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第十二話 『燃える炎、湧き立つ水』

〜前回の仮面ライダーラグナロク〜

 修学旅行を楽しんでいると、突如邪神が現れて闘う羽目に。ラグナロクは奮戦するが、分身能力を前に苦戦を強いられる。戦闘後に倒れ込む所を何者かに介抱されるなどと、ちょっとした謎も残る。だが黒瀬にはそんなことよりも大変な状況に追い込まれている…。


「……黒瀬くんは、私と一緒は、いや?」

「それは、その、」

 黒瀬は言葉に詰まる。

「……っ、」

 何か言葉を返したいのに言葉が見つからない黒瀬。必死に何か言葉を探すがやはり何も出てこない。

「…ひ、氷室」

 黒瀬は必死に口を開き何かを言おうとすると同時に炎堂の声が聞こえる。

「おい、みんな。先生はもう居ないぞ」

 黒瀬と氷室は同時に身体がビクッと震える。

「はあー押入れの中って意外と暑いのね、って何で希愛が黒瀬と一緒に布団の中から出て来んのーーー!?」

「水崎!シーーっ!」

 炎堂は焦りながら水崎に訴える。

「黒瀬アンタ、希愛に変なことしてないでしょうね?」

「断じて何もしていない。神に誓う」

 必死に弁明する。

「ま、さすがにそうよね。希愛、私たちは部屋に戻りましょ」

「うん、でも先生には見つかっちゃうよね」

「それは、何か言い訳すればいいでしょ。じゃ、おやすみ〜」

 二人は部屋を出て自分たちの所に戻って行く。

「おー、おやすみー」

   〜〜〜

「さて、今日は何処に行く?」

「とりあえず忘れないうちにお土産とか買っていかない?」

 水崎の提案に四人は頷く。

「やっぱ木刀は必須だろー」

「炎堂が持ってたら銃刀法に触れそうね」

「てか要らないだろ」

「…黒瀬、取り消せよ今の言葉。男のロマンだこれは」

「お前中学生時代に2本買ってただろ」

「木刀は2本までなんて誰が決めた!」

 結局今回も2本買った炎堂。黒瀬含め四人はシンプルに八ツ橋などを買った。

「お土産も買えたし、次は何処に行く?」

「そうだな。来年は三年生で受験生な訳だし、北野天満宮にでも行くか?」

 黒瀬の提案に水崎が、

「何の神様?」

「菅原道真公の、所謂分社だな」

「太宰府にあるモノを此処に、分け御霊として置いているってことか」

 涼風がそう言うと炎堂はようやく理解する。

「神社ってそんなことが出来るのかあ。すげえなぁ〜」

 炎堂が感心しているのを横に黒瀬は氷室から質問を受ける。

「黒瀬くんは、御霊神社は好き?」

「どうだろうな。まあ嫌いではないかな」

 二人がマニアックな話を始めると炎堂、水崎はクラクラし始める。

「ちょ、二人とも、私たちが分からない話をしないで、」

「あ、ごめんシズク」

「炎堂、お前は少し勉強しろ」

「この一瞬で人情に差が見えたな」

 遠い目で眺める涼風。

バス停に着き、五人は北野天満宮まで移動する。一番後ろの席に乗り、左から炎堂、水崎、氷室、黒瀬、涼風の順番で座った。

「二人とも寝ちゃったね」

「まあ、連日一番はしゃいでる二人だからな」

 炎堂の右肩に水崎は寄りかかり、その水崎の頭に炎堂は寄りかかっていた。

「おい、この二人は、その、付き合っているのか?」

 涼風は素朴な疑問と言った感じで訊くが、問われた二人は「え?」と言った顔をされる。

「そんな可笑おかしい質問か?」

「いや、だって、な?」

「涼風がそんなことを質問するほうが変っていうか、ね?」

「この二人は付き合ってないぞ。昨日言ってた通りただの幼馴染。この距離感は昔からって言ってたな」

「本当に年頃の男女なのか…?」

 少しばかり気の抜けた話をしてから、急に涼風から真面目な話を放られる。

「昨夜寝ている途中で気配を感じたから廊下を彷徨うろついていたんだが、恐らく今も近くに居るぞ」

