第一話 『三千年の時を越えて』
*この作品は完全創作です。
昔から仮面ライダーが好きなので、欲望を抑えきれず遂に書いてしまいました。物語を書くのは初めてなので読みにくい点や、日本語が変だなという点あるかと思いますが、どうかご了承ください*_ _)ペコリ
登場人物
【主人公サイド】
(くろせ めぐる)『仮面ライダーラグナロク』
黒瀬 廻:変わり映えの無い日常に飽き飽きしていたが、希愛やヴァルハラに出会ってから何かが変わる。
(ひむろ のあ)
氷室希愛:突如、黒瀬たちのいる玉帝学園に転入して来た美女。仮面ライダーの存在を知っている様子。
(えんどう たける)
炎堂武尊:クラス委員長をしている理性ある熱血バカ
(みずさき しずく)
水崎シズク:黒瀬の学年の姐さん的存在
(ゔぁるはら)
ヴァルハラ:初代ラグナロクの相棒。
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【ヴィランサイド】
邪神:三千年前から善神と敵対関係にある悪神達の通称
アスラ:邪神が使役する悪魔の通称
ヴリトラ:蛇を操る邪神で防御に優れている
ファフニール:龍に変化する邪神。知的
アンラ・マンユ:全てを従える邪神の頂点。通称アフリマン
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《第一話 三千年の時を越えて》
この日、地球に存在する全てものがある1人の神の手によって姿を消した。
命あるものが、文明が、星のみを残して地理となり消えた。
この者の行動は他の神たちの力でも阻止することは出来なかった。何故ならこの神は全てを『無』に変える、終わりの、終焉の神だからだ。
他の神々は万物を創り出す神。つまり創造神と謳われる存在だ。火の神、水の神、風の神、ありとあらゆる者が存在したが、終焉の神の前では無力同然であった。
「また、こうなった、」
荒野の中、1人佇む終焉の神はそう呟いた。
「俺は、あと何度こんなことをすればいいんだ!」
ラグナロクが存在する理由はある程度発展し切った世界の破壊。文明が発展するのは良い事だがその先に待ち受けるのは戦争などという生産性のない結末である。そう判断したゼウスがノアの方舟の代わりにと、ラグナロクを創り出した。これが全ての始まりである。
「俺はもう誰も傷つけたくない、だがこの運命からは逃れられない」
己の未熟さに打ちひしがれた彼はその場に足から崩れ落ちた。そんな彼は目の前に何かが落ちているのに気づき手に取った。
「写真?親とその子供か?」
(こんな幸せそうな家族までも、)
ラグナロクは自分のせいで犠牲になった者の顔を見て己の罪を直接突き付けられたように感じ、悲しみと怒りのあまり覇気を無意識のうちに発動させていた。
そんな彼を心配したのか呆れたのか、随分と砕けた口調で喋る一匹の式神が出て来た。それは終焉の神とは長い付き合いになる相棒のヴァルハラだった。
「これ以上覇気を出すのはやめておけ、テルミナ」
「ヴァルハラか…。なんの用だ?」
そう終焉の神ラグナロクことテルミナは答えた。テルミナはヴァルハラが名付けたものである。ヴァルハラは完全に呆れ、ため息をついた。
「お前はいつまでそんな死んだ顔をしている。またこうなる事ぐらい分かっていたことだろう?」
「・・・ああ」
(コイツの言う通りだ。俺がこの力を持っている限り、どんなに発展した文明も最後には俺の手によって終わりを告げる。それが俺に与えられた役割。でも、もう俺は…)
「ヴァルハラ、俺はこの力を捨てる」
「それはなんの冗談だ?力を手放せばお前は存在ごと…。それに手放せばお前の代わりに他の者が力を継がなければならぬのだぞ」
