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第23話 『策略家ノ遊戯』

~前回の仮面ライダーラグナロクは~

 朝日奈により洗脳させられたイザナギ一行と戦闘に至ったラグナロクたち。その後は黒瀬たちはゾロアスターの幹部の一人であるファフニールと接触、用件はなんと自分たち、ゾロアスターと手を組もうというものだった。黒瀬はそれを当然断固拒否する。それとほぼ同じころイザナギは洗脳などという卑劣な手を使った朝日奈からの謝罪、そして今後のイザナギ全体の方針を話し合い結果は黒瀬との和解を氷室に任せ、ゾロアスターの撲滅は残りのメンバーで行うことになった。

 そんななか当のゾロアスターのほうではなにやらファフニールが怪しげな動きを見せていた。

~ゾロアスター~

「おいファフニール、何処に行くんだ?」

「少しやりたいことができてな。お前たちはしばらく休んでおれ」

 ファフニールは他三人の幹部にそう言い残して出て行く。

   ☆ ☆ ☆

~東京都某所~

 休日の東京都はいつも以上に多くの人が歩いている。いい意味で何も起こらず街を歩く人々の顔には笑顔が溢れていて、これからどこかに遊びに行こうとしている家族であったり、青春を謳歌している何組かの学生たちも居た。そしてその様子をある高層マンションの屋上から見下ろしている者が一人いた。それは邪神ファフニールだった。

「これだけ人間がいれば楽しい遊戯ゲームが行えそうだ」

 手に持つ短剣をⅩ字の交差点の中央に向かって投げ刺す。その周囲の人々はその槍に驚きつつ興味本位に少し近づいてスマホで撮影したり、ただざわついていたり、急いで逃げようとする者がいた。

「さあ、始めようか。人間同士で醜く疑い争い、血と涙であふれる疑狼ノ遊戯(サスピションゲーム)を」

 ファフニールが右手を槍に向かって構えると地面に刺さった槍を中心に巨大な魔法陣が展開される。自分たちの下に突如として現れた魔法陣に人々は困惑する。魔法陣から高々(たかだか)く白い光が上がり、光とともに魔法陣が消えると人々も消えていた。

