第19話 『式神対決』
〜前回の仮面ライダーラグナロク〜
遂にゾロアスターの幹部の一人ヴリトラが動いた。戦いの目的は自分が斃したいと思っていたインドラをラグナロクにやられた事への腹いせだった。その後、フレイヤたちが現場に到着すると、クリスマスの日に現れたアテナが現れるが、無事に撃破する。
冬休みが終わり、数日ほど経った今日、生徒会役員たちは生徒会室で仕事をしていた。
「会長、受験勉強のほうは良いのですか?草壁先輩も」
氷室は卒業式に関する資料を渡す。
「俺も美土里も玉帝学園に付属してる玉帝大学に上がるから問題はないよ。元々の成績の良さがあるし、所謂エスカレーターってやつ?」
「それに私たちは仮面ライダーとしての仕事もあるからね。試験はたぶんカットされるわ」
「そうなんですか。なら良かったです」
どういうことだ、と朝日奈と草壁は奥を見ると氷室が台車にダンボールを乗せてやって来た。
「仕事、めっちゃ溜まってるんですよね」
「……労働はんたーい」
「労基は発動不可です」
〜2時間後〜
「も……こんな事になるならまだ北欧に居ればよかったよ、もう今何時だよ…」
「それな…まだ日本食を食べれないのを我慢してたほうがマシだった」
「お二人は北欧でなにをしていたんですか?」
炎堂が質問する。
「俺たちは北欧でラグナロクについて調べていたんだ。今年に入って急にイザナギの倉庫から終焉之宝珠が無くなったと報告を受けてね。何か起こるなと危惧した上が俺たちにラグナロクが起きた場所とされるノルウェーのナルヴィクに行って来いと命令してきたんだよ」
「結局何も分からなかったし、ただ二代目ラグナロクが誕生しただけだしね。時間の無駄だったわ〜」
「あの、俺たちも、そういうエスカレーター式で玉帝大学に入れるんですか?」
炎堂が質問する。
「それは成績次第だ。俺と美土里は学年内や全国統一テストなどで常に上位をキープしているからこの手の補助が出ているんだ」
「そういう仕組みなんですね」
へ〜。と炎堂は感心する。エスカレーター式については涼風も水崎も氷室も知らなかった様子だった。
「あの、会長」
「どうした?」
氷室が深刻そうな顔で会長席前に来る。
「……仕事の追加です」
目の前に目安箱が置かれる。
「………美土里」
「なに?」
「人数分のオロナミンCを」
☆ ☆ ☆
「月夜、どうしたんだその荷物は」
朝から何処かに出掛けていた永倉が何やら荷物を持って帰って来た。
「ん?ああ、ほら永倉家は一応イザナギに属してたでしょ?でも僕は廻側に着いたから、多分そのうちウチにあった宝珠とかが押収されるかもだから先手を取ってコッチに持って来たんだあー」
「ドライバーは一緒でもエレボスの力には他のフォームがあるのか」
その場にヤンキー座りをして宝珠を手に取る。
「でも殆どってか全部埃被ってるし中身が見えないな」
「長いこと使ってないからね」
「適当に試してみてもいいか?」
「いいよ」
黒瀬は適当に宝珠を一つ選ぶ。
「じゃあ僕は向こうの部屋に持ってきた物置いてくるから」
「おお」
黒瀬はドライバーを装着してから宝珠を起動する。
“ーーー”
「相当古いんだな。なんて言ってるのか分からねえ」
“ローディング”
宝珠を回す。数瞬後、宝珠が割れる。
「うわっ!?」
ガラスが割れたような音がしたからか永倉が部屋から出て駆け寄って来る。
「廻!だ、大丈夫!?何があったの!?」
相当驚いたのか黒瀬は右手で頭を抑えていた。見てみると少し傷ができていた。