「ああ分かってるさ。その上で言っている」
(身勝手だっていうのは俺が1番よく分かってる。俺の力を継ぐものは、俺と同じ苦しみを味わうことになる)
「お前がそこまで言うとはな、なら次の者を決めろ」
テルミナはエレメントと呼ばれる術を使い、はるか遠くの未来を覗いた。
「どうじゃ?相応しい奴はいたか?」
「今から三千年後、この子に俺の力を譲渡する。この子なら上手く扱えるはずだ」
「ふむ。テルミナよ、もう思い残すことは無いな?」
ラグナロクが小さく頷くと彼はヴァルハラとの魂の繋がりが切れるのを感じた。するとラグナロクの身体は薄紫色の光の粒子に変わりながら下から上へと消えていった。
「お別れじゃな、テルミナ」
「ああ、今までありがとうな。ヴァルハラ…」
これは、神々による終わりなき戦い
火の神 アドラヌス
水の神 ナーイアス
風の神 ルドラ
雷の神 インドラ
氷の神 フレイヤ
土の神 ヨルズ
そして神の中でも伝説として受け継がれる光と闇の神
終焉の神が消滅してから凶悪な邪神が勢力を伸ばすなか
三千年の月日が経ち希望が無いこの世界に再び舞い戻る。
☆ ☆ ☆
ここは東京都のど真ん中にある玉帝学園。北側には高い山があり南側には当たり前だが東京湾、校庭には川が完備されていて、東西には丘陵や低い山までもが人工で作られている。これらがあることでこの学園は俗に言う四神相応の地のもとにある事になるのだ。
これ程までに豪華な作りになっているのは至って単純、ただここに通う生徒達は将来を約束されている才能の塊たちだからだ。教室の隅で寝ているこの生徒でもだ。
「おーい黒瀬ー、もう直ぐ小テストの時間になるぞー」
「スースースー…」
「うん。ダメだこりゃ」
寝ている生徒、黒瀬に話し掛けたのは彼の1つ前の席に座っている炎堂武尊。クラス、学年内はおろか学園一の身体能力と謳われる程の実力者であるためスポーツ界の新星と世間でも非常に名が売れている。
「でも毎回再テストは回避するから凄いよねぇ」
そんな炎堂の隣で会話に参加したのは水崎シズク。誰もが認める美女であり非常に面倒見が良いため一部男子からは姐さんと慕われている。
「まあ確かに。家で勉強して疲れてるのかもな」
「テストが配られ始めたら起こそうか」
「だな」
2人は意見を一致させて各々勉強を始めた。
しばらくすると担任の高岩先生が入って来てテスト用紙を配り始めたので炎堂は黒瀬の右肩を叩いて起こした。
「ん?もう小テストの時間なのか?」
「おいおいスゲェあくびだな。再テストは避けろよ」
「まあ家で少し勉強したから大丈夫だろ」
(…毎日毎日変わりのない日常。小テストをこなし、午前の授業を受けて、昼休みには本を読み午後の授業を終えたら部活…はサボるけど炎堂に連れ戻され姐さんからのお叱りを受ける)
「つまらねぇな、俺の人生って、」
テストを解き終えると黒瀬はシャーペンを置いて机の上に右肘をついて窓の外を眺めた。
「3..2..1..はいそこまで。全員テスト用紙を後ろから前に回せー」
テストが始まって5分経つと高岩先生が指示を出した。そしてテストをまとめ終えるとHRを始めた。
「よし、全員ちゃんといるな。えーここで1つ皆んなに連絡がある。今日からこの学年に転入生が来た、そしてこの2年3組に入ることになりました」
先生が転入生が来たことを言うとクラス内は緊張感に包まれた。
「ちゃんと理解しているようだな。そうだ、この学園への転入許可を得るにはそれ相応の実力を求める。そして彼女は見事に試験に受かり実力を証明した。だからお前ら全員もう一度気を引き締めていけよ!最近再テスト勢が増えてるからな」