「これで準備は整った」

   ☆ ☆ ☆

「会長、ちょっとこのニュース見てください」

「どうした?」

 涼風に呼ばれ朝日奈はテレビに近づく。そこには臨時ニュースが流れていた。

「”東京都内で突如として大量の人間が失踪?神隠しか?”これは…」

「ええ、明らかに邪神の仕業でしょうね。とはいえなぜ急に一般の人々をさらったんでしょうか」

「さあな、とりあえず現場に行ってみよう」

 朝日奈はメインホールに居る他のメンバーにも声を掛ける。その指示を受けて他の四人は各々上に羽織るものを手に持って二人に着いて行く。

   ~~~

「なんだ、これは?本当に誰も居ない」

「ここ、本当に東京なのか?こんな光景これまでの人生で一度も見たことないぞ」

 涼風は目の前に広がる光景に困惑しており炎堂も辺りをキョロキョロと見回していた。他の四人を含め少し散らばり周辺を散策する。

「特に人の気配はないですね」

「そのようだな。人の気配はないし、邪神の気配もない」

「でも邪神が関わっていることは確実です。神力の跡がこの地面にはあります」

「氷室の言う通りね。何も見つからない以上ここは一旦引くしかないわね」

 六人はその場から帰ろうとすると足元に一つずつ魔法陣が展開され先ほどの大勢の人々が消えたように白い光が上がりイザナギたちをその場から消した。

   ☆ ☆ ☆

「う、ううん、」

「…あ、希愛!大丈夫?」

「シズク、ここは?さっきいた交差点?」

「そうみたいなんだけど、さっきとは違って沢山の人が居るの」

 水崎の言う通り周囲を見渡すと沢山の人が居た。氷室は直ぐにニュースで見た神隠しに遭った人たちだと考えた。それは朝日奈や草壁、涼風もそう考えていた。

「こういうことだったのか、そりゃあ神力の跡は見つかっても邪神の気配は感じないはずだ」

「会長、どう言うことですか?」

 炎堂が訊くと朝日奈は得意げに解説する。

「さっき俺たちの足元に魔法陣が展開されただろ?魔法陣を発動するにはあらかじめ敷いておくか、展開するための中心核が必要になるんだ。おそらく一般人が大量失踪した時には中心核が置かれたんだろう」

 ここからは草壁が解説を引き継いだ、前と同じく口が疲れたようだ。

「そしてニュースを見た私たちが必ず現場に来ると考えた邪神は中心核を置いておけば警戒されると考えて、今度は予め敷いておくほうに変えた、ってことでしょうね」

「あの神力の跡は敷かれていた魔法陣ってことだ」

 涼風がプラスαで解説する。

「とにかく今は相手の狙いを探らないと。もしかしたら黒瀬くんはもう動いてるかも…」

   ☆ ☆ ☆

 イザナギたちがファフニールの策に嵌まった頃、黒瀬たちはニュースを見ていた。

「これ、明らかに邪神の仕業だよね」

「だろうな。それに多分ファフニールの仕業だろうな」

「前に廻が煽ったからさっそく動いたのかな?」

「とにかく現場に行くぞ」

 黒瀬と永倉は現場に到着する。黒瀬は絶対攻略(フルスキャン)で現場を見渡す。

「間違いない、これはファフニールの神力だ。そして魔法陣の跡がある」

「本当だ。イザナギの奴らは引っかかったのかな、それともまだ来てないのかな?」

「ニュースでの事件が起きてからそれなりに時間は経ってる。まだイザナギが動いてないのは考えにくい。たぶん魔法陣にまったな」

「廻、もしかしてわざと魔法陣に掛かろうとしてる?」

「ファフニールを斃すチャンスと考えれば、そうなるな。月夜はどう思う?」

「僕は廻が行くっていうなら、付き従うよ」

 二人は顔を合わせて頷き合う。

「いくか、」

 二人はえてファフニールの設置した魔法陣に嵌まりに行く。案の定その様子を遠くから察知していたファフニールは魔法陣を発動して二人をイザナギたちが居る同じところに転送する。

 転送された二人はゆっくりと目を開くと目の前の現状を見て確認した後、二人は歩いて何処かに移動する。

「廻、どこに行くの?」

「ファフニールの奴を探す。あいつの狙いは別に俺たちをこの中に閉じ込めることではないはずだ」

「まあ確かに。閉じ込めることが目的なら僕らやイザナギの奴らだけで充分だものね」

