやつだ」

「そうか、そいつはいい!」

 4人は渦を潜り抜けて一気に現場に到着する。

「ファフニールにディオスクーロイか、氷室お前はどう思う?」

「ディオスクーロイはどんなに攻撃をしても治癒をすることでほぼ不死身みたいなものだから火力の強い炎堂くんが相手をしたほうが良いと思う」

「じゃあそのサポートに水崎だな」

「結局いつもと組み合わせは変わらないのね、私たまには希愛と組みたいんだけど」

 少しの文句はあれど、4人は涼風の指示に従う。

運命之帯ディスティニードライバー

「「「「変身」」」」

”仮面ライダールドラ・フレイヤ・アドラヌス・ナーイアス”

 走りながら変身した4人は邪神のもとまでそのまま向かう、だがそれに気が付いたファフニールは4人を自分のもとにまで辿り着かせないように対策をしていた。

「そろそろ来る頃だと思っていた…。キルケー!」

「はいよ」

 4人の前に現れたのは調教家のキルケーだった。

「この前は俺の大事なアイトーンをよくも溶かしてくれたな、ルドラよ」

「それを言うならお前たちは俺たちの街をよくも壊してくれたな、今度は何を従えてきたんだよ」

「こいつはお前たちでもそう簡単には斃せないぞ。行け!フェンリル!ケルベロス!」

 キルケーが鞭で地面を叩くとキルケーを挟むように両隣に異なる色の2つの魔法陣が展開された。ルドラたちから見て右からフェンリル、左からケルベロスが姿を見せた。

「おいおいおいおい、ケルベロスって言ったら俺でも知ってるぞ、地獄の番犬だろ!?」

「炎堂くん、正確には冥界の番犬だから。地獄と冥界は似てそうで大分だいぶ違うもの…」

「氷室ォ!オタクが働くのは分かるが状況を考えろぉぉぉ!全員式神を召喚しろ!」

守護者(ガーディアン)翠蜂スイホウ冰狼ヒョウロウ紅虎ベニドラ蒼鯨ソウゲイ

 4人は一斉に式神を召喚して飛び乗る。

「氷室、こいつらに属性の相性とかは…」

「正直無いと思う、強いて言うならフェンリルは冰か風のどっちかかな」

「ならフェンリルの相手は炎堂と水崎に任せる、良いか?絶対に無理はするなよ」

「「了解」」

 各々の式神を使っての式神対決、アドラヌスの式神紅虎(ベニドラ)はある意味同じ陸上生物なのもあってか互いに急所のくびを目掛けて飛びつき噛みつこうとする。

「炎堂!明らかに私の式神の蒼鯨とは相性悪いから私はサポートに回らせて貰うから!」

「おう!それで頼むぜ!」

 ナーイアスは蒼鯨に指示を出す。中距離からフェンリルの眼を狙って鉄砲水を放ちフェンリルの視界を塞いだりとかなり優秀なサポートを行う。

   ーーー

「氷室!ケルベロス相手じゃ、お前の冰狼が頼りだ。俺と翠蜂はサポートに回るぞ」

「そうね、分かった。行くよ、冰狼」

「ワオオオォォォ!!」

 冰狼は高々く遠吠えを上げた後、ケルベロスに攻撃を仕掛ける。一瞬で背後に回り鋭利な爪でケルベロスの肉体をえぐる、だがそんなひと傷でられるほど冥界の番犬は柔ではない。すぐに傷は修復されその間に冰狼に向かって仕返しのごとく爪を振りかざしてくる。冰狼が咆哮ほうこうを上げると地面から冰石が生え、ケルベロスの爪の盾となる。

「冰の強度が増してる、これも炎堂くんの言ってた超強化(フォシュターク)の効果なのかな?」

 フレイヤは自身の冰の神法と式神の成長に関心を覚える。今のイザナギの力を本格的にの当たりにしたキルケーは自身の神力を2体の神獣に流し込み力を強制的に増幅させる。

「うわっ、これは少し長くなりそうじゃない?」

「だな、覚悟していくか」

   ☆ ☆ ☆

 キルケーの召喚した2体の神獣とイザナギが戦い始めたその頃、ラグナロクとエレボスは各々の場で互角の勝負を続けていた。エレボスは虐殺之宝珠(ジェノサイドチャーム)の力を使い分身を2体召喚して数によるごり押し勝負に打って出た。徐々に押され始めるファフニールだったが、以前ラグナロクとの戦いの際にもしていたように話術による揺さぶりを始めた。