「上層部からの使いか?」

「ああ、上は完全に炎堂と水崎を狙っているぞ。どうするんだ?」

「昨日と同じさ。いざという時は俺が闘って氷室が二人のそばにいる」「だが、昨日お前は負けたんだろ?」

「引き分けと言ってくれ。対策はある」

 涼風と少し言い合いをしていると氷室から、

「斃せる確率は?」

「……50…45%ほど」

「なら私も行くよ。二人のことは涼風に任せれば良いし」

「おい、俺に全振りなのか…」

「やれるよね?颯?」

「……はい」

 涼風は致し方なく折れた。そのショックからか窓に体を預けたまま落ち込む。

「涼風が上に従わず俺らに力を貸すなんてどうしたんだろうな?」

 黒瀬は純粋に疑問に思ったことを氷室に訊く。

「たぶん少しは私たちのこと、信用してくれたんじゃないかな」

「もしそうなら、二人のことは託せるな」

 落ち込んだ涼風の耳には届かなかった。数十分後、北野天満宮前のバス停に到着する。五人はバスを降りて天満宮本殿前に向かう。

「すげえ。なんかこう、感じるものがあるなあ」

「感想薄っす。夫の健康管理に気を使う主婦の料理ぐらい薄い」

「姐さん。それは多方面に喧嘩を売るぞ」

「主婦の皆さんは旦那さんのためを思ってだからね」

 四人の会話に変わらず涼風がツッコむ。

「お前らは神社まで来て何の話をしているんだ?」

 北野天満宮での参拝を終える。

「よし、次はどこに、ってあれ?黒瀬は?」

 炎堂は辺りを見渡す。

「あれ?希愛も居なくない?」

「二人ならあそこだ」

 涼風が指差した方を見ると二人は神籤みくじを引くかで悩んでいた。

「黒瀬くん引かないの?」

「なんか不正な力が働きそうで嫌なんだよなあ」

「あーー、でもそんなこと言ったら私たちが宝くじ引いたら大変だよ?」

「……よし、引くか。福みくじを」

「どの動物にする?干支で選ぶ?」

「そうすると皆んな一緒のになるから好きな動物にする。へびにしよう」

「確かに。じゃあ私はー。ひつじにしようかな」

 二人は福みくじの動物を選ぶ。それとちょうどのタイミングで炎堂たちに声を掛けられる。

「二人とも何してんだー?」

「見ての通り御神籤を引いてる」

 水崎は黒瀬の後ろから御神籤を覗く。

「わ〜何これ可愛い〜。私はうさぎにしよ〜っと」

「じゃあ俺はとらにする」

 遅れて涼風がやって来た。

「俺は、たつにするかな」

 五人は福みくじを購入し、一斉に開き結果を見る。

「「「「「・・・」」」」」

「なんか、俺のくじすげえこと書いてあるんだが。『この先にとてつもない災いが降りかかる』ってあるんだが」

「私も同じことが書いてある」

「水崎もか、怖えなあ」

 二人は御神籤の結果に怯えて震える。

「の、希愛たちはどうだった?」

「私は…あっ…。特に無いかなぁ」

 氷室はどこか怪しげな素振りと共にくじを手元に隠す。

「なになに?なんか怪しいね〜。みーせて!」

 氷室は御神籤を水崎に取られる。

「……えっと」

「何が書いてあったんだ?」

 黒瀬は水崎の後ろに回り籤の結果を読む。

「基本どれも問題ないように思えるが?」

「いや、黒瀬。よく読みな」

 水崎が指差した所は恋愛。そこには

「逢うべき人とはすでに逢っており、すぐ側に居る…か。これがどうし…」

「どうしたもこうしたもない!希愛に、希愛にぃ〜!?」

「…氷室もコレが引っかかってるのか?」

「うん、まあ。私これまで恋愛とかは気にしたことないんだけど、ここまでちゃんと書かれると流石に少しは気になるかなあ」

「近くにねえ。こんな性根が冷血な女にそんな相手が居るとは思えね…」

「ア"ア”?颯…何て言ったか聞こえなかったんだけど、もう一度いい?」

「ナニモイッテナイデス」

 さすがの黒瀬と炎堂も今回の氷室には一歩後ずさった。

((怒らせないようにしよう))

