第十一話 『神様巡り、ご加護貰いに』
〜前回の仮面ライダーラグナロク〜
生徒会としての初依頼を受けた四人。どうにかこうにか解決出来たが、一息つく間も無く、なんと来週は修学旅行⁉︎急いで1週間で準備をする三人。京都にレッツゴー‼︎
「京都に…来たアアアァァァ‼︎‼︎」
「炎堂うるさい!」
「イタッ⁉︎」
「京都に来て早々に姐さんから一発喰らうとはな。全く京都なんて中学生の時に一回来ただろ。燥ぎすぎだぞ、炎堂」
「黒瀬くんがそれ言う?その手にある栞は?」
「これは…行きたい所リストだ。中学のときは碌に回れなかったからな…」
「いろいろあったんだね…」
炎堂を諌める水崎と黒瀬を慰める氷室を傍観する涼風。
「お前ら、先生が呼んでるから早く来い」
先生から軽い説明を受ける。
「さて、どこから行く?」
炎堂は四人の顔を見渡して訊く。
「私はみんなが行きたい所で良いよ。中学生のときに一回来たし」
「私は、黒瀬くんが行きたい所で良いよ」
「良いのか?ならまずは…」
☆ ☆ ☆
「此処だ。伏見稲荷大社。稲荷大神を祀っている神社だ」
「おおーすげえ数の鳥居だな。何でこんなにあるんだ?」
炎堂の問いに氷室が答える。
「江戸時代以降に願いが「通るように」または「通った」ことへの感謝として、参拝者が鳥居を奉納するって言う習慣が広まったと言われてるよ」
「なるほどー」
「さすが希愛。物知り〜」
氷室に後ろから抱きつく水崎。それを傍観する涼風はスマホが振動したので、電話に出る。
「はい。颯ですが…」
『颯ええええ‼︎』
「…うるさ、何ですか急に」
『みんなが居なくて寂しいんだよぉ〜。颯だけでも良いから帰って来てよ〜』
「俺だけでもって、俺は去年同じ目に遭いましたけど?」
去年は黒瀬はイザナギの存在を知らないし、氷室は学園に来ておらず修行に明け暮れていた。
『そうだったね…。ごめん』
「写真も送るし、お土産も買っていきますから、大人しく授業受けて仕事していてください。じゃ」
『あ、ちょ、颯、。まったく。でも、楽しんでいるみたいで良かったよ。いつもは自分から電話を切らないもんね』
涼風は四人を追いながらクシャミをした。
「へっくし!絶対に望月さんが何か言ってやがる…」
☆ ☆ ☆
その後も五人は彼方此方と観光スポットを巡る。
五人は一旦休憩にと通りの茶屋に寄る。黒瀬と氷室は抹茶のソフトクリームを買って来ると茶屋に入る。涼風は五人分だから俺もと、一緒に茶屋に入る。
「いや〜楽しいなあ。俺あそこが気に入ったぞ。清水寺の舞台」
炎堂が今にも飛び降りそうな勢いなので水崎はいつでも抑える準備をしていた。
「私はやっぱり金閣かな。鹿苑寺だっけ?水面に映る金閣が綺麗だった」
水崎は金閣のキーホルダーを嬉しそうに見つめる。
「中学のときと違って黒瀬も乗り気だったから余計に楽しかったな」
「ふふ。確かに黒瀬も楽しそうだったわね」
二人が楽しそうに会話しているところに三人が戻って来る。
「シズク、はいどうぞ〜」
「希愛ありがと〜」
「ほらよ」
「ありがとなあ」
炎堂は黒瀬から受け取る。五人はソフトクリームを食べながら次の予定を話す。
「黒瀬、次は何処に行くんだ?」
「そうだな…」