「きゅ、救急箱取って来るね!」
「ああ」
〜手当て中〜
「これで良しっと。ごめんね、相当保管の仕方が悪かったのかも」
「気にするな。使いたいって言ったのは俺だ」
黒瀬は立ち上がり宝珠の破片を拾う。
「…まあでも、何の神様なのかは知りたかったかな」
「そうだね。今度持ってきた資料から何なのか調べてみるよ」
「いいのか?」
「うん、僕廻のためならなんだってしてあげたいから」
〜2時間後〜
「月夜、片付けは終わったのか?」
「うん、終わったけど、どうかした?」
「前に言ったが俺はこれからゾロアスター撲滅に全てを捧げるつもりだ。だからこれからは自分から動いて奴らを呼び寄せようと思う。ついて来てくれるか?」
「…もちろん。行こ♪」
二人は外に出てそこらを彷徨く。しばらくしてそこらの河川敷を歩く。
「なかなか釣れないねー」
「ゾロアスターの居場所が分かれば一番楽なんだがな」
「確かに。でもそう簡単にはいかないよね」
永倉は辺りを見渡す。
「ねえ、廻」
「ん?」
「廻はイザナギに居る人たちのためにゾロアスターを潰すって言ったけど、そのイザナギが自分を潰しに来ても、イザナギのために戦い続けるの?」
「……戦い続けるし、その時はあいつらとも戦う。俺に残された道は、それしか無いしな」
「そっか、なら僕は一生付き合って行くよ」
「ありがとな」
和やかな雰囲気が漂っていると、突然永倉が。
「あ、」
「どうした?」
「実はさっき荷物整理をしてた時に気になる資料があったの忘れてた」
「気になる資料?なんだ?」
永倉は転移之渦を開き資料を取り出す。
「これなんだけど」
「んん?式神の、強化?」
☆ ☆ ☆
「も…ろ…ど…や…」
「会長、なんて言ったんですか?」
「もう労働嫌だ、って言ってるわね」
水崎の質問に草壁が通訳する。
「なんで会長やってるんだって感じですね」
炎堂の鋭い一言に朝日奈は「うっ!」と唸る。
「仕方がないだろう。俺はそもそも働くのは好きじゃないんだ。会長になったのも…内申のためだ。そしたらまあ仕事が多いし、仕事は多いし、やってられるかこんな役職」
「分かるかお前ら。これが日頃偽善者オーラを纏った人の本性だ」
「涼風も言うようになったね」
氷室は少し感心する。
「偽善者、ね。確かに煌成は偽善者の塊のようなやつだけど」
会長机の上に腰を下ろしながら潰れている朝日奈の頭を撫でる。
「あなた達のことを守りたいって気持ちは本当よ。それだけは信じてあげて」
「草壁さん…」
水崎はどこか草壁の気持ちに共感の意を抱いていた。そんな中、草壁のスマホが振動する。相手は天智だった。
「はい。…ええ分かったわ」
「どうしたんですか?」
氷室が訊く。
「邪神が出たそうよ」
「場所は!」
涼風が訊く。
「此処から少し遠くの山の中ね」
「私は先に向かいますね。詳しい場所を送っておいてください」
氷室は生徒会室を出てバイクを出して現場に向かう。
「もしかして、会長も副会長もバイク免許無い感じですか?」
炎堂が訊く。
「え…まあ、そうね。と言うわけで、ほら煌成起きなさい」
「………」
「わるいけど、炎堂くんの式神でも何でも良いから先に行っててくれる?」
「分かりました。じゃあ行くか」
三人は外に出る。炎堂は籠手を取り出して式神を召喚する。
“紅虎、守護者、召喚、紅虎”
炎堂を先頭に水崎、涼風と紅虎に跨り、空に向かって走り出し氷室の後を追いかける。
☆ ☆ ☆
「式神の強化を行えるのはただ一人、それは仮面ライダーラグナロク」
