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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

とりっくおあとりーとから始まるちょっとした百合への可能性

作者: 環月紅人



「とりっくおあとりーと! 先輩、お菓子くれなきゃイタズラしますよっ」


 今日は一年に一度しかないハロウィーンな日。ちゃんと後であげる用の先輩用のお菓子も隠しながら、生徒会室。ちょっとした書記仕事の合間にわたしは先輩へ、両手をわきわきさせながらそう言った。


「私じゃなくて他の子にやりなさい」

「イタズラしますよ?」

「近付かないで。待って。……まったくもう」


 ぐいっと近寄ったら、ため息をつきながらそう言って、引き出しの中から小さな小包を出してくれた。

 ぽーん!っとそれが放り投げられて、「あちょっ」取りこぼしそうになりながらなんとかキャッチ。危ない危ない。


 小包の中にはちょっと無骨なクッキー三枚。チョコチップ!

 魔女だとかカボチャとか、ハロウィンらしいプリントがされているビニールにラッピングされていて、やばい。絶対これ先輩の手作りじゃん!


 感動だ……ちょっとチョコが溶けすぎていたり、なんかの形にしようとしたけど諦めた結果の歪な形がたまんない!

 先輩不器用だ、そんなところがかわいいだ!


「ありがとうございます先輩! イタズラはまたの機会に、ですね」


 んふふふふ。

 噛みしめるように胸元でそれをぎゅーってやりながら、いつ食べるか、はたまた観賞用にしておくか……んんん! ニヤニヤしちゃう。

 先輩そんな引いた目でわたしを見ないでください。

 嬉しいんですから。


「じゃあ、トリックオアトリート」

「へ?」


 なんてしていると、今度は先輩がわたしに手を伸ばしながらそう言った。

 まさかいつもノリの悪い先輩が言ってくれるとは思わなかったので、わたしのは後で押し付けようと思ってたんだけど……んへへ。

 なんかうれしいなあ。


「ただいま!」


 クッキーをわたしの机に置いて、わたしも鞄から取り出そうとガサゴソして……あ、いいこと思いついてしまった。にひひ。


「せーんぱいっ」

「……何よそのわっるい顔は」

「んふふ」


 何も持たないまま先輩に近づいて、後ろに回る。

 んへへ。えへへ。

 ドキドキしてきた。


「せーんぱい」

「耳元で喋るな」


 右耳にふーってやったら頭を振られたので今度は反対側へ。


「じつはぁ」

「〜〜〜っ……くすぐったいよ」


 両耳を抑えながら振り返った先輩はちょっと顔が赤かった。かわいいです。

 飛びのくようにちょっとだけ離れて、改めて。


「お菓子忘れてきちゃったので、イタズラしてください」

「ばっ、ちょ、何やってるの!?」


 ブレザー脱いだ。いまのわたしはDA☆I☆TA☆N!

 ニヤニヤしながら照れ照れしながらでもボタンに手を掛けてみたら、必死に先輩がわたしの手を抑えてくる。


「ばかばかばかばか」

「なんでですか」

「逆になんでよ!?」


 きゅって眼を瞑りながら先輩は、純情ですねー。女の子同士なんですから、もっと気軽に気楽にー……だめだ、わたしも恥ずかしい。今更ながらに何をしてるんだろうか。

 後悔はしていないけど絶対後で気まずくなるやつじゃないですか。

 と。


「やっほー遅れました! 庶務登場!」

「ギリギリだな。会長、そろそろ定例会議始めまし……」


 あっあー……。


 棒立ちなわたし。わたしの胸元のボタンを必死に抑える先輩。入ってきた副会長くんと庶務ちゃん。傍目には書記の胸元に手を伸ばしてる会長。

 ……あー……。


「あー……」


 えっと、うん。

 先輩ごめんなさい。


 あと副会長くんわたしの胸元を見ないでください訴えるぞ。


「きょ、今日はハロウィンなので」


 先輩ほんとごめんなさい。



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― 新着の感想 ―
[一言] そしてこの後、罰として定例会議中は羞恥と怨念で若干投げ遣りになった会長の椅子にされる流れですね分かります!
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