黒瀬は栞を開く。しばらくページを捲ったりしていると、何やら気配を感じた。
「……⁉︎」
黒瀬は辺りを見渡す。そのことは氷室も涼風も気づいていた。
(なんだ?邪神とは違う神力があったような)
「黒瀬どした?」
炎堂はコーンの部分を囓りながら問う。
「いや、虫が飛んでたんでな。氷室、涼風、二人の意見も聞きたいんだが来てくれるか?」
二人はその言葉の意味を受け取った。三人は小声で話す。
「今の神力、どう思う?」
「多分だけど、イザナギの誰かだと思う」
「薄っすらと見えたが、上層部の奴と見て間違いはないだろうな。そして多分、炎堂と水崎を見ていた」
「上層部は二人を仮面ライダーにしようって魂胆か」
「当主が居なくなった場合、お前のように一度変身すれば継承は完了する。強制的に変身させてもな。それに俺たちイザナギが受け継ぐ神の力の中でも、火と水は受け継ぎやすく扱いやすい力でもある。それにあの二人の才能なら、変身すれば直ぐに扱えるだろうな」
「最高級の逸材ってことか。ふざけてんな」
珍しく黒瀬はキレていた。
「もし今回の修学旅行で邪神が出れば、その騒ぎに乗じて二人は狙われるだろうな。特にあの二人のことだ。お前や氷室が命懸けで闘っているとでも言えば、受け継ぐだろうな」
「そんな、一体どうしたら、」
氷室も涼風も頭を抱える。すると黒瀬が、
「その時には俺が邪神を相手する。そもそもな話、なぜ邪神と俺らが闘っているのかと言えば俺がラグナロクの力を受け継いだからだ。奴らは俺を消そうと必死になってる。なら俺が何処かに移動して、氷室と涼風が二人のことを見ていてくれれば、問題はないだろ?」
黒瀬の作戦に二人は言葉を失う。
「た、確かにそうだけど、もし相手が複数だったらどうする気なの?」
「俺一人で十分だ。最悪の場合はヴァルハラも呼ぶ」
「で、でも…」
涼風は氷室の前に手を出して止める。
「分かった。その時には、その策でいこう」
「ちょ、涼風、」
「氷室の言いたいことも理解は出来る。だが、お前ら二人が戦闘に行き、もしまた違う邪神が現れたらどうする?情けないことだが、俺は望月さん程の実力はない。俺一人では邪神一人を相手するのは無理だぞ」
涼風の言い分を聞き氷室は納得する。
「そっか、確かに一人は残った方がいいかもね。でも黒瀬くん、やばい時には呼んでね。必ず駆けつけるから」
しばらく話していると、二人から声を掛けられる。
「どうだ三人とも。行きたい場所は決まったか?」
「ん?ああ、そうだな。なかなか決まらないから歩きながら探そうと思うんだが、それでも良いか?」
「いいねそれ。行き当たりばったりってのも旅行っぽいじゃん!」
水崎が同意すれば、炎堂に断る理由なんてない。
「俺も賛成。じゃあ集合時間もあるから、旅館のほうに歩きながら何処かに寄るか」
五人は旅館のほうに足を進めて行く。道中、気になる店や神社などがあれば寄り道をする。
「目的地が無いのも旅行って感じで良いなあ」
「そうね。次はどんな店に出会えるか楽しみ」
炎堂と水崎は楽しそうにしているが、当の三人は気を張っていて疲れていた。
「今のところ怪しげな気配は無えな」
「うん。ただ、疲れてきたんだけど、」
「俺らが疲れている隙に上層部が狙ったらと思うと、危険だな。特に黒瀬、お前が一番に闘う役目なんだ。頭を休ませておけ」