 二人は先ほどまで居た場所に似ている神力で構築された亜空間の中を散策する。しばらく歩いていると、アスラたちに遭遇した。※アスラ:1話などに出てきた雑魚的。他にも時々出てきている。

「アスラか、別に変身する必要もないな」

 黒瀬が時空之巻物(ヴァイオスクロール)から魔剣ダーインスレイヴを取り出したのを見て永倉も黒鎌アダマスを取り出す。二人は生身のままアスラとの戦闘に移る。敵の振るう槍を躱したり武器で捌いたりしながら着々と敵を葬って行く。ものの数分もしない間に決着は付いた。

「急にアスラが出てくるとはな、」

「うん、ファフニールに狙いがまったく想像も出来ないよ」

「もうしばらく散策を続けよう、行くぞ」

「うん!」

   ☆ ☆ ☆

 黒瀬たちがアスラと戦っていたそのころ、イザナギたちも周囲の散策をしていた。

「どうだ二人とも、邪神の気配はあるか?」

「まったくの皆無ですよ、会長。場所を変えて氷室たちのほうに行きますか?」

 イザナギは朝日奈、草壁、涼風の組と氷室、炎堂、水崎の組。2組に別れて散策していた。

「行っても無駄みたいよ。いま水崎からこっちも特に邪神の気配はしないって連絡が来たわ」

「そうですか、ならいっそのことこの結界を壊してみますか?」

「それは辞めておいたほうが良いだろうな。もしここが空中に創られた結界の場合、ここにいる一般人全員を救えるかと言ったら、難しいのが本音だろ?」

 朝日奈の指摘に涼風は「確かに、考えが甘かったです」と反省の顔を作る。ついこの間までは異常者だと思っていたが、やはりこういった経験のない事象を前にした時の冷静さ具合を見ると経験の差と頭の良さを伺えた。

   ☆ ☆ ☆

「希愛、こんなことって今まではあったりしたの?」

「いやー、私は初めてかな、会長たちはどうなのかは知らないけど」

「今までにないケースってことか」

 氷室たちは歩くのに少し疲れそこらの建物の壁に寄り掛かって休憩していた。

「そういや、玉帝うちの生徒が居たら見つかったら大変だし、もう少し周囲に目を向けといたほうがいいよな!?」

「たしかに、みんなの目の前で変身なんかはできないわよね。誤魔化すのも面倒だし」

「それなら心配いらないよ。私の冰の神法を使えば一気にみんなの記憶から仮面ライダーに関することだけ消すことが出来るから」

 二人も経験あるでしょ?と氷室が訊くと二人は驚く様子を見せながら「心菜ちゃんのときか!」とつい大きな声をだしてしまう。(詳しくは4話を参照)

「そういえばあの時なんか記憶が抜け落ちた感じしたんだよな。仮面ライダーになってからは記憶戻ってたからあまり気にしてなかったけど、あれも希愛の仕業だったんだ」

「そうだよ、二人に記憶阻害が効かなくなったときは本当に冷や冷やしたよ」

 そんな懐かしい話をしている三人をよそにもう1組みの三人は修羅場とまではいかないが少々気まずい空気の中に居た。

   ☆ ☆ ☆

~数分前~

 こちらの三人は涼風を先頭に歩きながら辺りを探っていた。

「ここまでしても見つからないとなれば散策範囲を広げるしかないかな、どう思う美土里?」

「こればっかしはその意見に賛成するわ。ここ付近でずっと右往左往しているよりかはその方が良いと思うわ。涼風は…どうかした?涼風」

 草壁は涼風にも何か意見はあるか訊こうと前のほうに声を掛けると涼風は足を止めていた。二人は涼風を心配して前に少し歩いて近づく。涼風の顔を見ると前方のほうに目をやっていて顔色を確認した感じ緊張の色が伺えた。朝日奈は涼風の視線の先を見ると一人の女性が居た。そちらのほうも何やら緊張の色が見て取れた。

「涼風、あの人がどうかしたのか?」

 朝日奈の口から”涼風”という苗字が聴こえた瞬間、女性のほうから「やっぱり」という言葉が聴こえた。そして女性のほうから涼風のほうに歩み近づき涼風の手を取る。

「やっぱり、颯なの?」

 涼風の名前を知る人物、朝日奈と草壁は驚きの表情を見せる。当の涼風本人はその時に自分の中で女性が誰なのか確信が持てた。

「かあ…さん…?母さんなのか?」

 三人の目の前に姿を見せた女性の正体は涼風の本当の母親である風晴かぜはる美琴みことだった(13話を参照)

「ええ、そうよ。こんなにも立派になって、」

