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第16話 『吹き荒ぶる風、掻き消す紫煙』

〜前回の仮面ライダーラグナロク〜

 涼風が仮面ライダーとして認められると望月から聞かされクリスマス兼お祝いパーティーの準備を手伝わされた4人。途中黒瀬と氷室はクリスマスケーキの材料を買いに行き、その帰り黒瀬は氷室にネックレスをプレゼントする。まるでリア充のように幸せそうな空気のなか、邪神が現れ戦う羽目に。強化された邪神を斃し終わりかと思えばアテナという強者に位置する邪神と戦うことに。黒瀬はデストロイの力で応戦するがその時、破壊の衝動に飲み込まれ、流れで鳴上を死なせてしまう。

「なんの冗談だ、氷室、」

「冗談でも、タチの悪い嘘とかでもないよ。鳴上なるがみ先輩が、亡くなっ…」

 氷室の言葉を遮るかのように涼風は机を叩き、激昂げきこうする。

「ふざけたことを言うな!」

「ふざけてない。私は、事実を言っているだけ」

「……どこだ?」

「なにが…」

「ラグナロクの奴は何処どこに居るって訊いているんだ!」

 涼風は勢いよく氷室の胸ぐらを掴むが、それを炎堂が止める。

「氷室を、責めないでやってくれ」

 そこに水崎も参加する。

「私からもお願い。あと、黒瀬も責めないで欲しいの。もとを言えば、私と炎堂の力不足が原因なの。私たちが戦えなくなったから、鳴上先輩が無理をして、」

 頭を下げる二人に涼風は冷たく言い放つ。

「お前らの実力の話なんて聞く必要はない。氷室の話を聞く限り、鳴上さんが亡くなった直接の原因はラグナロクだ。俺はアイツを…必ず殺す」

 涼風はメインホールから出ていく。炎堂と水崎は追いかけようとするが、氷室が止める。

「行かなくていいよ。止めても、無駄だから」

 水崎は「でも…」と否定しようとするが氷室は遮るように続ける。

「涼風じゃ、黒瀬くんには勝てないから」

   ☆ ☆ ☆

 涼風はその日の夜から黒瀬を探し続ける。そして、夜が明ける。

「どこだ、どこにいる。ラグナロク!」

   ☆ ☆ ☆

 黒瀬は自分の家の神社の賽銭箱が置いてある縁側に座っていた。何も考えないようにしていたが、ずっとあの消滅する瞬間の鳴上の顔が脳内に流れ出す。

「っ!?」

 黒瀬は髪を掻きむしる。体育座りで頭を抱える。

「……っ、」

 見ていられなかったのか、ヴァルハラが何処からかやって来て隣に座る。

「もう、戦わないのか?」

「…何しにきた」

「手放したければ手放せばいい。もとを言えば、初代のやつが勝手に押し付けた力じゃ。まだ未成年で子供のお前には、大きすぎる力だったろう?」

 ヴァルハラは優しい笑顔を見せる。黒瀬は直接は見ずに横目で見る。

「お前はどう思う?…先輩が死んだのは、俺のせいだと思うか?」

「どうであろうなあ。確かに必殺技が致命傷になったのはそうだろう。デストロイの力は理論上ありとあらゆるものを破壊する力。言わばラグナロクの力の一つを具現化し特化させたもの。少なくともかすっただけでも死んでたであろうな」

「…なにが言いてえんだよ。答えになってねえよ」

 ヴァルハラは黒瀬の頭に手を置く。そこからはぬくもりを感じた。

「トドメを刺したのは黒瀬だろうな。でも、鳴上雷牙のやつは満足げに死んで逝ったのだろ?」

 黒瀬は鳴上の最期の言葉を思い出す。

“きみはわるくない。よかった、ほんとうに、”

