第17話 『光と土、そして闇』
〜前回の仮面ライダーラグナロク〜
仮面ライダーインドラこと望月雷牙が死んだことにより黒瀬廻はイザナギを離れることを選ぶ。結果、ラグナロク対イザナギの構図ができあがることに。さあどうなるどうなる!?
「えっと、じゃあそのお二人が…」
クリスマスの悲劇から二日後。炎堂、水崎、氷室はイザナギに呼ばれて来ていた。炎堂はまるで初めて見たかのように目を左右に動かしていた。
「ああ、朝日奈生徒会長と草壁副会長だ」
涼風は手も向けて紹介する。
「一応一年は務めてるし半年は普通に学校に居たから顔ぐらい知ってるはずなんだけど」
「あ、俺基本的にスポーツしか興味ないので生徒会役員の顔とか知らないんですよね」
「炎堂は生徒会選挙の時間寝てましたから。ほんとすいません」
そう水崎からの説明補助を受けて朝日奈は納得する。
「気にしなくていいさ。生徒会選挙ってそういうもんだよね」
意外にも朝日奈は物腰が柔らかくどこか鳴上らしい雰囲気を感じた。
「ところで、会長達は今までどちらに居たんですか?」
「ああそこら辺の説明をしていなかったね。あれ、美土里は…」
朝日奈はホール内を見渡す。草壁は氷室の隣に座っていた。
「氷室は、何かあったのか?」
朝日奈は小声で水崎に訊く。
「希愛は、」
水崎は朝日奈と壁際に移動し、小声で説明する。
「もう戦いたくない?本当に氷室がそんな事を言ったのかい?」
「はい。黒瀬との戦いが、相当、応えたみたいで、」
「そうか。分かった、黒瀬廻の件に関しては俺と美土里でどうにかしよう」
朝日奈の言葉に草壁以外の四人が振り向く。
「どうする気ですか?」
氷室が問う。
「心配しなくていいわ、私たちだって大事な後輩を殺したいわけじゃないから」
草壁は氷室のことを優しく撫でる。
「美土里、行くぞ」
「はいはい」
☆ ☆ ☆
黒瀬は公園にある木の下に居た。
「そうか、会長に副会長が帰って来たのか」
手のひらサイズの八咫烏にイザナギ内を監視させていた様子。
「カアアアア♪」
「会長と副会長が俺を探してるのか?そうか、多分殺しに来るんだろうな」
八咫烏を宝珠に仕舞う。
「とりあえず少し遠くに移動しておくか」
黒瀬は公園を出てそこらを歩き遠くに移動する。そしてどこかのアリーナに着く。
「君が、黒瀬廻か?」
顔を上げると見たことのある顔があった。
「…朝日奈煌成と、草壁美土里さん、ですか?」
「俺たちのこと知ってるんだ」
「去年の生徒会選挙に出馬していたでしょう?」
「そうか。いきなりですまないが、君には死んでもらう」
“運命之帯”
「やっぱり上の命令は絶対ってやつですか、」
“宿命之帯”
「いいや、君はイザナギに叛逆を起こした存在だ。つまり死刑対象というわけだ」
「なるほど。なら、本気でかかって来てもらっていいですよ」
“ラグナロク、ローディング。仮面ライダーラグナロク”
「変身」
ラグナロクは変身し、魔剣を取り出す。
「美土里、お前も早くドライバー着けろよ」
「ええーめんどくさー。煌成だけで勝てるでしょ?」
「念には念を。あと手っ取り早く終わらせるためだ」
「はいはい」
“アラマズド・ヨルズ。ローディング”
「「変身」」
“Even the most powerful darkness brings light to the world with its brilliance.(強大な闇も、その輝きで世界に光を届ける。)仮面ライダーアラマズド”
“This power will become a great foundation for bringing prosperity to the world.(その力は世に繁栄をもたらす大きな礎となる。)仮面ライダーヨルズ”
2人は各々の武器を取り出す。
“トリアイナ、ミョルニル”
アラマズドは槍を、ヨルズは大きな金槌を。ラグナロクはヨルズから放たれる金槌を上手く躱しながら、魔剣でトリアイナを捌く。
「聞いていたとおり相当戦ってきたようだな。綺麗な剣捌きだ」
