第76話 カッチカチなまんごちゃん!カッチカチやでぇ〜!だまんごー。
「師匠! すごいのを思いついちゃったの。試しにやってもいい? ちょっとフルプリに変身してきてもいいかなぁ〜?」
高村まんごは、いい考えを思いついたらしく、笑顔でペラペラと話している。すぐに更衣室に行ってフルーツプリンセスに変身したそうに、ソワソワとしているのだ。
的場菜奈は、まんごがソワソワしている様子を可愛らしいなと思いながらも、「いいよ」と言った。
「じゃあ、ちょっと変身してくるね」と言い残し、まんごは足早に更衣室へと駆けていった。
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まんごは、更衣室に戻り、『マンゴスチン・ハート・アンドロギュヌス』の力で、魔法少女『フルプリマンゴスチン』に変身してきた。
他の門下生たちは、的場菜奈が魔法少女であると知っているため、まんごが魔法少女になってきてもそれほど驚いた様子はなかった。皆、自分の稽古に集中している。
「さぁて、師匠! すっごくいいことを思いついたから、見ててね! 行くよっ!
赤黒の強固な砦のマンゴスチン!
汝の砦を妾に分け与えたまえ!
マンゴスチン! た〜て〜!」
まんごが呪文を唱えると、『マンゴスチン・ハート・アンドロギュヌス』から、赤い光の壁が現れた。『マンゴスチン・盾』、略してマン盾である。
そして、まんごは、目の前にマン盾を展開したまま、先ほど的場に見せてもらったように、三戦立ちをした。的場のやった三戦立ちとはちょっと違ってはいたが、それっぽい雰囲気は出ていた。
「ほぉ〜。三戦立ちをしながら、盾を展開か。なかなか防御力のありそうな構えだな……。」
的場は、感心したように、まんごの構えを見る。
「へへっ。すごいでしょ。これが、私の考えた新しい構え。名付けて、『マンゴスチン立ち』だよっ!」
まんごは満面の笑みを浮かべる。
「はっはっは。すごいなぁ、高村は。初日にして新技かぁ〜」
的場も、まんごに釣られて嬉しそうに笑った。
「どれどれ、どれほど堅いのか試してもいいかな……。」
的場は、まんごの返事を聞く前に、腰を落とし、まんごに向けて正拳突きをした。
バシッ!
と、いい音が鳴ったが、マン盾もその後ろのまんごも微動だにしなかった。
そして、的場は、踵落とし、ローリングソバットを続けたが、それらの攻撃を受けても、まんごは微動だにしない。
「おおっ! なかなか堅いな……。これを無詠唱で展開できたら、かなり実践向きだな……。」
的場は、感心する。
マン盾の防御力を認めたものの、マン盾の発動時間が弱点であると見抜いた的場だった。しかし同時に、その発動時間さえ短縮できれば、強力な防御技になる――その潜在的な力をも見抜いていた。
「あっ……でも、防御無視の技や魔法は効くかもしれないし……。弱点を知っておくことは大事だからな。一回試してみてもいいか?」
『マンゴスチン立ち』の潜在的な力を見抜いた的場は、真剣な表情に変わり、その構えをもっとよく知ろうと、夢中になっていた。
「うん。いいよっ。師匠! どんとこいっ、です!」
まんごも、真剣な表情の的場に応じるべく、大きく頷いた。
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一旦、更衣室に戻った的場菜奈は、自身の果物型変身装置である『バナナ・セブン』の力で、『フルプリバナナ』に変身してきた。
そして、マン盾の呪文を詠唱し直し、準備万端で『マンゴスチン立ち』を構えたまんごの前で、的場は大きく深呼吸をする。
「よしっ! じゃあ……行くぞっ!
私のバナナが光って唸るぅ!
黄色い皮が ズルリと剥けるぅ!
白い実が まっすぐにそそり立つぅ!
そして、悪を 突き破るぅ!
これが バナナの叩きURYYYYYYYYY!
貫け 敵を! 貫け 闇を! 貫け 世界を!
バナナの極み! アァァァーーーッ!」
菜奈が大声で呪文を詠唱すると、黄色く輝くバナナの皮が、まんごの足元に現れた。
『マンゴスチン立ち』を構えていたまんごも、そのバナナの前では、いや、上では、無力だったのか、ツルリと滑り、体勢を大きく崩した。そして、床に転び落ちる寸前で、菜奈の放った一撃がヒットした。
ドゴッ!
拳の衝撃自体はマン盾によって緩和されたものの、踏ん張りのきかないまんごは、その勢いのまま、後ろに吹っ飛んでいった。
ボ〜〜ン!
