第5話 まんごちゃん、大人の魅力のビキニに初挑戦だまんごー。
高村まんごは、ロドリゲス家の大きな屋敷の前をウロウロ歩いていた。
まんごは昨日、『ドリア・ヌ・ロドリゲス』に命を助けられて、ドリアの『下僕』になったのだ。
そして、お屋敷に来るようにドリアに言われたため、まんごはドリアのお屋敷の前に来ていた。
大きすぎるお屋敷に戸惑い、その玄関の前でウロウロとしていた時だった。
「高村まんご様でいらっしゃいますか?」
お屋敷の中から、白髪のおじいさんが、まんごに声をかけた。
真夏なのに暑そうな黒い服に身を固めている。
「あっ、はい」
まんごは、焦り気味に答えた。
そして、すぐに、彼が執事であると理解した。
大きいお屋敷だとは思ってはいたが、執事がいるほどまでとは考えてもいなかった。
「私、このお屋敷で執事をやっております。執事のスネイクでございます。ドリアお嬢様から高村まんご様がいらっしゃったらお迎えするように仰せつかっておりますゆえ」
「あっ、はい。私が、高村まんごです」
「ドリア様のお友達でいらっしゃいますね」
「あ……、でも、お友達かどうかと聞かれたら、一応、『下僕』なんですが……。」
「下僕ですか? はて、ドリアお嬢様はそのようなことはおっしゃられておりませんでしたので、てっきりお友達がいらっしゃると思っておりましたが……。お嬢様が失礼をなさったようでしたら、私から謝罪を……。」
「いえいえ、大丈夫です。はい。友達みたいなものです。あはは……。」
まんごは、口に作り笑いを浮かべた。
「そうですか。では、中へどうぞ。ドリアお嬢様がお待ちになっております」
スネイクは、まんごをお屋敷の中に案内した。
――――――――――――――
スネイクは、ドリアの部屋の前まで、まんごを連れてきた。
コン、コン、コン
スネイクは、ドアをノックする。
「ドリアお嬢様。まんご様が遊びにいらっしゃいましたぞ」
「はい。どうぞ、入ってもよろしくてよ」
ドアを開けると、ドリアがいた。
黒を基調としたワンピースを身につけていた。
どこかゴシック・ロリータの雰囲気が漂うお洒落なワンピースである。
まんごは、ドリアに案内されて、テーブルの前に座った。
向かい合う2人は、どこかよそよそしい。
「あの、昨日はありがとう。ほんと、助か……りました」
沈黙を破ったのは、まんごだった。
言葉に詰まったのは、敬語を使うかどうか悩んだためだ。
「いえいえ、よろしくてよ」
ドリアは、笑顔でそれに答える。
「あの……、私、ドリアちゃんの『下僕』になったん…ですよね?」
「そうですわ」
「どうして、下僕なんですか?」
「わたくしは、誘いを断られるのが嫌なのですわ。だから、命令できる下僕になって欲しかったのですわ! わたくし暇をしていましたので、遊ぶ相手が欲しかったのでございますわ!」
「あはは。やっぱりそうだったんだ……。普通に、遊びにおいでって誘ってくれればよかったのに?」
まんごは、敬語を使うのをやめた。
まんごが思っていた通り、ドリアちゃんは、ただの恥ずかしがり屋だったのだ。
「わたくしはそういうのが苦手でございますのよ! それに、まだ一回しかお会いしたことがないのに、お屋敷にお招きするなど、失礼かと……。」
「でも、それって、下僕でも……」
「下僕だったら、命令でございますわ!」
「じゃあ、友達になれ! って、命令してくれればよかったのに……」
まんごは、食い気味に返事した。
「あっ! まぁ……、そういう考え方もございますわね……。」
ドリアは顔を真っ赤にして答える。
「うふふ。じゃあ、下僕じゃなくて、今日から、友達ってことでいい?」
「はい! でございますわ!」
ドリアは、目を輝かせて、笑顔で答えた。
しかし、顔からはまだ赤みが抜けていなかった。
「じゃあ、これからもお友達として、よろしくねっ! ドリアちゃん!」
「はい! こちらこそ! じゃあ、あの、わたくしは、なんとお呼びすればよろしいかしら?」
「呼び捨てでも、ちゃんづけでも。ドリアちゃんの好きなように呼んでくれればいいから」
「そうですか〜。では、まんごちゃんと呼ばしていただきますわ〜。おほほほ」
ドリアは、満面の笑みを浮かべる。
「うふふふ」