 美琴は10数年振りに息子に逢えたことに感動して思わず涼風を真正面から涙を流しながら抱きしめる。思わず涼風も母の背中に腕を回す。

「母さん、なんでこんな所にいるのか詳しく覚えていたりはするか?」

 いくら感動の再開と言えども涼風はイザナギの人間であり仮面ライダー、すぐに頭を整理して必要な情報が手に入らないかと自分を仕切り直す。

「えっと…いつも通り交差点を歩いていたら急に交差点の中央に槍みたいなのが降って来たの。そしたらそこから魔法陣?みたいなのが広がって、白い光が上がったかと思いきや、気が付けばここに居たの」

「中央の槍に、魔法陣、会長の読み通りみたいですね」

「そうみたいだな、」

「交差点の中央、そこに槍を投げられる所となると結構高いところに居る可能性が高いわね」

 草壁はそう予想すると急に空が暗くなった。イザナギのほかに多くの一般人も驚いていると、ところどころにホノグラムで投射したような映像が浮かび上がる。そこに移っていたのは人間態に化けたファフニールだった。当然そのことに気づいているのは今は黒瀬と永倉だけだ。だが当のファフニール自身は自分の本名を普通に口にした。

『長らくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした。私はファフニール、皆さんをここに転移させた者です』

 周辺に居るイザナギたちはみな、映像から発せられた言葉を聴いて驚愕きょうがくした。今目の前に居る人間はゾロアスターの幹部の一人であるあのファフニールなのかと自分の目と耳を疑っていた。

『さて、なぜ皆さんをここに転移させたかと言いますと理由は一つです。少しばかり私の遊戯ゲームにお付き合い頂きたいと思いましてね』

「ゲームだと?」

 黒瀬はファフニールには何か本当の狙いがあるのではないかと色々と勘繰っていた。

『その遊戯ゲームの名は疑狼ノ遊戯(サスピションゲーム)

「サスピションゲーム?なんだそれは?」

遊戯ゲームの内容は至ってシンプルです。制限時間は5時間、我々の用意した悪魔、通称アスラから逃げ切って貰います。もちろんただただ逃げろとは言いません、途中での脱出が可能なミッションもご用意しております』

 ファフニールからの説明を受けて、あちらこちらから一般人の不満の声が飛んだ。

『ええ、ええ、不満が飛ぶのはよく分かります。ですが…』

 一般人からの不満の声を聴いてファフニールは右手を上げる。すると何処からかアスラの槍が降りかかって来た。その攻撃に黒瀬たちもイザナギたちも反応が遅れ数人の一般人に刺さってしまった。

『私の遊び…いや、私の遊戯ゲームの参加を拒否するようでしたら、このような目に遭いますが、それでも参加を拒否しますか?』

 人は死を目の前にした途端に本性が現れるもので、目の前で起きた悲劇を見て殆どの人が遊戯ゲームを早く始めろと騒ぎ始めた。

『参加に同意してくれて感謝致します。では始めましょうか、ミッション等に関しては遊戯ゲームが始まってから10数分ごとに発表されるのでお待ちください。では疑狼ノ遊戯(サスピションゲーム)スタートです』

 ファフニールからの遊戯ゲーム開始の合図が掛かると人々は彼方あちら此方こちらに散り張り始めた。イザナギたちは人々を止めようにも勢いが強くどうすることも出来なかった。

「どうしますか会長、これじゃあ殆どの人が死にますよ!」

「俺たちだけじゃどうにもならない、全員式神を使え!」

 朝日奈からの心通信を受けた氷室たちも指示に従う。

”白龍、灰熊カイユウ翠蜂スイホウ冰狼ヒョウロウ紅虎ベニドラ蒼鯨ソウゲイ

「一般人の保護は式神に任せる!俺たちはファフニールの居場所を突き止める!その途中アスラを見つけたらアスラの討伐、そして一般人の安全地帯への誘導を優先しろ!」

『はい!』

 朝日奈からの適格な指示を受けてイザナギは動き出す。

   ☆ ☆ ☆

「うわー、人が死んじゃったよ、どうする廻?」

「まさか死人が出るとはな、やることは変わらん、ファフニールを見つけるぞ」

 黒瀬はファフニールの居場所にいくつか予想を付けていた。

「可能性として最も高いのはこの街全体を見渡せる場所、となれば、あの高層マンションの屋上か、東京スカイツリーまたは東京タワーの最上階のいずれかだろうな」

