表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/21

第10話 モコ

 前世でオレには家族がいた。といっても、碌でもない両親のことじゃない。


 愛犬だ。


 両親と縁を切って一人暮らしを始め、フリープログラマーとしての仕事も軌道に乗って生活が安定し始めた頃、オレは犬を飼いたいと思うようになった。

 前にも説明したが、オレは大の犬好きだった。犬を飼ってみたいという思いは前々からあったのだが、両親(クソども)が許してくれるはずもなかったので、叶わなかったのだ。

 奴らがいなくなり、それなりの金も溜まった時点でオレはペットOKのアパートに引っ越した上で、ネット上で保護犬の里親募集サイトを探した。そんな中で、捨てられたり、虐待されて保護された犬の里親を募集しているボランティアが、偶然にも近所で活動していることを知って、早速コンタクトを取った。


 その後、実際に見に来てくださいと言われて足を運んだ先にいたのは、病気や怪我などで捨てられたり、虐待などから保護された多くの犬たち。正直、見てて痛々しくなる姿の犬もいた。


 そんな中で、オレの目に留まったのは一匹の雌のチワワだった。

 正確にはロングコートチワワだけど。


 いや、目に留まったというか、ボランティアの人と話をしている最中に、チワワの方からオレの膝の上に飛び乗って来て、一心不乱にオレの顔を舐めまくってきたんだ。ボランティアの人が微笑ましそうに笑ってたよ。

 なんでも、悪質なペット業者に劣悪な環境で飼育されていたのを保護したんだそうだ。


 容姿も可愛らしかったし、即決でそのチワワを引き取ると決めた。


 その後、いくつかの手続きを経てそのチワワは正式にオレの扶養家族となった。

 ペットじゃない。家族だ。ここ重要な!


 ロングコートチワワ特有のモコモコとした毛並みから、オレはチワワに「モコ」という名前を付けた。安直だろ?


 モコは最高の犬だったよ。

 性格は穏やかで、頭も良かった。オレが芸を教えるとすぐに覚えたし、部屋の中で用を足したり、むやみやたらに噛むこともしなかった。ただ食いしん坊な上に好き嫌いがあって、ドッグフードとかは食べずに豚肉や鶏肉が好みだった。加えてオレが食事をしてると、必ず自分の餌をほっぽり出してオレの飯を催促してきた。


 おかげでオレは、モコの世話で天手古舞になったけど、その反面、それが本当に楽しく思えた。仕事で煮詰まったり、ストレスが溜まったりした時はモコと戯れたり、一緒にトライクでドライブすることが癒しとなっていった。


