第3話 金髪青目のお嬢様『ドリア・ヌ・ロドリゲス』ちゃんだまんごー。
金色の艶やかな髪が風になびく。
金髪青目の美少女が、山吹色のビキニを身につけ、ビーチパラソルの下で、デッキチェアにゆったりと座っている。
『ドリア・ヌ・ロドリゲス』だ。
和風の民家が立ち並ぶ集落の中に、洋風の大きなお屋敷があった。
そのお屋敷の大きな庭には小さいながらもプールがある。
ドリアは、そのプールサイドで優雅な時間を満喫していた。
「ドリアお嬢様。10時のおやつの『しっとりパインパンナコッタ〜シェフの気まぐれパッションフルーツソースを添えて〜』でございます」
『スネイク・ド・ファルシア』がおやつを持ってプールサイドにやって来た。
スネイクは、ロドリゲス家の執事であり、家事全般とドリアの世話を任されている。
「あら、ありがとう、スネイク。美味しそうでございますわ」
ドリアは、ガラスの器に盛られた白くプルプルしたパンナコッタに目をやる。
「そうでございましょう。私が腕を振るって作ったのですぞ。ドリアお嬢様、どうぞお召し上がりくださいませ」
スネイクは、プールサイドのテーブルに、パインパンナコッタを置いた。
ぷるん
ドリアは、パインパンナコッタの白く滑らかな表面を、撫でるようにスプーンですくう。
その白いぷるぷるとした物体は、薄いピンク色をした唇の間へと、運ばれた。
「う〜ん。おいしゅうございますわ。わたくしの口の中でとろ〜りと優しく溶けますわ。パイナップルの香りも素晴らしい。さっすがスネイク! スネイクの作るおやつはいつも最高でございますわ〜」
ドリアはパインパンナコッタに舌鼓を打つ。
「お嬢様のお口にお合いしたようで、私も嬉しいですぞ」
スネイクは、ドリアの横で誇らしげに笑顔を浮かべた。
「さて、甘いものを食べたら運動をしませんとね。美貌を維持するのも大変でございますのよ〜」
ドリアは、パインパンナコッタを食べ終わると、一息つき、プールに飛び込んだ。
バシャン
小さな水しぶきが起こる。
プールには太陽の光が燦々と降り注いでいる。プールの水は綺麗に澄んでおり、プールの底まで太陽の光が届いていた。
プールの水の水質維持は執事のスネイクの仕事だ。
綺麗な水は、彼の几帳面な性格と仕事に対する真面目さを証明している。
プールは縦5メートル横3メートルの比較的小さなプールだが、ドリアは、プールの縁を器用に泳ぎ続けていた。
――――――――――――――
お昼が近づいて来た頃だった。
ドリアは、デッキチェアにゆったりと座っていた。
水泳をひとしきり楽しんで、休憩をしていた時だ。
「ドリアお嬢様! またもや巨大な虫が屋敷に向かっておりますぞ!」
屋敷の2階から執事のスネイクが叫び声をあげる。
スネイクは、双眼鏡で遠くを眺めている。
この屋敷に向かっている巨大な虫を発見したのだ。
もちろん、巨大な虫が狙っているのは、ドリアが持つ『果物型変身装置』だ。
「そう、わかりましたわ、スネイク。では、『ドリアン・クラブ』、参りますわよ」
ドリアは、テーブルの上に置いてあるドリアンに話しかけた。
このドリアンは、本物の果物ではなく、ドリアンの形をした『果物型変身装置』であり、名前は『ドリアン・クラブ』だ。
(ほっほっほっ、では参るとしようかのぉ)
ドリアン・クラブはドリアに返事をする。
「いきますわよっ!
ドドドドリアンドリアンアーン!
堅牢な棘に守らるる、山吹の凝乳!
麝香の香りをその身に纏い!
果物の王の誇りを胸に刻む!
ドリア・ヌ・ロドリゲス! 妾は其方と共に歩まん!
ドリアン・クラブ! カジュー! ヒャクパーセントー!」
キューイーン
ピカーーーーーン
ドリアが持つドリアン・クラブが、山吹色に光り輝いた。
プールに、眩ゆい山吹色の光が反射している。
ドリアン・クラブから放たれた山吹色の光がドリアを包む。
ドリアが着ていた山吹色のビキニが消えた。
お屋敷の庭のプールサイドにはドリア1人である。問題はない!
