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ネカマ君、異世界に落ちる。  作者: 舞茸 シメジ
3/29

第3話 異世界

ラウが書いてる内に若返っていくので、若返らせます。


 ダンジョンから2人が出ると、目の前には広大な草原が広がっていた。

 

 「わ~! 広いですね~! 本当にRPGとかそういうので出てきそうな草原ですね!」

 「そうじゃの~。辺りを見ても人が歩いてる痕跡とか無いから、本当に何もない草原みたいじゃがの。つまり、ワシらがいたところは未発見ダンジョンじゃ。本来は色々探るべきなんじゃが、今はとりあえず情報が欲しいのぉ」

 「ですね~~。とりあえず進む感じですか?」

 「うむ。何か村でもなんでも良いから人を見つけたいの」


 そう言って草原をザックザクと歩いていく2人。

 視界の遥か先まで広がってる草原は本当に人工物らしき物は何も無く、ポツポツと少し大きめな木が存在を主張している。

 2人と1匹は何気ない会話をしながら草原を進んでいく。 

 そして、会話の途中にふと思い出した疑問をリエナは御影に聞く。


 「そういえば、御影ちゃん」

 「なんじゃ?」

 「どうして死体が消えたことがダンジョンだっていう確証になったの? そういう仕様?」

 「あ~。お主、そのレベルで知らなかったのか。ワシらは既に当たり前過ぎて気付かんかったわい。こういうことじゃ」


 ダンジョンは魔力を得るために冒険者や魔物の死体、冒険者が落とした装備などを取り込む。そうすることでダンジョン内は清潔に保たれ、取り込んだ魔力によってダンジョンは階層を構築したり、魔物を生み出したりする。

 基本的にダンジョンは死体と分かるとすぐ取り込むため、ダンジョン内での死体の解体をしようと思うと3分以内で解体しなくてはいけない。3分死体を放置しているダンジョンに完全に吸収されてしまう。大体の冒険者達は解体を後にするため、適当に切り分けてアイテムボックスにぶち込むのだが。


 「へ~。そうだったんですか………」

 「ちなみに、あくまでそういう設定だけで、本当はサーバーの処理軽減のためじゃと思うぞ?」 

 「また御影ちゃんはそういうロマンのないことを言う…………」

 

 身も蓋もない発言にジト目で睨むリエナ。


 「実際事実じゃと思うがのぉ………」と言って、御影は抗議から顔を背けて逃げ出す。


 そうして、2人と1匹はたまにある木の木陰で一休みしつつ、前へと進んでいった。

 

 


 


 「あっ! 御影ちゃん! 何か見えますよ!」


 エナドリをストローで吸いながら、空を見上げて歩いてた御影はリエナの言葉を聞き、視線を前方に向ける。すると、かなり距離はあるが城壁らしきものが見えた。


 「ふ~。ようやく人工物か。結局3~4時間近く歩いてたんじゃが、ワシの記憶にある地形は1つも無かったのぉ」

 「ようやく! きちんと! 休めそう!」

 「キュイ!」 


 御影のぼやきは全く聞こえていない様子の1人と1匹。実際、かなりの強行軍をしていたのであの森から出たこと無い兎と今までこういう移動もしたことない女の子にはキツかったようである。ちなみに御影はそもそもの耐久力が違うので全然疲れてはいない。

 

 「まぁ、日も傾いてきておるから少しは楽をするとするかの」

 「え?」

 「キュイ?」


 その言葉と共に御影に振り返るリエナ。リエナの負担になると思ったのか地面に降りていた兎も気付いたら、また肩に乗っている。


 「な、何をするのですか御影ちゃん…………?」

 「何って」


 返事を言い終わる前に御影は魔法を完成させる。


 「面倒じゃから飛んでいくんじゃよ」

 「え、いや、きゃあああああ!?」

 「キュイイイイ!?」


 御影がそう言い終わると同時に全員が宙に浮く。

 そして、上昇が止まったと思ったら、とんでもない速度で城壁がある方向に移動し始めた。

  