横から永倉が「さすが」と相槌を打ってくる。
「強化はラグナロクが所持する宝珠のみでしか行えない」
二人は河川敷に座りながら資料を読む。
「なるほど、今度八咫烏を使うときに試してみるか」
資料を閉じようとすると永倉が「待って」と黒瀬の手を止める。「どうした?」と問うと「此処を見て」と指差す。そこにはラグナロクの固有能力について、と記述があった。
「俺の…固有能力。絶対攻略のことか?それならもう使い熟せてるから特に気にならないが、一体どうしたんだ?」
「此処見て、固有能力は二つ、ってある」
「二つ…?ヴァルハラ!」
天に向かって叫ぶと上から舞い降りて来る。プリンを食べながら。
「なんだなんだ?一体どうしたんだ?」
「此処を読め。能力が二つあるって、どう言うことだ?」
「……ああ、そう言えばそうだった気もするな」
「なんで教えないんだよ!?」
「三千年も前なんだぞ、忘れるのも致し方ないだろ」
開き直る態度を見て黒瀬は少しイラッと来た。
「まあもう良いか。で、その能力ってのは何なんだ?」
「確かその名は…完全錬成だったかな」
「完全錬成?それは何なんだ?」
「百聞は一見にしかず。終焉之宝珠に向かって問うてみろ」
黒瀬は終焉之宝珠を取り出して起動する。すると脳内に何か映像が流れる。それは完全錬成を使ってきた初代ラグナロクの映像だった。
「これが…完全錬成…」
(そうか…だから俺はあの時、デストロイとバニッシュの力を生み出せたのか…)
「ど、どんな能力なの…?」
黒瀬は「ああ…」と説明しようと永倉のほうを振り向くと同時に邪神の気配を感じ取る。
「ちょうどいいのか悪いのか。月夜、行くぞ」
「うん」
「河川敷をバイクで走るわけには行かないからな」
“召喚、八咫烏”
二人は八咫烏に飛び乗る。
☆ ☆ ☆
氷室は麓に着きバイクを停め、既に山中に居た。後ろから水崎の声が聞こえた。
「希愛ー!!」
「シズク、早いね」
「急いだからね、紅虎が」
遅れて炎堂、涼風が登って来る。
「おい水崎、いきなり紅虎から飛び降りるな」
珍しく炎堂が怒る。
「シズク飛び降りたの!?」
「希愛を見つけたら嬉しくてつい。大丈夫だよ、ちゃんと水を生み出して滑り台みたいにして着地したから」
「いつの間に神力の操作が上手くなったもんだな」
「それはもちろん毎日訓練してるからね。ほら早く行くよ」
四人は神力を辿って現場に向かう。
☆ ☆ ☆
「廻、あれ!」
永倉が指差した先には炎を纏う虎が居た。
「紅虎、炎堂か」
「まだアラマズドとかは来ていないみたいだけど、どうする?」
「来る前に邪神を斃す。それだけだ」
「そうだね、廻らしいや」
二人は少し手前で八咫烏から降りる。そこからは不落ノ八咫烏に乗って氷室たちとは逆のほうに回りそちらから山を登る。
「こっちから回ったとして間に合うかな?全然居場所が特定できないけど」
「山全体を神力で覆うことで自分の居場所を特定させないようにしているんだろ。だが見つかりたくないなら、こんなにも多くの神力を使うことはしないはずだ」
「逆にこの山に居るよって教えているようなものだものね」
「ああ、となると相手の目的は膨大な量の神力を使って何かを行おうとしているってとこだろうな」
黒瀬は式神の宝珠を取り出す。
「式神を手のひらサイズにして索敵として使おう」
二人は八咫烏と黒龍を召喚して山中の索敵を行わせる。
「烏も龍も手のひらサイズになると可愛いね」
「だな」
二人は邪神の居場所特定に苦戦するが、それはイザナギの四人も一緒だった。