「その3つのどれでも無いとしたら、もう探すすべは無くなるよね。そのときは、」

「ああ、そのときはこの結界ごと破壊してファフニールをあぶり出す」

 黒瀬は特にその場にいる人々のことを気にしている様子はなかった。だがこれも一刻も早くゾロアスターを潰すための黒瀬の覚悟の現れなのだろうと永倉は考えていた。

(廻がそれだけの罪を背負う覚悟があるなら、僕もその罪の半分を背負わせてもらうよ)

 歩いていると突然黒瀬は足を止めた。

「廻、どうしたの?」

「なんか色々と考えていたが、普通に居たな」

 黒瀬が向いているほうに顔を向けるとファフニールがこっちを見ていた。

「ラグナロクか、どうだ私の遊戯ゲームは楽しんで頂けているかな?」

「死人がでるゲームなんて楽しいわけがあるか、お前にはサッサと死んでもらう」

宿命之帯(フェイトドライバー)”ラグナロク・エレボス、ローディング”

「「変身」」

”仮面ライダーラグナロク・エレボス”

「やれやれ、随分と血の気が多い奴らだ。私と戦っている暇があったらゲームに参加しないか?」

 ファフニールは大量のアスラを召喚する。ラグナロクたちは武器を取り出し歩きながら自身に向かってくるアスラを斬り斃して行く。

 そして2人が変身したことで少し遠くのほうでファフニールを探していたイザナギたちも神力の察知で居場所を特定することとなった。

   ☆ ☆ ☆

「この神力、ラグナロクのじゃないですか?」

「やっぱり黒瀬たちも来ていたのか!美土里、涼風、行くぞ!」

 朝日奈の指令に他2人は従い着いて行こうとするが、約1名、ある人物にその腕を掴まれその場に留められる。そう、涼風だ。

「どうした、母さん?」

「………め、」

「ごめん、なんて言ったんだ?」

「行っちゃだめよ、」

「…母さん」

 たった一言、だが涼風はその一言に母からの強い愛情を感じた。

思わず涼風は足を止めてしまう。それを見て草壁も足を止めてしまう。仮面ライダーとして涼風を無理にでも連れて行くべきか、人としてここは放って行くべきか、だがその悩みは朝日奈により直ぐに選択させられる。

「美土里、行くぞ」

「…わかった」

 朝日奈は白龍を呼び寄せる、2人は白龍に飛び乗りラグナロクのもとに向かう。

それから数分後、氷室たちはラグナロクのもとに向かう途中に道で涼風を見かける。

「あれ?涼風じゃない?」

「え、本当だ」

(あの人は、もしかして、)

「ごめん2人とも、先に会長たちの所に行っててくれるかな?」

「え、でも」

「水崎、行くぞ」

 そう炎堂に声を掛けられて水崎は渋々その場を後にして、朝日奈たちの後を追う。その背中を氷室は見送り、涼風のもとに歩み寄る。

「風晴さん、お久しぶりです」

「あなたは、氷室さん?」

「はい、氷室希愛(のあ)です」

 美琴は氷室の顔を見て少し嫌悪と恐怖を混ぜた表情を見せた。だが氷室は特に何も思わなかった、むしろ当たり前だろとでも言うように納得していた。当時、よわい5歳の息子と引き裂かれその日からイザナギの人間として、仮面ライダーとして息子は育てられた。当初、母と別れた涼風は悲しみに明け暮れ、これ以上にはないほどの涙を流していた。それは美琴も同じだったのだろう。

「氷室さんも、颯を戦いの場に連れて行こうとしているんですか?」

「はい…それが私たち仮面ライダーに課せられた運命ですから、」

「運命って、なんですか?」

 美琴の口調には怒りの感情が込められていた。その口調を崩さず美琴は涼風を離すまいと手首を掴みながら氷室に向かって激昂げきこうする。

「この子はあなた達イザナギとは何の関係も無かった!ただの、戦いとは何の関係も無い、私の大事な息子なの!」

 涼風は母の自分のために怒る姿を見て思わず涙をこぼす。何か言いたかった、悪いのはイザナギでも、ましてや氷室でもない、と。だが、それなら何が悪いのか?氷室の言う通り仮面ライダーになる運命を課した神か?イザナギに連れていかれることを拒否しなかった当時の自分か?答えは分からない、だが涼風は何かを言おうと重い口を開こうとする。

「…っ、かあさ…」

   ☆ ☆ ☆

「黒瀬たちが居るのはこの先だな?白龍、急いでくれ!」

「待って煌成、あそこにアスラに襲われてる人がいる」