「それはどうも」
(実家で剣の舞の練習をしていたお陰かもな…。それにしてもアラマズドにヨルズ、どちらの武器もリーチはあれど近接か)
3人の攻防は続く。しかしラグナロクが相手にしているのは自分や氷室たち以上に前から仮面ライダーとなり、戦ってきた歴戦の猛者。徐々に押され始める。二人は神力の扱いも上手くなにより固有能力が強すぎた。
アラマズドの固有能力は『天啓未来』消費する神力の量によって数秒から数十秒先までの未来を天啓の如く脳内再生される。所謂未来予知である。
(攻撃が読まれているのか、)
そして特にいま厄介なのはヨルズによるアラマズドのサポート。ヨルズの固有能力は『重力強制』対象に対して重力をかけることができる。その二つの能力によりラグナロクは苦戦を強いられる。だが、ラグナロクには一つだけ中距離で戦う術があった。
“バニッシュ、ローディング”
「変身…」
“仮面ライダーラグナロクWITHバニッシュ”
「それは…」
(報告書には記載が無かった力、)
「つい昨日手に入れたものでな」
ラグナロクは手から禍々しい触手でアラマズドを押していく。ヨルズは重力をかけようとするが、バニッシュの力で無効化される。
「私とは相性最悪だわ、帰っていい?」
「この状況でか?やり用はいくらでもあるだろ?」
アラマズドがある宝珠を取り出すと、
「はいはい」
“白龍、灰熊。守護者、召喚。白龍、灰熊”
「式神か。行ってこい八咫烏」
“魔宴、召喚、八咫烏”
天には白龍と八咫烏、そして目の前には巨大な熊が現れた。
「物量押しってことか、」
(ノックバック狙いってことか)
天空では白龍と八咫烏がぶつかり合う。そしてアラマズドはラグナロクの放つ触手を掻い潜り近接戦闘に持ち込む。実質ラグナロクはアラマズド、ヨルズ、灰熊の二人と一体を相手することになった。
☆ ☆ ☆
「ねえ、本当にあの二人が黒瀬と戦わないと思う?」
静かな空気を水崎が断ち切る。
「朝日奈会長も、草壁副会長も、俺はいい人そうに見えたが?」
「第一印象を訊いてるわけじゃないわよ」
「……あの人は、危険だ」
涼風がボソリと呟く。水崎が訊き返す。
「どういうこと?」
「あの人は、いわゆるカリスマ性を兼ね備えている人だ。だが、その性根は、途轍もないほどの腹黒さを隠している。さっきの草壁さんが発した言葉も俺たちをついて来させないための補助だろう」
「な、なんでそんな事を今さら言うのよ!」
水崎は声を荒げながら涼風に近づく。
「仕方ないだろ!朝日奈さんの持つ固有能力の前では、下手なことは言えない」
「会長の能力はなんなんだ?」
壁に寄りかかっていた炎堂も気になるのか姿勢を正す。
「去年のある日、鳴上さんが俺に教えてくれたんだ」
〜〜〜
「『天啓未来』?何ですかそれは?」
「煌成が使う固有能力なんだけどさー。今日の昼休みに煌成にイタズラしようとしたら、逆にイタズラされたんだよ。だから何で分かったんだーって訊いたら。《俺は常に能力を使用してる、俺に叛逆を起こそうものなら消すからな》って脅されたよ。颯も気をつけな。あいつあんな善人オーラ出してるけど、敵にしたら厄介だからね」
〜〜〜
「だから、あの人の前では下手ことは言えないし、部屋を出たからと言って直ぐには何も言えない」
「…今から行って、間に合うと思う?」
「何をする気だ…?」
「決まってるでしょ!黒瀬を助けに行くのよ!」
水崎はホールを出ようとするとその手を止める者が居た。
「…離して」
「断る……。お前一人じゃ行っても黒瀬の足手纏いになるだけだ」
いつもの炎堂ならこんな事は言わない。いつもなら俺も行くとか水崎の取る行動を優先したような事を言う。
「なんで、そんな事を言うの?黒瀬が殺されるかもしれないんだよ!?」
「分かってる!でも、俺らが行ったところで、何になるって言うんだ?黒瀬に勝てなかった俺たちが、会長や副会長に勝てるとでも思うのか?」
「……分かってるよ、そんなこと、勝てないことぐらい。でも、私は黒瀬を見殺しになんかできない」