☆ ☆ ☆
「ダメだ、全然分からない」
「居場所を探るのに神経を注がせて俺たちの脳の負担を増やして疲れさせるつもりか…?」
氷室が弱音を吐くとみんな一緒だとでも慰めるように涼風は相手の狙いに予想を付ける。
「もうこうなったら、式神に頼ろう。一応天使たちも索敵を行ってはいるが、あいつらは神力を辿ることはできない。だが俺たちの持つ式神なら神力を辿ることはできる」
四人は式神を召喚する。
“守護者。冰狼、紅虎、蒼鯨、翠蜂”
「涼風の式神って、蜂なんだ」
氷室が訊く。
「なんか日頃から突いた上に毒も吐くから、なんか似合うわね」
「おい、俺のことは馬鹿にしても翠蜂のことは馬鹿にすんなよな」
四人は式神を手のひらサイズにして索敵に使用する。
☆ ☆ ☆
山の中、某所。其処は巨大な岩壁に囲まれた場所。その中で一人、女神が何やら魔法陣の前でぶつぶつと呪文のようなものを唱えていた。その女神の名はキルケー。
「嘗て黄金の林檎を守護してきた無数の頭を持つ竜よ。今こそ我らが野望のために、この地に顕現したまえ」
キルケーが魔法陣に向かって山を囲っていた膨大な神力を一気に注ぎ込む。魔法陣は怪しく光り輝く。すると其処から禍々しく棘の生えた頭を多く持つ竜が現れた。
「おお…これがかの有名なラドンか…。是非とも私の支配下に置きたいものだ」
なにやらキルケーは杖を取り出してラドンに向かって光線を放つ。するとラドンは大人しくなる。
「調教完了」
☆ ☆ ☆
当然その様子は黒瀬たちも、氷室たちも見えていた。
「あれは、ラドンか」
黒瀬は真正面からラドンを見上げる。
☆ ☆ ☆
「希愛、あれはなに?」
「ラドンだよ。百の頭を持つとされてる竜だよ」
「ひゃっ!100ぅぅゥゥゥ!?」
「炎堂うるさい!耳元で叫ぶな!」
水崎に頭をぶっ叩かれて「イタッ!」と言う。
「お前ら喧嘩なんてしてる暇は無いぞ!」
涼風をはじめ四人ともドライバーを装着する。
「「「「変身」」」」
☆ ☆ ☆
「フレイヤたちの気配だ。廻、どうする?」
「四人でラドンに勝てるわけがない。行くぞ」
二人はドライバーを装着する。
「「変身」」
☆ ☆ ☆
「この気配は仮面ライダーたちか。ラドン、やってしまえ」
キルケーの指示を受けてラドンは天に向かって咆哮すると共に百個あるうちの半分ほどの首を周辺に無作為に振り落とす。
フレイヤたちは其処らに飛んで躱す。ラグナロクたちも同じように避ける。
「月夜、下からの戦いは不利だ。空中で戦うぞ」
二人は式神を呼び戻し、元のサイズに戻してその背中に飛び乗る。二人は上から攻撃をする。
「月夜、お前遠距離、中距離の攻撃手段は無いのか?」
「ごめん、持ってないんだ」
「そうか、ならこれを使え」
ラグナロクは空中で消滅之宝珠を投げ渡す。
「え?いいの?」
「ああ、好きに使え」
「やった!」
“バニッシュ、ローディング”
「変身」
“As the purple smoke rises...everything disappears.(紫煙が上がるそのとき…全てが消え去る。)
仮面ライダーエレボスWITHバニッシュ”
エレボスはバニッシュの力を行使して触手による攻撃でラドンの首を削ぎ落としていく。ラグナロクは八咫烏の巧みな滑空技術を利用して近接で首を斬り裂いていく。
その様子をフレイヤたちは下から見上げていた。
「式神を使っての空中戦…」
「確かに上からの方が戦いやすそうではあるな。俺たちも式神を呼び戻して戦うぞ」
