第6話 雫したたる鍾乳洞、その奥にあるのは何だ?だまんごー。
高村桃矢とまんごと、『ドリア・ヌ・ロドリゲス』の3人は、近所の鍾乳洞にピクニックに来ていた。
鍾乳洞の前には公園がある。
3人は、公園の芝生の上にレジャーシートをひいて、まずは昼食にすることにした。
鍾乳洞に入る前の腹ごしらえである。
「さてと、お昼でございますわ〜」
ドリアはウキウキとしながら、持ってきたカバンの中から重箱を取り出した。
その重箱の中にはおいなりさんが敷き詰められていた。
スネイク特製の『シェフの気まぐれおいなりさん』である。
「わぁ、美味しそうだね。ありがとう、ドリアちゃん!」
まんごは、おいなりさんに目を輝かせた。
「いえいえ、よろしくってよ。もちろん、作ったのはスネイクですのよ。スネイクが作るおいなりさんは最高ですのよ〜。さぁ、まんごちゃん、お兄様、召し上がってくださいませ」
「なるほど……、
重箱に敷き詰められたおいなりさん (字余り)
か……。」
桃矢は小さく呟いた。
まんごはおいなりさんを手でつかんだ。
お寿司は箸を使わずに、手掴みで食べるスタイルだ。
おいなりさんは、まんごの右手を少しはみ出す大きさだ。
小学3年生のまんごの小さな手から、ふっくらとしたおいなりさんがはみ出している。
「あっ……。」
出汁を吸ってしっとりとしたおいなりさんを包む『おあげ』から、ジューシーな汁が滲み出している。
まんごはその汁を拭うために、舌先で、自分の指と、おいなりさんをペロリ、と舐めた。
「さて、いっただきま〜す!」
カプリッ
じゅわ〜
出汁を吸ってしっとりとしたおいなりさんを包む『おあげ』に、まんごは白い歯を立てた。
ジューシーなおあげから、甘辛い汁が滲み出る。
「うん。美味しい! ドリアちゃん! これ、すごく美味しいよ」
「そうでございましょ? では、わたくしも〜」
ドリアも、おいなりさんを手掴みし、それに歯を立てる。
カブリッ
じゅわ〜
「ん〜。やっぱりスネイクの作る料理は最高ですわ〜」
おあげのジューシーな風味が口の中いっぱいに広がる。
「出汁が最高ですわね〜」
ドリアは満面の笑みを浮かべた。
「うん、ちなみに今、ドリアちゃん、なんて言ったの? 出汁と書いて出汁と読むのよ」
まんごは、自信満々に言う。
「さすがまんごだな」
桃矢も頷く。
桃矢もよく知らなかったが、ドリアが先に間違えてくれてラッキーくらいな気分である。
「てへへ、私、国語は得意なんだ」
「もぅ、恥ずかしいですわ〜。わたくしは国語が苦手でございますの。ほんとに、日本語は難しいでございますわ。でも、世界共通の絵心なら、自信ありますわよ。おほほほほ」
「あっ、ドリアちゃん、ほっぺたにご飯粒がついてるよ。ほら……。」
まんごは、ドリアの頬についたご飯粒を、人差し指で取り、自分の口に含んだ。
「あら……。どうも……でございますわ……」
ドリアは頬を真っ赤にした。
桃矢はそのやりとりを横目で見た。
そして、食べかけのおいなりさんから、ご飯粒を1つ、自分の頬にくっつけた。
「おい、まんご! 俺のほっぺたにもついてるぜ。ほれ……。」
「もう、お兄ちゃんは自分で取ってよね」
「ちぇっ、つまんね〜の」
桃矢は、自分の頬からご飯粒を取り、自分の口に含む。
3人は、昼食のおいなりさんを満喫した。
重箱に敷き詰められたおいなりさんは、すぐになくなった。
「そうそう、デザートもあるんですわよ〜」
ドリアは、カバンの中から重箱をもう一つ取り出した。
その重箱には、おまんじゅうが敷き詰められていた。
『シェフの気まぐれおまんじゅう〜粒餡、漉餡。僕、ギシアン〜』である。
「なるほど、
おいなりで膨れたお腹におまんじゅう (字余り)
か……。」
桃矢は小さく呟いた。