炎堂の手を振り切り水崎はホールを出て行く。
「あのバカっ、なんでこう言うときは俺よりもバカになるんだ、」
炎堂もホールを出ようとすると、
「待て、炎堂」
「あっ?おわっ、なんだこれ?」
涼風から二つの宝珠を投げ渡される。
「火神家、水上家にあった式神の宝珠だ。これで少しはマシになるだろ?」
「そうか、ありがとな。お前は…」
来ないのかと続けようとすると、先に涼風が氷室に目をやるのを見て炎堂は空気を読みホールを出て水崎を追った。
「……希愛、お前は行かないのか?」
「行かない…」
「そうか。それでお前が後悔しないならそれでいい」
涼風はカバンから自分の家の式神の宝珠を取り出し、ホールを出る。氷室は一人残され俯いたままだった。
☆ ☆ ☆
「ぐあっ…。くそ、」
(ダメージは無いはずなのにノックバックにおける体力の消費が激しいな)
最初のほうはバニッシュによる攻撃力の蓄積からの反撃が上手くいっていたが、二人は直ぐにラグナロクの戦い方を学習し、天啓未来によって躱されるようになった。
「もう手札は尽きたようだな。このまま消えてもらおう」
“導軌ノ刻光輝・大地}ノ聖刃”
ラグナロクは攻撃力は吸収したが、吹っ飛ばされ階段を転げ落ちながら変身が解ける。
「はあはあはあ……」
二人は黒瀬を見下ろしながら階段をゆっくり降りてくる。ちょうどその真上で白龍と八咫烏の決着が着いた。八咫烏は身体を白龍により貫かれ消滅する。
「変身解除で済むとは、運が良いのか悪いのか。そのまま死んだほうが楽だったろうね」
「あんた本当に性格悪いわよね」
アラマズドは槍を両手で回して持ち変え黒瀬の首元に槍先を突き付ける。
「一撃で仕留めてやるだけ、有り難く思え」
「……っ、」
黒瀬は死を覚悟する。
(俺、死ぬのか?こんな所で、氷室たちを敵に回したのに、こんな所で、死ねない、死ねな…)
ちょうどその瞬間、水崎たち3人が現場に到着し、アラマズドが槍を高々く上げたのが見えた。
「黒瀬!」
水崎はいち早く変身してシャランガから矢を放つ。だがそれはヨルズにより跳ね返されそのままヨルズの重力強制により三人はその場に足止めされる。
「はあーー、サッサと殺しなさいよ」
「ああ、確実にな」
アラマズドは一旦槍を下げて持ち手の一番下にある所に宝珠をもう一度装填する。
「念には念をだ」
“導軌ノ刻、光輝ノ聖刃”
黒瀬は神力で身体を覆うが間に合わない。黒瀬のもとから強い光が放たれる。誰もが黒瀬は殺されたように見えた。だが、光が引いたときそこには誰も居なかった。アラマズドが一番混乱していた。
「なっ、どこにいった!?」
「身体ごと消したの?」
「な訳あるか!」
思わずヨルズは能力を解き黒瀬を探す。重力強制から解放された三人も黒瀬を探す。涼風ことルドラが階段を見上げるとそこに誰かが居た。
「あ、あそこに誰かが」
「…お前は、まさか」
「煌成、知ってるの?」
男が振り向く。
「久しぶりだな、アラマズド」
アラマズドは拳を握りしめ、誰なのか話す。
「永倉家の当主。永倉月夜だ。何しに来た?」
「何って、ラグナロクのことを助けに来たのさ」
「イザナギに逆らう気か?お前の家はお取り潰しにあうぞ?」
「好きにすればいいさ。僕にとっては家よりも、ラグナロクのほうが大切だからね」
ドライバーを取り出す。それはイザナギの者が使ってきた物ではなかった。
“宿命之帯”
「黒瀬と同じドライバー?」
ナーイアスは思わず呟く。永倉は暗黒之宝珠を装填する。
“エレボス、ローディング”
「変身」
“There was a death god lurking in the deep darkness and aiming for life from the shadows...(深き闇の中に潜み、影から命を狙う死神がいた…)仮面ライダーエレボス”
「ラグナロクを消そうとする奴は、僕が殺す」
エレボスは階段を思いっきり飛び降りアラマズドに飛び掛かる。エレボスはその場に居る五人のイザナギを相手取るが、もともと黒瀬を助けに来た三人は戦わずに黒瀬のもとに駆け寄る。だがそれをエレボスはラグナロクに近づく敵と認識した。すぐさま転移之渦で移動して鎌状武器アダマスで薙ぎ払う。