先生がクラス全体に喝を入れると転入生に入ってくるように言った。彼女が入って来た瞬間、教室全体がザワつきだした。無理もない、入って来たのは姐さんに匹敵するほどの美少女なのだから。
「氷室希愛です。急な転入ではありますが、よろしくお願いします」
氷室さんは教卓の左側に立って軽く挨拶をした。
「席はあの空いてる席な。黒瀬、昼休みになったら氷室に学校内の案内のほう頼むぞ」
「え?なんで俺が⁉︎クラス委員長の炎堂か水崎じゃないんですか?」
あまりにも急な出来事だったので黒瀬は驚きが隠せず席から立ってしまった。
「隣の席っていうのと、あと炎堂や水崎はよく先生方から呼ばれることがあるだろ。だから頼むぞ」
黒瀬は断ろうとしたが氷室の方から「よろしくお願いします」と頭を下げられたので仕方なく引き受けた。
「最悪だ…。姐さん、助けてくれよ」
「黒瀬は警戒心が強いもんねー。一緒に行ってあげるから安心しな。炎堂、アンタも来な」
「イイぜー」
結局3人で氷室を案内することが決まり午前の授業が始まった。
☆ ☆ ☆
「はい、じゃあこれで四限は終了です。起立、礼。ありがとうございましたー」
先生が号令を掛けて授業が終えると生徒達は一気に教室を出た。その様子が気になったのか氷室は黒瀬に質問をした。
「黒瀬さん、皆んなは何を急いでいるんですか?」
「え、ああ昼休みになったから食堂に向かって席を取りに行っているんですよ。氷室さんも行くでしょ?」
氷室が返事をしながら頷くと炎堂が「じゃあ4人で行くか」と言い水崎は「あの黒瀬が私たち以外と喋った」と感動していた。4人は食堂に行く傍ら教室の説明をしながら向かったので食堂に着くと見た感じ席がほぼ埋まっていた。
「あー、4人座れるところあるのか、これは」
「じゃあ私が席探してくるよ。炎堂、私はアジフライ定食ね」
自分が食べたいものを言い残して水崎は席を探しに走っていった。
「さすがは水崎、状況の判断が的確で早いな。じゃあ食券買おうか、氷室さんは何にする?」
炎堂は先陣を切って券売機に向かったので黒瀬は氷室を二番手に行かせた。氷室は券売機の前に来ると目を丸くした。
「え、全部500円なんですか⁉︎安い…。何でですか?」
「・・・」
(炎堂のやつ、自分と姐さんの分を買って先に…)
「玉帝学園は優秀な生徒を育てるために国が作ったから、結構色んなところで補助が手厚いんだよ。自衛隊とか警察学校と同じような感覚だよ」
「なるほど〜。こんなにあると悩みますね」
☆ ☆ ☆
「あ、黒瀬ー、氷室さーん、こっちこっちー!」
炎堂に連れられ席に行くと姐さんが手を振りながら叫んでいた。少し待たせたのだろう。
「席を確保するの頑張ったんだよー。さあ、早く食べよ」
「「「「いただきまーす」」」」
「うーん!やっぱ美味しいー!」
水崎はアジフライを一口かじると大袈裟なぐらいに反応した。その様子を見て炎堂は嬉しそうに微笑んでいた。
「本当にいつも美味しそうに食べるよな。その笑顔を見るとコッチまで嬉しくなるよ、な、黒瀬」
「え、まあそうだな」
自分にまで話を振られるとは思わず黒瀬はビックリしていた。すると氷室が上品に笑いながら質問をした。
「皆さんはいつもこんな感じに過ごしているんですか?」
「私と炎堂はいつもだけど、黒瀬は時々だよね?」
「確かにな。あまり気にしてなかったけど、どこで食べてるんだ?」
「…図書室の隣にある書庫だよ。気になる本を見つけた次の日は弁当を持ってそこで食べてるんだよ」
気に入ってる場所だからあまり言いたくはなかったが隣の氷室さんからの視線が痛かったので俺は正直に言うことにした。別に隠すことでもないから。と言い聞かせた。
などと他愛もない会話をしていると氷室が話題を変えた。