四人は式神を呼び戻して元のサイズに戻して空へと向かう。それをキルケーは目撃する。
「全部で六人か。ラドン、やってしまえ」
ラドンは全ての口から火球を放つ。
「くっ、いくら斬っても再生するか」
ラグナロクは絶対攻略を使用し、ラドンの攻略策を見つける。
(なにか、何かないのか。この竜を倒す術は…)
ラグナロクが対抗策を見つけている途中なのをエレボスは見て察する。
(廻が真剣にラドンを倒す術を探してる。僕が守らないと)
ラグナロクに放たれる火球をエレボスはバニッシュの力で消滅させたり触手で薙ぎ払ったりする。仮面の中で黒瀬は眼を白銀色に光らせて脳内であらゆる攻撃手段をシュミレーションする。
(不可…不可…不可…不可…)
「ダメだ、どれも使えない」
ラグナロクの脳内には自分とエレボス二人では勝つことはできない結論が下される。
「くそ、一体どうすれば」
そのときエレボスがラグナロクの下に戻ってくる。
「廻、さっきヴァルハラから教わったやつは試した?」
「?…そうか、それがあったか」
すぐにラグナロクは完全錬成を対抗策を導き出すための使える項目に追加する。すると一気に情報が書き換えられ、目の前に出ていたUNCLEARがCLEARに変わる。
「これならイケる」
ラグナロクは右手を自分の目の前に出す。すると手のひらの上に宝珠が一つ生まれる。それは迅速之宝珠だった。
「月夜、お前はこれまで通り行け」
“ヘルメース、ローディング”
「変身」
“The name of the god who gained fame through speed is...(速さを力に名声を高めた神の名は…)
仮面ライダーラグナロクWITHヘルメース”
「分かった。気を付けてよ」
「ああ」
ラグナロクはその途轍もないスピードで一気にラドンの首を斬り落として行く。その様子を見てルドラは驚く。
「な、なぜ黒瀬が迅速之宝珠を!?」
「涼風!避けて!」
ラグナロクに気を取られて氷室の言葉が聞こえるまで自身に迫る火球に気づかず直撃しそうになるが、フレイヤが氷の壁を張りなんとか防ぐ。
「すまん!助かった!俺たちも一気に畳み掛けるぞ!」
四人はフォームチェンジする。
“WITHウル、ヒュドラ、アグニ、トリトン”
「俺たちの式神も元のサイズに戻して一気に畳みかけるぞ!」
ルドラの指示を受けて三人は各々の式神に神力を流し込み標準サイズに戻す。
そしてラグナロクとイザナギは自然な流れで共闘に至る。
「このままではラドンが、」
キルケーはラドンに対して飛ぶように指示を出す。ラドンは姿を変えてまさに皆がイメージする西洋の竜に変化した。
「空中戦ではラドンのが有利だな」
「待って廻。あいつ僕たちの方は見てないよ」
「なに?」
エレボスの言う通りラドンの視線は仮面ライダー達には向いておらず、その視線の先には街があった。
「まさかこいつら、街を狙うつもりじゃ…」
ナーイアスはラドン、そしてキルケーの狙いに予想を立てる。
「だとしたらとんでもないことになるぞ。とてもアイツの火球を全員の式神を使っても全て止められるとは思えねえ」
アドラヌスは少し諦めていた。
☆ ☆ ☆
「廻、どうする?」
「………」
ラグナロクは絶対攻略でこの窮地を脱する術を探す。
「今こそ使う時だ。式神の強化を」
左手にもう一つの吹雪之宝珠が生まれる。
“ウル”
ダーインスレイヴに装填すると同時に本体ごと右に90度回す。
“錬成、二重錬成。八咫烏WITHウル”
ラグナロクはエレボスの乗る黒龍に飛び移る。