 「あばばばばあああああ!?! み、御影ちゃん! スカートが! スカートがああ~! 捲れてるううううう!!!!」

 「キュイイイインン!!」

 「飛行中の姿勢制御は自分でやってもらうしかないからの~、がんばれ~」

 

 1人は騒ぎ、1匹はこの状況を意外にも楽しんでいて、もう1人はそろそろ減速せねばと考えていた。

 


 そして。


 「もう御影ちゃんのバカバカ! もうちょっとスピード落としてくれていいじゃん! 結局は私はスカートの中が丸見えで飛んでたよ!」

 「別にスパッツ履いとんじゃから別にええじゃろ~」

 「そういう問題じゃなーい!!」


 城壁の前で、自分が受けた理不尽な仕打ちにプリプリするリエナ。格好は女の子だが、中身は男の御影にとってパンツが見えなければまぁええじゃろと考えて、そのへんは放置している。踏み込みすぎると危険な目に合うということはよく分かっているのである。

 

 「さてと、城門を探すとするかの」

 「御影ちゃん、あとでお~ぼ~え~と~け~」


 リエナからの視線に逃げるように歩き出す御影。「はて、何のことじゃろうな」と惚けておくのも忘れない。ついでに正論アタックもかます。


 「全くワシが飛行魔法で飛んでないと、ここに着いてるのはもっと遅くなってるじゃぞ?」

 「なら、最初っから飛んでればいいじゃん~!」

 「ぐっ……。まぁ、そうじゃが。歩きたくなるような草原じゃったじゃん………」


 リエナから返ってくる地味に正論な言葉に、適当な言い訳で答えてしまう。

 

 「……………」

 「……………まぁ、ワシが悪かった」

 「ありがとう♪ 御影ちゃん♪」


 御影、普通に折れる。 


 そんなじゃれ合いをしている内に城門を見つける。城門から外の草原へと道が整備されているので、本当に自分達は道も存在しない場所をウロウロしていたんだなと分かる2人。

 

 「さてと、中に入るとしようかの」

 「ですね!」

 「キュイ!」

 「はい、君達そこで止まってね~」


 突如、会話に交じってきた声の方向の方を向くと、門の中にある衛兵がいる部屋の中から男性が出てきた。

  

 「ようこそ。ラグナ男爵領へ。何か身分を証明できるものは持っているかい?」

 

 その衛兵の言葉を聞き、歩いてる最中に御影が考えていたある推論が真実かもしれないと考える。


 「あ。えっーと………」

 「ワシらは冒険者じゃ。じゃが、生憎さっき川に落ちてしまってのぉ。荷物とかが色々流れてしまったのじゃ。じゃからいま身分証が無いんじゃが、どうにか出来るかの?」

 

 リエナが喋りだそうとしたところを遮り、スラスラと嘘をでっち上げる。  

 

 「うーん、なら冒険者組合まで案内してあげるよ。そこで、冒険者カードを発行してもらうといいよ。でも、流石に身分が証明が出来ない人をタダで通すわけにはいかないからね。銀貨20枚はあるかい?」  

 「えーと、財布も流れてしまったから、この指輪を担保にできるかの?アイテムボックスに入ってる素材等を売れば余裕で銀貨20枚分はあるはずじゃ」

 

 そう言って、自分の人差し指に付けていた指輪を外して衛兵の渡す。一応、ゲーム内でも金、銀、銅貨を使っていたのだが、自分達が使っていた貨幣と違う可能性(・・・・・)を考え、自分が装備していた指輪を渡す。

 あくまで指輪の効果は魔力回復スピードを上げるものだが、御影自身が能力厳選して掘ったものなので、その回復スピード上昇量は初心者が使うとほぼ無限に魔力が回復するレベルのヤバい代物である。