山吹色の光は線状になり、ドリアの体にぐるぐると巻きつく。
山吹色の光は、ドリアの体の周りにゴシック・アンド・ロリータファッションを形成してゆく。
山吹色を基調としたロリータファッションだ。スカートには、ドリアンの皮を彷彿させるトゲトゲがあしらわれている。
杖のような長い棒が右手から現れ、その先端にドリアン・クラブがくっついた。
「魔法少女『フルプリドリアン』、変身完了ですわ〜!」
山吹色の光が消えてなくなると、そこには、魔法少女『フルプリドリアン』になったドリアが立っていた。
ドリアは、ビキニ姿から『フルプリドリアン』に変身したのだ。
「フルプリドリアン! いきますわよ!」
ドリアは、プールサイドから、空高く飛び上がった。
――――――――――――――
巨大なカブトムシがのそのそと歩いている。
ドリアのお屋敷に向けて、畑と田んぼの間の道を進行中だ。
「わたくしが相手をして差し上げましてよ!」
道を歩いている巨大なカブトムシの前方上空で、ドリアが叫ぶ。
(さぁ、主人よ、彼奴に『インシューD』でも食らわしてやるがよい)
『インシューD』とは、インフィニティ・シューティング・ドリアンの略である。
「わかりましてよ」
ドリアは、杖を構える。
「堅牢な棘に身を固め、黄金よりも貴き果実!
麝香纏いし果物の王!
妾は其方。其方は妾。妾と其方は共にあり!
妾の行く手を阻む、愚かなる畜生を!
妾の力を持ち、消滅させん!
インフィニティ・シューティング・ドリアンッ!」
ピカーーン
ババババババババババババババ
数百のトゲ状の光の玉が、ドリアの周りに浮かぶ。
山吹色の光のトゲだ。
「いきますわよっ!」
ドリアは杖を振り抜いた。
数百のトゲ状の光の玉が巨大なカブトムシに向かって打ち出される。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
光の玉は、次々に巨大なカブトムシに当たり、小さな爆発を起こす。
「ドリアーーーーン!」
ドリアは、叫ぶ。
ドガーーーーーン
ドリアの掛け声に呼応するように、大きな爆発が起こった。
大きな爆風が、畑と田んぼに広がる。
秋にかけて実りかけた緑色の稲穂の上に、爆風が放射状の波紋を作った。
「わたくしの手にかかれば、一撃でございますわ。ほほほ」
(さすが、わしの主人だのぉ。ほっほっほっ)
巨大なカブトムシは跡形もなく消滅した。
――――――――――――――
ドリアは、ロドリゲス家のお屋敷のプールサイドに戻ってきた。
そこでは、執事のスネイクがドリアの帰りを待っていた。
「おかえりなさいませ、ドリアお嬢様。お怪我はありませんか?」
「ただいま戻りましてよ、スネイク。心配いりませんわ。今回もわたくしの相手ではありませんでしたわ〜」
ドリアは、鼻高々に話す。
「それにしても、最近、頻繁に虫が発生いたしますね」
「このドリアン・クラブが目当てらしいですからね。しかし、このわたくしがいる限り、大丈夫でございますわ〜」
ドリアは、魔法少女『フルプリドリアン』の変身を解除し、元のビキニ姿に戻る。
スネイクは、ドリアから自然に目をそらした。
スネイクは、ドリアが変身する際に裸になることを知っている。お嬢様の裸を見るわけにはいかないという執事としての行動だ。
「さて、ドリアお嬢様、お昼ご飯にでもいたしましょうか?」
「そうですね。お昼のメニューはなんでございましょう?」
ドリアはスネイクの方に目をやる。
「本日の昼食のメニューは『シェフの気まぐれ栗ご飯』と『シェフの気まぐれなめこ汁』でございます」
スネイクは少し頷きながら答えた。
もちろん、この料理も、執事のスネイクの手作りである。つまり、この場合のシェフとは、スネイクのことである。
「あらぁ、素敵でございますわ〜」
ドリアは満面の笑みを浮かべる。
栗ご飯となめこ汁はドリアの好物である。
ドリアは、スネイクとともに、屋敷に入っていった。
――――――――――――――
「わぁ、美味しそうでございますわ〜」