「先輩は許してくれても、涼風のやつは俺を恨んで襲ってくるだろうな」

「それはそうだろうな。ま、お前さんなら余裕で勝てるだろう?」

 黒瀬は顔を上げどこか覚悟を決めたように立ち上がる。

「何処にいくのだ?」

「母さんに危害は加えたくない。どこか隠れられる場所を探す」

 黒瀬の背中を見送る。

「ま、我はずっとお前の味方じゃよ」

 ヴァルハラは縁側で眠る。

   ☆ ☆ ☆

「どこだ、どこにいる」

 途中、去年の同じ季節に鳴上と一緒に食べに行ったケーキ屋があった。涼風は脳内で当時の映像がフラッシュバックする。

「鳴上さん…」

 涼風は顔を左右に振り記憶を振り切る。黒瀬を探しにまた何処かに走り出す。

   ☆ ☆ ☆

「希愛、本当に追わなくていいの?」

「涼風が黒瀬に勝てないってのはどういうことだ?」

 真ん中にある円卓で氷室の左には水崎が座っている。炎堂は筋トレ。

「言葉のまんまだよ。涼風じゃ、黒瀬くんには勝てない。理由は、経験値の差と…」

   ☆ ☆ ☆

「見つけたぞ…ラグナロク…」

 涼風と黒瀬は周りが木々に囲まれた草原に居た。

「俺に何か用か?」

「分かっていてよく訊けるな。俺は、お前を絶対に殺す!」

運命ディスティニー之帯ドライバー

 涼風は宝珠チャームを起動し、ドライバーに装填する。

“ルドラ、ローディング”

「変身」

“Those who do harm will scatter before the storm, and the wind will bring in new life.(害を成す者は暴風の前に散り、風は新たな命を運び込む)仮面ライダールドラ”

 ルドラは錫杖しゃくじょう武器ケーリュケイオンを取り出し、黒瀬に襲いかかる。

「ケーリュケイオン、ヘルメースの杖か。インドラとは本当に縁があるみたいだな」

 黒瀬は錫杖をかわす。

「なぜ変身しない!舐めているのか!」

 右腕に神力をまとい錫杖を受け止める。

「変身」

“仮面ライダーラグナロク”

 ラグナロクは魔剣ダーインスレイヴを取り出す。二人はぶつかり合う。だが氷室の予想は当たる。戦闘における経験値の差は大きかった。ルドラが振りかざす錫杖をラグナロクは簡単に弾き返し胴に魔剣を斬り返す。

「ぐあっ!」

 ルドラは草原を転がりうつ伏せになる。地面を拳で叩きながら起き上がる。

「無駄だ。お前じゃ俺には勝てない」

   ☆ ☆ ☆

「理由は、経験値の差と…人間をあやめる覚悟があるかどうか」

「人を、殺める?」

「私たちがこれまで戦ってきたのは邪神。でも今回は、人間対人間なの。涼風はあくまでもイザナギのメンバーを殺した叛逆はんぎゃく者を殺そうと言い聞かせてる。だから黒瀬じゃなくてラグナロクって、呼び方を変えてたんだと思う」

 氷室は涙がでてくる。それに気づき涙をぬぐう。

「でも…涼風だって苦しいはずなの。尊敬していた人が亡くなったのに、」

 水崎は氷室を抱きしめ、頭を撫でる。

「希愛、本当は止めたかったんでしょ?」

「え…?それは、」

 氷室は水崎の胸の中で小さく頷く。

「私たちに任せな。二人を止めてくるから。炎堂、行くよ」

「おう!身体は温まりきってるぜ!」

「わ、私もいくよ!?」

「いいから待ってて。私と炎堂に任せな」

(大事な幼馴染と好きな人が戦う所を見るなんて、一生分のトラウマだよ)

   ☆ ☆ ☆

「俺じゃ勝てない?ふざけるな!俺は絶対にお前を殺す!」

 ルドラは猛毒之宝珠(ヒュドラチャーム)を取り出す。

“ヒュドラ、ローディング”

「変身」

“The deadly poison released will surely take and melt lives.(放たれる猛毒は確実に命を奪い溶かす)仮面ライダールドラWITHヒュドラ”