「さあ八咫烏。ラドンの火球との勝負だ」
八咫烏は天高く鳴く。その様子がイザナギ四人たちからも見えた。
「氷室、あれは、」
「…っ、白い、八咫烏」
(ただ白いだけじゃない。まるで冰狼のような…)
「あれは…冰塊…?」
ラドンは八咫烏の異質な変化を感じ取り真っ先に火球を放つ。だが八咫烏は冰塊を放ち火球を消し飛ばす。
「よし、月夜。俺たちも行くぞ」
「了解。黒龍!」
エレボスの指示を受けて黒龍はラドンの後ろに回り込む。イザナギの面々も遅れは取らない。直ぐ様にラドンの隙を見つけて攻撃を仕掛ける。ラドンと六体の式神の激しい戦闘もやがては終わりを迎える。
“祓魔ノ刻・葬送ノ刻”
「決めるぞ、月夜」
“吹雪ノ一閃。迅速・消滅}ノ滅波
「華々しく、散れ」
「闇に沈め」
八咫烏の放つ強烈な吹雪の中でラグナロクは縦横無尽に高速キックを叩き込む。エレボスは真上からラドンの胴に向かってキックを放つ。二人の式神も冰塊を放ったり闇色の炎を放ったりする。二人の必殺技と同タイミングでイザナギ四人も必殺技を放つ。
「私が看取ってあげる」
「痛いのは風が吹くように一瞬だ」
“加護ノ刻}吹雪・猛毒・猛火・波浪}ノ洗礼”
エレボスを中心に各四方からキックを放つ。ラドンは空中で爆散し果てる。ラグナロクとエレボスは最初に居た山の中央に降り立ち変身解除する。
「廻!?どこに行くの!?」
「キルケーのところだ!奴にラドンを召喚した理由を訊き出す!」
永倉は走って黒瀬の後を追う。
☆ ☆ ☆
四人もラドン撃破後に元いた場所に着地していた。
「氷室、何処に行く気だ?」
撃破した直後に氷室は山をまた登山を再開しようとするのを涼風は静止する。
「キルケーの下に行くだけだけど?まだあいつは斃してないでしょ?」
「本当にそれが目的か?」
「なにを根拠に疑ってるの?」
涼風に対してかなりキレているのが見て伺えた。
「いつものお前なら神力を大幅に消費する式神を使用した戦闘を行った後にまた戦いに行くようなバカな真似はしないだろ?」
「……なんで、気づくのかなあ」
氷室は俯く。
「幼馴染だから、とだけ言っておこう。とにかく今日はもう帰るからな」
涼風は風の転移之渦を開く。四人はそれでイザナギに戻る。
☆ ☆ ☆
「廻、いったい何処に行ったの…?」
山の中、木々の中で永倉は迷子になっていた。
「もうー走るの早いよー」
☆ ☆ ☆
「はあ…はあ…。見つけたぞ、キルケー」
キルケーはラドンを召喚した際に使った魔法陣を消している途中だった。
「お前の狙いは何だ?なぜラドンを召喚したんだ…?多少苦戦は強いられたが斃せない相手ではなかった。それはお前も分かっていたはずだ。なぜあんな召喚損なことをした?」
「ふっ…ふははははは…!」
キルケーは高らかに笑う。
「分からないのか?ラドンの召喚は単なる始まりに過ぎない。とだけ言っておこう」
そう言い残してキルケーはその場から姿を消す。
「始まり…?いったいどう言う意味だ?」
黒瀬はその場の近くにあった腰掛け石に座る。するとそのタイミングで永倉が黒瀬を見つける。
「廻!も〜探したよ〜」
「ああ…」
黒瀬の様子がおかしい事に気づく。
「廻、なにがあったの?」
両手で口元を覆いながら黒瀬は地を見つめながら絶句する。
「帰ったら話す…」
「うん、分かった。帰ろうか」
永倉は転移之渦を開く。
☆ ☆ ☆
「全員無事で何よりだよ」
「サボった身分のくせに随分と上から目線ですね」
氷室からの冷たい視線に朝日奈は少しビビる。
