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田村 弥太郎⑥

オナニー(自慰行為)


 ――性交ではなく、自分の手や器具などを用いて自らの性器を刺激し、性的快感を得る行為である。自慰ともいう。


 お母さんが出かけた後、さっそく家にあるiPadを使って調べてみた。そして安心した。二人が言う事を疑っていたのだ。僕はそんな自分を恥じた、せっかく友達になってくれたのに。親切心で教えてくれたのに。こんなんだから今まで友達が出来なかったんだ。


 さらに詳しく調べる、早い人は小学校の低学年、平均すると十二歳から十三歳くらいから始めるのが一般的らしい。


 あぶない、あぶない。もし二人が教えてくれなければ大人になってもオナニーの存在を知らなかった可能性が高い。これが独りぼっちで生きていくリスクか。僕は胸を撫で下ろした。


 しかし、その行為はかなり難易度が高い。自らの性器を刺激するというのは人生で初めての事で、なにより抵抗があった。二人は縦笛を使って親切丁寧に教えてくれたが、正直その時は僕を揶揄って遊んでいるのだとさえ感じた。しかし、調べてみるとそれはもっともオーソドックスなやり方であり、二人の言っていた事は至極まともな事だった。


 この行為をするにはまず、オカズと呼ばれる物を準備しなくてはならないらしい。想像でもイケるが初心者にはハードルが高いと鎌田くんが言っていた。記念すべき初オナニーは絶対に好きな女をオカズにするべきだ、と熱弁してくれた後藤くん。その為に二人は橋本さんの写真や動画を撮ってくると約束してくれた。


 僕のために――。


 自分の為に何かをしてくれる友人。損得抜きで優しくして貰ったことがない僕はそれが何よりも嬉しかった。二人の期待に応えたい、オナニーを成功させる為にあらゆる予習をした。


 明日は絶対にやってやる。今までに経験した事のないやる気と情熱が僕の体の内側からムラムラと湧き上がって来た。


 誰かに期待され、その期待に応える為に努力する。そうやって人は成長する。漫画で読んだフレーズが、期待された事のない僕には分からなかった。今なら分かる、僕は変われる。そんな思い、期待、多少の不安を抱きながら、僕はいつもより遅く眠りについた。


 今日もお母さんは帰って来なかったけれど、そんな事はまったく気にもならなかった。

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