「おまんじゅうだぁ〜。私、おまんじゅう、だ〜い好き!」
重箱の中に並んだ色とりどりのおまんじゅうに、まんごは、舐めまわすような目線を送った。
「でも、結構お腹いっぱいでございますわねぇ〜」
ドリアは、お腹をさする。
ドリアのお腹は、ぽっこりと膨れていた。オレンジ色のワンピースをなぞると、お腹の膨らみがわかる程度には膨れていた。
「そうだね、あんまりお腹いっぱいになっちゃうと歩けなくなるよねぇ。今から、鍾乳洞だよ。私たちは、鍾乳洞に入るためにきたんだからねぇ〜」
「そうでございましたわね。では一個ずつにしておきましょう」
ドリアは、重箱からおまんじゅうを取り、まんごと桃矢に1個ずつ取り分けた。
「それじゃあ、いただきま〜す」
「いただきます」
「いただきますでございますわ〜」
まんごと桃矢とドリアの3人は、おまんじゅうを口に含んだ。
3人の口の中に、ほのかに甘い餡子の香りと味が、広がった。
「ん〜ん。美味しい!」
まんごたちは、餡子の味を堪能した。
――――――――――――――
3人は鍾乳洞の中に入って行った。
暗がりの中を、桃矢のスマホの明かりを頼りに、進んでゆく。
「最近のスマホはすごいですわね〜」
「ちょっと、おにいちゃん、離れないでね」
「あぁ、大丈夫だって、ちゃんと付いてきな」
桃矢を先頭に、3人は、鍾乳洞の中を、ゆっくりとゆっくりと奥へと進んでゆく。
ちゃぽん
ちゃぽん
ちゃぽん
ぽちゃん
ぽちゃん
ぽちゃん
ちゃぽん
ちゃぽん
ちゃぽん
滴り落ちる雫の音だけが、鍾乳洞の中に静かに響く。
「ねぇ、お兄ちゃん。なんか不気味だねぇ」
「そうだな」
桃矢が持つスマホで辺りを照らしながら、3人は、ゆっくりと奥へ、奥へと進んでいる。
突然、マンゴスチン・ハートとドリアン・クラブが輝きだした。
(主人よ、妾は何か虫の気配を感じるのじゃが)
(主人よ、わしも虫の気配を感じるぞ)
桃矢が壁を照らすと、そこは鍾乳洞の壁とは少し色が違っていた。
「これは、なんだ? 大きな虫か?」
桃矢は、その壁全体に明かりを照らしながら、それを注意深く見た。
それは、鍾乳洞の壁ではなく、巨大なクマムシだった。
「でも、動かないよ? 危険はなさそうかなぁ?」
まんごは、クマムシをジロジロと観察する。
この巨大なクマムシは仮死状態であった。
(いや。妾の目が黒いうちは、虫を見逃すわけにはいかんのじゃ。主人よ、変身じゃ!)
「うん……。わかった。マンゴスチン・ハート!」
まんごは、右手にマンゴスチン・ハートを握りしめ、それを天に掲げた。
「行くよっ!
マンマンマンゴスゴスゴスチーン!
赤黒の衣に包まれし、清らかなる純白!
溢れる甘き果汁をその身に浴びて!
果物の女王の誇りを胸に刻む!
高村まんご! 妾は汝と共に歩まん!
マンゴスチン・ハート! カジュー! ヒャクパーセントー!」
キューイーン
ピカーーーーーン
まんごが持つマンゴスチン・ハートが、赤く光り輝いた。
「それでは、わたくしも、いきますわよっ!
ドドドドリアンドリアンアーン!
堅牢な棘に守らるる、山吹の凝乳!
麝香の香りをその身に纏い!
果物の王の誇りを胸に刻む!
ドリア・ヌ・ロドリゲス! 妾は其方と共に歩まん!
ドリアン・クラブ! カジュー! ヒャクパーセントー!」
キューイーン
ピカーーーーーン
ドリアが持つドリアン・クラブが、山吹色に光り輝いた。
鍾乳洞の中に、眩ゆい赤と山吹色の光が溢れる。
マンゴスチン・ハートから放たれた赤い光はまんごを包む。
ドリアン・クラブから放たれた山吹色の光がドリアを包む。
まんごが着ていた水色のTシャツと薄茶色のハーフパンツが消える。
しかし、この鍾乳洞の中にはドリアと兄の桃矢しかいないので、今回も何も問題はない!