「「「うわっ!?」」」
「何すんだよ!?俺たちは黒瀬を助けに来たんだぞ!」
アドラヌスは声を荒げる。
「黙れ。君たちではラグナロクを救うことはできない」
“祓魔ノ刻”
黒瀬を抱えるとアダマスによる一閃を五人に向かって放つ。
“暗黒ノ一閃”
アラマズドは光の壁を張り闇の攻撃を防ぐ。
「チッ!逃げたか」
五人は変身を解除する。朝日奈は三人に背を向けながら質問する。
「炎堂、水崎の行動はまだ理解しよう。雷牙から黒瀬廻とは中学からの仲だと聞いている。だが涼風。何故君までもが黒瀬廻を助けに来たのかは理解できないな」
「それは…。そもそも黒瀬のやつがイザナギと敵対することを選んだのは、俺が一方的に鳴上さんのことでキレたことが原因だからです」
「その責任を取りにでも来たということかい?」
「はい…」
涼風は震える手を抑える。
「……ま、俺たちも君たちの都合を無視して自分たちの仕事をしたのは良くなかったかもしれないね」
三人は驚く。
「今日はもう帰ろう。ちゃんと話を聞くよ」
☆ ☆ ☆
ブロードでエレボスはどこかの地下にやって来た。黒瀬を簡易ベッドに横にさせる。そして変身解除する。簡易ベッドの前で膝をつき腕を組んで黒瀬の横顔を見つめる。
「もっと早く呼んで頂ければ、今ごろ二人で戦えたというのに」
意味の分からないことを呟く。
☆ ☆ ☆
「さて、お聞かせ願おうか。君たちと黒瀬廻の関係を」
朝日奈は円卓に座る。草壁はお茶を淹れに行っている。
「いや、知ってる上で黒瀬を殺しに行ったんじゃないですか?」
「俺たちが海外出張中に聞いたのは君たち二人が仮面ライダーになったとこまでの情報なんだよ。あとはどこまで成長したか。だから最新のことは知らないんだ。だから余計に驚いたよね。まさか涼風が黒瀬廻を助けに来るなんて」
草壁がお茶を淹れて戻って来る。
「要は今のイザナギメンバー達の黒瀬廻に対する印象、意見などを聞いておきたいってことよ。あんた達が黒瀬廻をどうしたいかをね」
草壁が朝日奈の言葉を要約する。
「俺たちが意見を述べたら、会長はその意見を受け入れてくれるんですか?」
「それは無い。でも、一応生徒会長としては皆の意見を聞かない訳にはいかないからね」
炎堂の疑問はなんだかはぐらかされた様な気がしないでもなかった。
「俺は、黒瀬を死なせたくないし、殺してほしくはありません」
「私も同じです。黒瀬は、大切な友達なんです」
「そうか。それで、涼風と氷室はどうしたいのかな?」
「俺の意見は変わりません。責任を持って、あいつを助けます」
「助けたら?助けたあとはどうするのかな?」
「……それは、その時に決めます」
「そう。分かった。で、氷室は?いつまでそう落ち込んでんの?まるで振られた…」
朝日奈の発言は遮られた。草壁、のみならず水崎の平手打ちによって。
「ギャはっ!!ちょ、何すんの二人とも…」
「黙りな煌成。あんたは昔っからそう、乙女心ってものを分かってなさすぎる」
「とりあえずミョルニルを下ろそうか、美土里。君もだよ水崎君、」
「黒瀬の命が会長の判断に握られてるのは分かっていますが、希愛を傷つけるやつは生かしておけません」
朝日奈は草壁と水崎によって廊下に連れ出される。
「えっと、俺が喰らった仕打ちから察するに、振られたの?氷室は」
「クリスマスの日に、希愛と黒瀬は二人で買い物に行ったんです。その帰り際に黒瀬からネックレスをプレゼントして貰ったみたいで。これまで希愛は否定して来たんですけど、希愛は黒瀬のことを好き、だったんだと思います」
「うん…水崎君からその報告を聞くのは違和感ないし殴られたことは不問にしとくよ。でもさ美土里、お前はおかしくない?こんな報告聞いてないよね?」
「はあー、だからあんたはダメなのよ。女が落ち込んでるときの理由なんか二つだけなのよ。それは生理痛のときか振られたとき。覚えときなさい」