そう言う涼風を黒瀬と氷室は不思議そうに見つめる。
「何だよ、」
「いや、あれだけ俺のことを敵視していたお前が妙に優しいから、な?」
氷室に同意を求める。
「うん。なんか逆に怖い」
「…うるせえな。俺だって相手を認めることぐらい出来る。事実、お前はこれまで多くの邪神を斃して来た。認めない理由が逆に見当たらない…」
そっぽ向きながら涼風は答えた。その頬は少しばかり赤く染まっている。
「そうか、ありがとな」
「…おう」
そこからまた少しばかり歩いていると急に炎堂が騒ぐ。
「ああー‼︎雄一ぃー‼︎」
「ちょっと炎堂うるさい!」
炎堂は水崎の説教を無視して久保田のもとに走っていく。
「あーもう。ごめん私、追いかけるね」
「うん、私たちはゆっくり追いかけるね。…これなら変身はいつでも出来るね」
「炎堂のお陰だな」
「あいつは高校生なんだよな?水崎は母親か?」
見失わないようにと急ぎ足で追いかけるが、幸いにも炎堂の声が大きく見失うほうが難しいと言えた。そして角を曲がろうとすると、急に奥から叫び声が聞こえて来た。
「‼︎ 黒瀬くん!」
「ああ!」
“宿命之帯”ラグナロク、ローディング”
「変身」
“仮面ライダーラグナロク”
ラグナロクは逃げ去る人々が邪魔なので屋根に飛び乗り、屋根を伝って現場に向かう。
「俺たちは二人の所に行くぞ。この騒ぎに乗じて攫われたりしたら面倒だ」
「うん!」
ラグナロクは現場に向かう。そして騒ぎが起きてる場所に着き邪神を見つける。
「お前は、」
「んん?お前がラグナロク、か?私はラクタヴィージャだ」
「ラクタヴィージャ…。って確か…」
ラグナロクは頭を抱える。
「よそ見厳禁」
ラクタヴィージャが飛び掛かって来る。手にはサーベルを持っている。ラグナロクは直ぐに剣を出して受け止める。
「ほれほれほれ!受け止めるだけでは私は斃せないぞ?」
(こいつ、分かってて言ってるな)
「チッ!」
ラグナロクは相手のサーベルを弾くとその切先がラクタヴィージャの身体に触れて少量の血が飛ぶ。
「なっ⁉︎」
「その様子だとやっぱり知っているね。私の特性を」
先ほど飛んだ数滴の血が変化し、なんとラクタヴィージャの分身が生まれた。
「はああーー…。クソが…」
(ラクタヴィージャ。インド神話に登場するアスラ族の指揮官。地面に自分の血液が滴ると、滴った場所から分身が現れる能力を持つ)
「さあさあどうするラグナロク?」
(分身が出たことで相手は四人か。切先程度だからこの数で済んでいるが、)
「このまま対策なしで挑むのはリスキーだな」
ラグナロクは必死に頭を回す。しかしそれを相手が待つわけもなく、
「くっ、」
(クソッ、氷室を。いや氷の力とも相性が悪いか?血が残る限りコイツは分身する)
「悩んでるねー。いいねえそのあせり具合。興奮するよ」
「こっの、悪趣味が!吐き気がする」
ラクタヴィージャは妖艶な笑みを浮かべる。攻撃を避けながらの思考な為かラグナロクは息を切らす。だがただやられっぱなしで終わる彼ではない。
(とにかく血をどうにかしなきゃならねえ)
脳内でヴァルハラに連絡を取る。
“ヴァルハラ、転移之渦の中はどうなっているんだ?”