「エレボス、お前はラグナロクに相当、心酔しているようだがそれは何故なのだ?」

「それ随分前にアラマズドの奴にも訊かれたけど、特に理由はないんだよ!」

 黒鎌アダマスを振るいファフニールとの距離が数メートル広がる。

「僕が廻に付いているのは、僕がそう決めたからだ!それ以上でもそれ以下でもない!」

祓魔ノ刻(エクソシスムタイム)虐殺ノ一閃ジェノサイドスラウター

 一振りでの斬撃数が増えたアダマスを3方向から囲んだ状態でファフニールに喰らわす。

   ☆ ☆ ☆

 ラグナロクは絶対攻略(フルスキャン)を使いながらディオスクーロイとの戦いを順調に進めていた、だがどれだけ必殺の攻撃を与えても直ぐに治癒されるため未だ戦いに終わりは見えなかった。

超強化(フォシュターク)を得たことで治癒に対する神力の負担がかなり軽減したみたいだな。少しばかり面倒だな」

 ラグナロクは破壊之宝珠(デストロイチャーム)を使い一撃一撃が必殺の威力を誇る攻撃に変えることで自身の神力の消費量もできるだけ減らすことにした。これにより両者とも同じ階段グレードに立つことになり、必然的に持久戦へと流れ込むことになった。

   ☆ ☆ ☆

「涼風、能力スキルでケルベロスの動きを鈍らせることはできる?」

 フレイヤからこんなにも直接頼られたのは初めてで一瞬は驚いたがルドラは自信満々に「任せろ」と答える。

“WITHヒュドラ”

 ルドラはヒュドラの力を使って新たな毒を開発し、固有能力(ユニークスキル)病源旋風(ヴェノムウィンドウ)”を発動してケルベロスに確実に不治の病をわずらわせる。ケルベロスはうめき声を上げる。

「け、ケルベロス!!」

 キルケーは焦る様子を見せる。

「決めるよ、冰狼」

導軌ノ刻(ガイダンスタイム)冰狼ノ聖刃ヒョウロウサークレッド

 冰狼は冷気の息吹いぶきをケルベロスに放つ、超強化(フォシュターク)を得たこともありこれだけ強い冷気であればケルベロスであれど簡単に凍り付くであろう、だがその冷気をはばむ者がいた。

「なっ、キルケー!?」

 キルケーは鞭を扇風機のように振り回し冷気をケルベロスに当たらぬ様にする。

「涼風!お願い!」

「ああ、翠蜂スイホウ!」

 ルドラは翠蜂に乗ったままケルベロスの方に回り込み、身に纏った風と飛び降りた勢いに乗ってキルケーを相手取る。

「ルドラ!?離せ!!」

「お前の相手は俺だ、ケルベロスはここで確実に斃す」

   ☆ ☆ ☆

 フェンリルと戦っていたアドラヌスとナーイアスは、アドラヌスの火の力を主攻撃(メイン)にして戦っていた。

「紅虎、まだイケるか?」

 主人の問いに紅虎は「ガウ!」と答える、それを見てナーイアスは思わず笑う。

「なんだよ?」

「いやあ、なんか微笑ましいなあと思って?」

「なんだそれwま、いいや、行くぞ紅虎!」

 フェンリルは冰と風が混ざった光弾を自身のもとに走ってやって来る紅虎に無数に放つ。紅虎は負けじと火球で対抗しつつかわしながら近づく。だがフェンリルは何も無策に光弾を放っていた訳ではなかった。上空に神力を感じたアドラヌスは空を見上げると何百個の光弾が設置されていた。

「うそーーん!!」

 アドラヌスは情けなく叫ぶ、だが直ぐにナーイアスが「そっちは任せな!」と伝える。蒼鯨に指示を出す。

導軌ノ刻(ガイダンスタイム)蒼鯨ノ聖刃(ソウゲイサークレッド)

 シャランガにある蒼鯨之宝珠を起動すると蒼鯨の身体が透き通ってみえ力がため込まれているのが見て分かった。次の瞬間、蒼鯨からこれまで以上に高密度な神力の鉄砲水が放たれ、フェンリルの生み出した何百個の光弾が撃ち落された。

「さっすが水崎」

 アドラヌスはそう呟いたあと、フェンリルに向かって必殺の動作に移る。

導軌ノ刻(ガイダンスタイム)紅虎ノ聖刃(ベニドラサークレッド)