「俺が言うのはおかしいけど多方面から炎上を喰らいそうな発言だな」
3人はホールに戻る。
「あんたに氷室のことは任せられないから座ってなさい」
「はい」
「あと水崎シズクだっけ?あんたは来なさい」
「はい、美土里さん!」
先ほどの件もあってか水崎は草壁に懐いていた。
「氷室、あんたがもう戦いたくない理由は理解できるわ。私も振られたときはかなりの期間落ち込んだからね。まあ私の場合は相手が鈍感だってのもあったけどね」
「別に、振られたとかそういうのじゃないです…」
「そうなの?じゃあ何が理由なのか教えてくれる?」
「………黒瀬くんは、本気だった。容赦なく本気で私を殺そうとした」
氷室の言った理由を聞いて炎堂があの時かと呟く。草壁は振り向く。
「その時のこと教えてくれる?」
炎堂は簡単に説明をする。
「なるほど。最後まで信じて説得しようと思っていた氷室にとっては、黒瀬は本気だと決定付ける行動だったでしょうね。でも、それだけが理由じゃないみたいね」
草壁はネックレスを握る氷室の手を取る。
「やっぱり、忘れられないのでしょう?クリスマスの日を」
「それは……」
「そりゃあ嬉しいでしょうね。好きは男とのデートなんて」
「だから違います!」
氷室は立ち上がる。
「私は…黒瀬くんのことは…」
「なら捨てなさい」
「え…?」
「あなたが戦えない理由は自分の気持ちを裏切られたからなんでしょ?なら、そんなネックレス必要ないわよね?」
「……それは」
草壁は重力を操り丸環から留め具を外しネックレスを奪う。
「ちょっと返してください!」
「なんで?これがそんなに大事なの?」
氷室は頷く。
「ならサッサと認めなさい。あなたはとっくに黒瀬廻のことが好きで大事なのよ。だから戦えない。そりゃあそうよ。好きな人を殺すなんていうのは自分の親が死ぬよりも辛いことだもの」
氷室はずっと堪えて来た涙腺が壊れる。草壁は前から抱きしめる。
「私は…黒瀬くんのことが…好き…」
思いきり泣きながら草壁に縋り付く。
「好きだから…怖い…これ以上黒瀬くんに嫌われるのが…」
自分に斬撃を飛ばしてきたときのラグナロクの眼光が未だに脳裏によぎる。
「そうよね、確かに好きな人に嫌われるのは怖いし辛いことだわ」
草壁は氷室の言葉に共感の意を示す。
「でもね氷室、これ以上好きな人が一人で居るのを放って置いていいの?」
「それは、放っては置けないです」
「そうよね。なら、こんな所で落ち込んでいる暇はないんじゃない?」
氷室は顔を上げる。水崎がハンカチで涙を拭ってくれる。
「ありがと、」
「ううん、私に手伝えることがあれば何でも言って」
草壁は席から立ち朝日奈のもとに戻り目の前に立つ。
「なんだよ」
「こんな可愛い後輩たちをこれ以上悲しませるようなら、私はあんたを見限るから」
「…はあー、俺がどうこう言っても黒瀬廻本人が俺たちを敵と見做せば状況は変わらないだろ。だから俺は黒瀬廻を殺す方向で」
「そこが一番の問題ね。私たちが黒瀬廻を匿ったことがバレれば、」
イザナギに在籍している仮面ライダーたちは上層部によって常に監視されている。その理由は万が一にも裏切りの気配を見せた際に直ぐに対処を行えるようにするためだ。
「事実、お前の父親は」
草壁が口の前に人差し指を立ててくる。
「だからあんたはモテないのよ。乙女心を学べって言ってるでしょ?」」
「すまない…。それにしても美土里、お前随分今のご時世では炎上しそうなことを述べていたが…」
「何を心配してんのよ、表現の自由ってやつよ。確かに今のご時世男尊女卑だとか、逆に女尊男卑だとかうるさい世の中だけど、言いたいことを言って何が悪いのよ。文句があるなら直接言えって話よ」
「「「かっこよ…」」」
惚れ惚れする炎堂、涼風、朝日奈。
☆ ☆ ☆
「……っ、うっ、ここは…?」
「目が覚めたの?ラグナロク♪」
「……お前は?俺は、助かったのか?」
黒瀬は上半身のみ起きようとすると永倉が左腕を背中に回して補助をする。