「あの、いきなりなんですけど皆さんは神話に興味があったりはしますか?」
「「「神話?」」」
「んー、私は詳しくはないけど好きかな。興味はある」
「俺はどっちでもないかな。本自体あまり読まないし」
腕を組みながら2人は答えた。
「そうなんですね。黒瀬さんは?」
「俺は、まあよく読むといえば、読む」
「と言うことは詳しいんですね!どの神様が好きですか!」
一気に目を明るくして食い気味に聞いて来たので黒瀬は水崎にヘルプの視線を送った。しかし帰ってきた答えは。
が・ん・ば・れ。そう言っているような視線だった。
「…俺は日本の神様が好きだね。アマテラスとか」
「そうなんですね。私はフレイヤが好きなんですけど、ご存知ですか?」
「ああ、北欧神話の愛と美の女神だよね。霜の巨人っていう異名を持つ神様でしょ?」
「そうなんですよー。あとですねー」
話が長くなりそうな気配を察知したのか水崎がストップをかけた。水崎の隣に目をやると炎堂が泡を吹いていた。おそらく話がマニアック過ぎて脳がオーバーヒートしたらしい。そのため今回はお開きとなった。
☆ ☆ ☆
1日の授業が終わると、部活に行く者と帰る者で校内は賑やかになっていた。
「さて、帰るか」
鞄を持ち黒瀬は玄関に歩いて向かった。日頃は水崎や炎堂と正門まで一緒に行くのだが、2人とも今日は兼部している陸上のほうがあるため今日は1人なのだ。
玄関に着き下駄箱から靴を取り履いていると後ろから自分を呼ぶ声がした。掃除のあと理事長と転入のことで話をしていた氷室だった。
「黒瀬さん、今帰りですか?」
「はい、そうですけど」
南の方に?と聞かれたので俺は「そうです」と答えた。
「でしたら途中まで一緒に帰りませんか?街にどんなお店があるのかも知りたいので」
俺は正直なことを言うと家に着くまで会話を続けられるか心配だった。だがそれは杞憂に終わり今普通に帰っている。
「それでその神様はですねー。…あの黒瀬さん?どうかしましたか?」
「いや、その、敬語をやめて貰えないかな、って思ってて」
俺は同級生、しかも女性からの敬語に慣れないのでタメ口で話して欲しいとお願いをした。すると氷室からも同じ提案をされた。
「でしたら黒瀬さんのほうもお願いします。出来れば名前のほうも呼び捨てで」
「…えっと、じゃあ氷室?改めてよろしく?」
「よろしく、黒瀬くん。黒瀬くんって人見知り?」
「いや、人見知りって言うより親しい人としか関わりたくないって言うか、何だろう説明が難しいな」
なんと説明すればよいか頭を抱えていると氷室から鋭いことを言われた。
「でも、私には割とあっさりだよね。タメ口でとか言って来たし」
「確かに。なんでだろう」
その後は神話からその話題で持ちきりになり気付けば分かれ道に着いた。
「じゃあ私はコッチだから。じゃあね」
「ああ、また明日な」
☆ ☆ ☆
〜ゾロアスター〜
「アフリマン様・・」
「ファフニールか、どうした」
アフリマンという謎の影に声を掛けたのはファフニールという龍の邪神。幹部級の強さを持っている。日頃の活動は情報収集である。
「先ほどヴァルハラの動きを感知しました」
「なに?三千年もの間これといって動きを見せなかったアイツがか。気になるな、捕まえて此処に連れて来い」
「御意」
「ファフニールよ、誰を送るんだ?俺でもイイぜ」
「ヴリトラか、お前を送ればヴァルハラが死体で来そうで面倒い。まあモルペウスで良いだろう」
先ほどの2人の会話を聞いて出て来たのは同じく幹部級の強さを持つ蛇の邪神ヴリトラだった。
「モルペウス?イイのかよあんな弱いやつで」
「問題なかろう。ヴァルハラが強かったのは終焉の神がいたからだしな」
「なるほどな。じゃあ今回は大人しく下がるわ」