「ヒュドラ?ギリシア神話に登場する蛇か」

 ルドラは手から毒を放つ。ラグナロクはそれを避ける。先ほどまで自分が立っていた所の草が溶け腐る。

「喰らわなければいい話だな」

 特に怖気おじけづく様子を見せずにラグナロクはルドラに斬りかかる。二人は斬りかかったり毒を放ったりと攻防を繰り返す。そのまま場所が変わりどこかの裏路地に移る。

「俺を殺すために毒まで使うとはな。随分と情けないものだな」

「黙れ!俺は目的を果たすためなら、なんだって使ってやるだけだ!」

 二人は一旦距離を取る。

はたから見れば卑怯な手であろうとな」

 ルドラは左手をラグナロクにかざす。すると次の瞬間、ラグナロクは心臓部を手で抑える。変身が強制的に解除され、その場に足から崩れ落ち、左手を地面に着く。

「はあはあはあ…。ブハッ!」

 黒瀬は喀血かっけつする。

「これは涼風家が代々受け継いできた固有能力(ユニークスキル)。戦闘前に俺に絶対攻略(フルスキャン)を使用しなかった。俺を完全に舐め切っていたのがお前の敗因だ」

 ルドラは黒瀬を蹴り飛ばす。黒瀬は壁に打ち付けられる。

「くっ…。グハッ!」

 飛ばされた先でも喀血かっけつを繰り返す。黒瀬はなんとか絶対攻略(フルスキャン)を使用する。

病源旋風(ヴェノムウィンドウ)。対象に確実に毒を感染させる力。それを喰らったわけか。ヒュドラの力で毒を精製する事もできるのか…)

 黒瀬は毒が回る身体ながら、なんとか立ちあがろうとするが直ぐにルドラに蹴り上げられて立つことすらできない。

「どうした?苦しいのか?いっそのこと今すぐ殺してやろうか?」

 ルドラに見下ろされる。黒瀬は顔だけなんとか上げて睨み返す。

「そんな必要はない。俺は…死なないからな」

「ヒュドラの力で生み出した毒に敵うわけがないだろ。負け惜しみもそこまでにしておけ。ただただ情けないだけだ」

「毒を使わなきゃ俺に勝てないお前も随分と情けないがな」

 ルドラの怒りを買ったのか殴られる。黒瀬は仰向けになる。

「今すぐに殺してやる」

 ルドラは錫杖を黒瀬の心臓部に突き刺そうとする。黒瀬はそれを手前で止める。

“WITHデストロイ”

「しぶとい奴だ!」

 ルドラからさらに毒を身体に回される。ラグナロクは建物の壁を突き破り中で倒れ込むと同時にまた変身が解除される。ルドラは穴を潜り気を失った黒瀬に近づく。

「これで、終わりだ」

   〜黒瀬の意識内〜

(俺は、死ぬのか?こんな簡単に?)

 黒瀬は消えゆく意識の中、なんとか毒に耐えていた。

   〜〜〜

「ここら辺よね?黒瀬の、ラグナロクの神力が感じ取れたのは」

「その筈だが、ん?水崎、あの壁って、」

 炎堂が指差した壁は先ほどラグナロクが吹っ飛ばされ穴が空いた壁だった。

「もしかしたら黒瀬があの中に…」

 炎堂が走って近づこうとするので水崎が手を掴み止める。

「待って!なにか、くる」

 目をらすと何者かが歩いて来るのが見えた。その眼は、紫色だった。

「お前は、誰だ?」

 穴を潜り抜け出てきたのは仮面ライダーだった。その右手はルドラの首根っこを掴んでた。そのライダーはルドラを二人の前に投げる。ルドラは転がり仰向けの状態で変身が解ける。

「涼風!?てことは」

 炎堂は直ぐに涼風に駆け寄り生死を確認する。

「黒瀬、なの?」

 水崎が問う。

「なんだ、お前らか。そいつを連れてサッサと消えろ」

 ラグナロクのその台詞せりふに炎堂は立ち上がりながら言う。

「なんだなんだ?随分と性格が変わったなあ。まあいいや。俺らはお前を迎えに来たんだ。涼風のことは俺たちがどうにか説得する。頼むから、帰って来い。黒瀬」

「私からもお願い。これ以上、希愛の涙は見たくないの」

 ラグナロクは一瞬あの場から逃げる時に見えた氷室の顔が浮かぶ。

「断る。おそらく俺はイザナギに戻れば、上層部の判断で殺される事になる」

「そうかもしれないな。でも!それも俺たちがどうにかするから、」

「無駄だ。イザナギ内で主な決定権を持つのは三人。亡き望月家の当主と、光と土の神の家だ。お前らの証言や説得は、無に等しい。そう、ヴァルハラから聞いた」

 水崎は完全に下を向いていた。だが炎堂は諦める様子は見せない。

「そんなんで諦めんのかよ、お前は。どうしても来る気がねえなら力ずくで連れ帰ってやるよ!変身!」

“仮面ライダーアドラヌス”