 必殺技が起動するとともに紅虎は炎に包まれる、紅虎の燃え盛る肉体は徐々に速度を増して行き、フェンリルが気づいたその時には既に自身の身体を貫いていた。数瞬後、フェンリルは爆散する。

   ☆ ☆ ☆

 冰狼の放つ冷気を止めていたキルケーの相手をルドラが受け持ってくれたこともあり、ケルベロスは一瞬で凍り付いた。フレイヤは冰矢之宝珠(アポロンチャーム)を使いアポロンフォームに変身する。付属で付いている弓状武器アルテミスを召喚する。

導軌ノ刻(ガイダンスタイム)冰矢ノ聖刃(アポロンサークレッド)

 凍り付いたケルベロスに冰矢を放つ、ケルベロスは冰矢に身体を貫かれたと同時に砕け散る。キルケーは自身の調教下にあるモノのなかでも最高戦力に位置する神獣を2体とも撃破される結果に終わった。

「……2体とも斃されたか、だが今回の俺はそう簡単には終わらないからなァ!」

「「!?」」

 次の瞬間、キルケーは鞭を2体が撃破された箇所に向かって振るう。するとそこから先ほど斃したばかりのフェンリルとケルベロスが復活する。

「……うそだろ、こんなのありかよ」

 アドラヌスは驚いている様子をみせる、それは他の3人も一緒だったが、フレイヤが直ぐに理由に気が付く。

「あんたも超強化(フォシュターク)を得たってことね?」

「その通りだ、よく気が付いたな」

「この前のアイトーンやラドンの時には、神力を使った神獣の強化なんてしていなかったからね。あれも超強化(フォシュターク)に近いものなんでしょ?」

「その通りだ、さあ第2ラウンドと行こうじゃないか」

   ☆ ☆ ☆

 イザナギたちが第2ラウンドに移っていたそのころ、ラグナロクとエレボスは両者ともどもに疲弊し切っていながらも何とか踏ん張りながら戦っていた。

「しっ、しつこいなあ、ファフニール、ほんと、なにが目的なわけ!?」

「ふっ、ふははははは、そのうち分かると言っただろう」

(今日のところ、私の目的は果たした。キルケーの奴も神獣の再生に成功したようだな)

「じゃあな」

 ファフニールは召喚した幻影の竜にキルケーとともに姿を消した。

「な、いったい何が目的なんだ?」

 エレボスはファフニールたちの飛んで行ったほうをただ眺めていた。

   ☆ ☆ ☆

 ラグナロクたちは木々に囲まれる場所で戦っていた。

「ファフニールはお前たちを置いて行ったみたいだな」

 どうやらファフニールたちが飛んでいく姿はラグナロクとディオスクーロイが戦っていた場所からも見えていたようだ。ディオスクーロイは「「え??」」と空を見上げる。

「ちょ!ファフニール様!?」

「おれたちは~!?」

「どうやら見捨てられたようだな、ファフニールの目的は探れなかったが、いい加減斃させてもらおう」

葬送ノ刻(フューネラルタイム)破壊ノ滅波(デストロイクライシス)

「華々しく、散れ」

 ラグナロクは両方の拳と脚に水色の神力を集中させる。これによりパワーのみならずスピードも上昇する。ラグナロクは一瞬で間合いに入り双子を殴り斃す、だがまた治癒が発動することも分かっている。

葬送ノ刻(フューネラルタイム)破壊ノ滅波(デストロイクライシス)

((ひっ、必殺技の連続発動!?!?))