「希愛、かわいい…」

 黒瀬と炎堂は眼をがん開いて水崎を勢いよく見る。

   ☆ ☆ ☆

 五人は歩きながらまた街中を彷徨いていた。

「黒瀬え。次は何処に行くのー?」

「基本的に行きたい所は行けたからな。俺的にはあとは神社があれば参拝できればそれで満足だが」

「じゃああとは彷徨いて時間を潰すか」

 あとの二人も賛成したので五人はぶらり旅に移行した。しばらく歩き途中にあった茶店に寄り道休憩をする。

「ぷはあー。美味い。なんか俺京都に来てから緑茶好きになったかもしれねえ」

「私たちみたいなスポーツ系は緑茶よりかは麦茶だものね」

 最もらしいことを語らう二人。それを見守る三人。ほのぼのとした空気で見ていると三人の顔つきが急に険しくなる。

「黒瀬くん、」

「分かってる。幸いとも不幸とも言えないが、近いな」

「この場での言い訳はどうにかする。お前らは早く行け」

 二人は裏路地に回りバイクを出して神力の気配を感じた方に向かう。

「あれ?涼風、希愛たちは?」

「そう言えばと近くにある神社に向かったぞ。すぐに参拝を済ませてくるようだ」

「さすがの二人だな。店長!団子追加!」

   ☆ ☆ ☆

 現場に到着しバイクを傍に停める。

「お前、何してんだ…」

 黒瀬はラクタヴィージャに問いかける。

「キミを誘い込むために少しばかり暴れただけさ」

 ラクタヴィージャ周辺には京都特有の家の壁が崩れておりその周辺の人々が出血した箇所を痛い、助けて、怖い。我が子を守るためにその身を乗り出しケガを負い気を失った親を起こそうと名を泣き叫ぶ幼子が居た。

(俺がラグナロクとして成長し切らないうちに消そうと奮闘する邪神たち。手っ取り早く俺を呼び寄せるために被害を受ける罪のない人々)

 黒瀬は怒りが沸々と、いやグツグツ煮えたぎっていた。それと同時に自分の存在を悔やんでいた。

 それを氷室は感じ取っていた。しかしなんと声を掛ければ良いかは分からない。だが、手を差し伸べることは出来る。氷室は右手で黒瀬の左手を握る。

「? 氷室?」

「大丈夫だよ黒瀬くん。全員ちゃんと助けよう」

 怒りと悔しさで埋まっていた黒瀬の顔に笑みが戻る。

「ああ。そうだな」

宿命フェイト之帯ドライバー。ラグナロク、ローディング”

「うん。行こう」

運命ディスティニー之帯ドライバー。フレイヤ、ローディング”

「「変身」」

“仮面ライダーラグナロク・フレイヤ”

「私が怪我人を救助するから、黒瀬くんはラクタヴィージャを」

「ああ。任せろ」

 ラグナロクは魔剣、ダーインスレイヴを構えて邪神に向かっていき、フレイヤは要救助者の救出に向かう。

「大丈夫ですか?今助けますからね」

 フレイヤは近くに居た泣く子供にも「今お母さん助けるからね」と言う。瓦礫に埋もれている状態。無理に瓦礫を退ければ押さえつけられていた血管が一気に開き傷口からの出血が早まる可能性がある。

「だからここは、」

 フレイヤは剣、レーヴァテインを取り出す。

冰狼ヒョウロウ守護ガーディアン、召喚、冰狼”