ドリアが着ていたオレンジ色のワンピースが消える。
しかし、この鍾乳洞の中には、まんごと、まんごの兄の桃矢が……。
しかしながら、ドリアはそんなことを気にするほどの羞恥心は持ち合わせていない!
なので、問題はない!
赤い光が線状になり、まんごの体にぐるぐると巻きつく。
赤いレオタードがまんごの全身を包み、赤黒いミニスカートが腰に現れた。
長袖の赤いジャケットを羽織る。
帽子がかぶさり、完了だ。
山吹色の光は線状になり、ドリアの体にぐるぐると巻きつく。
山吹色の光は、ドリアの体の周りにゴシック・アンド・ロリータファッションを形成してゆく。
杖のような長い棒がまんごの右手から現れ、その先端にマンゴスチン・ハートがくっついた。
杖のような長い棒がドリアの右手から現れ、その先端にドリアン・クラブがくっついた。
「ふぅ。魔法少女『フルプリマンゴスチン』、変身完了!」
「魔法少女『フルプリドリアン』、変身完了ですわ〜!」
赤と山吹色の光が消えてなくなると、そこには、魔法少女『フルプリマンゴスチン』になったまんごと、魔法少女『フルプリドリアン』になったドリアが立っていた。
「すっげ〜、俺も変身したいなぁ〜」
桃矢は、2人の変身(特にドリアの方)を羨ましそうに眺めていた。
桃矢は、スマホで2人を(特にドリアの方)を明るく照らしていた。
「とりあえず、動かないうちに、やっつけちゃおうか?」
まんごが言う。
「それでは、わたくしに任せてくださいませ、いきますわよ!
堅牢な棘に身を固め、黄金よりも貴き果実!
麝香纏いし果物の王!
妾は其方。其方は妾。妾と其方は共にあり!
妾の行く手を阻む、愚かなる畜生を!
妾の力を持ち、消滅させん!
インフィニティ・シューティング・ドリアンッ!」
ピカーーン
ババババババババババババババ
数百のトゲ状の光の玉が、ドリアの周りに浮かぶ。
山吹色の光のトゲだ。
「それっ!」
ドリアは杖を振り抜いた。
数百のトゲ状の光の玉が巨大なクマムシに向かって打ち出される。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
光の玉は、次々に巨大なクマムシに当たり、小さな爆発を起こす。
「ドリアーーーーン!」
ドリアは、叫ぶ。
ドガーーーーーン
ドリアの掛け声に呼応するように、大きな爆発が起こった。
しかし、その爆発の後には、先ほどまでと同様に、巨大なクマムシがいた。
クマムシは地球最強の生物の異名を持つほど頑丈なのだ。
「えっ……? わたくしの魔法が効いていないで……す、と……」
ドリアは、口を半分開けながら、声を出す。
「効いてないみたいだねぇ……。」
まんごも、ドリアの横で目を見開いていた。
(主人よ、せっかく魔法少女『フルーツプリンセス』が2人もいるんじゃ、合体魔法を使うのじゃ)
まんごが持つ杖の先端で、マンゴスチンハートが話す。
「合体魔法?」
(そうじゃ、とりあえず。今、妾が主人に教えられるのは、『グレート トロピカル フルーツ オンスロート』、略して『GTFO』じゃ)
マンゴスチン・ハートは『GTFO』の詠唱呪文をまんごに教えた。
(よし、行くのじゃ)
「うん! じゃあ、ドリアちゃん、いくよ。今回は、私が呪文を詠唱するから、力を貸して!」
「よろしくてよっ! まんごちゃん!」
ドリアは、両手で杖を構える。
まんごも、両手で杖を構える。
「じゃあ、いくよっ!
堅牢な棘に身を固め、黄金よりも貴き果実!
麝香纏いし果物の王!
赤黒の強固な砦に身を固め、白金よりも白き果実!
果汁滲む妖艶なりし果物の女王!
妾は汝に請ふ。妾は其方に請ふ。
世界を統べる双龍の力! ここに交りて、
妾の行く手を阻む、愚かなる畜生を!
妾と共に、消滅させん!