「ここは私がその時に備えて用意しておいた地下にある隠れ家です。私は永倉月夜。あなたの御名前は?」
「俺は…黒瀬、廻だ」
「黒瀬廻…素晴らしい御名前です」
「お前が、俺を助けたのか?」
「はい…そうですが?」
「なぜだ?なぜ俺を助けた…」
永倉は首を捻りながらさぞ当たり前かの様に答えた。
「あなたが助けを求めたから。ただそれだけです」
「助け?俺は、そんなの出した覚えは無いぞ」
「心の中で思っていたではないですか。死にたくない、と。その御声が聴こえたから私は駆けつけたのです。主人様の御声に」
「ますたー?お前、永倉家は、イザナギの家じゃないのか?」
「確かに永倉家は代々イザナギに仕えていました。ですが何故でしょうか、ラグナロクの助けを求める声が聞こえると、つい体が動いてしまうのです」
「そうなのか、で、お前のそれは素なのか?その、敬語とかは?」
「お望みであればタメ口で話しますが…」
「じゃあいつものお前でいいぞ。多分同級生だろ?」
「分かりました。じゃあ名前で呼んでも良いかな?」
「ああ、よろしくな月夜」
「はっ、はい!よろしく、廻!」
永倉はとても嬉しそうな顔をする。
(なんだろう、すげえ尻尾を振ってる気がする)
黒瀬はとりあえず立ちあがろうとする。
「イテテテテテ…」
「だ、大丈夫!?まだ寝てたほうが…」
「いや、寝てる暇なんかないんだよ…。今ごろイザナギの奴らは、と言うより、上の奴らは俺を殺す理由を手に入れたいま、直ぐにでもアイツらを送ってくる」
「なら余計に外になんか出ないほうが…」
「いいや、俺は、ゾロアスターを完全に撲滅する…。俺がインドラを殺した事実は変えられない。だからせめてもの罪滅ぼしに…俺は戦う…」
永倉のほうに顔を向ける。
「月夜、付き合ってくれるか?」
「……もちろん!でも今はしっかり身体を休めようね!」
「あ、ああ、分かった」
☆ ☆ ☆
「とにかくお前達に残された選択肢は黒瀬廻と戦うこと。それだけだ」
「会長。本当にそれしか無いんですか?」
「逆にどうにかする方法でもあるのか?あるなら是非お聞かせ願おうか」
氷室の問いを朝日奈は容赦なく一蹴する。
「……」
「氷室…俺だって鬼じゃないんだ。お前の気持ちは理解できる。だが優先することはできない。上に逆らえばどうなるか、お前なら知っているだろう?」
「それは、はい」
「え、何かあるの?」
「?なんだ涼風。伝えていなかったのか?」
「なにぶん忙しかったものでして、伝えておりませんでした」
「そうか、なら今伝えておこう」
朝日奈は席から立ち二年達の前に移動する。
「イザナギに、上に逆らえば。自分の身にではなく、人質に取られている自分の身内が殺される」
ーーーーーーーーーー
【仮面ライダーヨルズに関する現在公開可能な情報】
『大地之宝珠』
身長199cm体重98kg パンチ力45t キック力70t ジャンプ力45m(ひとっ飛び)走力3.1秒(100m)
必殺技 大地ノ聖刃
【仮面ライダーアラマズドに関する現在公開可能な情報】
『光輝之宝珠』
身長207cm 体重103kg パンチ力50t キック力80t ジャンプ力55m(ひとっ飛び)走力2.3秒(100m)
必殺技 光輝ノ聖刃
ーーーーーーーーーー
次回予告
ついにイザナギに存在している仮面ライダーが全員登場。現状はイザナギに戻る気は一切ない黒瀬、そして黒瀬に付き従う永倉VSイザナギに在籍する氷室、炎堂、水崎、涼風、草壁、朝日奈VSそしてゾロアスターの三つ巴となった。これから先、いったいどうなるのか…
第18話:深まる確執
仮面ライダーラグナロク第17話『光と土、そして闇』を読んで頂きありがとうございます。柊叶です。今回で遂に本編に登場させる予定の仮面ライダーが全員登場しましたが、どうですかみなさん?自分の推しライダーは決まりましたか?
今回はラグナロクvsイザナギを更に深める回となりましたが、この先も楽しみに待っていていただけたら嬉しい限りです。是非次回『深まる確執』を楽しみにしていてください。それではまた。
柊叶