 

 「これは…………なるほど。持つだけで凄まじい力が感じられる………。これはお釣りが来るレベルですよ………。なるほど、さぞかし高名な冒険者なのですね。私が直接冒険者組合まで案内します」

 「助かるのじゃ」

 「その肩にいる一角兎は………」

 「ワシの弟子がテイムしたのじゃ」  

 「なるほど」


 一角兎に対する疑問はワシの弟子という圧力ですぐさま潰す。リエナはひたすら頷くだけである。


 「では、案内させてもらいます。こちらへどうぞ」

 「うむ」



 街の中へと足を踏み入れる一行。

 街の外観はまさしく中世ヨーロッパの街並みである。違う点と言えば、きちんと魔法という技術によって色々整備されているところか。

 そんな街を観察していたら、前を歩く衛兵が話しかけてきた。


 「すみません。川に流されたと言っておりましたが、どのような場所を探索していたのでしょうか?」

 

 衛兵の至極真っ当な質問に御影はここは正直に答えていいかと考える。


 「うむ。未探索ダンジョンじゃ」

 「み、未探索ダンジョンですか………?」


 その御影の発言にぐるっと体ごと振り返り、こちらを見る衛兵。


 「な、なんじゃ?」

 「そのダンジョンはここからもの凄く遠かったり………?」

 「いや、そんなことはないと思うが………?」

 「ちなみにどのくらいの時間で着くかとかは………?」

 「おおよそ徒歩で10時間程度歩けば着くと思うぞ…………?」

 

 その言葉を聞いて、前へ向いてうつ向いてブツブツ言いながら歩く衛兵。


 「………徒歩で10時間。つまりは整備をして馬車などを使えば6時間ほどになるか? いや、むしろ………、あっ、こちらです」


 そう言って、立ち止まった建物の扉を開け御影達を中に入れる衛兵。

 中に入ると、広場らしき場所は閑散としており、その奥にある受付らしき場所で女性が頬杖をついてボケーッとしていた。


 「すみません。ミザリーさん」

 「あっ、ルーオ君じゃない。どうしたの?」

 「急ぎの用です。組合長はどこに?」

 「えと、2階の組合長室にいますが……?」


 その言葉を聞き、ルーオと呼ばれた衛兵は御影達を置いていき、2階に上がり始める。

 昇っている最中に、御影達のことを思い出したかのように、ミザリーと呼ばれた女性に言葉を投げ掛ける。


 「感謝します。すみません、ミザリーさんそこの2人に冒険者カードを発行していただきますか? 詳しい話はあとで。それと……」

 

 すると、視線を御影に移す。

 

 「しばらく冒険者組合にいてくれますか?お嬢さん」

 「えっと、ワシのことか………?」

 「はい、そうですね」

 

 その言葉に若干御影は考え、こう答えた。


 「まぁ、良いが。この街で一番いい宿を教えてくれるかの?」

 

 そう言って、にっこりと笑う御影。それを見てルーオもにっこりと笑い、「その程度ならいくらでも良いですよ」と答えて、2階に上がっていった。

 


 「えーと、冒険者カードを発行しますが、お名前を伺っていいですか?あと、こちらの記入事項にチェックして頂きたいのですが」

 

 そう言って、出された紙に書いてある文字を読む。書かれていた文字は日本語(・・・)ではなかった(・・・・・・)

 書かれているのは、大雑把な自分がどの職業なのかのチェック欄と犯罪歴があるかどうかのチェック欄、そして冒険者組合との契約をするかのチェック欄であった。

 

 (…………あまり考えたくなかったが確定だな)


 そう、最初に衛兵から声を掛けられた瞬間、衛兵が言っている(・・・・・)こと(・・)が分から(・・・・)なかった(・・・・・)為、即座に御影は翻訳魔法を発動させていたのである。