グレート トロピカル フルーツ オンスロート!」
ピカーーン
ピカーーン
2人の杖の先端のマンゴスチン・ハートとドリアン・クラブが光り輝いた。
ギュルルルー
ギュルルルー
ギュルルルー
ギュルルルー
ギュルルルー
2人の周囲に、直径30cmほどの大きなマンゴスチンの形をした赤い光の玉がたくさん出現する。
「いっけぇぇぇええ!」
「いきますわよっ!」
まんごとドリアは、2人揃って杖を振り抜く。
ゴシューーーーー
ゴシューーーーー
ゴシューーーーー
ゴシューーーーー
ゴシューーーーー
赤い光の玉は、衝撃波と共に、次々に打ち出された。
それらは、巨大なクマムシめがけて飛んでゆく。
ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ
ドゴーーン
巨大なクマムシは爆発した。
「あっ! お兄ちゃん、危ない!
赤黒の強固な砦のマンゴスチン!
汝の砦を妾に分け与えたまえ!
マンゴスチン! た〜て〜!」
シャキーーン
桃矢の前に赤い光の壁が現れる。
マン盾だ。
そのマン盾は桃矢を、爆風から守った。
「あっ、すげ〜。あっ……。」
桃矢は、マン盾の後ろで、目を大きく開けた。
桃矢の目に、2人の後ろ姿が映った。
目の前のまんごとドリアは、手で顔を覆い、爆風に耐えていた。
「なんてこった……。俺も、力が欲しい……。」
桃矢は、2人の姿を見て、力がないことを悔やんでいた。
「ふぅ、終わったね、ドリアちゃん!」
「ですわね、まんごちゃん! おほほ」
巨大なクマムシはいなくなっていた。
「あれ? 奥に何かあるぞ」
桃矢は、スマホのライトを、巨大なクマムシがいたところに向けた。
巨大なクマムシが塞いでいた通路の奥は、広くなっていた。
その広い空間の真ん中には1本の大きな桃の木が生えていた。
ドン!
次回に続く!
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わたくし、ドリア・ヌ・ロドリゲス。小学3年生でございますわ〜。
わたくしは、『果物型変身装置』の『ドリアン・クラブ』の力で、魔法少女『フルプリドリアン』に変身できますのよ。
ご機嫌麗しゅう〜。
鍾乳洞の奥には何があるのか、皆様、気になっているでございましょう。
桃の木ですわよ〜!
この桃の木は、重要人物ですわよ。今後の物語を大きく動かす伏線を出しまくりやがりますわ〜。
次回と今後の展開が楽しみですわね。
ぜひ、ブックマークをお勧めするでございますわ。
そして、追いつくなら今でも遅くはないでございますわ。
いつ追いつくの? 今で……ございますわ〜。 おほほ。
最新話から読んでいらっしゃる方には、最初から読むことをオヌヌメしますわよ〜。おほほ。
そしてついに、わたくしとまんごちゃんの2人で放つ合体魔法が登場しましたのよぉ〜。
初めての共同作業でございますわ〜。
ポッ
おほほ。わたくし、少し照れますわ。
もちろん、GTFOは、Get the fuck out ではなくてGreat Tropical Fruit Onslaughtのことでございますわよ。
汚い言葉はよろしくなくてよっ。
Onslaughtは、猛攻撃を意味する単語でございますわ。
決して間違えてはいけませんことよ。
まぁ、わたくしは、国語が苦手でございますゆえ、他人様に対してとやかく言える資格はございませんけど……。
でも、まんごちゃんは国語が得意でございますですわ。 国語は5でございますからねぇ〜。
え? 国語は5? なんのことかわからない? そのうちわかりますわよぉ〜。
そして、わたくしは、絵が得意ですからね〜。
これらの設定が、もうすぐ役に立つ時が来ると思いますわ。
楽しみに待っていただけると嬉しゅうございます〜!
さて、みなさんお待ちかねの、今日のシェフの気まぐれ料理は、『おいなりさん』と『おまんじゅう』でございました!
どちらも、最高でございましたわ。
スネイクの作る料理はいつも最高でございますわ〜。
さて、日本には、『食べ合わせ』がございますわよね。
スイカと天ぷら。
鰻と梅干。
など、ですわね。
わたくし、新しい食べ合わせを考えつきましたの。
おいなりさんとおまんじゅう!
ですわっ!
でも、深い意味はございませんわ〜。
おほほほほ。
それじゃあ、ご機嫌麗しゅう〜!
次回!
魔法少女 マンゴ☆スチン
『第7話 鍾乳洞破レテ桃源郷アリ、木になるあいつはプリンセス?だまんごー』
ですわよ〜!
絶対に読んでくださいませ!
ドリアン! カジュー! ヒャクパーセントー!