 犬は人類最古の友と言われているけど、それは紛れもない真実だったと思い知ったわ。


 本当にモコは家族だった。

 ある意味、オレは生まれて初めて「家族」というものの意味を知ったんだ。

 これが本当の家族なんだ、って。

 モコが来てくれてから、不思議と仕事もより上手くいくようになった。自作ゲームである『ジークフリート・シリーズ』が大ヒットしたのもそのころだ。


 まるでモコが幸せを運んでくれたみたいに。


 オレの元に来てくれてありがとう――


 オレは毎日、そう言ってモコに感謝し続けた。本当に幸せだった。


 だがそんな幸せな生活も、たった10年しか続かなかった。

 なんてことはない、寿命だった。


 モコの正確な年齢は判らなかったが、オレが引き取った時点で5歳くらいだと言われた。チワワの寿命が平均13~7年くらいだと言うから、長生きした方だと思いたい。

 日に日に元気がなくなっていくモコを見ているのは辛かった。どうにか元気になれるよう、少しでも長生きできるように出来得る限りの手を尽くした。


 けど、忘れもしないあの日――12月の寒い日の朝、モコはオレの膝の上で眠る様に息を引き取った。


 泣いたよ。ホント、一生分泣きまくった。それまでも泣いたことはたくさんあったけど、痛かったり、悔しかったり、惨めだったという理由がほとんどだった。


 悲しくて泣いたのは、生まれて初めてだったかもしれない――


 愛犬を――家族を失うということは、こんなにも辛いことだったんだと、初めて知った。

 オレはモコに幸せにしてもらった。本当に、心から感謝した。だから、別れの時も「さよなら」とは言えなかった。

 ただひたすら「ありがとう」とだけ繰り返した。


 オレの元に来てくれて、ありがとう――と。


 死んでしまったものは二度と帰って来ない。それは判っていたつもりだった。もう二度と、モコには会えないのだと。


 けど、どうしてもオレは、もう一度モコに会いたかった。

 もう一度会って、頭を撫でてやりたかった。

 嬉しそうにするモコの身体を抱きしめたかった。

 布団中で一緒に丸まって眠りたかった。


 どんな形でも良い。もう一度、愛犬(モコ)に会いたい――


 愛犬との別れを経験した者であれば、誰もが同じことを思うだろう。


 だから自分が癌だと判って、残り時間が少ないと知った時も、怖いとは思わなかった。もう少しでモコの元へ行ける、と。


 その後、人生最後の作品である『シン・ジークフリート』を作り上げるに当たって、ゲーム内にある生物を登場させた。


 シエルカニス。


 魔物とも動物とも異なる、幻獣という生物の一種で、魔法を使う小型の犬のような生物。

 その容姿を、オレはモコと酷似したデザインにした。

 そして当然ながら、主人公であるシンの仲間にすることができる、という設定で。

 ストーリー序盤で仲間にすることが出来て、シンと共に旅し、戦い、成長し、最後は共にエンディングを迎える。


 どんな形でも良いから、もう一度モコと会いたい――


 オレはその願いを、ゲームと言う形で叶えたのだ。


 もう1人の自分とも言える主人公シンと、その相棒である幻獣シエルカニス。両者の関係を、オレとモコになぞらえて。

 それが虚構だということはオレも重々理解していた。けど、それほどまでにオレにとってモコは大切な存在だったのだ。


 どうしても、どんな形でも良いから会いたかった。

 本当に、本当に会いたかった。


 モコに会いたかったんだ!


 そんなオレの眼前にそれはいた。

 2匹のストレイウルフに立ち向かう、1匹の小さな犬のような幻獣。<竜眼>を使うまでもない。それは紛れもなく、亡き愛犬の姿を元にデザインした、幻獣シエルカニスだった。


 実際にこの目で見るその姿は、ロングコートチワワ――モコと本当に瓜二つだった。毛の色は少し違うが、それ以外の容姿は寸分違わず同じ。


 まるでモコが再び現れたかのようだ。


「……………………モコ?」


 オレの口は無意識のうちに愛犬の名を口にしていた。その声がストレイウルフたちの注意を惹いてしまう。2匹は目の前にいる小さなシエルカニスよりも、より大きいオレの方を獲物に変更したようだ。雄叫びを上げて襲い掛かってきたが――


「邪魔だ」


 飛び掛かってきたストレイウルフを、《リンドブルム》の二振りで両断する。真っ二つになって地面に落ちたストレイウルフには一瞥もくれず、オレはシエルカニスに目を奪われていた。


「ぐるるるッ!」


 だがシエルカニスはオレに対しても歯を剥いて威嚇してきた。

 その姿が、やはりモコではないのだという事実をオレに突き付けた。けど、オレはそれでもシエルカニスを――愛犬と瓜二つの姿をした小さな犬を放置することは出来なかった。


 よく見ればシエルカニスの身体にはいくつもの傷が刻まれ、血を滴らせていた。こんな小さな身体で、自分よりも遥かに大型のストレイウルフ2匹と戦っていたのか? いったい何故?