 リエナを喋らせなかったのもそういう理由である。


 「お主の分もやっておくぞ」


 リエナに紙の内容を見せて、頷くように仕向ける。リエナも先ほどから衛兵が言っていることが何も分からなかったので即座に理解し、ブンブンと頷く。

 ささっと記入事項にチェックをして、ミザリーに紙を手渡す。

 

 「はい、ありがとうございます。えーと、お名前は?」

 「ワシが御影で、そっちのが弟子のリエナじゃ。いまリエナは喉が枯れてしまっておるんでな」

 「あら、可哀想に………。んー、魔術師と斥候ですか。ちょっと近接面が不安ですね」

 「まぁ、いま別行動しとるのが近接職じゃから大丈夫じゃよ」

 「なるほど。えーと、冒険者ランクは7級からでいいですか? 以前、冒険者だったとしてもカード発行からとなると最初からになってしまうのですが」

 「全然構わんよ。むしろやり直せるのはいいことじゃ。世の中やり直しがきかんことがたくさんあるからの」

 「ありがとうございます。では、発行してきますね」

 

 そう言って、ミザリーが席を外した途端、リエナが小声で詰め寄ってくる。


 「み、御影ちゃん! か、紙に書いてあった文字………!」

 「落ち着いてよく聞くんじゃ、リエナ。おそらくここは」

 「も、もしかして、い、異世界ですか…………?」

 

 台詞を取られて少しむっとなるが、今は置いとく。


 「そうじゃ。まだ確定とは言えんがほぼ黒みたいなもんじゃ」

 「い、異世界なんて……、またラノベじゃないですかー!」 

 「もうちょっと違う感想があるじゃろ!」


 リエナの頓珍漢な感想に思わず突っ込む御影。

 

 「とりあえず、詳しい話は宿で話そう」

 「分かりました………」


 ミザリーが帰ってくる気配を感じ、会話を切り上げる2人。

 

 「どうぞ。こちら冒険者カードです。ランクを上げるのなら指定数の依頼をこなして頂ければ、すぐに昇格試験は受けれますよ」

 「あい、了解した」


 そうして、冒険者カードを受け取ろうとしたところ。


 「すみません。よろしいでしょうか?」


 2階に上がる階段からルーオが顔を出していた。


 



 受付にもいたミザリーも連れて、みんなで2階に上がる。御影は受付にいなくていいのかと聞くと、「どうせ、あまり人が来ませんから」と返答がしにくい返事をしてきたので、「そ、そうなのか」と答えるしかなかった。



 奥の部屋にたどり着き、ルーオがドアをノックする。すると、奥から「おう、入ってこい」と渋い声が返ってきた。


 「どうぞ」とルーオがドアを開け、すごすごと入る。

 部屋の中にいたのは、黒髪の30代っぽい紳士がソファーに座って寛いでおり、ソファーの前にあるローテーブルには地図が広げてあった。


 「おう、お前らがルーオの言ってた冒険者と兎か。名前はなんという?」

 「御影じゃ。横は弟子のリエナじゃ。兎はうーちゃんじゃ」

 「おう、ミカゲとリエナとうーちゃんか。さて? ルーオが言うには未探索ダンジョンがあると聞いたが、どのようなダンジョンでどんなモンスターがいた?」

 「未探索ダンジョン!?」

  

 物凄く前のめりに矢継ぎ早に質問してくる紳士と横で驚くミザリー。

 そして、それを聞き、鬼気迫る表情をする3人からじりっと後退りする2人。

 

 「おっと、済まない。驚かせたな。俺はここの冒険者組合長をやってるラウメシスだ。ラウとでも呼んでくれ」

 「うむ。ラウか。とりあえず、今は疑問は置いといて質問に答えるとしよう」

 「助かる」


 そうして、御影はフィールド型ダンジョンと洞窟に生成された構造物型のダンジョンがあること、フィールド型ダンジョンの方には獣系統のモンスターが、洞窟の方には骨系統が多く、ちらほら魔力探知をした際に魔法金属の反応があったことを教えた。

