どうする?
「君、ご飯は食べた?」
「はい、もう食べました」
「じゃあちょっと行きたい所があるから、もう少しだけついて来て」
ここからどこに行くのだろうか。変な場所に着いたりしないだろうか? この人は誰なんだろう? そんなことが思い浮かぶ。
「君は修練校の生徒さん?」
「そうです」
「さっきのは同級生とか?」
「はい」
「学生も大変だな」
「えぇ、でも、自分から首を突っ込んだことなんで」
「そうなの? どうして?」
「困っている人がいたからそれを助けたんです。でも、今度はオレ自身が困ることになってしまって」
「…お前はどうしたいんだ?」
「オレは…困っていた人も救いたいし、自分の事も何とかしたい。でも、あいつには多分勝てない」
「力が欲しいのか?」
力があれば解決できる問題があった。今日まで思い返してみれば負けてばっかり。何か自分にも原因があるとしたら…それはスペアだ。
「力が欲しいです。スペアの使い方を知りたい!」
「…分かった。協力しよう」
「修練校で学んでないのか? って聞かないんですか?」
「そんな所でスペアを知れたら人生苦労しない」
男性はどこか哀愁を漂わせる。
「着いた」
「ここ、ですか」
こんな話をしていると、とある場所に着いた。
それはこの都市部のどこか一角にあるご飯屋だった。
「ご飯まだだったんですか?」
「そうだよ。ここでしばらくゆっくりできる」
店の中に入って席に着く。
正面に男性が座り、ご飯を頼もうとしている。
明るい場所でしっかり顔を見るのは初めてだ。
細身で色白、黒髪に黄色い瞳、落ち着いた雰囲気からは知的さを感じる部分がある。何より顔が整っていることがポイントだ。これがこの人の第一印象だ。
「あなたのこと、何と呼べばいいでしょうか?」
男性にそう聞くと一瞬きょとんとするが直ぐにこう言う。
「君にも名前を教えることはできない。ひとまず師匠とでも呼んでくれ」
「オレにも教えられないんですか?」
「今は。時が来たら教えるよ。そっちは?」
「オレはシャンステッド・クローリーと言います」
するとここで師匠のご飯が運ばれる。
「あら、サンコニヤにいたの⁈」
追加で師匠は店員さんから声をかけられる。
「この町には時々来てるけど、店に来るのは結構久しぶりかな」
「相変わらず忙しそうね」
「お店の方こそ、繁盛してるね」
「お蔭様でね!」
師匠はおばさん? お姉さん? その中間位の年齢の店員さん話をする。
「彼はだれ?」
店員さんはオレの顔を見て師匠にそう問いかける。
「そうですねー、運命の人という名の弟子。かな」
「やだ、もう何それ~」
店員さんは笑いながら去っていく。
「知り合いですか?」
「そう。昔色々あって」
「運命の人というのは…?」
「そこは突っ込まないでくれ」
「師匠ってこの国の人なんですか?」
「いや、違うよ」
「じゃあ敵になることもあるんですか?」
「うーん、敵対すればそうなるかな」
「そしたらどこかに所属してるんですか?」
「そうだな、所属してると言えばしてるけど、一人で行動することが多い」
「その、さっき言ってた中央大陸ですか?」
オレの中で師匠に対する疑問や不安などがどんどん口から出ていく。
「中央大陸にある組織にね。でも、このサイカヤと対立することは今の所ないかな」
「サイカヤってこの国のことですよね? 何でサイカヤと中央大陸が戦わないって言い切れるんですか?」
「中央大陸は争いの絶えない一番危険な地域だぞ。そんな地域の一組織が国と戦うのは普通あり得ない。それに、中央大陸には正式な国が無いってどっかで習わなかったか?」
オレが平和すぎた村で育ったことがバレてしまう。
「あはは、そうでした」
「中央大陸の詳しいことはまたどこかで知ればいいさ。あと、命を惜しまず強くなるなら中央大陸が一番いいぞ。強い奴がゴロゴロいて毎日戦いあってるからな」
そんな物騒な場所があるのか。国の中で守られてるってのは良いものだな。
中央大陸所属の師匠はきっと強いんだろう…。
「それで、この後どうする? スペアについて何か言ってたよね?」
「はい、オレにスペアの使い方を教えてください!」
「いいよ。じゃあ今から準備して行くぞ」
「え、今から、ですか? どこに?」
「修行だ。速く行動するに越したことはない」
「でも、明日も修練校があるんですが…」
「明日そこに行けば苦労する未来が見えないか?」
「…確かに」
言われてみればその通りだ。明日学校に行けば、男子生徒からちょっかいを出されることなんて目に見えている。
「ひとまずクローリーの家に戻って準備をしよう」
「分かりました!」
オレと師匠は店を出た。
賑やかだった夜の町を抜け、木々が増え、所々に家が見られる、少し住宅地のような場所に入る。
オレの家はこの辺りにあるんだ。
「着きました。ここが家です」
オレは師匠を家に案内した。
「おう、ここか。オレは外で待ってるから、必要な物とか武器とか持って来て。大切な物とかも一応」
「大切な物? 何でですか?」
「その、泥棒にでも入られたら大変じゃない?」
確かにそうだが、外見でこれだけ損傷のある家に入る泥棒っているのか?
その発言は逆に師匠が怪しく感じる。もしかして、オレの村の家宝の剣を奪う気か⁈
でもそしたらもう奪われてる気がするし、普通家に入ろうとしたりするよな?
まぁいいか、疑ってもしょうがない。持っていける物は持っていこう。
「分かりました」
オレは家に入り支度を行う。
村から持ってきたリュックサックに携帯用の食料や救急箱などを詰め込む。
「これどうしようかな」
オレの頭を悩ませてるのは小汚い袋に入ってる家宝の剣の存在である。
武器ではあるけど、実践でどんどん使っていい代物なのか?
この剣は以前に一度使用した。オレと父が。この国と戦った時に抵抗するための手段として、文化財ではあるものの、剣本来の役割として使用したのだ。
でも大切にしなきゃいけないことは間違いない。
本当は修練校にも持っていきたいくらいだけど、それは流石に学校側が許さないだろう。
まさか家で管理できないとは思いもしなかったから。
この家宝の剣は大切な物だ。なれない土地に置いておくなら、自分自身で持っていた方が安心できる。それに、非常時には武器としても活用できる。持っていこう!
床に置いてある家宝の剣を見ながらそんな事を考える。
「師匠、お待たせしました!」
「よし、行こうか」
師匠はオレを一周するように見てからそう言った。