“ん?言葉で表現できるモノではないぞ。だがそうだな。んー、宇宙とでも言うのかのぉ”
「…よし」
「おや?何か思いついた様子だね。どう来るのか…な!」
ラクタヴィージャはサーベルを大きく振るってくる。自分に斬り掛かることは無いという自信の現れだろう。しかしラグナロクは一切の迷いもなく左から右上に剣を振る。それを立て続けに残りの三体にも剣を振るう。
「「「「ぐあっ」」」」
「愚かだねえ。キミは俺の特質を知っているんだろう?こんなことをすれば、また俺の分身が…えっ?増えない?」
辺りを見渡すが今だに四体のままだった。
「何をした…?」
「答えると思うか?自分の頭で考えろよ」
「ま、それもそうだ。じゃあもう一度やってもらおうか」
二人、というよりかは、1対4の対決。ラグナロクは剣術に加えて徒手空拳で対応する。
「キミ、闘い慣れてるね。そりゃあそうか。もうキミたちに何人か殺られてるし」
「まあそうだな。闘う度に強くなっている感覚はある」
この設定は後々に明かすけどラグナロクは闘い戦闘経験を重ねていくと強さが増していく。分かりやすく言うと基礎スペックが向上していく。
「はあはあはあ、やるね」
「……」
(クソが、アイツの血をブロードで回収すんのに意識を向けてるせいで決定打に欠ける攻撃しか打てねえ)
「一か八か、」
“祓魔ノ刻終焉ノ一閃”
ラグナロクは血が飛ばぬようにブロードで一体を空中に移動させて剣で斬り裂く。血は全てブロード回収する。
「はあ…。残り三体か、」
(誰か来、いや此処は俺が、)
ラグナロクの奇行に残りのラクタヴィージャは引いていた。
「マジで?」
「やばーー…」
「こりゃあ、一旦引くかあ」
残りの三体は退散する。ラグナロクは変身を解除する。
「とりあえず、あいつらの所に帰る…か…」
疲労困憊でその場に倒れる黒瀬。しかしそれを受け止める者が居た。
「…いつでもお呼びください」
謎の人物は黒瀬を姫様抱っこして、そのまま何処かに歩いて行く。
☆ ☆ ☆
「う、ううん。此処は?」
黒瀬は目が覚めると布団に寝ていた。すると和室の戸が開き涼風が入って来る。
「目が覚めたか」
「涼風、此処は?」
「今日の修学旅行で泊まる予定の旅館だ。よく分からんが、誰かがお前を運んで来たと聞いている。お前がそこらで倒れていたから、同じ制服の生徒が入る旅館に連れてきたとな」
「そうか、その人には感謝しないとだな」
「…そんなに強敵だったのか?」
黒瀬は数秒黙ってから「氷室も来たら話そう」と言う。
「確かに、二度も同じことを話すのは時間の無駄だな」
氷室に連絡をする。
☆ ☆ ☆
「黒瀬くん!良かった、目が覚めたんだね」
「ああ、心配かけたな」
「シズクや炎堂くんには人混みで疲れたみたいって説明してあるから」
黒瀬は感謝を述べてから今回の邪神のことを話す。
「相手はラクタヴィージャだった。氷室なら分かるだろ?」
「分身…。厄介だね」
「それは面倒だな。いったい何体まで増えるんだ?」
「数に限りは無いさ。奴は血の数だけ増えることが出来る」
黒瀬の言葉に涼風は黙り込んだ。
「黒瀬くん、その、斃す算段は付いてたりするの?」
「そうだなぁ。もうしばらく考えさせてもらえるか?」
「うん、分かった。私も何か考えてみるね」
氷室は女子部屋の方に戻ると言って出て行った。
「俺らもそろそろ行くか」
「? 何処にだ?」
「何処って、そろそろ入浴時間だぞ」
「え?もう夜なのか⁉︎」
☆ ☆ ☆
「お、黒瀬!もう動けるのか?」
大浴場の男湯には炎堂が一人で入っていた。
「おぉ、お前一人なのか?」
「他のみんなはもう熱いからと上がったぞ。せっかくの温泉を直ぐに上がるなんて勿体無いよなあ」
「炎堂の思考はジジイなのか?」
涼風の純粋な疑問。
「それも昭和のな」
二人が来たので炎堂はまた湯に浸かる。
「炎堂、お前そろそろ逆上せるんじゃないか?」
「なんだ黒瀬、心配してくれてるのか?平気さ、俺は熱さに強いからな」
☆ ☆ ☆
「希愛、そろそろ大浴場のほうに行かない?」
水崎は学園の用意した貸し切り時間が終わっちゃうと氷室を急かす。
「まっ、待ってよシズク」