 治癒が始まった双子の肉体を殴り飛ばし、一片の欠片も残らず消し飛ばした。そのため爆散すら起きなかった。

「たっく、しぶとい奴らだ」

 ラグナロクは変身解除するとその場に片膝を付く。

「やっぱり連続の必殺技は負担が大きいか」

 黒瀬は木々に手を掛けて身体を支えながら永倉のもとに向かう。少し時間が掛かるなと思っていると向こうから迎えがやって来た。

「廻!」

「つきよ?やっぱりそっちも戦いは終わってたのか」

「うん、ファフニールの奴が急に退いたんだ」

 永倉は黒瀬の肩を持ちながら、疲弊している顔を見て謝罪する。

「ごめん、僕がもっと早く来ていればこんなにも疲れさせることも無かったのに、」

「お前が謝る必要はない、」

   ☆ ☆ ☆

 黒瀬たちが森の中から出てくると、涼風たちはある程度近くに寄り声を掛ける。

「黒瀬…大丈夫なのか…?」

 質問するよりも先に黒瀬の疲弊具合に涼風は驚いた。

「問題ない、それより何でまだ居るんだ?」

「お前たちはファフニールと戦っていただろ、今回のアイツの目的について聞きたいんだ。アイツは何か言っていたか?」

「月夜が言うには、“そのうち分かる”とだけ言っていたようだ。待つしかないだろうな」

「そうか、分かった、ありがとうな」

 涼風からの礼に対して黒瀬は何も答えずに永倉の展開した転移之渦(ブロードボルテックス)を潜り、帰って行く。

   ☆ ☆ ☆

 黒瀬たちが帰るのを見届けた後、イザナギたちはメインホールに戻っていた。

「なあ涼風ー、黒瀬に上層部の件について話さなくてよかったのか?」

「万が一にも成功しなかった場合を考えると危険だからな、話すのは成功した後の方が良いと思ったんだよ」

「流石は会長、判断が的確ね。はいこれ、目安箱」

 水崎は目安箱をメインホールに持ってきた。置かれた時の音を聴いて氷室は「絶対多いじゃん」と呟く。

「まあ、コレばっかりは仕方がない。朝日奈さんたちが帰って来たら退勤時間という事にしよう」

「ろーどーはんたーい」

「希愛、あの人の影響を受けてるよ」

「炎堂、人数分のオロナミンCを買って来てくれるか?」

「任せとけって!」

   ☆ ☆ ☆

「廻、さすがに喉乾いたよね?なんか飲む?」

「天然水あるか?」

「うん、持ってくるから待ってて」

 一分もしないうちに永倉は冷蔵庫からペットボトルを取って持ってくる。黒瀬は一口飲んだ後、早速先ほどの戦いについて話を始めた。

「月夜、お前ファフニールに何を言われたんだ?」

「……イザナギの奴らに言ったことだけだけど?」

「いや、まだ何かあるだろ?」

 永倉は数瞬ほど黙るが、黒瀬の圧に負けて本当のことを言う。

「あのとき、ファフニールから“そのうち分かる”って言葉の後に“特にお前はな”って付け加えて言われたんだ」

「やっぱりなんか言われてたんだな」

「廻には隠し事はできそうにないね」

「当たり前だろ、お前のことはよく見てんだからな。それにしても月夜なら分かること、ってのが謎だな。なんで月夜なんだ?」

「さあ?もしかしたらハッタリかもよ?実際さっきの戦い僕に何かしてくるのかもって警戒しながら戦ったせいで思うように戦えなかったし」

「まあ無いとは言い切れないな。俺も前にそれやられたし、でも警戒はしとけよな」

「分かってるよ、廻は心配性だなあ」

ーーーーーーーーーー

【仮面ライダーアドラヌスに関する現在公開可能な情報】

覚醒之聖堂(アローザル)

身長212cm 体重103kg パンチ力80t キック力100t ジャンプ力53m(ひとっ飛び)走力2.8秒(100m)

【仮面ライダーナーイアスに関する現在公開可能な情報】

覚醒之聖堂(アローザル)

身長202cm 体重99kg パンチ力64t キック力88t ジャンプ力82m(ひとっ飛び)走力2.0秒(100m)

ーーーーーーーーーー

次回予告

 突然戦闘を持ちかけて来たファフニールの狙いを問いただすが、何かと誤魔化された為に何も成果を得られず戦いを終えた仮面ライダー。だが狙いは永倉月夜ではないかと黒瀬は警戒を置く。その裏では朝日奈と草壁、そして天智による上層部撲滅の計画が進められていた。ゾロアスターの狙い、イザナギの革命、この先、黒瀬たちに待ち受ける運命は如何に!!

第28話:陰る三日月

 仮面ライダーラグナロク第27話『策略家ノ標的』を読んで頂きありがとうございます。柊叶です。今回は策略家であるファフニールがまたまたまた何やら動く回でしたが、どうせまた失敗するんでしょ?と思っていることでしょう。正直どうするか迷ってます。ですがご安心ください、今回は一味違う展開にしようと思ってます(思ってるだけ)

 なので次回『陰る三日月』を楽しみにしていてくれればなと思っております。今後とも仮面ライダーラグナロクをよろしくお願いします。

柊叶

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