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遺・文明の灯火は死灰の中で目を───

作者: 著著者

初。

目を開く。『智者』は、目覚めて間もない、人にして7歳程に見える、まだ名前すらも無い目の前の少女に向かって

「初めまして、と言ったほうがいいかしら?」

優しい声だった。『智者』は続けて

「いい?あなたは現文明の叡智の結晶であり、文明の存在証明、時代の『記録者』、そして私たち───の家族でもあるわ。」

少女は混乱しているようであったが、すぐに『智者』の言葉の意味を理解したようで『智者』に問いかける。

「我『智者』へ問う。我の名前は何か?」

『智者』は微笑み

「それなら私たちで考えてあるけれど、自分で付けなくていいのかしら?」

「我はデータベース。故に思考を必要としない。」

「あら?それは違うわ。ならどうして私に名前を聞いたのかしら?」

少女は驚いてから、少し拗ねたように

「...我、思考必要としない。」

「あら?意外と意地っ張りなのかしら?ふふっ、まぁいいわ。あなたの名前はカルディアよ。これからはその堅苦しい喋り方を直しましょ。」

家族からの初めての贈り物に少女は少し嬉しそうに───


目を開く。目の前にいる家族は言う───

「カルディアは何が食べたい?」

「フフン!この▉▉▉である私が手料理を振る舞ってあげるわ!」

「お前は料理できないだろ...▉▉▉」

「練習しても全く上達しなかったものね...」

「そ、そんなことないわ!じ、実は最近一人で練習してて...」

「仕方ないね。今日も出前で済ませようか。それでいいかい?▉▉▉、▉▉▉。」

「ちょ、ちょっと!だから私が...!」

「そうしましょうか。」

「そうしよう。」

「...私そんなに料理下手なのかな?」

そんないつも通りの家族たちのやり取りを見て、カルディアと呼ばれた少女は笑って───


目を開く。泣いて赤くなった目元が現実を押し付ける。もうあの人達は居ないのだと。

『記録』にはこの戦いで無くなったものと、戦いの決着を示す記録が新しく書き記されている。

空を見る。とても綺麗な群青の空だ。鳥が喜びに満ちた様子で飛んでいる。

森を見る。生命力に満ちていて森の動物たちの安堵が感じ取れる。

街を見る。人々は皆泣きながら、その顔には笑顔を浮かべている。

私がよく知っている、あの人達が大切にしている、沢山の思い出が詰まった、美しい世界だ。

しかし、そんな世界で一人、少女は泣いて───


目を開く。かつて栄えた古の文明が遺した僅かな灯火を見て、既に色褪せてしまった古い記憶を呼び覚ます。そして少女は───


残された文明の灯火は────目を、閉じた。


書き終えた私は目を閉じた。

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