 フレイヤは冰狼を単体ではなく、神力を少量で細かく剣に注ぎ込み十数体の小さい冰狼を召喚した。

「私が全員の傷口を治療するから、あなた達は瓦礫の回収をお願いね!」

『キャンっ!』

 フレイヤは自身のハートに矢が刺さった感覚に襲われた。

「アニマルセラピー…」

 フレイヤは気を取り直して、神法にて要救助者に治療を施す。

「よし、あとは頼んだよ!」

 足早にとラグナロクのもとに急ぐ。

   ☆ ☆ ☆

「ラグナロク、我々がなぜキミをここまでして消したいか分かるかな?」

「俺が存在する限り再びラグナロクが起きればお前らにとっての死が確定するからだろ?」

「まあそれも一理あるな。だが残念だな。まず前提として我々は死なないのだよ」

「…どう言うことだ?」

 ラグナロクはゾロアスターが自分を消したい本当の理由よりも惹かれる謎が出て来た。

「我々は今、ゾロアスターの頂点アフリマン様に忠誠を誓っている。その理由は復活を可能にするためだ。アフリマン様はキミ達や私たち以上に膨大な量の神力を保持している。故に我々はキミ達イザナギに斃されたとしても痛くも痒くもないのだよ」

 ラグナロクは一旦距離を取る。

「だが、三千年前初代がいた時にはそれまでよりも前から何度かラグナロクは行われていただろ。なぜアフリマンは生きているんだ?」

「そんなのは単純よ。我々は斃されれば魂ごと消滅するがそれをアフリマン様が回収し復元される。だがアフリマン様の魂は消滅せずその場に留まり神力が永い刻を掛けて復活を遂げることが出来る」

「なるほど。ラグナロクでも斃せないわけか」

「まあそう言うことだ」

 ラグナロクは少しため息を吐く。たとえ自分がラグナロクの力を極めたとしてもアフリマンを斃すことは出来ないと分かってしまったから。

「どうした?心でも折れたのか?」

「…いいや。むしろ燃えてきた」

「っ!グッ!?」

 ラグナロクの速度が先ほどよりも確実に上がっている。

(この速さ、なぜ急に…)

 ラクタヴィージャは焦る。分身は各々が体験した記憶を共有出来る。先ほど高速攻撃を受けた分身は昨日異常な戦法で斃された分身が脳内でフラッシュバックした。

(まずい、このままでは此奴に)

終焉ラグナロク…ノ一閃スラウター…”

 三体のうち一体が斃された。

「いま」「なにが」

 残った二体は混乱していた。ラグナロクは蹴り上げた後に魔剣を大いに振いまくり分身を粉々にしたのち、飛びまう鮮血をブロードで回収したのだった。

「はあ…はあ…はあ…」

(くそ、こんな闘いかたじゃ脳が保たねえ。先輩に注意されたばっかなのに)

 ラグナロクはファスティトカロンとの闘いの時の望月の言葉を思い出した。

《邪神から高威力な攻撃を喰らったととしても、気を失うのはなんとか避けて欲しい。仮面ライダーの装甲は神力で形創られているのは意識的に分かるだろ?だから気を失ってしまうと神力が上手くドライバーにあるチャームに流れ込まなくなるんだ。つまり強制的に

変身が解除されてしまう。それは戦いの場ではあまりにも危険すぎる》

 疲労困憊に近いなか声が聞こえた。

「黒瀬くん!」

「氷室?救助は?」

「治療は済ませたから残りは冰狼に任せた」

 フレイヤが来たことでラグナロクは少しばかり頭が冴えた。

「残りは二体だ…。さっき一体消した」

「黒瀬くん一体どうやって?」

「気合い…」

「炎堂くん乗り移った?」

 フレイヤが参戦したことで2対2の攻防になる。

「こりゃあ予想外。なら、」

 次の瞬間ラクタヴィージャは自身の身体に傷を付けた。

「「!!!」」

「1、2、3、あー数えんのも面倒くせえ」

「それはずるくない」

   ☆ ☆ ☆

「ねえ涼風、いくらなんでも二人遅すぎない?」

「それは俺に言われても困る」

「水崎そう気にするな。別に迷子になっているわけじゃない、」

「だって全然既読が付かないんだよ!いつもなら必ず三十秒以内には既読が付くんだよ!これは絶対何かあったって!」

「どう思う?」

 涼風は水崎を左手で指差しながら炎堂に問う。

「さすがに引くかな?」

 水崎は何を思い立ったのか急に立ち上がる。

「水崎?何処に行く気だ?」

 水崎は涼風の問いに答えながら歩く。

「希愛の所」

「おい待て!」

 炎堂がまさかの止めてくれる立場なのかと涼風は意外だと思った。が

「水崎行くならちゃんと荷物も持って行け。あと俺も行く」

「お前もかああああああ!!!」

 涼風は二人を追う。

(クソが、ただでさえ隙を見せれば上に狙われるかもしれないと言うのに)