まんごも、ドリアの笑顔につられて笑ってしまった。
コン、コン、コン
ドアをノックする音がした。
「ドリアお嬢様。おやつをお持ちいたしましたぞ」
「あら、スネイク。ちょうど良いところへ」
ドリアは、スネイクを部屋に招き入れる。
スネイクは、お盆の上におやつとジュースを持っていた。
「改めて紹介いたしますわ、お友達の高村まんごちゃんでございますわ」
「ほっほっ。左様でございますか。ドリアお嬢様のお友達の高村まんご様ですね。執事の『スネイク・ド・ファルシア』でございます。よろしくお願いいたします」
スネイクは、小さくお辞儀をした。
まんごも、ぎこちなくお辞儀をし返した。
「まんご様、どうぞお召しあがりください」
スネイクは、ジュースとおやつをテーブルに置き、口元にわかりやすく笑みを浮かべた。
「あはは、どうも」
まんごは、スネイクに笑みを返しておいた。
「では、お2人とも、どうぞごゆっくりとお過ごしくださいませ」
スネイクはおやつをテーブルの上に置くと、すぐに部屋から出ていった。
「すごいね、ドリアちゃん家。執事さんがおやつまで持ってきてくれるんだ。羨ましい〜」
「おほほ。とりあえず、いただきましょう。まんごちゃんも、遠慮せずに、どうぞ召し上がってくださいませ」
ドリアは、そう言うと、マンゴージュースのストローに口をつけた。
ズズズズッ
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ。
ドリアはストローで豪快にマンゴージュースをすすり、豪快に音を立ててそれを飲み込む。
「う〜ん。美味しいですわぁ〜。わたくしは、果汁100%のジュースしか飲まないのですわ〜」
ドリアはマンゴージュースに舌鼓を打っている。
まんごもドリアの嬉しそうな顔を見ながら、自分のマンゴージュースのストローに口をつけた。
コク、コク
「うん! 美味しい!」
まんごも、マンゴージュースに舌鼓を打つ。
「ちなみに、まんごちゃんのお名前は、果物の『マンゴー』からとったのでございますか?」
「いいや、違うよ。私の名前は、『マンゴスチン』からとったの。果物の女王様なんだって」
「あら、そうなんですの? それはまた奇遇ですわね。わたくしの名前は果物の王様のドリアンからとったんでございますの。果物の王様のように誇らしく生きるようにと両親からの願いが込められていますのよ」
「そうなんだ。いい名前だね。2人で、王様と女王様だねっ!」
まんごは、笑顔を浮かべた。
「あ、そうそう、そのお菓子も召し上がってくださいませ。スネイク特製の『シェフの気まぐれちんすこう』でございますわよ」
ドリアとまんごは、皿の上に乗った『ちんすこう』に目をやる。
茶色いクッキーのようなお菓子である。
「あぁ、これ。じゃあ、いただきます」
まんごは、皿の上のちんすこうを指でつまみ、それを口に含んだ。
まんごの薄いピンク色の唇が、ちんすこうを優しく包む。
サクッ
「あれ、何このお菓子? なんか、もそもそする……ね」
まんごにとっては、初めてのちんすこうである。
これは、まんごが想像していたよりも、もそもそとしていた。まんごは口から水分を奪われる感覚に、しかめっ面をする。
「あら? まんごちゃんは、ちんすこうは初めてでいらっしゃいますの?」
「うん、この、ちんすこう、って言うの? 初めてだよ。すっごくもそもそしてるね」
「おほほ。そうかもしれませんわね、でも、このように、マンゴージュースにディップして食べると、ボソボソせずに美味しくいただけますのよ」
ドリアは、ちんすこうをマンゴージュースに浸した。
ちんすこうがマンゴージュースを吸い込み、潤う。
ちんすこうから滴り落ちるマンゴージュースの雫を、コップのふちで上手に切りつつ、ドリアはそれを口に運ぶ。
ボロッ
マンゴージュースを含み、潤いを増したちんすこうは、湿った音を立ててドリアの口の中で崩れた。
「ん〜ん、美味しゅうございますわ〜」
舌の上に広がるマンゴーの風味とちんすこうの風味の合わせ技に、ドリアは思わず目を閉じる。
「わぁ、美味しそう。じゃあ、私もやってみるねっ」
まんごは、ドリアの真似をして、ちんすこうをマンゴージュースに浸した。