 アドラヌスの拳をラグナロクはもろに受ける。だが一歩もそこから動く様子は無い。まるでダメージが入っていないかのように。だがそれでもアドラヌスは殴り続ける。

「うっ、うう…」

「涼風!だ、大丈夫なの?」

 意識が戻った涼風の上半身を起こす。

「…めさせろ」

「え?なに?」

「今すぐ、炎堂に攻撃をやめさせろ。奴の能力は、危険だ」

   〜〜〜

「これで、終わりだ」

 ルドラの錫杖が刺さるその瞬間、黒瀬の胸元が淡く紫色に光りだす。ルドラは数m後ずさる。

「な、なんだ!?」

 黒瀬は仰向けの状態で目の前にある消滅之宝珠(バニッシュチャーム)を手に取り、立ち上がる。

「これが、今の俺に必要な力ってことか?」

“バニッシュ、ローディング”

「変…身…」

“As the purple smoke rises...everything disappears.(紫煙が上がるそのとき…全てが消え去る。)仮面ライダーラグナロクWITHバニッシュ”

「なんだ、その姿は。なぜ立っていられるんだ!?」

「お前の毒は…無意味だ」

 ラグナロクは右手で首元を押さえて首を回す。

「無意味?そんなわけあるか!」

 もう一度と言わんばかりに毒を放つが、ラグナロクは真正面から受けながらルドラに歩み寄る。ルドラは困惑する。

「うそだ、そんなはず、」

「俺のこの力は全てを消滅させる。だから言ったろ」

 ルドラの拳を受け止める。

「お前の毒は無意味だ」

「そんな…。うおああアアアアアああ!」

 ルドラはただただ殴り続ける。ラグナロクは微動だにしない。だがやがて殴り返される。必殺技は一切起動していない一発に、ルドラは倒れる。ラグナロクは首根っこを掴み外に連れ出す。

   〜〜〜

「俺は、奴の一撃に倒れた。だが違和感があった。奴は然程さほど力も、神力も込められていない一撃だった。そこから推測するに、あの力は、」

 涼風はラグナロクを見つめる。

「相手の攻撃をそのまま吸収し、貯蓄する能力を持つ」

「それって、まさかじゃあ今も」

 水崎がラグナロクを見たそのとき、ラグナロクの右拳が淡い紫色の神力を纏った。

「炎堂!逃げて!」

 遅かった。水崎の言葉は間に合わずアドラヌスは顔面にもろに拳を受ける。変身が解けると同時に倒れるかと思いきや炎堂はラグナロクにしがみ付く。

「帰ってこい、くろせ、」

 自分の身体にしがみ付く炎堂の左手を掴み振り払う。ラグナロクはその場から立ち去ろうとする。その背中に氷の矢があたる。ラグナロクと水崎も振り返ると、そこには氷室が立っていた。

「希愛…?」

 氷室は水崎の隣あたりまで歩く。

「黒瀬くん。話を聞いてくれる?」

「……なんだ?」

「シズクたちが言ったと思うけど、イザナギに戻って来て欲しいの」

「断る。氷室、お前は組織のことを涼風の次によく理解しているはずだろ。それでも俺に戻って来てくれと頼むのか?」

「それは…私たちがどうにか説得を…」

「説得できる確証も無いのにか?」

 ラグナロク本人から厳しい現実を突き付けられる。

「……っ」

「希愛、既に涼風と炎堂がやられてるんだよ。黒瀬を口で動かすのは諦めた方がいい」

 水崎はゆっくりと立ち上がる。

「私はもう覚悟を決めた。力尽くでも黒瀬を連れ帰る。希愛はどうなの?」

「私は…」

 氷室は首に掛かっているネックレスを握る。数瞬間黙り、うつむく。やがて、覚悟が決まったのか顔を上げ、ドライバーを装着する。

「行くよ…シズク」

“フレイヤ・ナーイアス。ローディング”

「「変身!」」

“仮面ライダーフレイヤ・ナーイアス”