「よし、モルペウス!行ってこい!」
「ふああ…。んー、行ってくる」
小さなあくびをしながらモルペウスは出ていった。
☆ ☆ ☆
〜黒名倉山〜
「ハァハァ、相変わらず疲れるなこの道は」
俺は今現在、家に帰っている途中だ。決して登山中ではない。ウチは宮司の家なので、家自体が山の上にある。
「運動不足にはならないし、静かだから良いんだけどな」
そんな風にいつも通り家まで足を進めていると、どこからか謎の声が聞こえてきた。
「うん?なんだこの声は」
“黒瀬廻、黒瀬廻”
「どっから聞こえてんだコレ」
「こっちだこっち」
「うわアアァァァ!?!?」
声がした方に振り返ると謎の生物?が浮かんでいた。形は、なんと言えば、とりあえず物差しぐらいの大きさだ。
「…なんだお前は、UMAか?幽霊か?」
「我はヴァルハラ。単刀直入に言うぞ。お前は今日からラグナロクの力を受け継ぐのだ!」
一人と一匹の間に沈黙の空気が流れた。
「俺、疲れてんだな。今日色々あったし」
「待て!どこに行くのだ!」
とりあえず話を聞けと言うので黒瀬はヴァルハラの方に振り返った。すると空中にワープホールのようなものが開き中から謎の物体を取り出して黒瀬のほうに投げた。
「ほれ、コレを着けろ」
「なんだコレは?ベルトのバックルか?」
俺は変な物だなと思いながら制服のベルトの上に翳した。するとバックルから黒色の帯のようなものが流れて俺の腰に装着された。
“フェイトドライバー”
「よし、じゃあ次はそのラグナロクチャームを起動させてドライバーに装填しろ」
黒瀬は右手にあるラグナロクチャームというものに目を向けた。それはまるでスノードームのような形だった。
「これを装填したらどうなるんだ?」
「さっきも言ったがラグナロクの力を受け継ぐ事になる」
俺は何を言っているのか理解出来ず困惑していると突然地面が小さい爆発を起こした。
「わっ⁉︎⁉︎」
「む‼︎もう来たのか、予想より早かったな」
「ふむ、外したか。やはり久しぶりに撃つと当たらぬものなのだな」
黒瀬とヴァルハラのもとに現れたのは全身が白と薄紫色で体はゴツゴツしているが、それとは相反するかのように能面のような顔をしていた。そしておそらく先ほどの爆発を起こしたものを放った武器はまるで赤ん坊をあやす為のガラガラのような見た目で金棒のような禍々しさを放っていた。
「モルペウスを送ってくるとは、我も舐められたものだな」
「モルペウス?それって夢の神のことか?」
「ほおー、よく知っているな。神の中では特に弱いやつよ」
俺はとりあえず頭の中を整理した。結論、今ヤバい状況下に俺はいる。
モルペウスは金棒を地面に突き刺し左手で俺を指差した。
「人間、変身をしなければ貴様には一切の危害を与えぬことを約束しよう。俺は眠いなか来ているから早く帰りたいのだ」
「ふん、相変わらず体たらくなやつじゃな」
(ここでアイツの言葉に従えば俺には何の危害もない、だけど…)
「いや、その提案はお断りしよう」
「なに?」
「俺はこういう刺激をずっと待っていたんだ。それにようやく出会えたんだ」
黒瀬は鋭い眼光でモルペウスを睨んだ。
「これは俺の人生なんだ。誰にどうこう言われる筋合いは無い。手放させたければ力づくで来い」
“ラグナロク”
黒瀬はモルペウスに言い放ちながらチャームの頭上のスイッチを起動してドライバーに装填した。
“ローディング”
待機音が流れると黒瀬は右手を手刀の形にして目の前で左から右に一直線に引いて戻す勢いでチャームを回した。
「変身」
すると黒瀬の全身を黒紫の幻影や煙が包み込んだ。
“The fate of death and destruction of the gods.”