「そういえばよく分からないゲーム中だったな」

 朝日奈と草壁は白龍から飛び降りながら変身する。

「「変身」」

”仮面ライダーアラマズド・ヨルズ”

 2人は変身すると共にアラマズドは槍状武器トリアイナ、ヨルズは金槌武器ミョルニルを取り出してアスラに飛び掛かる。各々の固有武器を思う存分に振るい次々とアスラを薙ぎ払っていく。

「白龍、全員をアスラの居ない安全地帯に移動させろ!皆さん、そいつの背中に乗ってください!落ちないようにしっかりと掴んで!」

 アラマズドはその場周辺に居る一般人に避難の指示を出す。避難を確認した後、2人は必殺技を発動する。

導軌ノ刻(ガイダンスタイム)光輝ノ聖刃アラマズドサークレッド大地ノ聖刃(ヨルズサークレッド)

「この世に光を灯すのは、俺だ」

「全員、土に還りなさい」

 光の神力と大地の神力を纏った槍と金槌から放たれる斬撃と打撃にアスラは全て斃される。だが、アスラは召喚者の神力があれば幾らでも無尽蔵に溢れ出す。

「これじゃあキリが無いな」

「もともとアスラは今回のゲームの敵キャラみたいなものだし、持久戦に持ち込まれれば圧倒的にこっちが不利よ」

「ああ、分かってる。だが突破口が見つからん」

 2人が息を整えているその時、後ろから炎堂と水崎の声が聞こえた。2人は既に変身していた。

「会長ーー!!お待たせしましたーー!!」

 2人は紅虎ベニドラに乗ってやって来た。紅虎から飛び降り2人のもとに駆け寄る。

「遅れてすみません、途中アスラと遭遇したので、」

 ナーイアスは2回ほど頭を下げる。

「いや、気にするな。氷室はどうした?」

「涼風の所にいます」

 アドラヌスの一言に2人はなんとなく察し、それ以上は何も言わなかった。

「そうか、分かった。とにかく今はアスラを突破して黒瀬のもとに急ぐぞ」

「「「了解!!!」」」

   ☆ ☆ ☆

「廻!アスラは僕に任せて!」

 エレボスは虐殺之宝珠(ジェノサイドチャーム)を使い、変身し分身を出す。

「分かった、頼むぞ」

 ラグナロクは魔剣を持ち直してファフニールに斬り掛かる。ファフニールは短剣を取り出して二刀流で応戦する。本来なら二刀流、しかもファフニールに至っては2本とも短剣なのもあり間合いに近いのもありラグナロクのが不利になる。だがヴリトラとも互角の勝負を繰り広げたラグナロクはやはりそれだけの実力が付いていた。

(私の高速剣舞をこれだけ上手くさばくとは、その上、反撃もしてくる。ヴリトラと互角の勝負をしたというのは本当のようだな)

 ファフニールは一旦距離を取る。

(このままいけばアスラの召喚に意識と神力を削いでいる私のが負ける可能性は高い。ならば今とるべき最適解は1つ。ラグナロクの今優先すべき事を私を斃すことから他に向けること)

「ラグナロクよ、なぜ私がこんなゲームを始めたか分かるか?」

「なんでいきなりそんな事を訊く?」

「お前の固有能力(ユニークスキル)には興味があってな。なんでも見抜けるのだろう?」

「別になんでもじゃねえよ。見抜けるのはせいぜい相手の弱点や斃し方ぐらいだ」

「そうなのか、ならば私の計画の成功率は非常に高いな」

 ファフニールは笑う、ラグナロクはファフニールが何をしたいのかは本当に分かっていない、しかもなぜ急にゲームを始めたのか分かるかなどと訊いてきたことにも謎に感じていた。

「ゲームを始めた理由ぐらいは教えてくれるのか?」

(来た、その言葉を待っていた、これを聞けばお前は私との戦いを中断せざるを得ないだろう)

「この疑狼ノ遊戯(サスピションゲーム)は私の娯楽のために始めたものだ」

「娯楽?だと、どういう意味だ」

「私は圧倒的な弱者が死ぬ様を見るのが非常に楽しいんだ、そしてお前たち仮面ライダーが助けようと必死になりながら最終的には動くのすら辛くなり醜く倒れ行くのを見るのもまた一興…」

「……まさか、」

(そう言えば10数分ごとに脱出可能なミッションを出すと言っていたのに未だに1つも出て来てない。そうかコイツは、自分の作り出した遊戯ゲームで人間が恐怖に怯えながら1つの希望にすがりつく様を観て楽しむイかれた嘘吐ノ傍観者(サイコクリエイター)か。疑狼ノ遊戯(サスピションゲーム)の疑狼はてっきり人狼のように参加者の中に裏切り者でもいるからかと予想していたが、全てが嘘で塗り固められたって意味だったとはな)