マンゴージュースを程よく吸い込み、ちんすこうは潤いを増す。
「おっと……。」
滴り落ちるマンゴージュースをこぼさないように、まんごは口を上に向け、ちんすこうを舌で受け止めた。
まんごは、コップのふちで雫を切らなかったのだ。
数滴のマンゴージュースは、ちんすこうから滲み出し、まんごの口からも溢れた。
まんごの口の横に、マンゴージュースが滴る。
「うん。ボソボソしなくなったね」
まんごは、口の中に広がるマンゴーの味とちんすこうの味を堪能した。
ちんすこうは、マンゴージュースを含み、もはやボソボソしていない。
「そうでしょう? わたくしのお気に入りの食べ方ですの。おほほ」
ドリアは、誇らしげに笑みを浮かべる。
「あっ、ドリアちゃん、ティッシュ借りるね」
まんごは、口から滴り落ちたマンゴージュースをティシューで拭った。
真っ白なティシューが薄く、黄ばんだ。
――――――――――――――
しばらく、2人は、他愛もない会話を楽しんだ。
「さて、まんごちゃん。何かして遊びます? うちにはプールもありますのよ」
「でも、私水着持って来てないよ。ドリアちゃんが、手ぶらで来てって言ったから、手ぶらで来ちゃった……。」
「心配は要りませんことよ。わたくしの水着を貸して差し上げますわ。わたくしは何着も持っていますので……。」
ドリアは立ち上がり。クローゼットの引き出しからビキニを取り出した。
白色と黒色と山吹色の3つのビキニと、黄色いマイクロビキニである。
「えぇ〜。私、スクール水着しか着たことないのに〜」
引き出しから出てきた上下が別々になった水着に、まんごは目を丸くした。
しかも、その中の黄色いやつは、ほぼ紐である。
「じゃあ、挑戦してみるのがよろしいですわ。何事も挑戦あるのみですわ。わたくしとまんごちゃんは同じような身長でございますからね。おそらく、まんごちゃんにも合うと思いますわ〜」
「うん、そうだね」
まんごは、4つをそれぞれ手に取り、選んだ。
「これ、かわいいね。じゃあ、これにするね。で……、着替えは?」
「はい。ここで着替えたらよろしくてよ。わたくしも、一緒に着替えますわよ」
ドリアは、ワンピースに手をかけて、服を脱ぎ始めた。
「えっ? ここで?」
まんごは頬を赤めた。
「何も問題はありませんわよ。わたくしの部屋でございますわよ。誰も見ていませんわよ」
「はははっ、そうだね。なんか照れちゃって……。私がおかしいみたい」
まんごは、うなずき、服を脱ぎ始めた。
「わぁ〜、この水着、かわいいかも」
まんごは、全身鏡に映る自分の姿に、少し照れる。
まんごが選んだ水着は、『黒色のビキニ』である。
まんごの白い肌を際立たせる黒色だ。
「まんごちゃん、すごく似合ってらっしゃいますわ〜」
ドリアは、まんごの水着姿を褒め称えた。
一方で、ドリアが選んだ水着は、『黄色いマイクロビキニ』であった。
「わぁ〜、ドリアちゃんも、かわいいねぇ〜」
まんごも、ドリアの水着姿を褒め称えた。
――――――――――――――
まんごとドリアは、プールで遊んでいた。
ひとしきり水浴びをし、泳いだりもした。
「まんごちゃん。今度、お友達として、どこか遊びに行きませんこと?」
ドリアは少しもじもじとしながらも、まんごを遊びに誘う。
少し、成長したのだ。
「いいね。行こうよ!」
まんごは、大きく頷いた。
夏休みで田舎のおばあちゃん家に遊びに来ていたまんごは、基本的に暇である。しかも、遊ぶ相手は兄の桃矢しかいない。
ドリアからの誘いは、まんごにとっても嬉しいのだ。
「この近くに鍾乳洞があるのですわ。わたくし、まだ中に入ったことがなくて、行きたいと思っていたのですわ〜」
「あぁ、あの鍾乳洞かぁ、私も中に入ったことはないなぁ〜。でも、女の子だけだと怖いなぁ。あ、ねぇ、ドリアちゃん! お兄ちゃんも連れてっていい? たまに抜けているけど、頼りになるお兄ちゃんなんだ。お兄ちゃんも合わせて、3人なら大丈夫かも」
「お兄様ですか? よろしくてよ。3人で行きましょう!」
「鍾乳洞の前には公園もあるから、ピクニックもできちゃうねっ!」
「じゃあ、スネイクに頼んで、弁当を作ってもらいますわ。スネイクの料理は最高でございますのよ。まんごちゃんにもお兄様にも、ぜひ味わっていただきたいですわ〜」