 魔法金属とは、魔力が含まれている金属の総称で、ミスリルやオリハルコン、アダマンタイトといったゲーム内でも優秀な武具が作れる金属である。

  

 「ほう! 魔法金属もあったのか! どんな種類かは分かっているのか?」

 「いや、ワシは特に魔法金属は用が無かったのでな。確認はしとらんな。なんなら途中から無視しとったし」

 「うーむ、まぁあることが分かっているだけマシか………」

 「して、おそらくダンジョンで稼ぎたいというのは分かるのじゃが、どうしてそこまで稼ぎたいのじゃ?」


 ルーオに未探索ダンジョンと言った際の反応と、今ここで聞かれてる内容。どれもダンジョンで稼ごうとして聞いてると丸わかりである。


 「それはな。このラグナ男爵領は何も無さすぎて困窮しているんだ………」

 「何も無さすぎて………」

 「そうだ。一面が草原という広い土地はあるのだが、近場に川はなく。水源を探そうとしたら地下深く掘るしかない。この城下街の水源も地下水源だ」


 ラウが言っていることはこうだ。周りに人が来るようなものもなく、商人達も必要物質を運ぶ程度しかしない。なんせ稼ぎ口がほとんどないのだから住民達も毎日を生きるのに必死なのである。草原ということであまり魔物も出てこず、この都市の近くの森にたまーに瘴気が溜まり、ゴブリンが少し湧く程度。そのゴブリン達も見回りしている兵士達に逐一狩られている。


 「そうして、だいぶ生活が苦しくなってきたときにお前らが来たと」

 「なぜ、そもそもこんなところに街なんて作っておるんじゃか」

 「王から賜れたんだから仕方ねぇだろ………」

 「いや、あのすまぬ………」

 

 悲痛な表情を浮かべるラウについ謝る御影。

 

 「さてと、今お前らは冒険者カードを発行したと聞いた」

 「まぁ、そうじゃの」 

 「そこでだ。お前らには組合長直々の依頼としてダンジョンまで案内してほしい」

 「まぁ、良いぞ」

 「報酬もどーんと、っていいのか?」

 

 快諾した御影に拍子抜けなラウ。  

 

 「別に今日いたところにまた戻るだけじゃ。道を知ってるだけ楽だし、それで報酬が貰えるなら稼ぎ時じゃろ?」

 「まぁ、そうだな。だが、1つだけ条件を出していいか?」

 「なんじゃ?」

 「明日でいいから、俺と試合をしろ。この国ではダンジョンに行くには5級になってからという条件がある。今日発行したということはお前ら今7級だろ? 明日、俺との試合で実力を見せてくれれば、即座に5級に上げてやる」

 「なるほど。そういうことなら了解した」

 「じゃあ、明日頼む」

 「うむ」


 そう言って、ミザリーとラウを残して、3人と1匹は組合長室を後にする。

 



   ☆



  

 「さて、ミザリー。分かったか?」

 「はい、あのミカゲという女性凄まじい魔力でしたね。多分、抑えててあれですよ?」

 「ふん、ルーオの奴にこの指輪を付けてる女性が未探索ダンジョンを見つけたと聞いた時はホラでも掴まされたか?と思ったが、対面するとヤバいなアレ」

 「私も受付してるとき、何度か気を失いそうになりましたよ………」 

 「明日、俺、五体満足あればいいなぁ………」


 そう言って、明日のことを思いながら煙草をふかすラウだった。




   ☆



 

 「これお返しさせて頂きます」

 「む、まだ換金とかしてないのじゃが」

 「すでに情報という大きなものは貰っていますし、大丈夫ですよ」

 

