第27話 休日
「ライカ姐さん、マジでスゲェっす!」
街の酒場でプッシがジョッキを持ちながらライカを誉めちぎる。
近くのテーブルに座っていた他のメンバー達も『すげぇぞー!』『よくやった!』『 酒がうめぇ!』などと騒いでいる。
「いえ、そんな…………。私は私が出来ることをしただけです………」
「まぁまぁ、そんな謙遜ぶるなって。お前がやったことは凄いことなんだぞ? 風翼竜を一撃で撃破。しかも一撃で倒したにも関わらず、素材はほとんど無事でこちらの損害は無し。誰も文句なんてつけやしないさ」
ギルは酒を飲みながら、プッシと同じようにライカを誉める。事実、風翼竜がライカ達の前に出てきたときにライカは鉄拳制裁と言わんばかりの拳骨で風翼竜の心臓部分を殴り付けて、一撃で風翼竜の鼓動を止めるという力技をギル達の前で披露。
こうして、ギル達はギルドに何も損害を出さずに風翼竜を倒せたどころか、ほとんど損傷のない死体を手に入れることが出来、臨時収入すら手に入れることができたのであった。
遠征をしていた【明けの明星】のメンバー達はとてもつない戦果に大盛り上がり。
そして、酒場でみんな騒いでいる今に至るのであった。
そんな中、ライカは酒をちびりと飲む。リアルの年齢も既にお酒が飲める年齢で、リアルでもお酒はある程度は嗜んでいた。
しかし、久しぶりに飲んだお酒の味は………………。
「にがい………………」
ライカはポツリと呟く。
御影にいつ会えるのか。ライカの頭の中はそのことで一杯でお酒の味を楽しむ余裕は無かった………………。
☆
御影達がダンジョンから帰ってきて、数日後。
ダンジョン前の主要な建物の建築は終わっており、あとは物資や人の到着を待つだけになっていた。
御影達は各自自由時間として、この数日間はのんびりと過ごしていた。
リビングにカード2枚をパタつかせながら、ラウが入ってくる。
「ミカゲ~。ルメリアとウララの冒険者カードの発行をしといたぞ」
「うむ、済まぬな。てか、お主はもう完全にココに帰ってくるのが当たり前になっておるな。ココはお主の家ではないぞ?」
「別に少しぐらい構わないだろ~。今、組合はテーブルやら何やらの持ち込みで俺は邪魔らしくてなぁ…………。職員に『発行したらすぐに出ていってくださいね』、なんて言われちまったよ…………。俺組合長なのにな…………」
「人徳じゃの」
「ひでぇな!」
御影とラウがそんな会話をしている中、リエナとルメリアとウララはキッチンに立っていた。
「食材を切るときは猫の手だよ~。って、あぁ! 危ない! 指まで切っちゃうよ!?」
「むぅ、難しいわね…………」
「むずかしい!」
「野菜を切るだけだよ!?」
豪快な音を発てながら野菜を切るルメリアとウララにリエナが青ざめた表情をしながら、料理を教えている。ちなみに、サラダを作ってるようである。
「向こうも向こうも気になるが、ラウ。ランクを上げるのに何かオススメの依頼なんかあるかの?」
「気になるどころじゃねぇだろ…………。下手したらお前の出番があるかもしれんぞ………。んで、依頼? お前の場合はちと色々あるがリエナ達のことに関しては何でも受けりゃいい。7級から6級は単純に依頼の数。6級から5級は依頼数と特定の討伐依頼の達成。そして、5級からはこっちから指定した依頼を受けてもらうことになってる」
この世界の冒険者達の間でよく言われてるのが、5級からが本番という言葉がある。事実、5級まで上がるのは意外にも上がろうと思えば早く上がれる。しかし、5級に上がってからは組合が指定した依頼をこなしていかなくてはいけなく、しかもその依頼も多岐に渡り、護衛依頼や討伐依頼、はたまた貴重な素材の採取依頼など冒険者としての地力が求められてくるのである。
また、5級冒険者からダンジョンに潜れるとあって、総じて冒険者達の間では5級まではひよっこ扱いされる。
「ふむ……………。なんか素材系はあるかの? もしかしたらワシの保管庫にあるかもしれぬ」
「あー、まぁあるな。だけど、状態が良くなかったら依頼達成にはならんぞ?」
「まぁ、良い良い。とりあえず何がある?」
「ちと、待て。詳しいのは依頼表見ないと分からんから。いつでも募集してるのは何だっけな……………。あぁ、ヒポポト草とか…………」
そう言って、ラウは組合がいつでも募集している素材を上げていく。
「全部あるの。ほれ」
ラウの言葉を聞いた御影はテーブルの上に次々と素材を出していく。