「会長は今回の件についてどう考えていますか?」
涼風に質問を受ける。
「…そうだなあ。美土里はどう思う?」
「何かが起こる前兆…とかじゃないかしら?」
「前兆…だとしたらなにが起きるんだろうな」
炎堂の素朴な疑問。
「世界の終末とか?」
ふと水崎は呟く。
「だとしたら、とんでもねえな」
「あくまで適当に言っただけだから、本気にしないでよね」
先ほどまで怠惰の塊だった朝日奈は突然顔を整えて会長の威厳が溢れだした。
「とにかく我々のすべき事は変わらない。君たち二年はこれからも邪神討伐に専念してくれよ」
「お二人はなにを…?」
氷室はなんと答えられるか分かった上で訊く。
「俺らのやるべき事は変わらない。ラグナロクを処刑する。それだけだ」
「私が阻止しに来たらどうします?」
「叛逆…と見做して氷室家も潰さなきゃいけないかもな。前にも言ったが俺の意思は関係なしに上層部が氷室の身内を誰か殺すだろうな」
「覚悟の上です」
六人の間に、冷たい空気が漂った。
☆ ☆ ☆
黒瀬はキルケーとの会話内容について永倉に話していた。
「そんなことが。キルケーの狙いって、いったい」
「それは本当に分からん。でもこれで分かったこともある」
「それは…?」
「ゾロアスターの当初の目的は俺を、復活したラグナロクを消すことだったが、今回あのように竜などの召喚を試みた辺り、奴らはこの世界そのものを支配、または破壊を目的と変更したと考えていいだろうな」
「もしそうなったとしたら、」
「ああ、一刻も早くゾロアスターを、アフリマンを斃さなくてはならない」
☆ ☆ ☆
〜ゾロアスター〜
「おいファフニール、何だよいきなり呼び出して」
「アフリマン様からの呼び出しだ。私に文句は言うな。おい、キルケーとビアーはどうした?」
「遅れてくるだろうよ」
遅れて二人がやってくる。
「アフリマン様。全員揃いましたが、今回はどのような要件で?」
ファフニールは幹部内でも皆の中心の様子。その声を聞き奥にいる怪しい影は幹部の方に振り返り姿を見せる。
「我々ゾロアスターは本日より目的を変更する。ラグナロクの抹殺はこれまでの報告から難しいと判断した。故に我々は本日よりこの日本を始まりとして世界を手中に治める」
アフリマンの命令を受けてヴリトラ以外は深々と頭を下げる。
「俺は強い奴と戦えればそれでいいさ」
ーーーーーーーーーー
【仮面ライダーエレボスに関する現在公開可能な情報】
『消滅之宝珠』
身長200cm 体重95kg パンチ力25t キック力60t ジャンプ力70m(ひとっ飛び)走力2.5秒(100m)
必殺技 消滅ノ滅波
ーーーーーーーーーー
次回予告
本格的にゾロアスターが動き出しラグナロク側もイザナギ側も大混乱。そんな中、ゾロアスターは数による殲滅を試みてフィアナ騎士団を送ってくる。
第20話:集団殺戮
仮面ライダーラグナロク第19話『式神対決』を読んで頂きありがとうございます。柊叶です。今回は式神たちの大活躍といった回にしようと思って作りました。式神とかって後半はCG費用とかを気にして使わなくなったりするので…。なので今回は思いっきり活躍させました!これで皆んなの所持する式神が分かりましたね。烏、狼、虎、鯨、蜂、鹿、熊、龍、龍。皆さんの推し式神はできましたか?
そして次回はゾロアスターの動きに変化が生じそうな回になりそうですね。仮面ライダーラグナロクの物語はここからさらに何かが起きそうです。楽しみにしていてください。
柊叶