二人は浴衣を持って大浴場に向かう。すると黒瀬に遭遇した。
「あれ?黒瀬どうしたの?」
「黒瀬くん?って、もしかして逆上せた?」
思わず氷室に凭れ掛かる。
「て、アッツ⁉︎ごめんシズク、一旦私たちの部屋に連れてくね‼︎」
「え?わ、分かった。ゆっくりで良いからね」
氷室は黒瀬に肩を貸して部屋に戻る。
「まーた炎堂に耐久勝負とか言われたんだろうなあ。あれ?黒瀬は自分たちの部屋の鍵を受け取ってないのかな?ま、いいか」
☆ ☆ ☆
「黒瀬くん大丈夫?水持ってくるね」
氷室は洗面所に行き、コップに水を入れて来る。横になる黒瀬の側に正座で寄り添うように正座し、水を渡す。黒瀬は上半身のみ起こして水を飲む。
「わりぃ、邪神とやり合った直後のサウナ耐久は危険だな、」
「私はもう行くけど、一人で平気?」
「ああ…たぶん…」
黒瀬は氷室の右肩に凭れ掛かり、そのまま氷室の膝に乗っかる。
「ぅえ⁉︎く、黒瀬くん⁉︎」
「ひむろのたいおん、つめたくて、きもちいい、」
黒瀬はそのまま寝てしまった。
「こ、冰の神様、だからかな?」
数分後、氷室は黒瀬を起こさぬように頭を枕のほうに移す。そして浴衣を持って、大浴場へと向かう。
☆ ☆ ☆
「ああーー、なんで俺は氷室と姐さん達の部屋で寝てたんだ?」
黒瀬はとりあえず広場に行って飲み物を買おうと歩いていた。
「サウナからの記憶がねえ…な…。何してんだ?」
広場に着くと、そこでは炎堂と水崎が卓球をしていた。
「あ、黒瀬目ぇ覚めたの?悪いけど今は話しかけないで」
「ああそうだな。今は水崎との真剣勝負なんだ」
黒瀬は自販機で緑茶を買い、氷室の左側に座る。氷室の隣には涼風が座っていた。
「黒瀬くん、体調はどう?」
「ああ、だいぶ良くなった。悪かったな布団借りて」
「ううん平気だよ」
涼風は何やら不快そうな目で、
「お前、女子部屋で寝てたのか?」
「ああ、違うの涼風。黒瀬くんがサウナで逆上せちゃった帰りに倒れちゃったから私たちの部屋に運んだだけなの」
「はああ〜〜、見回りが来なくて良かったな。来てたら終わってるぞ」
涼風はため息を吐く。
その後は何気ない会話をした。それから更に数分後、二人の卓球勝負に終わりが来る。
「しゃあっ!勝ったア!」
「あーもうっ!悔しいい!」
結果は炎堂のデュース勝ちだった。
「いやあ〜いい試合だった」
「勝ち逃げは許さない。炎堂!もう一戦!」
さすがの炎堂も「少し休もう」と言う。炎堂は残りの水を飲み終えるとゴミ箱に捨てる。そして四人の方を見て、
「なあ、まだ寝るまで時間があるし、一旦俺たちの部屋に集まって雑談でもしないか?」
四人は顔を右にコテンとして頭の上に疑問符を浮かべる。
「ああほら、俺は水崎と黒瀬のことはそれなりに知っているつもりだけど、何気に氷室と涼風のことはよく知らないんだよ。それはみんな一緒だろ?」
炎堂の言い分に水崎が、
「つまり生徒会メンバー間での親睦会って訳ね。良いじゃん。私ももっとみんなのこと知りたい」
「私も良いよ」
三人が同意すれば黒瀬に断る理由はない。
「俺もいいぞ。涼風はどうだ?」
「男子の部屋に来るんだろ?断っても意味はないだろ」
「よし!同意として受け取るぞ!」
五人は黒瀬たちの男部屋に移動する。
☆ ☆ ☆
炎堂から時計回りに水崎、涼風、黒瀬、氷室という順番で円になる。
「おい、何で俺が水崎の隣りなんだ?」
「今回は何気にあまり交流したことない人と交流しようの会だからな」
提案者の炎堂から始まる。
「名前とかは省いて、俺は水崎とは幼稚園からの幼馴染でな、黒瀬とは中学からの友達、黒瀬がなかなか親友と認めてくれないのが最近の悩みだなあ」
「合コンの自己紹介かよ。そんなので良いんだな?」
「ああ、軽い自己紹介から話を広げてくんだ」
「そうだな。俺はまあまず氷室とは幼稚園からの知り合いで所謂、幼馴染だな」
「「「???」」」
「どうした?」
「ちょっと待って?あんた希愛と、幼馴染なの?」
「ん?氷室、言ってないのか?」
「言ってなかったねー。言う必要もないと思ってたし」
あの黒瀬も呆然としていた。