「うおっ、マジかよ…………。しかもきちんと状態は良いと…………。これならすぐにでも3人とも6級には上がれるな。あとは討伐依頼だが、これは指定した魔物部位を持ち帰えれば達成扱いとなるが。こうなるとありそうだな………。突進猪の牙はあるか?」
「腐るほどあるの」
「じゃあ、5級になれるな…………」
「楽勝じゃな」
「こんなに楽に上がるもんでもないんだがなぁ」
ちなみに、最短で5級まで上げていこうとしても大抵の人間は1ヶ月は掛かったりする。
「とりあえず、これでワシのパーティーのダンジョンに正式に潜れない問題は解決じゃの」
「あぁ、そうだな…………。とりあえず一応、明日から組合は開けるつもりだから、明日素材を持ってきてくれ。俺が処理しておく」
「了解じゃ。そうしたら明日にでも12層まで攻略するかのぉ。出てくる魔物を一撃必殺すれば、大抵の条件は当てはまるじゃろ」
さらっと恐ろしいことを言う御影。そんな御影の発言を聞いてラウは前から思っていた疑問を口にする。
「そういえば、階層解放条件って分からないって話じゃなかったか? 何かある程度の条件が分かってるという口振りだが」
「あぁ、条件が分からないと言っても、はっきりとした条件が分からないというだけじゃ。ワシがいたところで階層解放条件はある程度固定化されておっての。例えば出てくる魔物を全部一撃で倒すとか、ボス部屋までの魔物を全部狩るとか、一定時間内でボス部屋に到達するとかの」
ゲーム内では廃人達がチャレンジダンジョンの条件をロードローラー作戦で片っ端からやっていったおかげで、大抵の条件が判明している。ちなみに一番ヤバかった条件はエリア徘徊型ボスの一撃討伐である。運営は軽く炎上して、ただの討伐にしたという。
「なるほどなぁって、どの条件も面倒くさいな!?」
「言うて、出てくる魔物がまだまだ弱い部類じゃ。ワシらからしたらまだ楽勝じゃぞ? おそらくじゃが、あのダンジョンの90層台は出てくる魔物が全部Lv900近くになるぞ?」
「誰が攻略するんだよ……………」
御影の言葉を聞いて、げっそりとするラウ。
「はいはいー! ちょっと余り聞こえたくない話が出てき始めてたからインターセプトー!」
そんな話をしていると、リエナがお皿を持ってくる。
「ご飯です! さぁ、テーブルの上を片付けてくださーい!」
「お、パスタか。旨そうじゃのぉ」
「また異世界食か。どんな味か楽しみだな」
そんな会話しながら、御影は保管庫に素材を収納していく。ラウは手慣れたようにテーブルの上を拭いている。
片付いたテーブルの上に料理がどんどん運ばれていく。
「さて、みんな席に着いたということで、いただきます!」
「「「「いただきます」」」」
リエナのいただきますの言葉にみんなが続く。すっかり異世界メンバーもいただきますに慣れたようであった。
「和風か」
「美味しい?」
御影の言葉にリエナは不安そうな顔をして質問する。
「うむ、旨いぞ」
「おう、旨いぞ!」
「な、中々ね…………」
「美味しい!!」
4人の感想を聞いたリエナは胸を撫で下ろす。
「良かったぁ~」
「私達が作ったサラダもどう!?」
「どう!?」
リエナの次はルメリアとウララが目を輝かせて聞いてくる。
それに、御影とラウは。
「ばっちりじゃの」
「美味しいぞ」
きっちりと返すのであった。
「ふぅ、食べた食べた~」
「満腹ね…………」
「うん!」
食事を終えた3人がソファーで寛いでいる。
その様子を見た御影が今後の予定を言う。
「明日、ダンジョン行くからの」
「うっ、お腹が痛い…………」
「ちょっと立ち眩みがするわ…………」
「ダンジョン!」
若干2名、反応がおかしかったが御影はスルーする。
「ということで、お主らきっちりと早めに寝るんじゃぞ。最近、夜更かししてるの知っとるからの?」
「「「え」」」
実は家でトランプを発見したリエナが連日ルメリアの部屋に集まってトランプで遊んでいたのである。
それをきっちりと御影は把握していた。
「な、なぜ、それを…………!?」
「魔力探知」
「ぷ、プライバシーの尊重!」
「別にそんな詳しく見てないし、見る必要もないわい。それ以上言うならブツを取り上げるぞ?」
「詳しく見てるじゃん!!!」
「ワシは棚に置いといた物が消えていたのに気付いただけじゃしー」
「うぬぐぐぐぐぐ」
あまり中身のない喧嘩を2人は続ける。
こうして、御影達の平穏な休日は過ぎていった。