 フラグとは回収されるもの。次の瞬間、目の前の二人を怪しげな煙が囲う。

「まずい!」

 涼風は右手の操力レガリア之指輪リングを掲げたのち、突風を巻き起こして煙を払う。

「うわっ!?な、なんだ今のは?」

「今の風、涼風が起こしたの?」

 水崎は涼風の右手にあるレガリアリングに目を向ける。

(誤魔化すのは無理か、)

 涼風は顔を逸らす。その直後、煙が完全に晴れて三人の怪しげなローブを着た男が現れた。

「誰だ、お前らは?」

 炎堂の疑問に涼風が隣に並び答える。

「イザナギの幹部だ。お前らは狙われているんだ」

 二人は理解出来ていない様子。涼風は幹部に問われる。

「なんのつもりだ?ルドラ」

「そっちこそ、なぜこの二人を狙う。望月さんから話を聞いていないのか?」

「聞いたさ。その上で来ている。インドラの判断は愚かだ。今のままでの戦力では我々はそのうち確実にゾロアスターに潰される。今は一刻の猶予も無いのだ!」

 三人の男は神法で二人を拘束する。

「やめろ!」

「動くな。ルドラ、君が撃てないことは分かっている」

「チッ!」

 涼風は風の斬撃とうと手を構えるが二人に怪我を負わせる可能性があり放てない。

「しばらく其処に留まっておれ」

 三人の幹部たちは怪しげな煙をまとい姿を消す。

「クソッ、何処に行ったんだ。とにかく氷室たちに、」

 涼風は風を纏い空を飛び二人のもとに急ぐ。

   ☆ ☆ ☆

「はあはあ。帰りたい」

「黒瀬くん。激しく同意するけど、今言うこと?すごいドッと疲れが来たんだけど」

 二人は何十体ものラクタヴィージャを相手にしており疲労困憊、過重労働状態だった。お互い剣を杖代わりにもう一度立ち上がる。すると何処からか涼風の声が聞こえる。

「ああー何処からか颯の声が…。迎えかな?」

「氷室落ち着け。あいつは死んでない…。あれ死んでないよな?」

「勝手に殺すなボケ。おい!あの二人は此処に来ていないのか!?」

 涼風はラクタヴィージャに囲まれている二人のもとに降り立つ。何があった、とラグナロクに問われる。

「二人が幹部三人に攫われた。すまない、俺が弱いあまりに」

「…そうか」

「意外、だな。もっと荒れ狂うかと思ったが」

「あの二人のことだ。それにどうせ俺と氷室がこんな闘いに身を投じているとでも言われれば力を受け継ぐはずだ。そうなれば俺と氷室じゃ止めることは出来ない」

「確かに。シズク私のこと大好きだもんな〜。もうここまで来たら考えても無駄だよね」

「ああ。それに俺はあの二人が決めた答えに口を出すつもりはない」

 ラグナロクは少し奥に眼を向ける。フレイヤも涼風も何だとでも言うように眼を向けると炎堂と水崎がいた。

「やっぱりか、」

 ラグナロクから呆れた声が訊こえたのか炎堂が反応する。

「なんだよその呆れ声は。やっぱり黒瀬と氷室だったんだな。仮面の戦士は」

「急に今までの記憶がフラッシュバックするから痛かったんだからねえ、希愛!」

 フレイヤは左手を口元に添える。

「あ、ご、ごめんシズク!」

 フレイヤは剣を手放して両手を合わせる。剣は涼風が敵に回収されぬように風で回収する。

「ふふ。いいよ、気にしてないし」

 ラグナロクは声をあげて問う。

「で、どうするんだ?賭けれるのか。この長い闘いに、己の命を」

 二人は声を合わせて答える。

「「もちろん」」

「俺は・私は。命をかけて皆んなと戦う!」

運命ディスティニー之帯ドライバー

 炎堂は火炎アドラヌス之宝珠チャームを水崎は流水ナーイアス之宝珠チャームを起動し、装填する。

“アドラヌス・ナーイアス。ローディング”

「「変身!」」

“A bloodthirsty beast that burns and preys on its enemies with hellfire.