「話を続けるぞ。その後はまあ氷室とはこの高校への入学を機に離れたが、二年生になって再会したと言う感じだな」
「とんでもない真実が明かされて脳がショートしそうなんだけど、」
「事実は小説よりも奇なりってのは本当なんだな…」
「そこまでか?」
「まあ、お前と氷室が幼馴染ってのは想像つかないなあ」
涼風は少しばかり不機嫌そうな顔をする。
「次は黒瀬な」
「炎堂と姐さんとは中一の時にクラスが同じになって、俺が一人で読書を楽しんでいる時に炎堂が絡みに来た。それが全ての始まりだな」
「そんな小説のプロローグみたいな、」
珍しく氷室がツッコむ。
「ただでさえ目立つ炎堂と姐さんに絡まれる。これが俺にとってどれだけの地獄か、」
「お前も苦労してるんだな」
あの涼風にさえ同情される。
「二人は何で黒瀬くんに声を掛けたの?」
氷室からの純粋な質問。
「俺はシンプルに気になったって感じだな。今思うと確かに迷惑なことしたよなー」
中学生らしい好奇心が勝った様子。
「私は炎堂が絡みに行くから気になって、的な」
「二人の純粋無垢な好奇心のお陰で俺は目立つ羽目になったんだな…」
「お前は何故そんなに目立つのが嫌なんだ?過去にトラウマでまあったのか?」
涼風も段々と話に入ってくる。
「あれは確か…十年前…」
「結構遡るな」
〜〜〜(別に回想シーンは不要)
「俺はまあ顔は悪くねえから結構モテた」
「自分で言うなよ」
「涼風うるさい。黒瀬が珍しく自分の過去を語ってんのよ。邪魔しないで」
黒瀬の成長を喜ぶ水崎。
「それでまあ…話すの面倒いから以下省略」
「おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!そこで止めるか⁉︎そんな無料プランは此処までです。みたいな終わり方あるかァァァ⁉︎」
「喧しいぞ炎堂。もう夜も遅いし次に回した方が良いだろ?」
確かに時計を見るとそろそろ教師陣が見回りに来る時間が迫っていた。
「確かに。いいじゃない炎堂。明日聞けば。次は私の番ね」
五人ともちゃんと座り直す。
「まあ、もう炎堂と黒瀬が言ったんだけど、改めて、私は炎堂とは幼稚園からの幼馴染で黒瀬とは中学からの友達で義弟。そして希愛は大心友!」
「おい黒瀬、お前は水崎の弟だったのか?」
涼風は驚きの目を黒瀬に向ける。
「姐さん呼びをしていた結果だ。あと義弟と書いておとうとって読むらしい」
四人紹介を終えて、いよいよ最後に。
「えっと、私はまあ、さっき聞いた通り涼風とは幼稚園からの幼馴染で、みんなとは高ニになって出会った、としか言うことがないかなぁ」
氷室が悩んでいると、黒瀬が質問する。
「そう言えば涼風は望月先輩と仲良いよな。二人は望月先輩とはいつから知り合いなんだ?」
「望月さんとは、一応幼稚園からだが、本格的に話したりするようになったのは小学校に入学してからだな」
「私も小学校からかな」
自己紹介がひと段落着くと炎堂が急に、
「そう言えば誕生日訊いてなかったな」
「確かに!ナイス炎堂。希愛は誕生日いつ?」
「え、私?十二月十八日だよ?」
「もう直ぐ、てか来月じゃんか⁉︎危なかった〜。ちなみに私は六月二十四ね」
「俺は八月七日だ。黒瀬はいつだっけ?」
「十一月十八日だ。氷室とは一カ月違い…」
黒瀬が少し嬉しげに話していると三人から、
「待ってもう過ぎてるじゃんか⁉︎私は義弟の誕生日を〜…」
「なんで言わなかったの!?黒瀬くん!!」
「別に言うことでもない、と思ってて」
「「「祝うよ!」」」
「⁉︎」
黒瀬は驚き少し後退る。
「黒瀬くんが生まれた日を祝わないなんて友達としてあり得ないでしょ?」
黒瀬は氷室の口から“友達”というワードが出て来たのにまた驚く。
「誕生日を訊いてなかった私も悪いけど。…涼風も祝ってくれるよね?」
「あ?いや俺は別に、」
涼風は乗り気ではないことだけ言おうとすると、氷室から冷徹な眼を喰らう。
「颯?」
少し身をたじろぎながら、
「祝います…」
(くそ、なぜか昔からあの冷徹な眼を向けられると勝てない。この冷血女王が…。だが、俺は悪くない。なぜなら、誰だって日頃は優しい美人が急に冷ややかな眼を向けてくればこうなるだろ!)