 御影の手に指輪を渡しながら、そうルーオは答える。


 「ワシが嘘を行ってたらどうするんじゃ」

 「あなたほどの実力者が我々に嘘をつくメリットなどないでしょう?」

 「まぁ、確かにな」


 そう言われて納得する御影。

 閑散とした広場につくと、ルーオがこちらを振り返った。


 「ミカゲさん。忘れる前に約束を果たしましょう。この街一番の宿はここから真っ直ぐ行った突き当たりにある【眠れる水精の宿】です。質はそうですね。ラウ組合長の首でも賭けましょうか」  

 「そんなお手軽に組合長の首賭けてよいのか!?」

 「冗談ですよ。まぁそうですね。僕の給料を賭けていいぐらいですね」

 「それもそれでどうかと思うぞ? まぁ、分かった。期待しておくとしよう」

 「では、明日宿まで直接向かいに行きますので。あ、ちなみに今日の宿の料金は組合が持ちますので」

 「そうかのか。ありがたく泊まらせてもらおう」 



 そうして、ルーオとも別れ、一行は宿へと向かった。

 

 結論から言うと、宿は最高であった。フワフワのベッド。美味しい食事。お風呂は無かったが、部屋は広く居心地はよかった。

 

 「さてと。念のために防音魔法でも掛けておくかの。【サイレンス】」

 「はぁ~、何かいきなり凄いことになっちゃいましたね~」

 「キュイ!」

  

 うーちゃんがリエナに飛び込みながらベッドの感触を楽しんでいる。

 

 「一応、途中からお主にも翻訳魔法を掛けたからの。会話の内容が一人だけわからないっていうのは酷じゃからの」

 「ありがとうございますー。けど、異世界か~。実感湧かないな~」

 「それだけVRMMOというのはリアルってことじゃなぁ」

 「ですね~」

 

 御影は会話している内に、とあることに気付いた。ある現象を伴って。


 「…………あのー、すまんリエナ」  

 「なんですか、御影ちゃん?」

 「お、おし、トイレって………どう……すれば……いい………?」


 赤くなった顔で御影はリエナに聞く。

 その顔を見て、リエナは………。


 「お姉さんが優しく教えてあげる………♥️」


 舌舐めずりをして、そう答えた。




 今日ここに、御影ファンクラブの会員、もとい狂信者4人目が誕生した。

 




 

 「へ~! 御影ちゃんってネカマだったんだ」

 「あ、あぁ。そういうリエナは普通にリアルも女性だったのか」

 「そうだよ~。やっぱおなじ性別の方が違和感ないしね~」

 「ふ、ふーん」

 

 リエナからの返事を空返事で返す御影。なぜなら。


 (あ、危なかった………。危うくお婿さんに行けない体に…………、いやお嫁さん………?………???)


 トイレの攻防でだいぶ精神を磨耗していた…………。

 

 「びっくりだね~。まさかアバターの性別のままってね~」

 「マジでビックリした…………。俺これからこのまま生活していかなきゃならんのか……」

 「うふふ~、お姉さんがその体での生き方、手取り足取り教えてあげる~♪」

 「マジでやめてくれ」

 

 御影は第二のイエローと化したリエナをトイレとか着替えをするとき、ガチの拘束魔法で固定してやろうかと悩む。

 そんなことを考えてるとリエナがあることを言い出す。


 「うーん、やっぱりその可愛い顔での男言葉もいいけど、さっきまでののじゃ系の方が合ってるかな~」

 「のじゃ系ねぇ。まぁ、そっちでもいいんだけどな。普段はそっちで話すから今くらいは普通に喋らせてくれ……」

 「フフ! 分かった!」

 

 なぜか、上機嫌のリエナに戸惑いながらベッドに横たわる御影。


 「んじゃ、そろそろ寝るぞ」

 「はーい!」


 こうして、異世界生活1日目が無事に終わったのであった。 

 

次回、ラウとのバトル!デュエルスタンバイ!

更新は出来たら明日にはします。遅くて金曜日の午後です。

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