 最初期の方では誰もが想像しなかった展開。ラグナロクとフレイヤの戦い。フレイヤは剣をナーイアスは弓を構える。三人はぶつかる。ラグナロクは悠然と攻撃を受け止める。

「あ、そうだ希愛!今の黒瀬は攻撃をそのまま吸収して貯蓄する能力を持ってるから、」

「そんな、じゃあどうすれば、」

 フレイヤは頭を抱える。だが直ぐに対策を導き出す。

「攻撃なんかしなくても、拘束すればいいでしょ!」

 フレイヤは氷でラグナロクを拘束する。だが拘束したのは一瞬、次の瞬間にはラグナロクによって破壊、というより消滅させられた。

「な、」

「バニッシュは消滅の力だ。如何いかなる攻撃も拘束も、俺には無意味だ」

葬送ノ刻(フューネラルタイム)消滅ノ滅波(バニッシュクライシス)

 ラグナロクは右手を差し出し何やら禍々(まがまが)しい触手のようなものを複数本出すとフレイヤとナーイアスを縛り上げて壁に打ち付けまくる。やがて二人は変身が解除してしまう。二人は地面に倒れ込む。それを目視で確認し、ラグナロクは何処かに行こうとするが、

「まって…」

 氷室は意地でも立ちあがろうとする。

「…これ以上俺の邪魔をするなら、本気で殺すぞ?」

「……やってみなよ」

 ラグナロクは終焉之宝珠(ラグナロクチャーム)を起動して魔剣に装填する。

“ラグナロク、祓魔ノ刻(エクソシスムタイム)

「消えろ」

終焉ノ一閃(ラグナロクスラウター)

 魔剣から放たれた白銀の斬撃。氷室は氷壁で防ごうとするが簡単に壊される。

「希愛避けて!」

 水崎は必死に叫ぶが氷室に動く力はもう無かった。だがそれを助ける者が居た。

“仮面ライダーアドラヌス”

 氷室を突き飛ばしラグナロクの必殺斬をもろに受ける。

「グアアアア!!!」

 飛ばされた先からアドラヌスの方を振り返る。

「っ、炎堂くん!?」

 アドラヌスは片膝を着くが倒れない。

「はあはあ、黒瀬、」

 震える脚を止めようと膝に手をやり立ち上がる。

「しぶとい奴だな」

「それが俺の取り柄だからな。攻撃が無駄だってのは理解したよ。でもよ、ノックバックは喰らうんじゃねえの?」

「!?」

「図星かあ?なんか空気が揺れたぜー?知らねえけど」

“WITHアグニ”

 アグニの力で火力を増して攻撃をする。その様子を見て涼風も立ち上がる。

「なるほど…ノックバックか…。賭ける価値はあるな…」

“仮面ライダールドラ”

「お、もう動けんのか?」

「奴にあんな力を生み出させたのは俺だ。最後まで責任は持つ」

 ルドラが風の神法で牽制けんせいひるんだところをアドラヌスが力一杯殴るのを繰り返した。

「お前の予想通りノックバックは喰らうようだな」

「ああ、このまま行くぜ!」

加護ノ刻(ディヴァインタイム)猛火ノ洗礼(アグニハピネス)

 ラグナロクはもろにアドラヌスの拳を連続に受け止めるが、最後の一発に吹っ飛ばされ転がる。

「くっ、」

「しゃあ!反撃を放つ前に気絶させてやらア!」

 右手に火炎アドラヌス、左手に猛火之宝珠(アグニチャーム)を装填する。

「行くぞ涼風!」

「ああ」

導軌ノ刻(ガイダンスタイム)火炎アドラヌス猛火アグニノ聖刃(サークレッド)疾風ノ聖刃(ルドラサークレッド)

 アドラヌスの炎の鉄拳、ルドラの風の円錐型の銃弾のようなものを喰らい壁にぶつかる。

「はあはあ、さすがに、気ィ失うだろ」

 アドラヌスはもう限界に近い様子。倒れそうになるのをルドラは支える。だんだんと砂煙が晴れてくる。そこにはラグナロクが普通に立っていた。

「嘘だろ…」

「あれを喰らってもか…!?」

「ほんとお前らは耳が悪いようだな」

 ラグナロクはチャームを二回起動する。

抹殺ノ刻(イレイジャータイム)消滅バニッシュノ轢破(エラディケイション)