「涼風の弱点が希愛とはね」
「炎堂が姐さんに頭が上がらないのと一緒か」
「は?」
「なんでもないです」
何気にこの雑談は盛り上がった。そのお陰で黒瀬たちは忘れていた。教師陣による見回りの時間になっていたことを。
「ん?」
炎堂は何かに気づいた様子で戸のほうを見る。
「どうかしたの?」
「水崎、今何時だ?」
「え、十時はん…」
「…見回りの時間だ。そして多分おそらく、いやきっとそろそろ来る」
四人の顔が一瞬で青ざめる。
「とにかく乗り切るために、布団に隠れるしかない!」
炎堂は戸に一番近い左側の布団に潜り込む。水崎は目の前の押入れに飛び込む。涼風は落ち着いて真ん中の布団に入る。黒瀬は残った窓側の布団に入る。
「開けるぞー」
見回りに来た先生は玄関の電気を付けて居間の戸を開ける。
「寝てるな。さすが生徒会。て、あれ?洗面所とかの電気つけっぱなしじゃないか」
先生がまだ部屋に居るので、五人はまだ寝てるフリをする。
その最中一人の男は焦っていた。それは…。
〜〜〜
「氷室…。なんで此処に居るんだ?」
「炎堂くんが布団に隠れるしかないって言うから…」
(これ、何かあったら俺、姐さんに消される…)
黒瀬は氷室との顔の近さに気づき距離を取る。
少しすると見回りの先生が、
「寝てるな。さすが生徒会。て、あれ?洗面所とかの電気つけっぱなしじゃないか」
先生が洗面所のドアを開ける音がする。黒瀬は小さく文句を垂れる。
「まだ出ていかねえのかよ…」
「……黒瀬くんは、私と一緒は、いや?」
湯から上がって時間はかなり経っているのに氷室の頬は少しばかり火照っていた。
「それは、その、」
ーーーーーーーーーー
次回予告
修学旅行で京都に来ている生徒会二年生たち。その京都で邪神ラクタヴィージャに遭遇。自身の血から分身を生み出す能力に苦戦を強いられるラグナロク。
宿泊先の旅館で交流会中に見回りの先生が来たので慌てて布団と押し入れに隠れる五人だったが、なんと黒瀬の入り込んだ布団に氷室が⁉︎黒瀬はこんなセンシティブな状況をどう乗り越えるんだ⁉︎そして二日目の行き先で炎堂と水崎に接触を図る怪しい陰が。
第十二話:燃える炎、湧き立つ水
仮面ライダーラグナロク第十一話『神様巡り、ご加護貰いに』を読んで頂きありがとうございます。柊叶です。今回は、高校生時代のイベントと言えば修学旅行だと思い書いてみましたが、如何でしたか?実を言うと私自身、中学時代はコロナ禍だったので京都には行っておらず高校生の時は沖縄だったので完全に妄想で書きました(伏見稲荷大社いきたい…)
えー、そして次回、第十二話はタイトルから察せられる通り、新しく仮面ライダーがまた登場しますので、楽しみにして頂けたらと思います。それではまた第十二話『燃える炎、湧き立つ水』でお会いしましょう。
柊叶