 疑問に思っていると、突然、シエルカニスが踵を返し、林の奥へと走り去っていく。


「ま、待ってくれ!」


 思わずその後を追おうとしたが、何故かシエルカニスは林のすぐ向こう側で足を止めてしまった。林の奥を覗き込んでみたオレは、思わず息を飲んだ。林の奥、木の根元に別のシエルカニスが横たわっていたのだ。先ほどのシエルカニスはその脇に鼻を寄せ、くーん、と悲しそうに、あるいは甘えたような声で鳴いている。

 横たわっているシエルカニスの方が体格がやや大きいことや、身を寄せるように甘える仕草。

 間違いない。母親だ。


 だが、オレが息を飲んだのはそんな理由じゃない。


 横たわっている母シエルカニスは、子供が甘えているのに全く反応しなかった。ピクリとも動かないのだ。


 当然だ。あの母シエルカニスは――既に死んでいるんだから。


 オレが背後で見ていることに気付いた子供のシエルカニスは、こちらに向き直ってオレのことを威嚇し始めた。


「そういうことか……」


 ようやく判った。

 あのシエルカニスが、自分よりもずっと大きなストレイウルフに立ち向かっていた理由が。


「……守ってたんだな」


 母親を守っていたのだ。

 動かなくなった……息絶えた母親の亡骸を。


 母親が死んでいることを理解しているのかどうかは判らないが、あの子供のシエルカニスは、ストレイウルフに母親を喰わせまいとして、命懸けで戦っていたんだ。母を守っていたんだ。


「わおーん!!」


 ともすれば可愛らしい鳴き声を上げた子シエルカニスの頭上に火球が生じた。大きさはそれほどではない。今朝の昇級試験で受験生が使っていた未熟な【火の弾(ファイヤーボール)】よりもさらに小さい。それが差して速くもないスピードで飛んできたが、オレが手で軽く叩くとあっさりと霧散した。


「わ、わんっ! わんわんっ!!」


 それでも諦めずに何度も火球を飛ばしてきたが、先ほどと同じく手で叩いて掻き消していく。5発ほど撃った時点でMPが尽きたのか、打ち止めとなった。それでもなお、母親の亡骸を背にして動こうとしない姿に、オレは強く胸を締め付けられた。


「大丈夫だ。お前を傷つけたりしない」


 もとより亡き愛犬と瓜二つのシエルカニスに危害を加えるつもりはない。両手を広げてゆっくりと近づいていくが、子シエルカニスは唸り声を強くするだけ。


「ほら、大丈夫だ」


 すぐ手前までやってきて、膝を付き、手を伸ばしてやると――案の定、思いっきり噛み付いて来た。ステータスのお陰かまったく痛くないんだが、それでも子シエルカニスは噛み付いたまま離れようとしない。


 絶対にお母さんを守る――そんな決意が伝わってくるような必死さに、さらに胸が痛んだ。


 母シエルカニスの亡骸に目を移すと、既に死体特有の腐臭が漂っていた。恐らくさっきのストレイウルフはこの臭いに惹かれたのだろう。死後1日くらいか? ただ、母親の身体には外傷のようなものは見受けられなかった。たぶん、病気かなにかで死んだのだろう。


 パッと見た感じでは、目を閉じて穏やかに眠っているようにしか見えない。


「……モコ」


 愛犬の姿を元にしたシエルカニスの亡骸。


 それは否が応でもオレに、愛犬の死を思い起こさせた。


 だから、ダメもとでオレは母シエルカニスに右手を翳し、とある魔法を発動させた。


「【不死鳥生還フェニックス】!」


 途端、母シエルカニスの周囲に複雑な文様の刻まれた立体型の魔法陣が形成され、真っ赤な炎にも似た膨大な魔力が噴き上がった。


「わふっ!」


 あまりの光景に、オレの手に噛みついいていた子シエルカニスがビックリして、転げていた。


 だが、荒れ狂う深紅の魔力光が収まって魔法陣が消えた時、そこには冷たいままの母シエルカニスの亡骸があるだけだった。


「やっぱり、ダメか……」


不死鳥生還フェニックス】――火系統の最上級魔法で、《戦闘不能》になったパーティメンバーをHP全回復状態で復活させる、というものだった。あくまで《戦闘不能》を回復するのであって、死者を蘇らせるものではない。