(地獄の業火で敵を焼き尽くし捕食する血に飢えた獣)仮面ライダーアドラヌス”

“A holy woman who washes away all sins with pure holy water and guides you to the right place.”

(清き聖水で全ての罪を洗い流し正しき場所へ導く聖女)仮面ライダーナーイアス”

「あれが、炎堂の受け継いだ力」

「シズク、ナーイアス似合う〜」

「やっぱりアイツらに先を越されるのはしゃくだな」

 そう言いつつも涼風は何処か納得した表情だった。

「おおーすげぇ。で、どう闘うんだこれ?」

「ここ押せばいいんじゃない?」

時空ヴァイオ之巻物スクロール。ヤールングローヴィ”

「おお、籠手こてか。単純な武器で有り難い」

 続けてナーイアスも武器を召喚する。

“シャランガ”

「弓か。まあ良いかも」

 ラグナロクとフレイヤは武器を見てテンションが上がり元気が戻る。

「ヤールングローヴィ!?あの軍神トールが使っていたやつか!」

「シャランガだ〜。ヴィシュヌの使ってた弓だ〜」

「お前ら本当に詳しいな」

 テンションの上がっていた二人も次の瞬間を見て凍りつく。

「あ、二人とも下手に攻撃をするな!」

 一足遅かった。二人は思いっきり殴るし、思いっきり弓で斬る…斬る?

「あーー、シャランガのあの部分って斬れんのか?」

「斬れたんだね。そっちのがインパクト強い」

 その頃二人は、

「え?血って、人になるの?」

「驚きー」

 ビックリしてて動けずにいたのでラグナロクはブロードで二人を自分たちの場に移動させる。

「え、なにこれ」

 ナーイアスは混乱しているのでラグナロクがワープだと答えつつ邪神について説明する。

「ラクタヴィージャは自身の血から自分の分身を作れる。下手に攻撃すればコッチが確実に負ける」

「どうすりゃいいんだ?」

「アドラヌスは火。ナーイアスは水。炎堂は攻撃の際に飛びまう血を焼き付くせ。姐さんは血を流し尽くしつつ細胞単位で破壊してくれ」

 二人は感覚で理解したのか「なるほど」と答える。すると隣に居るフレイヤが耳元で小さく話しかける。

「もともと二人が受け継ぐ前提で置いていったんでしょ?」

「…さあな。俺と氷室はさっきまでの戦い方で行く」

「「「了解!」」」

   ☆ ☆ ☆

「黒瀬と氷室が、バケモンと闘っている?」

「何を言うかと思えば、そんなの信じれるわけ、」

「…これを見てもかね?」

 二人は黒瀬と氷室のこれまでの戦いを簡単に映像で見せられる。

「君たち二人はそれぞれ、炎堂武尊。君は火の神アドラヌスの力。水崎シズク。君は水の神ナーイアスの力を受け継げる存在だ。さあ選べ。このまま二人が死と隣り合わせの戦いに身を投じていることを知りながら生きるか。共にたたかう…」