「わぁ、いいね〜。楽しみ! じゃあ、また連絡するねっ!」
「はい、でございますわ〜」
こうして、まんごとドリアは、鍾乳洞にピクニックに行くことになった。
2人は、連絡を取り合うように、連絡用アプリ『ワットアップ』の連絡先も交換した。
――――――――――――――
良い子の帰宅時間は5時である。
プールから上がり、着替えを済ませたまんごは、4時半頃には、ドリアのお屋敷の玄関にいた。
「では、まんごちゃん。ご機嫌麗しゅう〜!」
ドリアは、玄関まで、まんごを見送りに来ていた。
ドリアは、上品に、首の高さのところで、手を振った。
「じゃあ、バイバイ!」
まんごは、頭の上に手を上げ、ドリアに、大きく手を振り返した。
その時、ドリアに手を振るまんごの元に、執事のスネイクが歩み寄ってきた。
そして、まんごに封筒を渡した。
「えっ? なんですか、これは?」
まんごは、封筒を受け取りつつも、首をかしげた。
「ドリアお嬢様が、お友達には何かお土産がないと失礼かとおっしゃられておりました。ですので、これはちょっとしたお土産でございます。どうぞ遠慮なさらずにお受け取りくださいませ」
「あ、はい。じゃあ、ありがとうございます」
下僕として招かれたのに、高待遇で色々と満喫したまんごは、最後にお土産までもらってしまった。
お屋敷育ちのお嬢様の振る舞いに、驚きの連続の一日であった。
まんごは、ドリアとスネイクに別れを告げ、お屋敷を後にした。
お屋敷から少し歩いたところで、まんごは封筒の中を開けた。
中身が気になって仕方がなかったのだ。家に着くまで我慢できずに、まんごは道半ばにして封を切ってしまった。
その封筒の中には、『おこめ券』が入っていた。
しかも、3000円分も!
「おこめ券かぁ……。図書券の方がよかったな。うん。これは、おばあちゃんにあげよう」
まんごは、封筒を右手で握りしめ、帰路に着いた。
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私、高村まんご。小学3年生。
マンゴスチン・ハートに出会って、魔法少女『フルプリマンゴスチン』に変身できるようになっちゃったの。
そして、もう一人の魔法少女のドリアちゃんのお屋敷に遊びにいくことに。最初は、『下僕』って言う設定だったんだけどね。まぁ、友達よね。
友達の家に遊びに行って、2人でビキニに着替えてプール遊びをしたのよね。そして次は、鍾乳洞に遊びにいくことに……。
わぁ〜、楽しみ!
みんな、読んでくれてありがとう!
みんな、だ〜い好きっ!
以前はスク水だったけど、今回は、ビキニよっ!
大人の階段登っちゃった〜。テヘッ。
布の面積が少なくなると、魅力もアップだねっ! 困っちゃうねっ?
なんだって? スク水の方が好きだったって?
あちゃ〜、それはメンゴメンゴ。
じゃあ、第2話を何度も読み返してねっ!
あなたの好きな、スク水よ!
はははっ。
さて……と。
わかってるわよっ!
言いたいことがあるんでしょ?
でもねっ! ドーナツを牛乳につけて食べると、美味しいでしょ?
あれと同じよ!
まぁ、あとね、あれよ。マンゴー味のちんすこうって、すでにあるらしいの。
なんかね、それを知ってね、白けちゃった……。
とにかくっ!
私とドリアちゃんは、普通にお菓子を食べただ〜け〜で〜す〜。
そもそも、誰だ? この組み合わせで出した奴は?
みんな薄々気がついているでしょ?
『シェフの気まぐれ』とつければ何を作ってもいいと思っている執事がいることに……。
おっと……。でもまぁ、今日はこれくらいにしておこっか?
他人のせいにするのは良くないことなの。
これからもっと色々な食材が出て来ると思うよっ!
楽しみだねっ!
メインストーリーよりも、今日の料理の方が気になるって?
まぁ、マンゴスチンシリーズだしね。
この作品は、純文学の血を変に受け継いでいるのよ……ねっ。
さぁ、次の料理は何かなぁ〜?
楽しみだねっ!
それじゃあ、バイバイ!
次回!
魔法少女 マンゴ☆スチン
『第6話 雫したたる鍾乳洞、その奥にあるのは何だ?だまんごー』
だよっ!
絶対に読んでねっ!
マンゴスチン! カジュー! ヒャクパーセントー!