食卓に並べられた栗ご飯となめこ汁を見て、ドリアは歓喜の声を上げた。
ドリアの前に並べられた栗ご飯となめこ汁からはまだ湯気が出ている。
作りたてであり、まだ暖かい。
白く艶やかなお米の中に、数粒の黄色い栗がうずもれている。
まだ旬ではない栗は、小さめだ。
ドリアは、お米をかき分けて、小さな栗を探し出す。そして、箸の先で、小さい栗を、摘まむ。
箸の先の小さい栗からは、まだうっすらと湯気が立っていた。
「小さくて可愛らしい栗でございますわ〜」
ドリアは、栗を眺め、笑みを浮かべる。
そして、その栗を口に運んだ。
ころり
少し硬い栗は、ドリアの口の中で、砕けた。
「う〜ん」
ドリアは思わず、目を閉じた。
ドリアは、砕けた栗を舌の上で転がしながら、それを味わう。栗の味を口の中いっぱいに堪能しつつ、お米を口に運ぶ。
お米と栗は、ドリアの口の中でハーモニーを奏でる。
「美味しゅうございますわ〜。まだ旬ではないとはいえ、なかなかのお味ですわね〜」
「さようでございますか。それは、嬉しいことです。あとで私もいただきますので、楽しみでございます」
ドリアの後ろで、スネイクも満足げに笑顔を浮かべる。
「では、こちらのなめこ汁もいただきますわよ〜」
器の中の味噌汁の中には、なめこがたっぷりと入っている。
ドリアは、なめこ汁の器を持ち、口をつけた。
ずぼぅ、ズボボボボ。
ドリアは、なめこ汁のなめこを勢いよく吸い込む。
数個の束になったなめこが、ドリアの口に流れ込み、音を立てる。
「ドリアお嬢様。あまりはしたない音は立てない方がよろしいかと」
スネイクは、申し訳なさそうにドリアに注意をした。
「そうでございますわね。わたくしとしたことが、つい、なめこに夢中になってしまいましたわ。やはり、このなめこのぬるぬる具合が最高でございますわね」
ドリアの口の中では、なめこ達が舌の上でぬるぬると、小躍りしていた。
ペロリ
ドリアは、前歯にくっついた青ネギを、前歯に舌を沿わせて、取り除いた。
「おほほほほっ」
ドリアは、満面の笑みを浮かべる。
ドリアは、栗ご飯となめこ汁を心ゆくまで堪能した。
ある夏の日の昼のことであった。
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私、高村まんご。小学3年生。
マンゴスチン・ハートに出会って魔法少女になっちゃったの。
そして、なんと。今回、もう1人の魔法少女『ドリア・ヌ・ロドリゲス』ちゃんも登場しちゃった。
ジャジャ、ジャ〜ン!
彼女が持つ『果物型変身装置』は、『ドリアン・クラブ』だよっ!
ドリアンといえば、果物の王様だね。
果物の女王のマンゴスチンとの関係が気になるところだねっ!
ドリアちゃんは重要人物だからね〜。
そのうちすっごく仲良くなるんだから。
どこまで仲良くなるかって?
もぅ、察してよっ!
ちゃ〜んと初めっからR15指定してるでしょ。さすがでしょ。
褒めていいんだよ?
まんごちゃん、よしよ〜し。
って、褒めてもいいんだよっ!
頭をナデナデしても、いいんだよぉ〜。ほぉれ、ほれ。
えっ? なんだって? 主人公なのに、今回は出番がなかったって?
はははっ。大丈夫!
そういう時もあるよぉ。ちょっと悲しいけどね……。
まんごちゃん、よしよ〜し。
って、慰めてくれてもいいんだよっ!
頭をナデナデしても、いいんだよぉ〜。ほぉれ、ほれ。
えっ? なになに? 栗ご飯には触れないのかって?
ダメよっ! 絶対に、触れないわよ!
美味しそうだったよねぇ、栗ご飯。
はい、終了!
ここまでよっ!
さぁ、次回は、みんなお待ちかねの蜘蛛だよ。
蜘蛛の糸に絡まって、あんなことやこんなことに?
ならない?
いや、なるかもしんないよ?
どうなるかは、次回のお楽しみだねっ!
それじゃあ、バイバイ!
次回!
魔法少女 マンゴ☆スチン
『第4話 蜘蛛の糸に絡まれて、まんごちゃん大ピンチ!だまんごー』
だよっ!
絶対に読んでねっ!
マンゴスチン! カジュー! ヒャクパーセントー!