「脱出するすべなんて、最初から存在しなかったってことか、」

「そこまで見抜いたか、さすがはラグナロクだ。さぁどうする、私を斃せば確かにこの遊戯ゲームは終わる。だがそれまでの間に何人の人間が死ぬかな?」

「……っ」

(ごちゃごちゃ考えている暇はないか、)

「勝負は一旦お預けだ」

 ラグナロクは八咫烏を召喚して空からアスラの居場所を一気に確認する。

「一つ一つ斃しに行けば必ず何処かに犠牲が出る…」

 対策を見つける為にラグナロクは絶対攻略(フルスキャン)を発動する。

「これか、」

 ラグナロクは消滅之宝珠(バニッシュチャーム)を取り出し2回起動する。

“バニッシュ、力の解放(リベレイション)、ローディング”

 ドライバーに装填して回転させる。するとラグナロクの終焉の力と消滅の力が混ざり合う。

「華々しく、散れ」

終焉ノ消滅(ラグナロクバニッシュ)

 終焉の力により火力が増した禍々しい触手が街の至るところに降りかかる。アスラは次々とほふられる。その光景にエレボスは感激する。

「きれい…さすが廻…」

 その姿にファフニールは呆れる。

(ラグナロクの異常な強さもそうだが、エレボスの依存性も異常だな…。あの力が綺麗だと…?)

 ファフニールは今のうちにとその場から退散する。

「このゲームを続けるためにも少し距離を置くか、」

   ☆ ☆ ☆

「…っ、かあさ…」

 涼風は氷室を責める美琴を止めようとする、その時、周辺から次々と爆発音が聞こえる。それはラグナロクによるアスラの大量撲滅の攻撃だった。

「これは、黒瀬のやつか」

 その光景に涼風は呆気を取られる。涼風でさえこれだ、美琴に至ってはより一層イザナギに対して恐怖を覚える。

「こんなのが日常な世界に颯をこれ以上は居させられません」

「……そうですか、それはそうですよね」

 意外にも氷室は反論も否定もしなかった。

「確かにイザナギは、仮面ライダーとして生きるということは常に死と隣り合わせで親としてはそう思うのが当然です。私も最近になってそう思うようになりました」

 涼風よりも前からイザナギの教育を受けてきた氷室は黒瀬たちに出会うまでは仮面ライダーとして命を懸けることには何の疑問も抱いてはいなかった。だがあの日、黒瀬から必殺斬りを放たれたとき氷室は確かに死の恐怖を感じた。死にたくはないと思った。

「だから私は涼風を取り返そうとする風晴さんを止めようとは思いません。でも、涼風の意思だけは尊重してあげてください」

 氷室が自分に頭を下げるのを見て美琴は少し大人気なかったなと反省する。

「顔を上げてください、あとは颯と2人で話します」

「…分かりました、失礼します」

 氷室は顔を上げて涼風と一瞬だけ視線を合わせた後、その場から離れて黒瀬のもとに走って向かう。

「母さん…」

ーーーーーーーーーー

【仮面ライダーラグナロクに関する現在公開可能な情報】

 ラグナロクは使用中のフォームに自身の生み出した宝珠チャーム力の解放(リベレイション)して使うことで力の掛け合わせをすることが出来る。これにより必殺技は通常時の何十倍の威力に加え何十倍ものパフォーマンスを発揮できる。

必殺技:終焉ノ消滅(ラグナロクバニッシュ)

ーーーーーーーーーー

次回予告

 ゾロアスターの幹部で策略家の異名を持つファフニールが始めた一般人を巻き込んだ疑狼ノ遊戯(サスピションゲーム)。一般人を守るためにも奮闘する黒瀬たち、だがそんな中、涼風はまた別の問題に直面していた。人々を守りつつ、全ての問題を解決することはできるのか?

第24話:想いは言わねば伝わらない

 仮面ライダーラグナロク第23話『策略家ノ遊戯』を読んで頂きありがとうございます。柊叶です。今回はゾロアスターの幹部の1人ファフニールが暗躍する回の前編でしたがどうでしたか?まだ前編なのでこのゲームの本当の目的はハッキリとは明言していませんが、その辺も次回でしっかりと書ければなと思っています。なので次回も楽しみにして頂けたら嬉しいです。

柊叶

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