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第27話 幕間の終焉

 押っ取り刀すらも落としかねない慌て様であったが、どうにか全員が配置に着くことに成功した。


 場面は神殿の外周。リリアとピュリオスが公子失踪事件を調査する所から再開された。しかしながら、別マップを活用する事は出来ず、このシーンをもって物語にピリオドを打たねばならない。


 よほどの豪腕でなければ不可能なミッションなのだが、果たしてエルイーザの名案とやらは効を奏するのだろうか。


◆ ◆ ◆


「うーん。なるほど、なるほど」


「先生、何かわかりますかーぁ?」


 メリィが虫眼鏡を手にうろつくと、助手のピュリオスは繰り返し尋ねた。聞こえるのは独り言ばかりで、今のところ要領を得ない時間が続く。


 そこへ、茂みを掻き分けて現れた一団がある。女性ばかりが目につく集団だが、男やウサギの姿も見える。


「ねぇルイーズ。本当に道合ってるの?」


「そうねぇ。こっちで間違いないと思うんだけど……」


「おい、ここは神殿だぞ! 逆戻りじゃねぇか!」


「あらまぁ、失敗しちゃったわねぇ」


 ルイーズが自分の頭をコツリとた叩く。お茶目さんが誘導したせいで、イサリの町から逆戻りしたというのである。こうして無理のない雰囲気を醸し出しつつも、合流は為された。


 それから間髪入れず、真逆の方から現れた者が居た。エルイーザだ。眼を白黒させながら彷徨う様は、手負いの野生生物のようにも見える。


「エルイーザ、どうしてこんな所に!?」


「リーディス!」


「それにその格好はどうしたんだ。物凄く赤いぞ!」


 彼女の体は再びカブレル・キノコの粉末を浴びていた。そのため至るところが腫れており、遠目からは返り血のように見えそうだ。


「リーディス、お願い。助けて」


 エルイーザは縋るような目線と共に歩み寄った。


「近寄るな。今更オレに何の用があるってんだ」


「私、やっと気付いたの。本当の気持ちに」


「本当の気持ちだって……?」


 リーディスは眼を見開いたかと思うと、腹一杯に息を吸い込んだ。そして全身全霊で叫び声をあげた。


「うおぉぉーーッ。オレは真実の愛に気付いたぞーー!」


 リーディスはすぐさまケラリッサのもとへ駆け寄ると、彼女の手を両手で包み込んだ。


「お前が好きだケラリッサ!」


「マジッスか? 実はアタシも一目見たときから!」


「よし、結婚しよう!」


「嬉しいッス!」


 間髪いれずリリアが叫ぶ。


「結婚するならお祝いしないとね! こんな事もあろうかと料理はもう作ってあるわ!」


「よっしゃ、食おうぜ!」


 トントン拍子で会話を重ねたかと思うと、今度は草場の上に料理を並べてしまった。パンに干し肉に煎餅と明らかに残り物なのだが、一応は祝いの席なのだ。


 旨いもの食ってリーディスもニッコリ。


「やったやった、アタシの手料理で笑ってくれた!」


「うん。旨いからな」


「その顔が見てみたかったのよ!」


 そしてたらふく食べたモチうさぎもニッコリ。


「あらまぁモチーニちゃん。随分と嬉しそうねぇ」


「もっも!」


「そう。そんなに楽しいなら、ここに住んじゃいましょうか」


「もっも!」


「ようやく見つけたわね。私達の安住の地を」


 矢継ぎ早にリリアとルイーズの願望が満たされたが、これで終わりではない。まだメリィの分が残されている。


 その時だ。やはり茂みから新たな人物が顔を覗かせた。マリウスとミーナである。


「そこの皆さん。この辺で怪しい人物を見かけませんでしたか?」


「凶悪犯ですよ! うちの坊っちゃんが、そりゃもうドエラい目に!」


 その登場をキッカケにして、メリィは唸り声をあげた。そしてステッキを振り回したのち、先端をエルイーザの方へと向けた。


「あなたが犯人です!」


「先生。なぜそう思うのですかーぁ?」


「この女性をよく見てください。赤いです。返り血です。つまりは真犯人なのです!」


「なんですってーーぇ?」


 ピュリオスの絶叫が響くなり、エルイーザは身を翻して逃走した。最後の悪あがきが始まったのだ。


「逃げました、みんなで捕まえましょう!」


 メリィの号令に全員が応じた。そこでシステムがいつものメッセージを宣言する。


――ロードが完了しました。


◆ ◆ ◆


 短い枠の中、どうにか全ての伏線を回収する事が出来た。リーディスは真実の愛を見つけた。リリア達も料理人としての生きがいを知り、安息の地を得て、狡猾な犯罪者を告発できたのだ。雑である事は百も承知。彼らには最早、じっくりと物語を展開するだけの手段が無いのだから。


 この『打ち切りエンド』の様な疾走感は、まだまだ終わらない。次に控えるラストステージにおいても、速度が緩まるどころか更に加速してゆくのである。




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