 二人の足元から先ほどの禍々しい触手が生え二人を完全に覆う。そしてラグナロクが右手を握りしめた瞬間、爆発する。

「「グアアアア!!!」」

 四人がもう完全に動けないことを確認し、ラグナロクは転移之渦(ブロードボルテックス)でその場から消える。

   ☆ ☆ ☆

   〜どこか倉庫みたいな場所〜

 ラグナロクは変身解除する。ドライバーと宝珠チャーム三つを木箱の上に置き、また近くにある箱の上に座る。黒瀬は四人に勝ったというのに満足している様子は無く、どこか虚しい顔だった。それを察しヴァルハラがやって来る。

「満足しておらんのか?」

「…何しに来た?」

「ふふん♪」

 ヴァルハラは黒瀬の逆側を向きながら隣に座る。

「満足してない様子じゃな」

「わざわざそれを訊きに来たのか?」

「そうだと言ったら?」

「…悪趣味なやつだと思うな」

「お主らは完全に敵対関係になった。これからはどうするつもりなのだ?」

 黒瀬はジーッとヴァルハラを見る。

「な、なんだ?我の顔に何かついているのか?」

「お前…。語尾がバラバラすぎないか?じゃ、だったり。なのだ、だったりと。統一しろよ。気になる」

「な、お前、こんなシリアスな空気でそんな事を訊くか普通」

「お前との間でシリアスになる事はまず無い」

「失礼なやつだな。仕方がないだろう。長く生きていると話し方が変わっていくお陰で混ざってしまうのだよ」

   ☆ ☆ ☆

 その頃、4人はイザナギに戻っていた。四人の居る部屋の空気は地獄だった。最初に口を開いたのは涼風だった。

「…すまなかった。俺が怒りに身を任せたから、ラグ…黒瀬と完全に敵対する事に、なってしまった。本当にすまない」

 涼風は席から立ち三人に頭を下げる。炎堂は歩み寄り優しく肩に手を置く。

「そう気に病むな。誰だって、大事な人が亡くなったらそうなるさ。…わりい、なんて言えば良いんだろうな。とにかく、俺は怒ってねえよ」

「私も、炎堂が容赦なくやられたのを見て、怒りに身を任せて、戦うことを選んだ。冷静に考えれば、話し合おうって言えばよかったのよ」

 水崎は自己反省する。

「だからお互い様ってこと。そう気に病まないの」

 二人に許された涼風は少し気が楽になった。だが、氷室はずっと黙り込んでいる。

「ひ、氷室。その、」

 涼風は氷室の隣に移動して頭を下げる。

「すまなかった、いや、本当にごめん」

 氷室は何も答えない。どこか気まずい空気に戻る。氷室のことを心配し水崎が右側に移動して、下から顔をのぞく。

「希愛?大丈夫?」

「……私は、」

 氷室は先ほどのラグナロクとの戦いの中での、容赦なく自分に向かって放たれた斬撃を思い出す。

   〜〜〜

“消えろ“終焉ノ一閃(ラグナロクスラウター)

   〜〜〜

「私はもう、戦えない」

 3人は驚く。

「き、急にどうしたの希愛?」

「もう、私は黒瀬くんとは戦えない。怖いの」

「黒瀬くんは本気だった。上は絶対に黒瀬くんの追討命令を出してくる、私に黒瀬くんを殺すことなんてできない!」

 日頃のあの冷静な氷室はどこへやら、癇癪を起こした氷室は髪を掻きむしる。炎堂と水崎はオドオドして、なすすべが無い様子。だが涼風は。

「希愛…」

「!?」

 突然名前で呼ばれたことに驚き氷室は上を向く。

「戦いたくないなら、戦わなくていい。黒瀬のことは、俺が責任を持ってどうにかする」

「…どうする気なの?あんたに、上に逆らう気概きがいなんてあるの?」

「…っ、お、俺は、涼風家の当主だ。もう俺を従えさせられる奴はウチには居ない」

 涼風は真っ向から上に逆らう意志を見せた。

「涼風、強くなったね。私は弱くなってばっかりだ、」

「……水崎、氷室のことは頼んだ。俺は…上に掛け合って来る」

 涼風は部屋を出る。イザナギ内を彷徨うろつきある部屋に入る。そこには豪華な観音開きのドアがある。それを開け、中をしばらく進んだ先にはイザナギの上層部が鎮座している。