大きな音を立てて、まんごは道場の壁に叩きつけられた。
「おいっ! 菜奈! 稽古初日の門下生を全力でぶっ飛ばすやつがいるかぁ〜!」
と、的場菜奈の父親であり的場道場の師範の『的場光一』が、遠くから叫んだ。
「親父、すまねぇ〜! それより、高村! 大丈夫かぁ? 高村ぁ!!!」
父親に謝りながらも、的場菜奈は、吹っ飛んでいったまんごに向けて全力で駆けていく。
まんごは、道場の壁にぶつかり、項垂れていた……。
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(作者注:ここから、まんごちゃんの夢の中編です。)
平田公萬、通称『おまん』は、スッケスケでエッロエロな白い装束一枚で、森の中を歩いていた。深山家の頭首である深山頼遠に拐われ、クワガタ様の生贄になることを余儀無くされていたのだ。
おまんが、月の明かりのみを頼りに、暗い森の中をしばらく歩いてゆくと、森の中の少し開けた空間に出た。
その真ん中には、大きな木が1本立っていた。その木の周りには何もなく。その一本の木があるだけだ。
「これは……? 御神木か……?」
おまんは呟く。そして、視線を上げた。その木は、思いのほかやせ細っており、葉もまばらであった。
「はて、人間か……? このようなところにわざわざやってくるとは……。そなたは生贄といったところか? 人間どもが妾に度々よこすやつか。妾は、そんなのを望んだ覚えはないが……。で、其方の名はなんと申す?」
突然、その木は話し始めた。
「『平田公萬』でございます」
おまんは、突然話し始めた木に怯えることもなく、凛とした表情のまま答えた。
「はて……? 妾は、其方の本名を聞いているのだ。其方からは力を感じる。何か特別な血を引いているのであろうが……。」
「ははは……。お見通しというわけですか……。私は、『鎮光院平田公萬郷』と、申します。……西の貴族の血を引く者でございます」
おまんは、その木からの質問に、口元を一瞬ピクリとさせたが、落ち着いて正直に答えた。
そう。おまんは平田家の娘であったが、それは仮の姿。元々はとある地方の貴族であった。幼少期の頃に、跡取り問題のもつれで、実の兄の平田果実と共に、この地域に逃亡してきたのだ。
「そうか。なかなかの血筋……というわけか。妾は、世界樹である。このあたりを統べる長みたいなもんじゃ。まぁ、もうすぐ妾の役割は終わるがのぉ……。まぁ、これが終わる前に其方に一仕事お願いしたいのじゃが……?」
その木は、世界樹と名乗った。
しかし、その世界樹は枯れかけており、その世界樹自身も、自分の終わりが近いことを認識しているようだった。
「はい、喜んで……。もともと私は、生贄になるようにここに来ました故……。他にすることも、行く先もございませんので……。」
おまんは、表情を崩さず、しかし、口元に小さな笑みを浮かべて、その木の願いを受け入れようとした。
「そうか……。では、お願いというのは……。其方世界樹になってほしい、ということだ。今すぐというわけではなく、永住の地を探し出し、その場所で、世界樹として根付いて欲しいのじゃ。その道中は、魔法少女となって、旅をしてもらえればいい」
「魔法少女ですか……? いくつかの書で読んだことがございます。『魔法的少女裏々刈菜乃花』や『魔法的少女円香魔技香』の世界に出てくる、不思議な力を使う少女のことでございますね?」
おまんは、自分が読んだ書物のことを思い出した。そして、これまでの凜とした表情を崩し、笑顔でそれを語った。
「まぁ、そんなもんじゃ……。何かこの世界で思い残すことがなければ……このまま……。」
「あっ!」とおまんは、世界樹の言葉を遮った。
「あっ、その……できることなら、兄上の元に行って、最後のお別れを……。」
おまんは、顔を上げ、世界樹に向かって訴えた。彼女にとって兄は掛け替えのない存在であった。しかし、平田家の屋敷への突然の襲撃によって、いきなり兄と離れ離れになってしまったのだ。彼女はそれをずっと悔やんでいた。
「それくらいならば、容易いだろう。それならば、もう一度改めて問おう。世界樹になってくれるか?」
世界樹が問いかける。その一瞬、夜風が、おまんと世界樹の間を通っていった。その風は、おまんが着ているスッケスケでエッロエロな白い装束を棚引かせていった。顕になった白い肌が月の光で輝くも、その輝きを目にするものはいない。
ただ、おまんと世界樹だけがそこに立っていた。
おまんは大きく深呼吸をした。
ドン!
次回に続く!
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わたくし、ドリア・ヌ・ロドリゲスでございますわ〜。 まんごちゃんと同じで、小学3年生の魔法少女でございますわっ!
ごきげんよう〜!
まんごちゃんがお寝んね中でございますので、わたくしが、次回予告に登場しましたでございますわ〜。
まんごちゃんは主人公なのに、割と頻繁にお寝んねするでございますですわね〜。まぁ、そういう弱いところもまんごちゃんの可愛らしいところでございますわっ!
まぁ……実を言うと、夢の中編を進めるために何か特別な力が働いているのでございますわ! 世の中そういうものでございます。
それにしても、まんごちゃんの新しい構えはすごいですわ〜。的場さんの攻撃にびくともしませんでしたし〜。でも流石に、防御無視の魔法は貫通しちゃうんでございますわね〜。いやぁ、貫通は怖いでございますわ〜。
でっ、吹っ飛んじゃいましたですわ〜。あぁ〜。まんごちゃん! 痛そうですわ〜。なんと可哀想なまんごちゃん!
……と言うことで、まんごちゃんの夢の中編に突入でございますですわ。というか、突入中でございますね。そして、次回も夢の中でございますわ〜。
そうでございますわ! あの有名なセリフをオマージュするために、4年も前からこのネタを温めていたんでございますわ! 誰が何と言おうとも、これは、オマージュでございますっ!!
え?
「いいとも〜〜!」
ではありませんわっ! そんな軽いノリで世界樹になるわけないでございますわっ!
おまんちゃんは大天使なのでございますわ〜。
ということで、次回も夢の中編が続くでございます。
どうぞよろしくお願いいたしますですわ〜。
次回!
魔法少女 マンゴ☆スチン Tropical Fruits
『第77話 巫女巫女魔法少女! 巫女巫女魔法少女! 元祖フルプリ! 巫女巫女魔法少女!だまんごー』
で、ございますわっ!
絶対に読んでくださいませ!
ドリアン! カジュー! ヒャクパーセントー!