(神々の死と滅亡の運命)
“仮面ライダーラグナロク”
変身、つまりラグナロクの力の継承が完了すると煙が晴れて姿が見えた。その姿は全体的に黒を基調としていた。
「こんなにも簡単に力を受け継げるのか?」
「ああ、継承は完了した。どんな力を持っているかはアイツで試してみろ」
「なるほど。じゃあやってみるか」
ラグナロクに変身した黒瀬はモルペウスに向かって走り出した。するとモルペウスは自分が動くのが面倒なのかアスラと呼ばれる使役悪魔を数十体召喚した。
だがラグナロクは臆することなく殺陣で対応した。アスラと戦っているラグナロクにモルペウスはその場から余裕そうに声を掛けた。
「まさか本当に力を受け継ぐとはな。貴様は今この瞬間に我々を敵に回したのだからな」
ラグナロクはアスラから一旦距離を置いて言い返した。
「確かに俺は何が何なのかも分からずにこの力を手にした。だが後悔は無い。この先どれだけ困難な道が待っていようが、俺はその運命を背負ってやるさ」
ドライバーの右にあるスイッチを押してヴァイオスクロールというホログラムの巻物を展開して剣を出した。
“ダーインスレイヴ”
「へぇ、ダーインスレイヴか。一度鞘から抜くと生き血を浴びて完全に吸うまで鞘に納まらないと言われた魔剣の代表格のひとつだな。確かヘグニって奴が使ってたんだよな」
ダーインスレイヴを片手にラグナロクは戦闘に戻った。剣はその名に恥じぬ力を発揮し、アスラが槍で受け止めようとしたのを槍ごとぶった斬った。残りが少なくなって来たのを見てラグナロクチャームをダーインスレイヴに装填した。
“エクソシスムタイム”(悪魔祓い、除霊)
「消えろ」
“ラグナロクスラウター”(殺戮)
淡紫色の神力を纏った刃は円を描きアスラを殲滅した。
「さて、あとはお前だけだな」
「調子に乗るなよ、若僧が」
分かりやすい挑発に乗ったモルペウスは思いっきり金棒を振りかざした。しかしラグナロクは焦る様子を見せず全て躱した。なんならカウンターを喰らわしていた。
「ぐはっ!」
「どうした?こんなものか?」
「調子に乗るなと、言っただろうがァァァ!」
「うおっ⁉︎」
本気で頭にきたのか、モルペウスは体当たりでラグナロクを山の外に放り出した。その先は山の麓にある図書館だった。
「人目のつく所に来ちゃったか」
頭を抱えるラグナロクの元にヴァルハラが来た。
「それが狙いだろうな。お前としては民間人を巻き込みたくはないじゃろ?」
「なるほどな。なら図書館の目の前にある広場に移りたいな」
(ちょうどこの夕暮れ時なら殆ど人は居ないはず。俺が今いるのは図書館の二階のテラス。中に残っている人は致し方ない。中を突っ切るか)
「ヴァルハラ、図書館内の窓を全部開けといてくれ。割りたくはないからな」
「はァ?…しょうがないのお」
ヴァルハラはため息を吐きながら中に入った。
「ハァハァハァ、」
「お、ようやく来たか。随分と遅かったな」
正直あまりにも遅かったのでラグナロクは煽りながらモルペウスを出迎えた。
「ふん、思っていた以上に飛んでいたから探すのに時間が掛かっただけさ。どれだけひ弱なのか」
負けじとモルペウスは煽り返した。
「へー、そうですか。じゃあ第2ラウンドといくか」
両者は再びぶつかりあった。前半はラグナロクのが優勢だったが、モルペウスも神の1人。感覚を取り戻して来たのか攻撃の一つ一つにキレが戻ってきていた。
(マズいな。このままだと押され負ける。急げよヴァルハラ)
「戦闘中に考え事とは余裕だなァ!」
「危なっ!」
拳がぶつかり合う最中、モルペウスは両目から光線を放った。ラグナロクはギリギリのところでそれを躱した。モルペウスは隙を与えずに2手目に金棒を振り翳してきた。
「くっ、やっぱりこの金棒かなり重いよなぁ」
「すまんな黒瀬、開けてきたぞ」
報告を聞くと同時にラグナロクは金棒を押し返し、よろけたモルペウスの頭上を飛び跨ぎ背中に蹴りを加えて図書館の中に放り込んだ。
いきなり謎の怪物が館内に入ってきたため中では悲鳴が上がった。
「この中に入れて何をする気だ!」
「いや目的はここじゃない。もう一つ先のところだ」
脚に力を入れてラグナロクは一気に間合いに入り込み胸ぐらを掴み窓を通して広場に投げた。
「うおおォォ、りゃあァァァ!」
そして自身も広場に窓から降りた。