 たぶんだが、この魔法は死んだ直後でしか効果が無いのだろう。残念だがこの母シエルカニスは、死んでから時間が経ちすぎている。こうなるともう、出来ることは無い。


 生者を救うことは出来ても、死者を蘇らせることは出来ない――


 これもまた、オレが『ジークフリート・シリーズ』を作り上げるに当たって刻んだ不文律の1つだ。


 ラノベやアニメ、漫画なんかでは、それこそ片手間みたいに死者を蘇られてしまうものもある。けど、『ジークフリート・シリーズ』の世界ではそれは決して起こりえない。

 神官や僧侶、医師と言った職業を持つ者の使命は、生者を救うことであって、死者を蘇らせることじゃない。

 生命はそんなに軽いものじゃない。失われたら二度と戻らないからこそ尊く、そして重いのだ。


 生命とは救うものであって、蘇らせるものじゃない。


 それはオレにとって、絶対に譲ることの出来ない掟のようなものだった。だから『ジークフリート・シリーズ』では仲間や友人が死ぬという悲劇を組み込んで、主人公たちがそれをいかに受け入れ、乗り越えられるかをストーリーとして組み込んでいた。


 そして、いざそれが自分の身に起こってみれば、果たしてどうだ?

 情けないことに、オレ自身は未だに……シン・スカイウォーカーとして異世界に転生して尚、愛犬の死を乗り越えられていなかったことをハッキリ理解したよ。


「モコ……」


 母シエルカニスの身体をそっと撫でる。完全に冷たくなってしまったその身体が、死後硬直で硬くなっていた。

 オレの愛犬と……モコと同じだ。


 オレの腕の中で、徐々に冷たくなっていく小さな身体。

 どんなに呼びかけても、身体を揺すっても、大好きだった鶏肉を鼻先に置いても、目を覚ましてはくれなかった。ただ眠っているようにしか見えなかったのに、決して目を覚ましてはくれなかった。


「モコ……モコぉ」


 脳裏に、愛犬との思い出が走馬灯のように蘇っってきた。


 最初に来た時は緊張してプルプル震えてたくせに、三日もすれば部屋のど真ん中でへそ天で寝転がっていた――


 オレが食事してる時は、自分の餌をほっぽり出して「よこせ!」と言わんばかりにピョンピョン飛び跳ねて食事を強請って来た――


 オレが外出から帰った時は、毎回玄関のドアの前で尻尾を振りまくって出迎えてくれた――


 名前を呼べば、短い脚で一生懸命走って、満面の笑顔で駆け寄ってきてくれた――


 頭を撫でられるのが好きで、目を細めて気持ちよさそうにしていた――


 わざわざ高い寝床を購入したのに、寝るときは決まってオレの布団に潜り込んでいた――


 オレが座っていると必ず膝の上に乗ってきて、抱っこを要求してきた――


 オレの手や顔を舐めるのが大好きで、しょっちゅう涎塗れにされていた――


 それがまた、たまらなく嬉しかった。大好きだった。掛け替えのない存在だった。


 オレの……オレの唯一の家族だった。


「くぅーん?」


 子シエルカニスの鳴き声に我に返る。視界に映った子シエルカニスの姿が滲んでいた。愛犬との思い出がよみがえって、知らない内に涙が溢れてしまったらしい。慌てて顔をぬぐう。


「ごめんな。お前のお母さん、助けてやれなくて……」


 震えてしまっている涙声の、なんと情けないことよ。


 どうやらオレは、自分で思っていたよりも随分と弱い、惰弱な人間だったらしい。亡き愛犬とそっくりな動物の死。残された幼い子供。その事実が、とんでもなく悲しくて、悔しくて、情けない。