「決まってんだろ!」

 炎堂は幹部の言葉を遮る。

「俺は、闘う」

 ドライバーとチャームを勢いよく幹部の手から取る。それを見て水崎も手に取る。

「私も、黙って見てるのは性に合わない。闘うわ」

 幹部三人はニヤリと笑いながら姿を消す。

「では、武運を祈っているぞ」

   ☆ ☆ ☆

 二人はラグナロクに言われた通り攻撃を与える度に飛び交う血を全て焼き尽くし、細胞ごと全てを流し尽くす。その現状にラクタヴィージャたちは焦りつつあった。

「このままじゃあ、」

 次の瞬間、一体がその場から離脱しようとする、がその身体はその場から動かない。

「な、なんだこれは!?」

 振り返るとラグナロクが右手を自分のほうにかざしていた。

「お前の身体からだを拘束した。それだけだ」

 以前望月から教わった拘束術をラグナロクは今回も活かしていた。

「氷室、一気に片付けるぞ」

「うん。二人も一緒に!」

「おう!」

「任せて!」

祓魔エクソシスムタイム導軌ディヴァインタイム

終焉ラグナロク一閃スラウター冰麗フレイヤ火炎アドラヌス流水ナーイアス聖刃サークレッド

 4色の幻影が多くのラクタヴィージャを完全殲滅した。それを目視で確認してから四人は変身解除する。

「はああああ疲れた」

「本当にねー。黒瀬くんお疲れ様」

 二人はその場に座り込む。すると氷室に後ろから抱きつく者と黒瀬の髪を後ろからくしゃくしゃと撫でる者が居た。

「ちょっと希愛。私にはお疲れ様の労いの言葉は無いの?」

「まあまあ俺たちが来るまでにずっと闘ってたんだから一番に労うのは必然だろ?」

 四人がわちゃわちゃ喋っていると涼風が黒瀬のもとにやって来て

「黒瀬、ちゃんと報告書頼むぞ」

「え、俺なのか?」

「お前が一番奴と闘っていただろ?俺は今回の件について望月さんに電話しなきゃならないんだ。頼むぞ」

「あー、ちゃんと報告頼むぞ」

 黒瀬は何やら意味を込めて涼風に伝言を頼んだ。

「それにしても黒瀬、何で言ってくれなかったんだ?」

 黒瀬は?を頭の上に浮かべると炎堂は宝珠チャームを見せながら

「何だっけ、邪神?と闘ってることだよ」

「聞いたわよ。私たちがこの力を受け継げる存在だと最初に見抜いたのは貴方だって」

 黒瀬は「余計なことまで」と顔を逸らしながら愚痴る。その場は氷室が説明する。

「シズク、黒瀬くんは二人を危険な闘いに巻き込みたくなくて、」

「分かってるよ。黒瀬も希愛も私たちのことを考えてくれてたのは」

「そうそう。まあでも秘密にされてたのは少し悲しいかなあ」

 黒瀬と氷室は「悪かったよ」や「ごめん」などと謝罪する。ワイワイガヤガヤと雑談をしていると涼風がやって来た。

「俺たちが東京に帰ったら望月さんが謝罪したいとのことだ。明日学校に着いても直ぐには帰るなよ」

 二人は「はーい」と返事をする。それを見て涼風は「返事はちゃんとしろ!」などと注意をしている。

ーーーーーーーーーー

次回予告

 まさかの修学旅行中に邪神が現れ苦戦を強いられる二人のもとに炎堂と水崎が現れどこからかドライバーを取り出し仮面ライダーへと変身を遂げる。

 修学旅行が終わり東京に帰って来ると早速と言わんばかりに望月が走ってきてダイビング土下座をしてくる。四人は混乱をするが涼風がその場を治める。なんやかんやあったが結果イザナギには三人のライダー、そしてラグナロクが存在することになった。

 戦力が集まって来たのは良いもののゾロアスターもた殺られっぱなしでは終わらなかった。なんと戦いの神であるアレスを送ってきた。とてつもない戦闘力で苦戦を強いられる五人。しかしその時、黒瀬はあの日氷室千鶴から受け取った未完成のチャームの存在を思い出す。

第十三話:新たな力、それは破壊

 仮面ライダーラグナロク第十二話『燃える炎、湧き立つ水』を読んで頂きありがとうございます。柊叶です。今回は、また新たに仮面ライダーが登場しましたが如何でしたか?そろそろ自分の推しライダーが出てきてもおかしくはないのではありませんか?

 そして次回はなにやら怪しげなサブタイトルが貼られておりますが、いったいどうなるのでしょうか。楽しみに待っていて頂けたら嬉しいです。それではまた第十三話『新たな力、それは破壊』でお会いしましょう。

柊叶

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