「し、失礼します。…え、なぜ、お二人が此処に」

 涼風は目の前に居る二人を見て困惑する。其処には玉帝学園の現生徒会長の朝日奈煌成ともう一人の副会長を務めている草壁美土里(みどり)が居たのだ。

「涼風か。どうやら仮面ライダーとして認められたそうじゃないか。おめでとう」

 朝日奈が振り返ると、草壁は顔だけ向ける。

「どうしたんだ?そんな驚いた顔をして」

「察しなさいよ。雷牙が亡くなったのよ。今もまだ頭がちゃんと働かないでしょ?」

「そっか、確かに」

 朝日奈が目の前まで移動する。

「雷牙のことは聞いている。涼風は誰よりも雷牙のことをしたっていたからショックは大きいよな。しばらくの間は休むといい」

 肩に手を置かれる。

「あ、いえ、はい」

「それで、此処には何をしに来たのかな?」

 朝日奈の眼は金色に光っていた。涼風は直ぐに察する。

(これは、朝日奈家の固有能力(ユニークスキル)を使っているのか、)

「も、申し訳ありません。何をしに来たのか、忘れて、しまいました。い、一旦失礼します」

 涼風は急いで部屋を出る。

「まさか会長たちが帰って来ていたとは、」

(それに固有能力(ユニークスキル)を使っていた。確か朝日奈家の能力は、)

「まずいな…」

   ☆ ☆ ☆

「ちょっと、あんな脅す必要なんてあったの?」

「物騒な言い方はよしてくれ。注告しただけさ」

 二人は上層部のほうを振り返る。

「では、報告は以上になります」

 上層部への報告を終えた2人は大部屋から出る。

「……はあーーほんと面倒ね縦社会って」

「こら美土里、カメラがあるんだから下手なことは言うな」

 2人は廊下を歩いてメインホールに向かう。

「この後はどうする?」

「とりあえず定食屋行くかな。日本食が恋しい、あと眠い」

「時差ボケだな。隈がひどいぞ」

「……アンタもね。ああでも、アンタの場合は理由が違うか」

 朝日奈の眼は少し充血していた。泣いたあとだ。

「涼風に悟られないように固有能力(ユニークスキル)使ってまで目元を隠すなんてね」

「お前は振り向きもしなかっただろうが」

「ラグナロクの変身者である黒瀬廻は氷室たちと親しい仲と聞いているけど、本当に殺すの?」

「当たり前だ。そいつは雷牙を殺した、その上に弁明はおろか言い訳もしなかった」

「言い訳でもしてたら許したの?」

「許すわけないだろ。奴はイザナギに叛逆を起こした。即刻死刑対象だ」

「………」

(煌成もある意味面倒くさいわね)

ーーーーーーーーーー

【仮面ライダーラグナロクに関する現在公開可能な情報】

消滅之宝珠(バニッシュチャーム)

身長200cm 体重100kg パンチ力15t キック力40t ジャンプ力50m(ひとっ飛び)走力2.9秒(100m)

必殺技 消滅ノ滅波(バニッシュクライシス)消滅バニッシュノ轢破(エラディケイション)

【仮面ライダールドラに関する現在公開可能な情報】

『疾風之宝珠』

身長198cm 体重99kg パンチ力8t キック力10t ジャンプ力50m(ひとっ飛び)走力2.5秒(100m)

必殺技 疾風ノ聖刃(ルドラサークレッド)

ーーーーーーーーーー

次回予告

 イザナギと対立することを選択した黒瀬廻。そんな中、新たな力を手にした黒瀬。その頃イザナギの上層部のほうでは海外出張から帰ってきた朝日奈煌成と草壁美土里。このままでは黒瀬は一人で大多数を相手にすることに!さあ次回はどうなる〜!?

第17話:光と土、そして闇

 仮面ライダーラグナロク第16話『吹き荒ぶる風、掻き消す紫煙』を読んで頂きありがとうございます。柊叶です。今回は新たに風のライダーの初登場回となる訳だったのですが、新たに主人公の新フォームの登場と重なってしまったが故に、ルドラの初登場、初勝利にはできないという結果になってしまいました。(>人<;)

 そして、次回は光・土・闇と更に3人の仮面ライダーが登場しますので、楽しみにしていただけたら嬉しいです。それでは次回『光と土、そして闇』でお会いしましょう。

柊叶

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