 シン・スカイウォーカーに転生して強くなったと思っていたが、全然変わっていなかったよ。我ながらホント、情けない限りだ。


「くぅーん」


 差し出されたままだったオレの手を、子シエルカニスは慰めるように舐めてくれた。

 やれやれ、母親を失った子供に慰められるとか、どんだけ情けないんだ、オレ。



 その後、オレは子シエルカニスの傷を癒し、<土魔法>でその場に穴を掘って母シエルカニスの亡骸を埋葬した。ただそれだけでは寂しいので、先に収集した薬草の花と一緒に。簡素ではあるが墓石を立てて墓を造り、その周囲にも薬草の花を供えた。そのせいで採取した薬草は随分と減ってしまったが、まあいいさ。


 その間、子シエルカニスは邪魔をすることもなく、静かにオレの作業を見守っていた。あんなに必死に母親の亡骸を守っていたのだから、てっきり抵抗するかと思いきや、少し離れた場所でお座りをしながらじっとしていた。

 そして、母の亡骸が土の下に消えてから、初めて悲しそうに目を伏せて「くぅーん……」と鳴いていた。その鳴き声がまたオレ自身の胸を締め付ける。

 墓が完成し、しばらく両手を合わせて母シエルカニスの冥福を祈ってから、オレは改めて子シエルカニスに向き直る。


「オレはもう行かなきゃならないが、お前はどうする?」


 この世界におけるシエルカニスの生態をオレは知らない。ただ、見たところこいつはまだ親離れも出来ていない子供のはずだ。親と死別して生きていけるとは思えない。不用意に野生動物を拾うのは良くないことだと判っているが、だからと言って亡き愛犬と瓜二つのシエルカニスの子供を放り出すってことも出来ない。だがそれでも、実際に尊重されるべきは当の子シエルカニスの意志だ。

 もしこいつが「人間に付いていくことなんか出来ない」というなら、それを受け入れるつもりでいた。

 しかし――


「きゅ~ん……」


 子シエルカニスは甘えるような声を出して、オレの足に身体を擦り付けてきたのだ。


「……一緒に来るか?」


 尋ねると――


「わんっ!」


 オレの言葉を理解しているかのように満面の笑みで返事をして、尻尾を振り振りしている。

 それがまた、生前の愛犬の姿に酷似していて目頭が熱くなる。

 小柄な身体を抱き上げてやると、子シエルカニスが尻尾を振って喜んでいた。良く判らないけど、随分と懐かれてしまったようだ。そっと頭を撫でてやると、気持ちよさそうに目を細めていた。

 子シエルカニスの毛並みの感触。

 忘れもしない。何度も何度も撫でていた――もう一度、撫でたいと願い続けていた、愛犬モコのそれと全く同じだった。


「モコ……」

「わんっ?」


 無意識に出てしまった愛犬の名に、子シエルカニスが返事をした。まるでこっちの言っていることを理解しているかのように。「なーに?」と言わんばかりに首を傾げる。


 それが自分の名前だと言わんばかりに……


「モコ……モコォ!!」


 気付いたらオレは、子シエルカニスを抱きしめて泣いていた。溢れ出してくる感情が爆発して、堰を切ったように涙が止まらなくなった。


 どんな形でも良い。もう一度、愛犬(モコ)に会いたい――

 もう一度、モコを撫でてやりたい――

 モコの声が聞きたい――


 そんな思いを胸に、オレは『シン・ジークフリート』を作った。

 モコと同じ姿をした幻獣シエルカニスをデザインした。

 主人公(シン)シエルカニス(モコ)が共に冒険に出るストーリーを作った。


 そんな『シン・ジークフリート』に似た世界に転生して、オレはまた、モコ(愛犬)と出会うことができた。

 頬を伝う涙をペロペロと舐める子シエルカニスに、オレは涙声で言った。

 愛犬に掛けた最後の言葉を。


「オレの元に来てくれて、ありがとう」

「わんっ!」


 どういたしまして、と元気よく吼える子シエルカニス。


 こうしてオレは、再び愛犬と出会うことが出来たのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