「お前の死に場所は此処だ」
チャームを一度押してラグナロクは構えた。
“フューネラルタイム”(葬送の時)
「さっき眠いと言ってたな。永遠に寝てろ」
チャームを回して必殺技を起動し、ラグナロクは空に向かって大きく飛翔した。そして銀色に光る神力を纏ったキックをモルペウスに放った。
“ラグナロククライシス”
「ハアアアァァァ!!!」
「弾き飛ばしてくれるわァァァ!」
両腕をクロスに組みキックを受け止める体勢をとったモルペウスだが、その神力の強さは歴然、モルペウスの防御は無いに等しかった。
「ぬっ、ぬああァァァ!!!」
ラグナロククライシスはモルペウスの胴体を貫き、同時に爆散した。その方向をラグナロクは振り向き変身解除し、図書館に戻った。
☆ ☆ ☆
「何やってんだ、お前」
「見ての通り本を読みながら窓を閉めておる」
「すげえ絵面だけど周りからは見えてないのか?」
「本が浮いとるようにしか見えぬだろな」
ポルターガイストかよ。とツッコミながら黒瀬は本を取り棚に戻した。
「ちなみにじゃが基本的に神力の使い手以外には我のような式神は眼に見えんよ。使い手にも見えぬようにする事は可能だがな」
窓を閉め終えると2人は外に出て木製の長椅子に座った。
「それで、俺はこれから何をすれば良いんだ?邪神達を倒せば良いのか?」
「我としてはお前が力を継げば何だってよい。お前はどうしたいのだ?」
右手にあるチャームを見ながら黒瀬は答えた。
「…とりあえず戦い続けるかな。さっきも言ったけど俺はこういうのを待っていたんだ。どんな運命だって背負ってみせるさ」
「我が言うのも変じゃが、それで良いのか?」
「ああ。よし、帰るか。って思ったけどまた山を登らなきゃなのか。いーよなーヴァルハラは浮いてるし」
「吹っ飛ばされたお前が悪い」
山の入り口まで来ると黒瀬は余計嫌そうな顔をした。
「ヴァルハラ、お前俺を運べないのか?」
「お前は我をタケコプターか何かと勘違いしているのか?」
「はいはい登れば良いんだろ?」
嫌そうにする黒瀬の背中を誰かが後ろでコッソリと見ていた。
「黒瀬くん?それに隣にいるのって、まさか、」
☆ ☆ ☆
〜黒瀬家〜
「ようやく着いた。ただいまー」
「おかえり廻くん。遅かったわね〜」
家のドアを開けると母が出迎えてくれた。
「帰りに図書館に寄ったんだけど、結構読み込んじゃってさ」
「そうだったのね。夕飯できてるから着替えてきなさい」
「了解」
階段を登りながらそう答える息子の背中を見つめながら母は呟いた。
「なんだか少し楽しそうね。なにかしら?」
〜廻の部屋〜
「はあ〜疲れた。ヴァルハラ、アイツらのことについて教えてくれよ」
ベッドに倒れ込むと顔だけヴァルハラの方に向けた。
「家に帰って直ぐに奴らの事について聞くとは、お前は戦鬪狂か」
「別に良いだろうが」
ヴァルハラは、まあいいか、とでも言うかのような顔をしてから話し始めた。
「…まず奴らはゾロアスターという邪神の組織を組んでいる。そしてその頂点にいるのがアンラ・マンユことアフリマンだ」
その名を聞いて黒瀬は武者震いを起こし眼を輝かせた。
「アフリマン。絶対悪とまで評されるアイツが、ラスボスか」
【次回予告】
ラグナロクの力を継承し退屈だった日常に変化が起きた黒瀬廻。その存在を危険と判断したゾロアスターは軍神と呼ばれるテュールを派遣する。その圧倒的な強さに圧倒されるラグナロク。さあ一体どうなってしまうのか!?
そして謎の転入生である氷室希愛が…。
《第2話:疾駆のヘルメース》
今回は仮面ライダーラグナロクの第1話を読んで頂きありがとうございました。どうも作者の柊叶です。
本作について話させて頂きます。仮面ライダーラグナロクは神話をモチーフにした物語です。時代が令和になってから毎年、全く違うテーマを元に作品が作られているので、今まで使われていないものは何なのだろうかと考えた結果、神話に辿り着きました。あまりリアルに神様の設定をしてしまうと叩かれてしまう可能性もあるので参考にしている資料はWikipediaに限定しました。
本作の主人公である黒瀬廻は一応、隠キャ?として書こうと思ってはいます。なので親しい人以外には冷たかったり、上手く話せなかったりします。
これからも少しづつ書いていこうと思っていますので楽しみにしていただければ幸いです。
柊叶